東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】   作:ランタンポップス

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分かる人には分かりますが、サイコブレイク海外版のラウラの呼称をタイトルとして採用していまするべさ


蘇ったラウラ【RE-Bone Laula 】2

「こんな扉、あったっけ?」

 咲夜によって注意が向けられた、木製の扉へ近付く。勿論、いきなり何者かが出てくる可能性も否定出来ない為、臨戦の体勢は保ったままだが。

「ちょっと霊夢、気を付けて」

「大丈夫大丈夫、何時でも攻撃出来るように身構えているから」

 そう言って扉の前に来た彼女は、ゆっくりとドアノブに手をかけた。すると、掌にジットリとしてヌルイ温度の感覚が伝わり、反射的にぱっと手を離した。

「うわっ」

「どうしたの?」

 霊夢の様子を見て、咲夜は心配になって声をかけた。すると彼女は掌を咲夜に見せて、自嘲気味なややひきつった苦笑いをしている。

 その掌には、何か赤い塗料が塗りたくられていた。やたら鉄臭い。

 

「血?」

 咲夜はドアノブに目を向けた。鋼色に鈍く光る鉄製のドアノブには、誰が付けたのか赤い血の手形が張り付いていたのだ。まだ乾いてすらいない、付けられたばかりの緋色の血である。

「地味な嫌がらせするわねぇ……悪趣味だし。レミリアでもこんな事しないわよ……」

 険しい表情で、持ってきたハンカチを使い血を拭う。しかし、水洗いしない内は完全に拭い落とす事は出来ず、若干血が掌に付いたまま。この血が皮膚に染み込んでいるようで、少し潔癖な所のある霊夢にとって、ある種の苦痛と嫌悪が湧いて出てきていた。

 彼女の心の中にある不機嫌の値が更に高まり、独り言のように文句を呟き出す。

「本当にもう、あー嫌だ嫌だ……こうなるのなら来なきゃ良かったわ……どーせ召喚魔法か何かで失敗したのよ、きっと」

 

 そして、腹いせからか、扉へ思いっきり前蹴りを食らわした。扉はバキリと鈍い音を立て、勢い良く開かれる。

 

 

「……本当に悪趣味……」

 扉の先には誰もおらず、相も変わらず赤い廊下が続いていた。

 変わった事と言えば、左右を挟む壁にはおびただしい数の血の文字が書き殴られていた。同じ文字のようで、文体は日本語ではなく、アルファベットで書かれている。恐らくは英語だと思われる。

 

「……『He s watching……We can't leave』……」

 霊夢が首を傾げている横で、咲夜が文字を読み上げた。

「アンタ、読めたのね……」

「当たり前じゃない。お嬢様に仕える者として当然よ」

 そう答える彼女はどこか誇らしげだ。その自信満々な様子に少し苛ついた霊夢は、英語読める件についての追求は止めにして、その意味を聞いてみる。

「で、どういう意味なの?」

 咲夜はどこか気味悪げだ、顎に指を当て、考えを纏めている様子である。奇怪な虫でも見るかのような冷めた目で、文字を再度流して見ると、意味を読み上げた。

「直訳だけど、良い意味ではないわね」

「そんなのは薄々分かっているわよ、教えて」

「ハイハイ……『あいつが見ている。逃げられない』……と読めるわ」

「……聞かなきゃ良かった」

 壁一面に書かれた狂気の文字たちの意味を知ってしまったばかりに、気のせいなのかどうかは知らないが視線を感じるようになってしまった。

 それから数歩だけ歩いたのだが、ふと背後を振り返ったり、身構えたりしてしまう。明らかに意識してしまっている証拠だ。

「尋常な精神はしていないわね、それも陰気で不快で」

 この状況を作り出した見えざる元凶に対して、毒づく霊夢。そう言って正解な程に、異常を極めたこの空間は妙な空気を放っている。

 ピリピリとして血生臭いこの廊下を、敵の襲来を想定しながら二人は進む。

 

 第二の廊下はかなり短く、ものの三分ほど歩けば次の扉が現れた。敵……あのゾンビとの接触は、幸いにもなかった。しかしそうとは言え正直、進んでいるのか堂々巡りなのか、不安になってくる。

「全く……気味悪いとかそんなのより、イライラしてくるわねぇ……」

「それに、扉の方も何か怪しい雰囲気漂わしているわ」

 咲夜の言う通り、次の扉にはベットリと「血の爪痕」が残っていた。まるで、熊などの巨大な獣が引っ掻いたような痕だ。そしてその扉の下、隙間より血溜まりが出来ているのも怪しい。

「扉の向こうから流れている……これは間違いなく元凶に近いわ」

 霊夢はやっとこの悪夢が終わると言い添えると、懐から札を数枚取りだし、霊力を纏わせた。これが彼女の臨戦体勢である。

「少し力をセーブしたら?思わせ振りで何もなかったら飛んだ無駄遣いよ」

「そうだったら次の廊下全部吹き飛ばしてやる」

「……本当、巫女とは思えないわね。輩に名前変えたらどう?」

 咲夜の軽口にカクリと力が抜けかけるも、抗議の代わりにジト目で少し睨んでから、扉のドアノブを乱暴に掴んだ。衝撃で、扉が軋む。

「開けるわよ?」

 そのまま彼女は、扉を勢い良く開けた。

 甲高い衝撃音と充満する血生臭さが扉の先から雪崩れ込むようだが、霊夢は有無を言わさず札に力を込めて解き放とうとした。虹色に輝き出す光を受け、霊夢は札を突き付けた。

 

 

「え?」

 しかし、突き付けた右腕は、途中で止まった。右腕を、何者かが掴んだのだ。

 それは手のような物で、焼け爛れた皮膚のような物体に長い爪が伸びている。その手のような物が、彼女の腕をガッシリと握っている。それは扉の下の血溜まりから生えるように、伸びていた。

「なっ!?」

 動揺した時にはすでに遅く、不完全に伸びた腕の角度により札は上向いた。上向いた札から、霊力の許容量が限界に達したばかりに光弾が天井に発射された。

「霊夢!?」

 咲夜の呼び掛けと同時に光弾は天井に着弾。

 

 粉塵巻き上げ、天井を木っ端微塵に吹き飛ばす。豪快な破壊力は衝撃波を巻き起こし、霊夢の救助に向かおうとした咲夜を吹き飛ばしてしまった。

「きゃぁっ!!」

 吹き飛ばされながらも受け身を早急に取り、片足が地面に着いた。同時に彼女は「能力」を行使しようと力を放出しようとしたのだが……

 

 

「消えた……!?れ、霊夢!?」

……大穴が開いた天井と廊下の行き止まりが目の前にあった。霊夢が開けたはずの扉も、血溜まりも謎の手も……そして捕まった霊夢も、そこには存在していなかった。

 巻き上がり、地面に落ちた粉塵が赤い廊下をやや灰色に染める。舞い上がっていたほんの一瞬、吹き飛ばされて視線が浮わついたほんの一瞬、そのほんの一瞬で消えてしまっていたのだ。

「霊夢!!」

 もう一度、探し人の名前を叫ぶも、返事は自分の反響した声だけであった。

「くぅっ……!油断していた……!!」

 咄嗟に扉のあった場所へ近付いた。しかし、壁を触っても何もないようで、ザラリとした壁紙の感触がするのみ。左右を見渡しても、やはり何もない。赤い壁が、自分を挟むように立つだけ。

 

「霊夢……無事でいなさいよ!」

 バッと顔を天井へ移し、無惨に破壊されたその天井の穴を睨む。

 階層が上へ続いているようで、蝋燭の光が溢れている。人の気配はしない。

「ここしかないか……全く、盛大に壊してくれたわね……!」

 大きくジャンプし、上の階層へ飛び上がる。そこもやはり、赤い廊下が続いていたのだが……

 

 

 

 

 何処からか、女性のけたたましい悲鳴が響き渡るのであった。

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