東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】   作:ランタンポップス

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慧音さん、出動です。
二次創作物でしたら、砕けた口調で喋るイメージの強い彼女ですが、いつかの敬語で喋る慧音さんが自分の中でのイメージが強いので、そうさせて貰いました。
と、言っても常識人的に友人にはタメ口、初対面の人には敬語と公私混合しない事に長けている感じで行きます。
……誰の角がきもけーねだってェ!?


ホーンテッドの夜【Night of the Haunted】3

 あの事件から人里の様子は少し変わった。店先にいる妖怪たちに、冷たい視線が浴びせる者が目に見えて多くなったような気がする。

 勿論、それは一部の者だけでみんながみんなと言う訳ではない。大抵の人間は「アレはアレ、コレはコレ」と割りきっている者の方が多い。

 だが、そうじゃない者も多い。酷い時では石を投げる者も出始めたと聞いた。「妖怪を追い出せ」と書かれた張り紙まで張る者もいる。

 こういった排他活動を裏で糸引く連中がいるのだ。最近、勢いに乗って来ていると言う話しがちらほらと聞こえて来た。

 過激ではなくとも、妖怪に対する恐れを強めた者も沢山いる。彼らは夜道を歩くのを非常に怖がり、過激派を応援している。それが彼らの活動を後押ししているのだ。

 しかし、幻想郷の人間は非常に飽きっぽい。みな、時期に熱も冷め始める。現に排他活動の参加者が減ってきているようだ。

 この騒動も時が解決してくれるさ、と一部の人間や妖怪たちは考えていた。

 

 事件はまた起きる。

「おい!今度は大工の翔次郎が食われたらしいぞ!?」

 昨晩の二時、現場へカンナを忘れたからと、設計図の見直しの為に夜中まで起きていた彼は家を飛び出した。

 相当大事な物なのだろう。あの事件が起きてまだ一週間だと言うのに、カンナを取りに夜道に消えていった。

 

 帰り道、背後から噛みつかれたように首筋を大きく千切られ、恐怖に歪んだ表情で死んでいたのだ。

 以前との相違点は、脳を取られていない事。これが意味する事は誰にも分からない。

「忘れた頃に来るとはこの事か……おらぁ、恐ろしくてなんねぇ……早いとこ解決してくれぇ……!」

「自警団は見回りしていたんかよ!?おぉ!?どうなんだよ!!??」

「母は七十になります……この事件ですっかり怯えちまって体を壊してしもうて……早く犯人を捕らえて母を安心させとくれ……!」

「こちとら夜中は外も出られなくなったじゃないか!何の為の自警団だコラァ!?」

 ある者は怒り、ある者は怯え、ある者は懇願の表情で一つの建物へと押し掛けている。

 ここは、一帯の平和を守る為に結成された「自警団」の拠点である。前の事件から見回りを強化していたはずなのに、また同様の事件を起こし、防げなかった事に対する抗議が殺到しているのだ。

「お、落ち着け!我々も更なる見回りの強化を行う予定だ!次は絶対に起こさせない覚悟で励むので……!」

 対応に困る自警団側。目まぐるしく浴びせられる罵倒と文句と願望を一斉に受け、酷く疲弊しきった表情で何とか問い掛けに応じている。

 そんな中、この事件は再び幻想郷全体に衝撃を与え、排他活動も日に日に激化。妖怪が働く店自体に石が投げ込まれるようになった。

 

「……どうした事か」

 現在の人里に、危機感を誰よりも感じている一人の女性がいる。

「まさかこんな事態に発展するとは……」

 青い服と青い小さな帽子、そしてベリーロング並に長い青混じりの白銀の髪。

 

 自室にて書物を見ながら唸る彼女の名前は、「上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)」。

 彼女もまた、半人半獣の「妖怪」でもある。しかし、この人里を誰よりも愛しているし、人間も大好きだ。

 そんな彼女だからこそ尚の事、事件に対する怒りと危惧は人一倍なのだろう。

「このまま否定派の人間が暴徒化すれば、取り返しのつかん事態に発展しかねません……」

 彼女とは向かい合わせになる形で、机の向こうで正座をしている眼鏡をかけた真面目そうな男。

 彼は自警団の者で、事件の報告書をしたためて彼女に救援を求めて来たのである。

「我々は言うなれば慈善活動の一貫として結成されているんです……見回りの強化を求められてはいるものの、人事的にも限界なんです……どうか、お力添えをして貰えませぬか?」

「新聞を読みましたが、霊夢……博霊の巫女に協力を仰いでいるようでは?」

 その問いに、彼は言いにくそうに視線を逸らし、眼鏡を上下に動かし始めた。気が悪い時の、彼の癖だろうか。

 

「そ、それが……何度か博霊神社の方へと足を運んでいるのですが……留守のようでして……」

 それには慧音が驚いた。

 あの随時、暇なはずの霊夢が留守とは。何か別に異変でも起きたのだろうか。

「戻るまで待っていたとしても、その内に第三の事件が起こるのも時間の問題……そこで……その、代わりと言えば失礼なんですが、上白沢さんに協力を仰ぎに来たのです」

 慧音はどうにもこの男が可哀想で仕方がない。実は自警団を率いているのは彼なのだ。

 元々の本業である仏具専門の塗装業も兼ね、団員たちよりも率先して一帯の見回りをしている事を彼女は良く知っている。

 相当な激務なのだろう。目の下には隈が出来ており、疲労困憊した顔は、まだ三十代の彼を老けて見せている。体も痩せ、膝に置かれた腕は血色悪く、とても細い。

 近所の人は彼を、彼らを怠けているとか罵っているがとんでもない。彼らは本気で里を「人の手」で守ろうと人一倍頑張っている。

 事実、近年の里で起こる窃盗や暴行は減少傾向にある。

 

 だが、今回は自分たちの力は不足している。

 妖怪を超えた能力を持つ霊夢は別として、彼女が留守の今、「人の手」では負えない、守りきれないと判断し、彼女に協力を依頼したのだろう。妖怪である彼女に……

 プライドを捨てるような決断だったに違いない。

 

 

「分かりました。全力をかけて、あなた方に協力します」

 読み終えた報告書を机に置き、彼女は協力に賛同した。彼女もまた、この事件を解決したいと思っていたのだろ

 その言葉を聞けた男の喜び様は凄く、細い腕を高々と振り上げて「ありがとうございます!!」と大声で叫んだほどで、終いには泣き出した。

 流石の慧音もタジタジである。

「お、落ち着きましょうか?とりあえずこのハンカチで涙を拭こうか?」

「グスッ……失礼します……」

 慧音からハンカチを受け取ると、流れた涙を必死に拭き始めた。

「これで里のみんなを守れる」と思い、感情が高ぶってしまったのだろう。皮肉な人に見れば他力本願と見るだろうが、彼らにとっては里の人間を守れればそれで良いのだ。

「報告書を見ましたが……もしかしたらあなたの言う通りかも知れませんね」

 最初、慧音を訪ねた時に彼は報告書を読む彼女に意見をした。事件については報告書に穴が空くほど見たらしい。現場の調査も何度も何度も行ったと聞いた。

 そんな彼の視点から見た一つの推測がこれだ。

 

「妖怪が起こしたにしては不自然な点が多い。だからって人間が人を噛み殺す力なんかあるはずないし考えにくい。推測ですが、強力な力を持った「亡霊」なのでは」と言った内容だ。

 幻想郷は「非常識が常識」の世界。実の所、冥府へ続く道があったりと、地上であの世に一番近い場所でもあり、幽霊はしょっちゅう見られたりする。

 中にはあるのだ。悪霊化した幽霊が生者を求めて襲う事例が。

「上白沢さんもそうお考えで……現場には被害者以外の痕跡がありませんでした。まるでフッと現れたようなんです」

「でも疑問はあります。一度目は脳を持って行ったと書いています。二度目は噛み殺しただけ……幽霊にしてもこの行動原理は不可解です」

 この事件の核心を突くような慧音の疑問。その疑問に対して男は首を傾けた。

「さぁ……幽霊だとすれば神出鬼没の移動手段は合点がいくんです。でも脳を奪った理由が……最初の被害者が酒に酔っていた事ぐらいしか二人の相違点は存在しませんし……」

「まさかそれが理由な訳はありませんし……ね」

 ここで二人の推理は停滞してしまった。犯人の目的が判明すれば、おのずと犯人像を掴めてこれるはずなのだ。

 まず真相への鍵と、考察する資料が足りない。幽霊の仕業と言えど、人を殺せるレベルになればそれは一つの生命体だ。触れも出来るし、触られも出来る。

 つまりは実体を持っている。実体を持っている事は、痕跡がおのずとして残るはず。

 生前の恨みか、何者かに操られているのか……絶対に何かあるはずだ。

 

 

「自分たちはまた独自に調査してみます。何か分かった事があれば、例え些細な事でもご報告させて頂きます」

 そう言うと男はスクリと立ち上がった。いつの間にやら外は暗みがかっており、里には帰路を急ぐ者たちが往来している。

 見送りをしようと、玄関まで彼女は付いて行った。

「それでは、ご協力に大変感謝しております。此方としては微力でしょうが、お声をかけて貰えればお手伝いさせて頂きます。共に、犯人を捕らえましょうぞ!」

 下駄を履くと男は慧音に握手を求め、右手を差し出した。家に来た当初とは打って変わり、表情もどこかイキイキしている。

 それを見た慧音は嬉しくなる。教師でもある彼女だ、教え子のように見えたのだろう。

「えぇ。頑張りましょう!」

「イィいぃっ!?!?」

 差し出された手をガッシリと思いっきり握り、彼の握手に応じた。込めた力が強かったようで、男は苦悶の表情に早変わりした。

 慌てて慧音は力を緩めた。少し熱くなってしまったようだ。

「す、すまない……あ、違う。すみません……あー、お互い頑張りましょう」

「つつつ……はい!頑張りましょうッ!ではこれにて!」

 威勢の良い返事と共に、男は笑顔のまま慧音の家を出ていった。これから見回りなのだろう、少し急ぎ足だ。

「……全く、人間は逞しいな」

 その姿に感心しながら、再び彼女は玄関の戸を閉め自室へと戻って行った。彼女もまた、明日行う寺子屋の授業準備に追われていたのだった。

 灯り行く提灯が、里を彩って行く。

 

 

「な、何なんだ……何なんだコイツは……!?」

 深夜の廃家。近場にある建物も廃家ばかりで人のいない廃れた場所であった。

 傷だらけの壁を背にして立つ、怯えた表情の彼に迫る者。暗い中で不気味に光る青白い光は、そいつの目から漏れる光だ。月明かりは雲が隠し、唯一の光源はそれのみ。

 その異形の者の背後にはズラリと並べられた、薄汚い「マネキン」の数々。まるで嘲笑うだけの傍観者のようだった。

「何が……何が目的なんだ?……どこから現れたんだ……!?」

 男の問い掛けにも、そいつは唸り声を出すのみで答えに応じない。理性の微塵すら感じられない。それがまた男の恐怖を煽る。

 得体の知れない者との対峙、これほどの恐怖が存在するのか?

「いっ……そんな小さな銃を持っているなんて、知らないぞ……!」

 良く見てみれば、男の肩からは血が滴っていた。利き腕を銃で撃ち抜かれ、武器である刀を落としてしまった。男は丸腰である。

 

 しかし、その肩を撃ち抜いた異形の者の持つ銃は、男が初めて見る代物であった。

 幻想郷では滅多に目にかかれない小型の銃、「ハンドガン」だ。

 訳の分からない武器と、あまりに恐ろしい異形の者の姿に脳内は恐怖でパンク寸前だ。何も考えられない。

「あ……あぁ……あぁあ……!」

 銃は、男の心臓部にその銃口を向けられた。頭を避けている辺り、脳が欲しいようだ。

 

 雲が晴れ、月明かりが廃家に差し込む。

 

 血にまみれた、不気味に笑う仮面を装着した異形の者の全貌が月明かりに写る。

「ああああああああああああああ!!!!????」

 男の断末魔と合わせるように、銃の乾いた音が空高く鳴り響いた。

 心臓を貫いた凶弾は男を即死へと導く。彼は恐怖の表情のまま倒れ、血を噴き出し動かなくなった。

 

 グシャリ。

 かけていた眼鏡は、異形の者に踏み潰された。




纏めて文章が消えると言う、恐怖の事態に遭遇いたしましたが私は戻って来ました。im be back!恐怖は乗り越えなくてはいけんね。
お騒がせして申し訳ありませんでした。以後、キチンと保存確認してから閉じるようにします。失礼しましたー。
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