東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】 作:ランタンポップス
もう分からなくなったもんで調べたら男口調は二次設定らしいっすね。
私のイメージとしては、やはり男勝りなんですが、口調は女性で行きます。うちの妹と一緒だぁ(泣)
乾いていた砂が降り行く雨水を含み、黒茶色の泥へと変化する。
ザクザクとした足音はいつの間にか、ベチャベチャと粘着質な音へとなっていた。
「わわわ!!降って来た降って来た!!」
「早く、早くったらぁけーね!!」
家まで競争をしていた二人は、先程よりとうとう本降りとなった雨の中、必死に走っている。
何とか慧音の家に到着した二人は玄関へと飛び込み、間断なく降り注ぐ雨風から逃げられた。
「ゼェ……ゼェ……はぁー、びちょ濡れは何とか免れたぁー……」
「ふぅぅぅ……もう、けーねったら遅いよ……私より早くスタートして、私より後ってどういう事?」
「…………う、運動不足だな……うん」
競争の結果、勝者は藤原妹紅であった。
奇妙な事だが、妹紅に十メートル弱のハンデを背負わせたはずの慧音が負けたのだ。
歳には勝てぬのだろうか、と言えば色々ややこしくなるので、この際何も言わない方が利口だろう。幻想郷では歳がどうとかは「言わぬが仏」の世界であるのだ。
「ひゃあー冷たいー……すまない妹紅、暖めてくれないか」
「私は暖房器具か!?嫌よ!濡れたのほんのちょっとじゃない、我慢なさい」
「いけずだなぁ……」
口を尖らせ、いじけた様子で靴を脱ぎ家に上がる。慧音に続き妹紅も「お邪魔します」と一言かけ、家に上がる。
「疲れたー」
妹紅は居間へと入るやすぐ、畳の上にドカッと座り込んだ。憂鬱を吹き飛ばす、まったりとしたくつろぎ様だ。
暫くして、慧音がお茶を淹れて持ってきてくれた。
「はい、お茶」
「おぉー、ありがとけーね」
机に置かれたお茶を手に取ると、余程喉が乾いていたのかグイーッと口に流し込んだ。
慧音も自分の分を淹れ、それを口に含みホッと一息入れる。
「そう言えば、何か話があるんじゃなかったのか?」
彼女にとって実家当然の慧音宅なので、気が緩んだのだろう。くつろぎ過ぎて完全に忘れていた妹紅は「あ」っと声をあげた。
「そーだったそーだった……実はね、けーね」
友人である彼女の話を聞き逃すまいと、両手を膝の上に置き、話に耳を傾ける。
大事な話かと思えば妹紅にとってはそうでないようで、噂話をするような感覚で話している。
「こないだ女の子を「永遠亭」へ道案内した帰りで因幡の兎から聞いたんだけどね、何でも薬泥棒に入られたらしいんだってさ」
それを聞いた慧音は驚きの声をあげる。あの永遠亭に泥棒と言う事だけで驚愕ものの事件だ。
「え、その話本当か?」
「ホントホント。「迷いの竹林」に入る人って少ないしさぁ、と言うか入ったとしても人が私の案内なしで永遠亭に辿り着けるのは殆ど無理だしね。あの兎、犯人は竹林に住む妖怪の誰かに決まっているって、永琳が決めつけて真っ先に疑われたって愚痴っててさ。いるんだねぇ、あそこの薬を盗む物好きが」
確かに永琳ら相手に盗みを働くとは、とんだ命知らずがいた物だ。バレれば「お仕置き(人体実験)」は免れないだろう。
そうではなく、何故わざわざ薬を盗んだのか?薬を使用したければ本人に頼めばいい。彼女なら比較的超安値で売ってくれるだろう。払えない場合でもずっと待ってくれる。
もしや、本人に頼んでも使わせてくれないような、危険な薬だったのか?いや、そんな物盗んでどうする。
「何の薬を盗まれた、かは聞いてないよな?」
妹紅の語り口で分かる通り、本人に話を聞いていないだろう。別の妖怪経由での噂話感覚で喋っているからだ。
結果は予想通り。
「んー……ゴメン、そこまでは分からないや。でも永琳が妖怪たち疑って捜索するほどってのは聞いたから結構ヤバイ物なんじゃないかなぁ?」
考えてみればそうだ。ただの風邪薬や傷薬程度なら永琳も「まぁいっか」と考えるだろう。
使っても、使わせても、広めたりしても駄目な代物なのだろうか。物騒な物を作るなぁ。
「永遠亭も大変だなぁ……こっちもこっちで大変なんだけどね」
「あ、もしかして今里を騒がしてる「人食い」でしょ?永遠亭に案内した人たちも噂してるよ」
既に里中の人間がその存在に恐れを抱いている。次は自分かもしれないと言う、明日の見えない恐怖が人里に渦巻いている。
市場には昼間なのに活気がない。精々元気なのは妖怪否定派の排他運動だ。
「そう、それなんだが……あ、妹紅、何か見たとかないか?」
彼女は首を振る。
「見てないなぁ。言っても、夜中は滅多に人里行かないからね。慧音も犯人探しに参加するの?」
「…………あぁ、自警団の人たちに協力するつもりだ」
脳裏に、団長の死体がよぎった。それは時間を逆行するように生前の彼へと至る。
疲れて、痩せて……でも信念を失わず、元々の仕事も自警団での活動も誇りを持って打ち込んでいた。
彼のそんな姿がよぎり、いたたまれない気持ちにさいなまれる。
「そっかそっか、慧音が参加したらみんな安心するよ。聞いたけど霊夢がここずっと留守らしいね。どこで何してんだか」
本当にどこへ行ってしまったかは疑問だが、彼女は意味もなく神社を留守にする人間ではないと分かっている。
幻想郷のどこかで起こった異変の解決に動いているのだろう。霊夢も霊夢なりに頑張っているに違いない。
「霊夢は大丈夫だろ。留守の時は大抵なにかの事件に動いているんだろうさ。それよりも私はこっちを終らさなくては!」
一度沈んでしまいそうだった気持ちを浮きあげらせた。犯人を捕らえる事が、殺された者たちへの鎮魂になるだろう。
里のみんなを守る為に、死んだ者の無念を晴らす為に、彼の意志を無駄にさせない為に彼女は立ち上がるのだ。
「おー、やる気満々だねぇ。それ、私も参加していいかな?」
「え?妹紅も?大丈夫なのか?」
「丁度、暇してるしさ。それに案内した女の子にも言われたんだ、「里を守って欲しい」ってね。正直里の真ん中で堂々人食いとは胸クソ悪いからさぁ」
これは心強い。妹紅が参入すれば自警団のみんなも喜ぶだろう。
見えざる敵に備えて、戦力を上げておく事も大事だ。駆け馬に鞭の勢いで自警団側の士気も上がるはず。
「ありがとう!いやぁ、良い友人を持った!もこたんが入ればもう最高だ!」
「もこたんは止めろ」
止まない雨の中、慧音の明るく楽し気な笑い声が聞こえて来る。
暫くすれば釣られてしまったのか、妹紅の笑い声も聞こえて来るのだった。
太陽は次第に沈んで行く。雨は止む気配を見せず、このままだと明日の明朝まで持ち越しだろうと予想される。
さて、ここは幻想郷の湖の畔に建つ紅い屋敷、「紅魔館」。
ここ最近、神社を空けていた博霊の巫女、「博霊 霊夢(はくれい れいむ)」はその屋敷にいた。仕事顔と言うのか、何かを探しているような凛々しい目で屋敷内を歩いている。
「……そこにいるのは誰?」
懐から取り出した札を、廊下の曲がり角に向けた。角からは蝋燭の火に照らされ伸びた、何者かの影が映っている。
「それを下ろしてちょうだい。安心して、私よ」
曲がり角から出てきた影の主は、やけにスカート丈の短いメイド服を着た女性であった。
その存在を確認した霊夢は、溜め息と一緒に札をまた懐に戻した。
「なんだ、あんただったの。何回別れても合流しちゃうわね……」
拍子抜けたような声で霊夢はぼやく。どうやら何度も何度も同じ事をし、同じ結果ばかり迎えているようだ。
段々滅入って来たのか、面倒臭そうな、疲れたような、そんな表情で辺りを見渡す。
「てかどうなってんのこの館?窓が少ないのは知ってるけど、ここまで全くない上にこんなに入り組んでいたかしら?」
「それは貴女よりこの館を知っている私が聞きたいわ。知らない道まであるし、お嬢様たちもいなくなったし……」
メイドは辺りをキョロキョロと見渡した。内装を見ているようだが、不気味な物でも見ているような目だ。
「……血塗れね、それも臓物混ざり。私の知る紅魔館はこんなグロテスクな雰囲気じゃないのだけど」
目を悪くしそうなほどに赤一色の壁だが、至るところにベットリと赤黒い血が付着している。
鼻を突くのは、血生臭さと腐った肉の臭い。歩く度に何かを踏みつけているようで、グチャリグチャリと柔い肉の潰れる音が足音となっている。
とてもではないが、こんな所に長くいたら気がどうかしてしまいそうだ。
「全く……私を呼び出したあんたのご主人どこよ?入り口から入ったら、気付けば終らない迷宮をさ迷っていたわ」
それも悪趣味な、を付け加えて気持ち悪そうに足をあげた。靴は血と肉で底がドス黒く変化していた。
その足を下ろすとまた聞こえる肉の潰れる音。耳に入る度に溜め息漏れる。
「あー……折角お気に入り履いて来たのに……ここから出たら弁償して貰うから」
「えぇ、無事に出してくれたら靴どころか食事にまでお誘いしてあげるわ。貴女は洋食派かしら?」
「何でもいいわよ、食べられたら……でもお肉は勘弁ね」
地面に落ちていた臓物を見つめながらそう呟いた。メイドも同感のようで「全く持って」と溜め息一つ。
どこまでも続く廊下を、蝋燭の火がぼんやり灯す廊下を、二人は歩いて行く。
背後に近寄る人影は、大きな斧を握っていた。
紅魔館で異常発生。なんか紅魔館がビーコン精神病院化しそうだべ。
展開に困ったら一つの手としてセバスチャン召喚も考えていますが、今の所そんな予定はありませんし、する気はありません。
彼もどっかで何らかの形で登場させたいですね。