東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】   作:ランタンポップス

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そろそろホーンテッドたちと対峙させっぞ!
と、言う事で今回はとうとう出会っちゃいます。


ホーンテッドの夜【Night of the Haunted】6

 夜になり人通りもなくなり、静まり返った人里は不気味に雨の降る音のみに包まれていた。

 少し外れには、薄汚れた「マネキン」がポツリ、里を見つめるようにして立っていた。無機質な目が、鈍く光っている。

 

 厚い雲が星々と月を隠し、月明かりを遮断させ里の暗闇は一層深くなる。

 夕方の前辺りに降りだした雨は、夕方からの本降りを迎えてからは更に強くなって行き、家々の屋根瓦や壁を叩き付けた。

 雨は本当に明日まで持ち越しのようだ。冬の手前で冷えた空気は更に冷えて行く。

 

 そんな中で雨晒しにあっているマネキンは、いきなり倒れて四肢を砕けさせた。

 マネキンの背後、倒したのは身の丈二メートルもある巨漢。雨の中かつ、冬へと向かって行くこの時期に汚れたタンクトップ一枚と言う格好をしている。

 しかし震える素振りも付着した雨水を拭おうとしない所から、彼は寒さを感じてはいないようだ。

 野蛮そうなうねり声をあげながら倒したマネキンの頭を踏み砕いた。

「ぐるぅるルル……」

 暗がりの中で微かに見えるその姿は非常に恐ろしい物。

 タンクトップには血がベットリ付着し、その人物自体も頭部より人間とは思えないほどに流血していた。それでもって攻撃を受けて弱った様子ではなく、しっかりとした足取りで里へと一歩、また一歩と近付いて行く。

「……グルぅぅぁァあ……」

 彼の背後よりいつの間にか現れた人影。その大男とは違い、身長はせいぜい165~175センチ程度の者たちが一、二、三人だけ。内の一人が持つ松明が彼らを照らし出した。

 全員身体中に深傷を負い、大男よりも更に酷く出血している。

 そして何よりも、身体に巻かれた「有刺鉄線」と生気の失せた目から溢れる青白い光が、彼ら全員の異常性を強くしている。

 

 その三人は大男を追い抜かし、それぞれが先に人里へ足を踏み入れた。

 残された大男はピタリと立ち止まったかと思えば、足元に落ちていた「大きな何か」を片手で豪快に持ち上げた。

 その「何か」を携え、大男はのっそりとした足で再び歩を進めたのだった。

 

 

 雨が降り注ぐ中、里はとうとう危険時間となった深夜を迎え、今夜見回りを行う自警団員たちにも緊張が走る。

 見えざる化け物を恐れ、里の住民は十時くらいになった時点でみな寝静まってしまった。

 夜遅くまで営業しているはずの居酒屋なども閉まっているほどだ。数件はまだ開いている所もあるが、まず客は来ないだろう、閉めた方が利口だ。

「えぇ、みんな!一度集合してくれ!」

 リーダーの男が手を叩き、十四人の自警団員たちは彼の方へと集まった。数名、小さな鐃を持っている。

 全員が提灯を片手に持ち、彼らの周囲はパァッと明るくなった。

 両手が塞がれないように、そして行動しやすいように雨を凌ぐのは頭に被った大きめの笠を使用する。

「みな、今夜は良く集まってくれた。感謝したい」

 大雨の中、全自警団員とは言わないものの、その内半数以上がこうして見回りに参加してくれた。

 彼らの決意の表れでもあるのだろう。

「これは住民の安全を守ると共に、無念の内に亡くなられた茂永団長の弔い合戦でもある!気を引き締め、心してかかってもらいたい!」

 団員の数名かは少し悲しげな表情となる。彼が亡くなったのは昨日の事なのだから仕方がない。

 しかし彼らにとっての団長の死は、乗り越えるべき悲劇であり、結束を強める鎖となっていた。

 悲しげな者はいるものの、誰一人として怯えを含んだ目をした者はいない。それは団長と言う存在の大きさを物語っている。

「今回も同様、二人一組となってそれぞれ指定した箇所を見回ってもらいたい。場所についてはこの後振り分ける。尚、今回は強力な助っ人に来てもらった」

 リーダーのすぐ隣に立っていたのは二人の女性、慧音と妹紅であった。二人とも、団員たちと同様の笠を被っている。

 二人の評判は良く知っている。彼女らがいるだけで安心感が出来たのか、団員たちの表情がフッと軽くなった。

 

「上白沢殿と……えーっと」

「……藤原妹紅。さっき教えたばっかだよ、おっちゃん」

「あ、すいません……そうそうそう。藤原殿だ」

 完全に妹紅の事をド忘れしていたリーダーに、拗ねたような口調で妹紅自身が名前を教えた。

「ハハハハハ!!」

「忘れちゃいけんでしょ、そこは!」

「おいおい、頼むぜリーダー!」

「妹紅さんも拗ねてはいけんよ!」

 その様子に場の空気は和んだ。慧音を含め、団員の間で茶化しや笑い声が聞こえて来た。

 さては彼、これを狙ってわざと忘れたフリをしたな?と思った慧音だったが、顔を赤くして慌てている様子から本当に忘れていたようだ。

「フフフ」

 それがおかしく思わず笑ってしまった。

 

「……ゴホン!え、えーと、気を取り直すぞ!」

 リーダーの反応を面白がりつつ、彼の一言で団員は再び表情を引き締めた。そこら辺のスイッチの切り替えが上手いなぁ、と感心させられる慧音。

「今回は今まで通り確保を主とし、敵が非常に残忍かつ凶暴であれば刀を取って戦闘。また、敵は外の世界の武器を使う可能性もある」

 外の世界の武器を使う、の所でざわつきが起きた。この事実にばかりは皆、不安なようだ。

 一応、どのような武器かは全員に説明をしていたが、それが不安をより助長させたらしい。

 団員のその様子を見たリーダーはやや食い気味に話を被せた。

「とにかく、妖怪相手なら勝てる見込みは薄いので逃げる事を優先させろ」

 そこまで説明すると、団員たちを安心させようと言葉を模索する。

「大丈夫だ皆。聞いた通り、我々の知る火縄銃よりも性能が良いだけだ。弾は一直線にしか飛ばないし、弾切れもある。距離を取り、落ち着いて見極めれば避けられる物だ。大丈夫、大丈夫だ!」

 

 その話をしている最中、つい団長の事を思い出してしまったようで、少し辛そうな顔になる。視線を下げてしまった。

 目を瞑り、一度深呼吸をし、気を落ち着かせた後に顔を上げた彼は元の表情へと戻っていた。目は凛として勇ましい。

「いいか!単独行動は禁止!常に二人組で行動する事!敵と遭遇した場合、真っ先に鐃を鳴らして知らせろ!確保も戦闘も人が集まってからだ!無謀と勇気は違うからな、誰一人として死ぬんじゃないぞ!」

 彼の話を聞いた団員たちは「おうッ!」と威勢の良く、とても頼りになるかけ声が聞こえた。皆に不安がる様子は見当たらない。

 その彼らの様子に安心したのか、リーダーは微笑みを見せている。

「では早速場所の指定と、団員の組み合わせを行う。敵は既に里へと侵入したかもしれないしな、早急にするぞ!」

 そう言うと彼は、懐から折り畳んでいた人里の地図を出し、雨に濡れないように小さめのサイズで一人一人に地図を見せ、場所の指定と説明をしている。

 鐃を持った人間と必ず組ませるように二人組を作らせ、地図を使って北へ南へと人員の配置を行った。

 偶数だったので、ちょうど十四人全員をキチンと二人組として組ませられた。残ったリーダーは慧音たちと共に行動する事となる。

 

 担当箇所は、団長が殺された廃墟の辺り。人が全くおらず、一番危険な場所であるのだが、だからこそ人ならざる力を持つ慧音と妹紅が担当する。これは、慧音本人の意見から決定した。

「なら、自分も同伴致します。あの辺りはこれまでも見回りで何度も行った場所で、廃墟の位置から裏道まで良く知っております」

 こうして、リーダーと慧音と妹紅は廃墟周辺を担当する事になったのだ。

 担当箇所と組み合わせが決まったなら見回りの開始だ。緊張感を纏いながら慧音たち含めて団員たちが四方八方へと分かれていった。

 人里を守る戦いが始まったのである。

 

 

 さて、皆と分かれてから既に三十分程度。慧音たちは廃墟周辺へとやって来た。大きな屋敷を囲うように広がった廃墟地帯である。

 

 昔はとある大商人の屋敷であったのだが、ほどなくして商人は破産。

 全てを失った彼は妻と息子と娘、更には老いた母を全員殺害。その後、自身も首を吊り自殺。一家心中を起こしたのだ。

 その後、「屋敷の周辺には彼と、彼の家族の怨念がさ迷っており、夜な夜な生者を呪う」と言う噂が流れ、一人、また一人とそこを離れて行ったのだ。もう何十年も前の話だ。

 長い年月の後、住む者はいつの間にかいなくなり、残った家々は雨風に晒され廃墟と化した。それが、この辺りのルーツである。

「夜中に何度も足を運んでおりますが、幽霊は見た事ありません。それどころか誰も来ないと言う点でワルガキやチンピラ共の溜まり場と化していました。何度か殺人者や泥棒が隠れていたのも発見しましたし、何か起こればここを最優先に見回る事にしとるんです」

 彼がこの場所の説明をする。

 勿論、彼よりも遥かに長い年月を生きて来た慧音と妹紅はその事件を知ってはいたのだが、現在そんな事になっていたとは知らなかったのだ。

「へぇー……気味悪いとは聞いていたが、まさかそんな実態があるとはねぇ……いやはや初耳」

 感心したように妹紅が呟いた。そうは言いつつも昔、来た事があるのか、懐かしそうな表情で辺りを見ている。

 

 家は全て苔が生え、壁が腐り、屋敷には大穴が開いている。

 人の気配は全く感じられず、暗闇と雨の音だけが場を支配しているようだ。唯一の光源はリーダーの持つ提灯の灯りのみ。

「最近もやはり、人は溜まっているのですか?」

 慧音の問いに、彼は首を横に振りながら否定した。

「いや、奴らも学習したようで最近は見なくなりました。自惚れてる訳ではないのですが、我々の活動の賜物でもありますな。それに、この騒動で他所でも溜まっているのは見なくなりました。ワルとはいえ、誰しも自分の命は惜しい物なんです」

 やや苦笑いになり、自嘲気味に話している。

「命は惜しい物」の所で、人間である自分と彼らを投影したのだろうか。ここでの説明は少しだけ言いにくそうな感じだ。

「……おっちゃんまでも気に病む事じゃないのよ。命は大事だ」

 そう言う彼女も、どこか寂し気な雰囲気だ。自分が言える立場ではないと思っている。

「えぇ、気丈に振る舞っていましたが、結局は私も怖いんです」

 彼は微笑んでみせた物の、どこか疲れ切ったように見える。目は口ほど物を言うの言葉通り、彼の目には微かな怯えが見えていた。

 

「……亡くなられたのはここ、でしたね」

 前方に半壊して、家の中がほとんど丸見えな廃家を発見。団長の死体は、この家で発見された。

「団長は幽霊の仕業と見ていました。ですので、可能性の一つとして怨念の噂のあるここを重点的に見回りをしておりましてね……」

「……だからこの場所で亡くなられていたのですね」

「はい。団員も気味悪がる所でして、団長が一人でも見回りしとったんです……あ、少しだけ持っていてもらっていいですか?」

 廃家に近付くと彼は持っていた鐃と提灯を慧音に一旦預け、合掌をし、ここで殺された団長に黙祷を捧げた。

 十秒ほどの沈黙が辺りを包む。

 

 黙祷の終えた彼は「すみません」と一言入れて提灯と鐃を慧音から返してもらった。

「団長がいなくなったと聞いて、まさかと思いここを探し回った時に見つけて……本当、殺されたとは言え、朽ちる前に弔えて良かったですよ」

 二人に顔を向けた彼の表情は、安心感とどこか清々しさがあった。

 妹紅は廃家を見つめながら、口を開いた。

「良い仲間たちに恵まれて、弔ってもらって……彼も安心しているだろうね」

「えぇ……彼は幸せ者です」

 決意を更に固め、さぁ、気合いを入れ直そうとリーダーは自分の頬をパシパシと叩いた。怯えは全くなくなり、最初のような凛とした目に戻っていた。

「では、見回りを再開しましょう!団長は見守ってくれています!犯人を見つけ出しますよー!」

 笠に付着した雫を一度払い落とし、意気揚々とした様子で二人の先頭を行く。

 そんな彼を勇ましく、頼りがいのあるように感じ、慧音は彼の背中に向かって微笑んだ。

「ハハハ!張り切るのはいいですが、ちょっと早いですよ。待って下さい!」

 彼の背中を追うように、慧音と妹紅も再び歩き出した。

 

 その時だった。

「……!!」

 妹紅が何かの殺気と気配を察し、前方を行くリーダーと慧音に警告した。

「けーね!おっちゃん!この近くに誰か……」

 バァン。

 

 雨の音を掻き消す鈍い銃声と共に、前を歩いていた彼、リーダーの体が泥の地面に崩れた。

 血を噴き、彼はそのまま動かなくなってしまった。

「……え?」

 その瞬間、困惑する慧音からは一瞬だけ彼の顔が見えていた。生気の失せた、光のない目をしていた。

 そのまま彼は倒れた。提灯が雨に触れ、光が消えた。

「おっちゃん!?……チィッ!誰だ!?何処からだッ!?」

 妹紅の右手が突然発火し出した。これは彼女が後天的に会得した術の一つだ。火の光は辺りをパッと照らす。

 笠を投げ捨て、明るくなった辺りを妹紅は必死に見渡した。

 

 そして見つけた。廃家の屋根に立つ、一人の人影を。

「そこか!!」

 場を照らす役割を果たしていた腕の炎は、その人影に向けられたかと思うとなんと、腕から炎だけが飛び立つように離れた。

 飛んで行く炎は、首のない鳥のような形になり、人影へと向かって行く。

「…………」

 人影は、屋根から飛び降りる事により、その炎の弾を避けた。

 しかし、この行為は妹紅の前に姿を現した事になる。そいつにとったら不利な行動だ。

「逃げずに降りて来たのは褒めてあげるわ。何者だ!」

 再び右手から炎を出した。今度は強めの炎で、辺りがさっきよりも眩しく、一気に明るくなった。暗がりで敵を見失わないようにだ。

 人影はその光を浴び、その全貌を彼女らの前に晒す。

 

「いっ……!?」

 妹紅から驚きの声があがった。長く生きて来た彼女でさえも全く見た事のない存在が、立っていたのだ。

 

「グゥゥ………アァ……」

 苦しそうなうめき声を出すそいつは、血だらけの服に傷だらけに……体格からして男性だろう。

 それよりも目に行くのは身体中に巻かれた有刺鉄線と、顔にはめた、まるでこの状況を楽しんでいるように笑っている不気味な面。

 何もかもが異常な、それこそ妹紅でさえ戦慄するほどの「狂気の存在」が目の前にいる。得体の知れない何かがそこに立っている。

 

 ホーンテッド(亡霊)の夜が、また今夜も始まった。




最低自分は三千文字は書くようにしていやす。
今回はなんと五千文字。ほとんどの方は大した事ない文字数かと思いますが、小説初心者のあっしにとっちゃとんでもねぇ数ぜよ。
次回、妹紅VSホーンテッド!
そして皆のトラウマ、あいつも登場か?ゆっくりしている場合じゃあねぇ!
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