東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】 作:ランタンポップス
リアルが忙しくて、だいぶネットにすら触れていなかったもんでして(笑)
まぁまぁ、第8話、どーぞー
枯れかけの一本松と、道の奥まで続くボロボロに朽ちた屋敷の外壁。
月明かり差し込まない雨降る夜道は、何かが化けて現れるかと思うほどに不気味だ。
するといきなり、バッと辺りが明るく照らされた。一本松の下から柱のように火が吹き上がる。
「もう穴から出ていたか……すばしっこい奴め!」
穴から顔を出したのは、仮面の男を追っていた妹紅であった。
火の熱に当てられチリチリ燃える松の下に、一つの穴が出てきた。砂の下に埋まっていたために、妹紅が穴の中より火を噴出させなければ、見つからなかっただろう。
「結構、長かったなぁ……さて、奴はどこだ?」
火を使って暗闇を払い、辺りを隅々まで凝視する。怪しい物があれば即焼却するつもりだ。躊躇しない。
あの仮面の男は外の世界の銃を扱う。銃が珍しいとは言え、自分に敵わない物ではない。
だが、用心しなければ。奴には気味の悪い「何か」を感じた。
奴が何をしでかすか分からない以上、無闇やたらに突っ込むのは良くない事だ。
「……まさか逃げたなんて言わないよね?」
屋根の上、木々の隙間、外壁の角……敵を見つけ出してやろうと、あちらこちらに注意を飛ばす。
数々の修羅場を潜り抜けて来た彼女だ。殺気を感覚で察知する事も可能な上、威嚇と牽制の為に殺気をぶつける事も出来る。
殺気をぶつける事に関しては、あの仮面の男には効き目がなかったのだが。
「何も感じない……むぅ……」
彼女は勘の鋭い女性だ。尚且つ、掴めば決して離さないような性格である。
しかし今、敵の存在を全く感じられないのだ。自分の感覚に絶対的な自信を持っている為、何も感じない事は、この場に敵がいない事を意味している事にもなる。
「啖呵切った癖に、やたら逃げ腰な奴ね……」
見当たらないとはいえ、捜索を止める気は更々ない。敵は、人間を何人も殺している殺人者。しかも自分の目の前で堂々と人を殺した。償いは、死んで詫びさせるつもりだ。
人間への情が強い彼女だからこそ、復讐の思いは強い。
「…………」
目を閉じ、炎を消し、第六感を更に強める。
すっと広がった夜闇の中、雨音の支配する闇夜の世界に耳を傾け、意識を集中させた。
空気の揺れさえ肌で感じるほどに、静かな集中で辺りに探りをかける。
「そこかッ!」
殆ど「何となく」の感覚だった。「何となく」そこに何かがいるな、と思ったまでだ。
妹紅の放った火弾は、猛スピードで外壁を這うように直進し、角まで来ると急速に曲がって見えなくなった。まるで弾自身に意識のあるような動き方だ。
沈黙の時間など数秒もなかった。火弾が何かに直撃した衝撃音が、夜空に響いた。
次に耳に入ったのは、甲高い悲鳴であった。
「ァアッ!アアアアアアアア!!!!」
角から飛び出して来たのは、火だるまの人間……いや、人間ではなかった。異形の化け物は静寂を引き裂く断末魔をあげる。
「よし!当たった!!」
雨音の隙間から、仮面の男が出していた「不気味なうめき声」が聞こえたような気がしたのだ。ただそれだけの、「気のせいか」と思える要因だけで攻撃を仕掛けてみたのだった。
結果は成功。燃え盛っているとはいえ、仮面を被っているのが見て取れる。彼女の勘の良さが光る。
「……ん?」
しかし、妙だ。
炎上し、もがき苦しむ敵に対して妹紅は違和感を抱く。
「ウァア!!アアアアアア!!!!」
聞こえてくる悲鳴がやたら「甲高い」。それに、膝下がヒラヒラとしている。「スカート」を着衣しているようなのだ。
「お、女!?仲間がいたのか!?」
確か追っていた敵は、体格からしてガッシリしており、明らかに「男性」であった。
「やられた!」と思い、すぐさま再び辺りを警戒すれば……
「いッ!?」
外壁上より、殺気と人の気配がする。
バッと向き直り、同時に発火させた右腕をかざす。その標準の先には、「仮面の男」が立っていた。
「コイツじゃない!!どこだ!?」
がなるような声をあげながら火弾を放ち、敵は避ける間もなく正面から受け炎上し、屋根の下へ悲鳴と共に落ちて行く。
だが、今の仮面の男は「肥満体型」。追っている男は痩せ細った、やや貧弱な体型をしていたのを記憶している。
「どうなってるのよコレは……!」
見たことのない化け物達が、ここまでに三人確認。事件の犯人かと思われるが、姿にしろ、読めない思考にしろ、非常に不気味だ。
「待ち伏せされたかしら……」
いつ、どこから襲われるか分からない。最大の注意を払い、敵の捜索を行う。
分かったのは、敵は一人ではない事だ。数人の仲間を作っていたようだ。単独犯と思われている今、この事実は伝えなければならない。
(まぁ、全て燃やしてやるけどね)
再び腕から炎を出現させ、辺りの暗がりを払う。
彼女は里の為、復讐の為に来たのだ。負けず嫌いな性格も相まって見逃すつもりは全くない。瞳の奥で燃え上がる炎は、自身の炎の反射からなのだろうか。
「うわ!?」
その時突然、後ろから何者かに組み着かれた。敵は妹紅の首を思いっきり絞めると、右へ左へと激しく振られる。
(う、後ろを取られた!?)
組み着かれた事による動揺と並列し、自身の六感を潜り抜け、後ろに立たれた事によるショックが彼女の体を巡る。
どうやって後ろへ移動出来た?その疑問が浮かび上がるのだが、一先ずこの状況をひっくり返さなければ。
動揺したとは言え、ひっくり返す事自体は彼女にとって簡単な事であった。
「ウラァッ!!」
彼女を囲うように炎が発生する。発生した炎は竜巻の如く、妹紅の周りを急速旋回し、温度をグングン上昇させて行く。
「ギィィッ!?」
こんな事をされれば堪った物ではない。
優勢に立っていたハズの敵は、自身を焦がす炎の熱量に耐え切れず、首を掴んでいた両手を自ら離し、妹紅から逃げるようにして離れる。
「アアアアア!?ギィアァァァァァァァァ!!!!」
しかし、離れたからといって衣類や体に燃え移った火が消える訳がない。
派手な悲鳴と共に、苦しみから無闇やたらに暴れて暴れる。腕を振り回し、縦横無尽に走り回り、本人としては意図していないようだが、妹紅に向かって突撃した。
「フンッ!」
容赦なく燃え盛る敵を、思いっきり蹴り飛ばす。
「ウギィッ!?」
高い悲鳴をあげつつ、蹴飛ばされた敵は被っている仮面もろとも灰となり、崩れながら闇夜に消えた。
異常なほどの燃焼の良さに少し戸惑うものの、敵は何とか撃退出来た。自身の能力の前では、奴らは無力なのだ。
「もう灰になった……良く燃える奴だったけど、近付いたのが敗因ね。火を出せるのは腕部だけじゃないの」
得意気に、含み笑いしながら彼女は呟いた。
しかしそうは言うものの、後ろを取られたのは腑に落ちない。気配も感じなかったし、降って来たようにいきなり現れた。
思えば屋根の上にいた銃持ちと肥満体の敵もそうだ。殺気と気配がフッと現れたのだ。姿よりも、そちらの方が非常に気味が悪い。
「気配を自在に操れるのかしら?……どちらにせよ、用心しなくてはならない敵ね、注意しなきゃ」
まだ敵について謎が多すぎる。それに、ここまで今回の事件の犯人と張り合ったのは、恐らく自分が始めてだろう、ら報告しなければならない事が多い。
だが、まだ彼女の「復讐」は終わっていない。
「報告したいのは山々だけど、おっちゃん撃った奴はまだ倒してないんだよねぇ……」
ついさっき燃やした敵は、良くは確認していないのだが、銃持ちの仮面の男ではない。
根拠は、「手を使って攻撃」した事である。銃を持っているなら、わざわざ近付いて首を絞めるなんて事はしなくても良い。気付かれずに後ろを取れたのなら、尚更撃った方が確実だっただろう。
それをしないと言うのなら、弾切れだったのか、無くしてしまったのか、咄嗟の行動で忘れていたのか、だ。
何にせよ、その理由が分からなければここを離れない。警戒を解くのはまだまだ先である。
「…………」
ふと、いきなり黙り込んだかと思いきや、感心したような声を出す。
「…………ふーん……」
ゆっくりと、這い出て来るような殺気が、背後よりユラリと出現したのを妹紅は感じ取った。
妹紅の背後に立ったとは言え、アクションがまるでない。どうやら、彼女が気付くのを待っているかのようであった。
「何だ、あんたは意外と男気あんじゃん」
彼女はクルリ、と振り返った。
背後に立っていたのは、銃を片手にフラリフラリと揺れている「仮面の男」。団長らを撃ち殺し、妹紅が追っていた殺人者、その本人であった。
「その銃で、私と戦う気?学習してんでしょ?」
仮面の男は、臆する事なく銃口を妹紅の頭部目掛けて構えたら、引き金に指をかけた。
装着している不気味な仮面のせいで表情などは伺えないが、その裏は至って冷静なのだろう。行動がソレを証明している。
「グルルゥ…………」
「無抵抗だとしても、私はあんたを燃やすつもりだから。命乞いはなしよ」
右手が発火する。火弾発射の準備は万端だ、いつでも撃てる。
銃弾がたとえ直撃したって、自分には殆んど効かない。どうせなら、相手に合わせて撃ってやろうと考えた。屈辱を味わらせたいのだ。
しかし一度経験しただろう、効かない事は。何か策でも付けて来たのだろうか?用心はしておこう。
「撃たないのなら、先に撃つよ」
敵の焦燥感を煽り、それに乗ったのか偶然かは分からないが、仮面の男はとうとう引き金を引いた。
鈍い銃声がうち鳴らされ、鉛が銃口から高速で飛び出した。真っ直ぐソレは、妹紅の額目掛けて伸びて行く。
それを彼女は、術を使わずに銃弾を避けた。首を傾げるようにして、軽い避け方であった。
「真っ直ぐにしか飛ばない物をずっと馬鹿みたいに構えていたら、弾道ぐらい余裕で予想出来るわよ?」
銃弾を外した仮面の男は、後退りしながら大慌てで銃弾をリロードし始めた。どうやら弾が切れたようだ。
もう間に合わないと言うのに、必死だ。
「残念だったねぇ!ほら、灰になりやがれ!!」
隙の出来た仮面の男に向けて、右手を構える。
標準は仮面の男に合わせ、右手の熱量が一瞬の内に跳ね上がる。プロミネンスを彷彿とさせる火柱が立ち上るのをほぼ合図に、火弾は解き放たれた。
彼女は、仮面の男と逆の方を向いている。
「ギィィィィイイアァァァアアア!!??」
妹紅のすぐ背後に、別の敵が迫っていたのだ。片手に包丁を握って、殺意を撒き散らしながら。
「気配を消せるのは厄介だけど、一瞬だけ私が速かったわね!あの銃持ち、弾の入れ替えがやたら演技臭かったからまさかとは思ったけど」
彼女に攻撃を加えようと迫っていた方の敵は、見事なまでに炎上する。頭を抱え、耳が痛くなるほどの悲鳴を響かせる。直に死ぬだろう。
悶え苦しむ一方をそのままに、彼女は仮面の男に向き直った。銃のリロードは完了したようで、再び銃口を向けていた。
「ちょっとは他より利口かと思ったけど……諦める事ね。黙って燃やされろ」
銃口を向ける仮面の男と同じく、妹紅も発火させた右手を、再び向けた。今度はお遊び無しで、準備が出来次第、奴目掛けて火弾を放つつもりだ。
躊躇はしないし、罪悪感もない。当然の報い、いや、地獄の業火と比べたら全然生温い。
負の念を込めつつ、良い具合に熱を上げた腕より灼熱の火弾が、
「アアアアアアアアアアア!!!!」
……放たれはしなかった。
「えっ!?なぁぁっ!?」
なんとついさっき火弾をぶつけた敵が、燃えながらにして彼女に襲いかかってきたのだ。
咄嗟の出来事で意表を突かれ、背後から組まれ、妹紅は拘束された。相手を焦がす炎は、自身にも燃え移る。攻撃は一時中断された。
「ぐぅっ……!コイツ……!!」
すぐさま自分の真横にある敵の顔面を、炎も気にせず裏拳を叩き込んだ。仮面を割られながら、後ろにぶっ倒れる。その衝撃で、既に炭化していた体はボロボロに砕けた。
「ガァァァア!!」
すぐに前方へ視線を戻すが、仮面の男は銃で狙撃を行わず、妹紅の目の前へと一気に距離を縮めていたのだ。
「なっ……!?」
予想外の行動から咄嗟の攻撃が出来ず、燃えたまま腕を交差し、防御態勢を取る。しかし仮面の男の手は燃える事を全く躊躇せず、彼女の腕と腕の隙間を抜け、
「ウァ!?」
頭の後ろにまで手を突っ込ませると、後頭部に「針のような物」を思いっきり刺したのだった。
妹紅へ何かを刺した仮面の男は、難題を成し遂げたように脱力し、燃え移った炎を体に受け地面へと倒れた。そのまま灰となって消える。
「あぁ……うあぁあ!?」
何かを刺し込まれた彼女は、それを引き抜こうとせずに頭を抱え、地面にひれ伏した。刺された箇所から、脳全体へ侵食するように酷い頭痛が発生する。吐き気さえも催された。
「がっ……ウグゥ……アアアァ……!!」
まるで、脳に無数の針を食い込まされたような痛みだ。脳自体に痛みを感じる神経はないのだが、それほどまでの痛みなのだ。
現在、自分を焼く炎の火傷も忘れるほどに痛い。
「ぐぅ……いぁ……」
意識がなくなって行く。刺された針に、意識を吸いとられて行くようだ。
薄れる視界の中、彼女は親友の名前を口にする。
「けぇ……ね……」
最後に感じたのは、体中に伝わる冷たい感触と、服が濡れた感触。誰かが水をかけ、彼女を焼く火を消したのだろうか。
敵なのか、味方なのか……確認する前に、妹紅は意識を手離した。
また出る出る詐欺じゃないか(憤怒)
じ、次回こそ絶対出しますから。嘘ついたら飛んでやる