邪悪なるモブ〜自分が学園RPGゲームのモブだと自覚していない転生者の残虐行為による原作破壊〜 作:とらとろ
ルアナの転生した学園RPGゲームの舞台であるゼルナヴァ学院は、よくある学園ファンタジーのように、成績を基準としたクラス分けを行っている。
成績が上位の者から、Sクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラスと分けられ、ゲームの主人公はDクラスに配属されることになる。
各クラスの人数は二十五人で統一されており、3年間クラスメイトが変わったりすることは、通常の場合あり得ない。
ゼルナヴァ学院にはポイント制度というものがあり、各クラスに得点がつけられている。
そのポイントは学内での成績によって変動し、下位のクラスのポイントが上位のクラスのポイントを上回れば、クラスが入れ替わることになる。
上位のクラスに上がれば上がるほど、学内で優遇されたサービスが受けれるようになるし、将来的にもさまざまなメリットがある。
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僕とゼルが自クラスであるSクラスに足を踏み入れると、1年前からまったく顔ぶれの変わっていないと思われるクラスメイトたちがこちらに顔を向けてきた。
残念ながらクラスメイトの顔はあんまり覚えていないので、絶対にそうだとは言い切れないのだ。
まぁ余程のことがないと、クラスメイトがいなくなったり変わったりすることはないから、顔ぶれは変わっていないだろう。
「やぁみんな、2週間ぶりだね。元気にしていたかい?」
にこやかな表情を浮かべて、陽気にクラスメイトたちにそう問うのは、僕の隣に立っているゼルツェルトだ。
ゼルはコミュ力が高く見た目もいいので、基本的に誰とでも仲良くなれる。
ゼルの実家であるファルドルコス家は国内有数の大貴族であり、周辺諸国でも有名になるほどの武人を輩出している家だ。
ゆえにその将来性は半端なく、女子生徒からの告白はすごく多いらしい。
興味が湧かないから、直接聞いたことはないので真偽は不明だが。
「よう、春休みでだいぶ仕上げてきたみてぇだな…ゼルツェルト。お前も予選には出るんだろ?どれだけ強くなってるか楽しみにしてるぜ。」
友好的な態度でそう話しかけてきたのは、身長が180センチを超えていそうな筋骨隆々の大男であった。
一応言っておくと、名前は知らないけど何度か話したことはある。
「あぁ、その予定さ。クシュルフも予選に出るのかい?」
「俺も…というか、うちの学年のほとんどは予選に出るぞ。第二学年で予選に出場しないヤツは片手で数えられるほどだな。そんでその一人がお前の横のルアナってわけだが……まぁこいつに関してはそこまで問題でもないか。」
この筋肉男はクシュルフっていうらしい。
必要ないとは思うけど、一応頭の片隅に置いておこう。
というかゼルの言ってた武闘大会とやらは、ほんとに大きなイベントなんだね。
そう考えると、どうして僕の耳に入ってこなかったのか不思議でしかないよ……まぁ興味が持てなかったからだと思うけど。
「そういえばルアナ。昨日、食堂でザーツェルム公爵家の次男坊とその取り巻きを奇声を発しながら、笑顔で殺そうとしたって聞いたんだけど…それってほんと?」
「あぁ……そういえばそんなこともあったね。一応訂正しとくけど、奇声は発してないよ。それに最終的には風紀委員に邪魔されて、殺せなかったし。」
そういえばあの雷娘はどのクラスなんだろう?
アレだけの強さを持ってれば、Aクラスにはいると思うんだけど…。
とりあえずゼルに聞いてみようかな。
ゼルの人脈は広いから、それを頼りに探していけばすぐに見つかるでしょ。
「ゼル、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ……この学年に黒髪の水属性氷系統と火属性雷系統が使える風紀委員の女子生徒っていない?昨日殺り合ったんだけど、ちょっと興味が湧いたんだ。だから名前を知りたくて…心当たりはあるかな?」
「あー…うーんとさ、ルアナ。それ、本気で言ってる?ほんとにわかんないの?」
ゼルはほんの少しだけ困惑の表情を浮かべてそう言った。
いや…それだけじゃなく、だんだん顔が青くなってる気もする。
ゼルの視線が向けられている先は僕ではなく、その左斜め後ろだ。
そこに一体何がいるというのだろうか?
そう思ってゼルの視線の向けられているほうを見て……僕は固まった。
視線の先にいたのは、つい最近見たことのある黒髪碧眼の女子生徒……つまりは昨日、食堂で戦った風紀委員の女子である。
うーん…やっちゃったね。
でも安心してほしい!!
僕は常識があるタイプの人間だから、こういうのがダメだってことは普通にわかってる。
この状況で僕がやるべきことはただ一つ……素直に謝ることだけだ。
「ごめんね……興味のないものを覚えるのは苦手なんだ。だからさ、今回のことは水に流してくれないかな?そしてこれから友好的な関係を築いていこうじゃないか。」
僕の未来をしっかりと見据えた発言に女子生徒は感動したのか、拳を握りしめていたプルプルと震わせている。
そして大きく息を吸い込んで、にっこりと笑みを浮かべ……僕に向けて、中指を突き立てた。
「お断りです!!このっ……バカルアナ!!」
発言だけを見ればツンデレだと取れなくもないが、中指を突き立てられているので、可愛らしさが皆無になってしまっている。
というかなぜ彼女は怒っているのだろうか?
興味のないものを覚えるのは苦手なのだからしょうがないではないか。
「人の心ほど読み取るのが難しいモノはないね。そうは思わないかな…ゼル。」
僕は視線をゼルに戻して、そう問う。
が、返ってきたのはゼルとクシュルフとやらの呆れたような視線であった。
「今のは完全にルアナが悪いね。さすがにその鈍感さは治したほうがいいと思うよ?まぁ言って治るようなものじゃないけどさ。」
どうやら百パーセント僕が悪いみたいだ。
しかし…鈍感、鈍感ねぇ。
まさかハーレム築いてるラブコメ主人公みたいなことを言われるとは思わなかったよ。
「ハハッ…まぁ善処させてもらうよ。」
そう言って、僕は自身に与えられた席に座る。
結局女子生徒の名前を知ることはできず、それどころか印象がすごく悪くなってしまった。
すごい剣幕で僕のほうを睨んできてるから、これで印象が良くなったとは言えないだろう。
まっ、僕が気にするほどのことじゃない。
実害が出てきたのならそれ相応の対処をするけど、睨まれた程度で怒るほど僕の器は小さくないんだ。
それから数分も時間をかけることなく、去年と変わらない担任教師が教室に入ってくる。