邪悪なるモブ〜自分が学園RPGゲームのモブだと自覚していない転生者の残虐行為による原作破壊〜   作:タワマン太郎

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第六話 先生isアングリー

「思ったよりも早かったね、ルアナ。君のことだから、提案を受け入れるのにもう少しゴネると思ってたよ。」

 

 

 

一限目は実技授業であったため、さっさと着替えて授業場所である訓練場の入り口に行くと、いつも通りのにこやかな笑みを浮かべたゼルが僕を待ち受けていた。

 

 

 

「やっぱりゼルは知ってたんだ…僕がチーム戦の代表に選ばれるってことを。」

 

 

 

「いや…知ってたというか、なんとなく予想がついてたって感じかな。俺たちの学年で一番強いのはルアナだから、最初にお誘いの言葉がかけられるのはルアナだろうな〜って思ってたんだけど……予想は当たってたみたいだね。」

 

 

 

ゼルが僕に対してチーム戦の誘いが来るであろうことを黙っていたのは、おそらくだがそうしないと僕がなんらかの対策を講じて、それを逃れると思ったからだろう。

 

なかなかにひどい評価だけど、もし先に知っていたら実際そうしてたと思うので、反論しようという気力は湧かない。

 

それに勝てば大金貨三十枚なので、最終的には僕にとっては美味しい話になってくれた。

 

 

 

だから今回は文句を言うのはよしておこう。

 

そんなことより、どうしてゼルたちは訓練場の中に入らないのだろうか?

 

そんな僕の内心を察してか、ゼルは困ったような表情で説明をしてくれる。

 

 

 

「俺たちと同じ時間に、一年生のCクラスとDクラスも同じ訓練場で授業をするらしいんだけど……そのCクラスとDクラスが訓練場の中で揉めちゃっててさ。」

 

 

 

あぁ…なるほど、合点がいった。

 

まぁクラス間での争いはよくあることだし、その格差に納得できない入学したばかりのころは、顔を合わせたら即喧嘩なんてことが日常茶飯事だからね。

 

僕は入学してからずっとクラスがSクラスだったから、下のクラスがどれだけひどいのかは分かんないけど、クラス間の格差によって殴り合いの喧嘩が起きるのがどれだけヤバいことなのかはよく分かる。

 

見せしめの意味もあるんだろうけど、ちょっとはそこらへんを改善してもいいと個人的には思う。

 

 

 

「それで喧嘩に巻き込まれたりするのが嫌だし、めんどくさいから訓練場の入り口にいるっていうわけだよ…。それに、そろそろ授業も始まるからリリー先生たちが来るし、そしたら一年生たちも喧嘩をやめると俺たちは考えてるわけさ。ほら、噂をすればなんとやらだよ。」

 

 

 

ゼルの目が向けられている方に、僕も目を向ける。

 

そこにいたのは、先ほどまで僕と同じように学院長室にいたリリー先生ともう二人の教師であった。

 

リリー先生たちは訓練場の入り口で待機している僕たちの姿を見てから、小走りでこちらに近づいてきて何があったのかを聞いてくる。

 

訓練場内部の状況をゼルが説明すると、あからさまに安堵の表情を浮かべた。

 

 

 

「そういえば、今日はCクラスとDクラスの能力測定の日だったか。こういうことが起きるのは予想していたが、上級生に迷惑をかけるのはいただけないな。まぁいい…とりあえず訓練場に入るぞ。でないと授業が一向に始められない。」

 

 

 

そう言って、リリー先生は一年生たちが争いを繰り広げているであろう訓練場内部に入るために、扉の取っ手へと手をかける。

 

勢いよく開かれた扉、隠されていた扉の向こう側に見えたのは……殴り合いをしている一年男子たちの姿であった。

 

 

 

「おいおい……アイツラ、終わったな。」

 

 

 

いつの間にか、僕の近くに移動していたクシュルフくんがそんなつぶやきを漏らす。

 

彼以外の数人のクラスメイトたちも呆れるようにため息をついており、僕も表情には出していないが内心では呆れていた。

 

そしてこれから起こるであろう惨劇がどんなものになるのかを、頭の中で想像し始める…別の言い方を探すとするなら、現実逃避が最も適しているだろうね。

 

 

 

一年生たちは殴り合いに熱中し過ぎており、先生たちが入ってきたことに気づかない。

 

それどころか、生身での喧嘩から魔術を使ったやばめの戦闘を始めようとしている。

 

しかし僕らの注目は一年生たちの喧嘩よりも、リリー先生の後ろ姿に注がれていた。

 

 

 

リリー先生は腕を組んで沈黙を貫いているが、残念ながら内側で蠢いているであろう憤怒の感情は抑えられていない。

 

僕たちはリリー先生の後方にいるのでどんな表情をしているのかが全く分からないが、穏やかな表情をしていないことだけは分かる。

 

だって穏やかな表情を浮かべてる人は、肉体から鬼を連想させるような圧力を放出しないでしょ?

 

 

 

トントンとリリー先生が靴で、地面を何度か叩く。

 

その行動を見た瞬間、僕とクラスメイトたちは一秒も時間をかけずに、身体にまんべんなく魔力を纏わせた。

 

 

 

いきなり、身体全体に重りがくっついたかのような感覚が僕のことを襲ってくる。

 

僕たちは身体に魔力を纏って、肉体を強化しているのでそこまで影響は大きくなかったけど、魔力を纏っていなかった一年生たちは地面に身体をめり込ませていた。

 

一年生たちは自分たちが地面に倒れ伏していることに気づくと表情を驚愕の色に染めて、起き上がろうとしたらさらにそこからまったく動けないことに困惑する。

 

 

 

「リリー先生は相変わらずえげつない出力をしているね。純粋な魔力の圧で相手を地面にめり込ませるなんて……いつも思うけど、俺にはあんなことはできそうにないよ。」

 

 

 

魔力を身体に纏わせて、僕たちと同じようにリリー先生の放つ圧力に抵抗しているゼルが小声でそんなことをつぶやく。

 

ゼルの言葉には同意の気持ちしか浮かんでこない。

 

僕が魔力の圧を放ったところで、せいぜい膝をつかせるのが限界だ。

 

まぁ昨日の風紀委員との戦いみたいに相手に恐怖の感情とかを刻んでいたら、失神させることはできると思うよ。

 

とにかくだ…リリー先生は全力を出さずに、生徒たちを地面にひれ伏させている。

 

これが常識的に考えて、おかしくないことなはずがないだろう?

 

 

 

「やっぱり、リリー先生は意味不明なくらい魔力操作が上手だよね。魔力の総量なら僕とかゼルの半分よりもちょっと多いくらいなのに、魔力操作のセンスだけで僕らの放てる圧の何倍も大きなヤツを出してくるから……もうほんと、いろいろ無茶苦茶だよ。」

 

 

 

リリー先生に聞こえないような小さな声で、僕も思ったことを告げる。

 

普段のリリー先生だったら聞かれているかもしれないが、今だったら一年生たちに意識が集中しているから、小声で喋る分にはリリー先生の耳に届かないだろう。

 

 

 

魔力の圧を放って以降、ずっと沈黙していたリリー先生がゆっくりと訓練場内で伏している一年生たちのもとへと歩みを進めていく。

 

一歩、また一歩と一年生に近づいていくリリー先生。

 

なんかリリー先生が近づけば近づくほどに、一年生たちにかかっている魔力の圧が増幅している気がするのだが……いや、気にしても意味ないか。

 

僕には関係ないことなわけだし。

 

 

 

「さて……単刀直入に聞こう。お前たち、先ほどまでここで何をしていた?授業の時間がつぶれるから、さっさと答えろ。私は無駄な時間を過ごすことが好きじゃないんだ。」

 

 

 

冷徹な声音で、リリー先生は一年生たちに告げる。

 

が、彼ら彼女らは地面に身体を伏しており、まともに話せる状況とは言い難い。

 

それゆえ返ってきたのは、痛みに対する泣き言だけだった。

 

 

 

「あぁ…そうだった。その状態じゃあ普通は喋れないと、うちのクラスの生徒たちが言っていたことを忘れてしまっていたよ。」

 

 

 

次の瞬間、リリー先生は一年生たちの目の前で大きく足を持ち上げて……地面を思いっきり踏みつける。

 

ドンッと大きな音とともに、突風が吹き荒れる。

 

僕は内心で一年生たちを憐れに思った。

 

 

 

リリー先生は今の行動と同時に、魔力の圧を少し緩和させた。

 

とはいえ魔力の圧を緩和させるために、思いっきり地面を踏みつける行動なんて必要ない。

 

つまるところ、リリー先生は一年生たちを脅かすためだけに、一連の行為を起こしたのである。

 

 

 

まぁたしかに恐怖を植え付けたほうが、さっさと情報を吐き出すだろうから効率的なやり方だとは思うけど……こんな暴力的な手段をとるとは、なかなかにイカれてるね。

 

僕にはまったく理解ができないよ。

 

 

 

「これで喋れるようになったはずだ。さっさと何があって、どうなったのかを言え。」

 

 

 

しかし返事は返ってこない。

 

まぁ、しょうがないと言えばしょうがない。

 

だっていきなりこんなことをされて、反抗せずに従ったら不気味だろう?

 

しかもそれが学院に反抗したい気持ちがあるであろう、CクラスやDクラスに入った新入生だったらなおさらに。

 

とはいえそれを許すほど、リリー先生は優しくないんだけどね。

 

 

 

「ふむ、だんまりがお前たちの出した答えというわけか………私のことを舐めているのか?私はこういったはずだ。何があって、どうなったのかを“言え”と。お前たちは生徒であり、私は教師だ。それゆえにお前たちが私の言うことに従うのは、当然のことなのだ。」

 

 

 

言ってることが敵キャラみたいだけど、これでも規則を守ってれば優しい先生なんだよね…規則を守ってれば、ね。

 

 

 

「これ以上、授業時間を無駄に削るようなら、それ相応の対処を考えるが……お前たちはどうしたい?」

 

 

 

リリー先生のその言葉が決め手となり、一年生たちは静かに状況を説明し始めた。

 

 

 

 

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