【杖と剣の死に戻り】 作:ネシエル
待っていてくださった方、本当にありがとうございます。
おかげでなんとか次を書くことができました(笑)
「自分に何ができるか …見稽古… グランド・アニマル」
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死は絶望であり、苦痛であると人々は言う。
しかし、ウィルに言わせれば、
死は無であり、無は何もないと同義である。
それは、無数の死を経験した。
ウィル・セルフォルトが6歳にして、辿りついた答えである。
故に、死と寝るとの違いがよくわかる。
故に、起きて、起きて、起きる。
▲▲▲
身に覚えのあるペットの感触がウィルを包み込まみ、
ウィルは目を覚ます
「ここは・・・」
いつも見ている天井。
天井に渡る小さなシミの跡、
汗が占め渡るペット。
間違いない。
ここは、家であることには間違いはない。
生まれてきて6年間ずっと住み続けてきた家だ。
間違えるはずがない。
ウィルは起き上がって、体を隅々まで触る。
「死んでいない。生き残れたが」
目を覚ますとき、時間が巻き戻ったあの独特な嫌悪感を感じられない。
手の甲にある小さな傷は、ループ前には付けられなかったもの。
これを元に考えると、ウィル・セルフォルトはあの無慈悲な死のループから脱出することができた。
ウィルはもう一つの気配を見つけると
横を見る
「ッエルフィ!」
手で顔を触ると、体温を感じる。
生きている。
そう感じるとウィルは気を緩んだ
「よかった」
微笑みを浮かべ、
ウィルはエルフィの顔を観察する。
少しのクマが浮かび上がっており、
ずっと看病してくれたことにウィルは気づく。
「あれ、なんで涙が」
己の顔に触れて、
流れる涙を手で拭く。
「どうして、今更」
涙を拭いても拭いても次から次へと流れてくる。
そうだ、もう気づいた。
生きている。もう死ぬことはない。
エルフィが生きていることに。
「ウィル?ウィル!大丈夫
どこか痛いところはない」
「あ、ああ」
告げる
「エルフィ、生きている?」
「生きているのウィル。
ウィルが助けてくれたおかげでわたしは生きているよ」
「ああ、よかった。
生きてくれて、よかった」
ウィルはエルフィを抱きしめ、
その体温を感じ取り続ける。
この熱は消失することはなく、
生きている温かい熱がウィルは掴みこむ。
「ごめんなさい、ウィル。ウィルを巻き込んでしまって」
罪悪感と後悔。
そして、幼い腕を最愛の人を抱きしめる。
▲▲▲
お風呂場
ウィル・セルフォルトはシャワーを浴びていた。
汗と涙によって汚れた体を温かい水で洗い流す
魔法が使えないウィルでも、
使えるように特注したドワーフ専用の魔道具。
「泣いてしまった。ぼくは男の子なのに、情けないな」
そっと、怪我した足をなぞる。
足のケガは院長が直してくれたが、
それでも傷跡が残っている。
でも、そんな体の傷よりも、
心の傷のほうがウィルに傷跡を与えてしまった。
『あれはいったい何だったのか。時間が巻き戻す魔法。
あれが、ぼくの魔法なのか』
思い出すは、時間の逆行
死のループという極限状態から解放されたウィルは己に起きた現象を把握する
『時間を巻き戻す魔法。
ぼくが死んだら自動的し、過去まで遡る。
あれがぼくの魔法なのか』
シャワーを止め、
石鹼を使って体を洗う。
『今まで、ぼくは一度も魔法を使えなかったのに、
どうして急にあんな高度な魔法を使えた。
そもそも、あれは魔法なのか』
誰かに伝えればいいのに、
そう思ったウィルだが、義父にもエルフィにも伝えることは出来なかった。
ループしている間、
ウィルは幾度もエルフィに自分が起きた現象を説明しようとしたが、
そのたびに口は動かずにいた。
無理やり声を絞り込しても、ノイズまみれな声になり、
時間の無駄となって死んだ回もあった。
あそらく何かしらの呪いによるものだとウィルは推測する。
紙に書く案も、あったがそれも阻止され、
暗号にして伝えるのも不可能。
そもそも、魔法には代償や制限は、
必要でも制約はそこまでない。
代償や制限は魔法を行使する上で自動的に追加されるもの。
しかし、制約は自分で決めるもの。
果たして、他者には公開しないことが
或いは、最初から利点などなかったのか。
そういえば、最後のループに少し聞こえた
あの無機質な声は一体なんのだ。
考え事をするウィルに対し、
お風呂場の扉が開ける
「ウィル、一緒にお風呂に入ろう」
「うわあ」
腕白なガキ大将、
エルフィはお風呂場の扉を開き、
ウィルと同じ、お風呂場に入る。
▲▲▲▲
「エルフィ。どうして入ってきたの」
急いで、男のセンシティブな部分を隠す。
赤面ウィルに対し、女性の大事なところを隠す動作をしないエルフィは、
堂々とウィルに己の体を見せつける。
「ダメなの?いつも一緒に入っているでしょう」
「そ、それはそうだけど」
前の関係では、ウィルはエルフィの体を見ても何とも思わないだろう。
しかし、今の関係では、そうはいかない。
なぜなら、ウィルは恋をしてしまったから。
もう無理なのだ。
ウィル・セルフォルトはエルフィをただの幼馴染として見るなんで。
この恋を知ってしまった以上。
もう、前の関係には戻れない
「ウィル?どうしたの」
ウィルはエルフィの方を見ないように、
顔をうつ伏せにする。
そして、エルフィはウィルの顔を覗き込むと、
ウィルの顔は真っ赤に染まるのを見た。
「え・・・」
『うそ・・・』
それに気づいたエルフィも己の顔を赤面する
『あわわ』
急いで自分のセンシティブな部分を隠す。
エルフィは急いでここから退散しようとする。
「ごめん、ウィル。やっぱり一緒にお風呂はもうやめたほうが」
ドアノブに触るエルフィの手を、
ウィルは止める
「別に一緒にお風呂に入りたくないとは言っていないよ
エルフィ」
「え?」
去るエルフィの手を掴む。
無理やり、エルフィの視線をウィルへ向かわせる
「ぼくはエルフィと一緒にお風呂に入りたいな」
「あ、あわわ」
「一緒に入ろう、ぼくが背中を流しっこするから」
▲▲▲▲
ウィルはエルフィの背中を洗う。
エルフィは赤面しながら、それを受け入れる。
『今日のウィル、どうしたの。
こんなこと、今まで一度もなかったのに。
いつもは・・・あんな平気な顔でしたのに。
なんで、どうしたのよ。ウィル』
ウィルは必死にエルフィの背中を洗う
石鹼を使いながら、優しく、丁寧に・・・
『エルフィの肌、きれいだな』
肌を指先でなぞる。
「!?ウィル」
エルフィはビリビリと震え、
後ろを振り返る
「ごめん、エルフィ」
「もう」
背中を洗う、続きをする
『大丈夫。傷一つもない。
ちゃんと生きている』
ウィルは顔をエルフィの背中に近づける
「ウィル?」
疑問に思うエルフィに対し、
ウィルは・・・
『エルフィ、大好き』
心の中で自分の気持ちを告げる。
▲▲▲▲
4年後
孤児院は相変わらず、平和で、
今日も親のいない子供たちは懸命に生きている。
この4年間の間、一度も
死を経験しない4年間という時間の絆創膏で、
ウィルの心の傷を少しずつだか、治すことはできた。
完治はしていないが、
以前と同じ死に対する恐怖心は芽生え始めた。
もしかしてたら、4年間の出来事は全部夢だったかもしれないと思う余裕ができた。
この4年間、家族はずっと同じ日常を送ってきた。
院長も義妹も、そして、エルフィも、
そして、10歳となったウィル・セルフォルトも、
今日の日課であるホストを覗き込む。
そして、一つの手紙を見つける
「これは・・・」
随分な丁寧な手紙だった。
宛先と手紙の素材からして、上級貴族などがよく使われるものと思われる。
ウィルは宛先名を確認する。
「リガーテン魔法学園からの招待状!?」
驚いたウィルは、急いで家の中に戻り、
手紙の中身を読む。
そして、急いで手紙の内容を院長とエルフィに見せる。
「よかったな。ウィル」
「ウィル・・・」
院長は喜んだが、
エルフィは微妙な反応だった。
「うん、これで魔法学院にいける。一緒に夕日を見に行こう。エルフィ」
「うん、そうだね」
幼い頃の約束。
一緒に夕日を見る。
この約束はようやく果たされる
リガーデン魔法学院は、優秀な
そして、成績上位者には塔へ進学する権利を得る。
塔とは、魔法研究の最前線にして、
この魔法世界を守護する大結界の真下に位置し、
最も空に近い場所である。
そこにいき、夕日を見ることが、
幼いウィルとエルフィが交わした約束である。
「でも、ウイル兄。今でも魔法を使えないでしょう。行っても大丈夫なの」
「たしかに・・・」
弟の容赦のない指摘に、
ウィルも思わず、落ち込む。
「無理に行かなくてもいいだろう。
リガーデン魔法学院と言えば、貴族たちが通う学校だ。うちにそんな学費出せるわけないだろう」
「招待状には奨学金を出すと書いてあるよ」
「まじか」
ウィルから手紙をもらい、
院長は手紙の内容を読む
「確かにそう書いているな」
「ぼく、リガーデン魔法学院に行けたい」
魔法学院に行けば、死に戻りについてわかるかもしれない。
これは、ウィル・セルフォルトに許された唯一の魔法だからとウィルは考える。
この魔法の特性について知ることで、功績が認められる。
そうすれば、塔に登り、エルフィとの約束を果たせる
「ウィルが行きたいなら、わたしも行く」
「ありがとう、エルフィ。一緒に夕日を見に行こう」
「・・・うん」
▲▲▲▲
「よくもやってくれたな」
エルフィは煮えくり返る想いを持って、
推薦状が入った手紙を見つめる。