陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】 作:庫磨鳥
「それじゃあ
「はい……」
「あんまり気にしないでね。ミサキちゃんの事、そんなに想ってくれて俺的にはすごくありがたいよ」
俺と出会うまでのミサキちゃんの人生、それに触れてしまった
どうして出ているのか自分でも分かっておらず。
そんな
顔を
「……今まで悪魔の子の話を多く聞いてきました……ですが……こんなにも……」
どうやら自分の知っていた差別というものを遥かに超えてきて、その事実に受け止めきれないでいるようだ。
それは甘さと呼べるものかもしれない。
哀れみと呼べるものかもしれない。
これをなんと呼ぶかは、それこそ俺が決めていいものではないだろうけど。
本当に良い子だと思う。
「……悪魔の子が一般的に、どんな扱いを受けているかは分からないけど、ミサキちゃんはかなり特殊なほうなんじゃないかな?」
「特殊……ですか?」
「ミサキちゃんが契約主になったのは、彼女が悪魔を呼び出すために用意された生贄だったからだよ」
「……え?」
目を見開いて驚く、どうやら人間を生贄にした儀式というのは、そこまで驚く事だったようだ。
良かったこの日本では当たり前に行われているとかだったら、流石にドン引きじゃすまされない。
「そんな!? 人間の生贄は極刑の罪ですよ!? 行おうと計画した段階で、宮内庁の『
すごい気になる特殊部隊みたいなの出てきたけど、タイミング的に聞きづらい。
それに、殺人になるだろうから当然ではあるけどかなり罰が重たいな。未遂でも死刑が確定しているような言い回しだ。
「それに人間を生贄にした召喚儀式は費用が凄まじく、都会に一軒家を建てる程のお金が掛かると聞いています……そんな事ができる陰陽師関係者なんて限られて……」
あ、自分で言っていて心当たりが浮かんだ顔してる。いま指摘すると、話が脱線しそうだしスルーするか。
「そういえば儀式が行われていた場所、ものすごくでかそうな建物の中だったな。それに沢山の人も関わってたっぽいし」
「し、施設ですか? それはどこに?」
「森の中だったんだけど、施設は俺が丸ごと飲み込んじゃって跡形もなく消しちゃった」
「……の、飲み込んで消した?」
口をあんぐり開ける
「あ、あの、そこに居た人たちって……」
「殺してないよ。全員森の中に置いてきた。今はもう逃げちゃってるかな」
「そ、そうですか」
「ちなみに白い頭巾で顔を隠していて分からなかった」
人が死んでいないという事に安堵の息を漏らす
その後、
いずれ話さないと行けないと思うし、鬼灯家の事も聞きたかったけど。すぐにどうこうって話ではないのと、今は彼女の心労を増やさないほうが良いだろう。
――やっぱり彼女以外の陰陽師とも縁を結んだほうが良いよね。候補としては話しに聞く、
「……ヤマト様。お願いがあります」
「ん? どうしたの? やっぱり〈
「そ、それは流石に多いかと」
「そっか、いつでも欲しくなったら言ってね」
とは言いつつ、既に九羽ほど追加で
なにかトラブルに見舞われたりしたら足りないかもだからね。
「それでお願いってなに?」
「わ、私が、ミサキちゃんに勉強を教えてもいいでしょうか!」
「勉強?」
「はい、小学校で学ぶ国語と算数。それと一般常識を教えたいです」
「……そう言ってくれるのは、ものすごく嬉しい……でも大変じゃない?」
言ってくれたのは本当に嬉しいし、本音を言えば頼りたい。
だけど勉強を教えるのは大変だ。相手が何も知らないのであれば特に。
俺も他の【悪魔】に日本語を覚えさせた事があるから、本当によく知っている。
俺の心が折れなかったのは、少しでも日本を感じたかったというエゴと、日本について真剣に興味を持ってくれた【悪魔】が居てくれたからだ。
でも、また同じことをやれって言われたら、できるかは分からない。
「
「──無理です。普通の友達にはなれません」
「たとえ立場が違う者同士でも、手が届きさえすれば友達になれる。だけど限界まで伸ばしても届かなければ、どれだけ相手の事を想っていようともなれない……そう教えてもらいました」
「……今のミサキちゃんの手は、誰にも届かないほど短すぎるか」
「はい。ヤマト様の契約者様を……ミサキちゃんを悪く言うつもりは一切ございません。彼女がああなってしまったのは、身勝手な大人たちによるものです! ……ですが……」
「わかってるよ」
むしろ、ミサキちゃんの事を真剣に考えてくれているから、対等な友達になれない事を、正直に伝えてくれているのだろう。
だからこそ、それじゃあお願いねって言っちゃいけないよな。
「でもだからって、
「…………」
「だから対等じゃなくてもいい、普通じゃなくてもいいから、友達として色々と教えてあげて欲しいんだけど、いいかな?」
「え? ……わ、わかりました! 任せてください!」
単なる言葉遊びでしかないのかもしれないが、友達であるかどうかなんても気持ちの問題だ。
これで、あまり責任を感じずにミサキちゃんと交友していってほしいな。
まあ、もしも張り切りすぎるなら、俺が止めればいいか。
「そういえばヤマト様。本日のご予定は? もしよろしければ教えて頂けたら」
自分がどう過ごすのか知っておきたいのだろう、特に隠すような事もないので普通に答える。
「とりあえず、生活に必要なものの買い出しかな。
「は、はい。是非とも買って下さい。そのために用意した……あ」
「そ、そういえば買い出しという事は、その姿で外に出るって事ですよね?」
「まあ、スマホ持ってないから、ネットで買い物できないしね」
「す、すいません。全く気が付かずに! よろしければ、今からでも代わりに私が!」
「その辺に関しては気にしなさんな。俺に秘策あり」
〈影変身〉によって人間の姿にはなる事ができたけど、服が無くて、どっちにしろ外出する事ができないかと思われた。
しかし、俺はあまりにも簡単な事に気づいてしまい。解決できると自信を持っていた。
「できればその秘策を教えて……」
「というか
「あ、いえ、その……大丈夫です!」
「だいじょばないね。もう今日は帰って休みな」
この家に住めるように手続きしてくれたり、あれだけ豪華なお弁当を作ってくれたり、どう考えたって睡眠時間がとれていたとは思えない。
「……分かりました……あの、何か有ったさいには、私のほうにご連絡ください」
「分かったよ。でも、連絡手段どうしようか? スマホはまだ持ってないし」
「スマホに関してはまた後日、こちらの方でご用意できるかと思いますが、今はそうですね……〈
「〈
もしかして、俺が〈
「はい、〈
「いや、そうは言っても〈
〈
まあ、その時にリアルタイムで俺が話せばいいか。
なんて思って、
「え? ……喋りますよね?」
「……なにそれ怖い」
「ええ!?」
こうして
〈
というか喋ったのか?
俺が操作している時ならともかく、そんな機能無かったはずだけど……。
これもミサキちゃんと契約しているからかな、あとで調べたほうがいいか?
まあ、すぐにどうこうってわけじゃ無さそうだし、後回しでいいか。
他にもやる事があるからと、一旦考えるのを止めて家の中へと戻る。
「お待たせ。悪いね長引いちゃって」
「……だいじょうぶ?」
「おう、急に泣いちゃってごめんって言ってた」
「……ごめんなさい」
「誰も悪くないよ。ちょっと驚いただけだから……
「友達?」
首を傾げる。まさか友達の意味が分からないのかと一瞬焦る。
「私、悪魔の子だよ?」
「それでもだよ。それともミサキちゃんは
「……嫌じゃない……と思う」
「そっか、なら友達になってみなよ」
ずるいとは思うが最初のうちは、ある程度こちら側から誘導しなければ何も始まらない。【悪魔】に日本について教える時もそうだった。
「……友達ってどうすればいいの?」
「うーん。まあ最初はお互いの事を知っていったらいいんじゃないかな? あとは……その場のノリで!」
「……“のり”……
「あー、いま考えるんじゃなくて、その時に考えればいってこと……分かる?」
「はい、分かる」
難しいことを言ったところで、理解できるものじゃないだろうし、なにより俺も友達というものはよく分からない。
オルカのように日本語で話す【悪魔】たちは、俺にとって友達だが、ノリと勢いで日本に来た事を何も後悔していない。
それに、もしかしたら、アイツらも日本に来ることがあるかもしれないしな。
――それはそれで、だいぶ不安だが。まあ、なるようになるしかない。
「……分かった。やってみる」
「うん。なにか困ったら俺がいつでも話を聞くし、
「はい……ノリでやってみる」
親指を立ててサムズアップすると、ミサキちゃんも真似したので、親指を立てあった拳をコツンと当てる。
勉強については、
「それじゃあ、これから外に出かけるから、人間の姿に変身してくるから、ちょっと待ってて」
「はい」
洗面所へと移動して、鏡の前に立つ。
「上手く行ってくれよ――〈影変身〉」
『布影』が俺にまとわり付き、身長175cn以上はある。陰を持ったやたらメロい顔立ちをした二十代男性の姿へと変化する。
イケメンであるが、この顔をした男がミサキちゃんに近づいたら、特に理由もなく殴っちゃうかもな……。
そして、全裸である。【悪魔】の姿で出歩いたら陰陽師のお世話になるかもだけど、こっちは間違いなく警察のお世話になるだろと
――服も『布影』で作ればいいんじゃない?
あまりにも地味な気づきであるが、俺にとっては偉大なる発想をしてしまった俺は、首から下をさらに『布影』を
本当にお願いします、俺の【権能】様。
必死に祈りを日本の神々に捧げつつ、鏡を確認すると。
「……おっ、おお!? 服! というか黒ジャージだ!!」
最悪ピッチピチのボディスーツにしかならないかと思ったが、ちゃんとした黒いジャージ姿となっていた。
本当に便利すぎるな。いや【地獄】に居た時は、流石にこんな便利じゃなかったぞ?
もっと雑というか、何を作っても黒泥の塊にしかならなかったのに、触ってみると質感が、ちゃんとしたジャージの
〈侍の型〉のデザインも変わっていたし、なんだか『布影』という【権能】が丸ごとバージョンアップしたような気がする。
「まっ、なにはともあれ問題解決! これで買い物に行けるぞ!」
るんるん気分で扉を開く、廊下には“巫女服姿”のミサキちゃんが立っていた。
冷静になって考えたら、ミサキちゃんの格好目立つか。
陰陽師が当たり前として認知されている世界だし、ワンチャンこのままでも変じゃないかな?
いや待て、ジャージ姿の怪しい青年と組み合わせると普通に事案に見えないだろうか?
顔付きは似ているから兄妹に見えるとは思うが、警察に声を掛けられて身分が証明できるものを求められたらアウトだ。
さて、どうするかなぁ……あ、そうだ。
「――よし、それじゃ出発!」
「しゅっぱつ」
数分後、〈影変身〉によってお揃いの黒ジャージ着た俺たちは、買い物へと出かける。