陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】   作:庫磨鳥

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スズメ、姉と話すってよ。

 

 家に帰ったスズメはまず、すぐにパジャマに着替えてベッドへと横になった。

 それから人生で初めて10時間眠ったあと、パソコンで作業を開始。

 学校へと提出する補習レポートの制作。友達への連絡。『特外地』に関する残りの作業と、もしもの時のヤマトに関係する資料制作、〈影鴉(かげからす)〉の式神登録。その他細々(こまごま)とした多岐にわたる作業を、効率的にすばやく(こな)していく。

 

 スズメはデスクワークが得意であった。

 陰陽師になるつもりが無かった彼女は、小学四年生になった時から将来を見据えて事務能力を磨き続けており、資格をもった社会人と遜色(そんしょく)ない働きぶりができる。

 いま勉強していれば学校の先生になれた時、役に立ってくれるはず。そんな夢への投資は陰陽師となってしまったいま、まったく予想外の形で活躍する。

 

「……勉強していて良かった」

 

 キーボードを打ち込んでいる最中。無意識に自分の口から出た言葉に、スズメは最後まで気が付かなかった。

 

「教科書にドリル、筆記用具一式、小型ホワイトボード、電子辞書……うん、とりあえずこれで全部かな」

 

 今日やるべき作業の最後に、スズメは【悪魔】と契約していたミサキに勉強を教えるための教材のチェックを行う。

 

 ミサキはスズメと同じ年の16歳である。しかし、普通とは違う生活を強いられてきた彼女は小学校から義務教育を受けられておらず、一般常識に乏しい。

 それを知ったスズメは自らヤマトに願い出て、勉強を教える事となった。

 

 そうしたいと思ったのは、ミサキの過去を知った時、あまりにも理不尽であると、彼女の矜持(きょうじ)が悲鳴を上げたからである。

 その矜持の中にミサキの教育を任せられれば、ヤマトとの友好関係はより強固なものになるという桜間家の娘としての本能が混じっている事。

 そしてさらに本能の中に、諦めていた先生という夢が叶う。そんな細かくて無数の粒のような喜びがある事も否定できない。

 

 「うう、ちゃんとミサキちゃんに教えられるかな……頑張ろう」

 

 それでも、スズメは非才の身であった。

 

 どれだけ複雑な考えが有っても、彼女の根幹にある行動原理は“ミサキちゃんには不幸で居たぶん幸せになってほしい”という願いである。そこに“友達として”が付け加わったのならば、桜間として関わる理由が無くなったとしても、スズメはやり通したいと思い続けるだろう。

 

 それからスズメは再び就寝。

 陰陽師たるもの昼夜問わずに活動しなければならない。そのため、陰陽師の四大名家として子供の頃から眠れる時は時間を問わずに眠れる修行を受けており、1番成績が良い修行だった。

 再び起きたのは朝五時、スズメが身だしなみを整えていると、本人に気づかれないように服の裏に潜んでいた〈影鴉(かげからす)〉の1羽が出てくる。

 

「アー」

「わっ!? び びっくりした……〈影鴉(かげからす)〉さんでしたか。どうしましたか?」

 

 もしかして、ヤマト様からの連絡かなとスズメは身を正して、〈影鴉(かげからす)〉の言葉を待つ。

 

「オー」

「おー?」

「オフーロー」

「……もしかして、お風呂入りたいんです?」

「ソー!」

「……ヤマト様が?」

「カー!」

「あ、〈影鴉(かげからす)〉さんがですね。わ……かりました。浴槽にお湯を張りますか? それともシャワーにしますか?」

「シャワー!」

「分かりました。それではこちらへとどうぞ」

 

 スズメは〈影鴉(かげからす)〉を肩に乗せて、風呂場へと案内する。

 

 ――〈影鴉(かげからす)〉は間違いなく意思疎通が出来ている。それも自分の意思で物事を選択してみせた。

 この事からスズメは言葉こそ(つたな)いものであるが、現代のAIに等しい対応能力を持っている存在だとして認識を(あらた)める。

 

 ――あるいは、人間に等しい知能を持った生命体であるのか。もしそうならば、【悪魔】の【権能】は常軌を逸している。

 まるで“【悪魔】の【権能(けんのう)】”というよりも、“神の御業(みわざ)”だと、スズメは予想でしかないのにも関わらず背筋が寒くなる。

 

 そういえばと、ヤマト本人が〈影鴉(かげからす)〉が喋る事に対して、知らない反応を見せた事が気になった。

 もしあれが秘密を守るための嘘じゃなかったとしたら、日本に来た事で変化が起きてしまったのだろうかと考える。

 もし、そうであるならば、早めに調べる事を進言した方がいいかもしれない。

 特に悪魔の子に召喚された【悪魔】であるならば、この変化に【信仰】が関わっているならば、本人の気づかぬ内に取り返しの付かない事が起こってしまう可能性は低くはない。

 それは日本で平穏な生活を望む彼にとって望まない事だろうと、スズメは思う。

 

 なお時すでに遅く、不幸にこそならなかったものの、【悪魔】の息子が誕生している事を、スズメは知らない。

 

「――〈影鴉(かげからす)〉さん。シャワーの勢いと温度、これぐらいで良いですか?」

 

 なにはともあれ答えが分からないものに思考を囚われるよりも、今は〈影鴉(かげからす)〉のお願いに応えるのが優先だとして、スズメは広い風呂場にてシャワーを調整する。

 

「アーリガト! エイセイダイジ! コレデキレイ!」

「えいせい? ……あ、もしかして昨日の事を気に掛けてくれたのですか?」

「アー!」

 

 昨日、調理室にてスズメは衛生面の観点から調理台に近づかないでと、〈影鴉(かげからす)〉にお願いした。

 その事を気にかけていた〈影鴉(かげからす)〉は、自分の役目でもあるスズメの護衛に近づけないのは駄目ではと考えて、身を綺麗にしたいと申し出たのだ。

 

「あ、ありがとうございます」

「アー、トーゼン! カラアゲ! カラアゲ!」

「……くすっ、分かりました。後で〈影鴉(かげからす)〉さんのカラアゲもご用意致します!」

 

 どうやら性格は主に似て気遣いに溢れているようだと、スズメは無意識に張っていた肩を軽くする。

 

「〈影鴉(かげからす)〉さん。また今度なにか考えますので、今日は洗うの手伝いましょうか?」

「アー! タノム!」

「「「「「「「「「タノーム!」」」」」」」」」

「え?」

 

 振り向くと、浴槽の(ふち)に九羽の〈影鴉(かげからす)〉が、横並びになって止まっていた。

 

「ふ、増えてる!?」

 

 

 +++

 

 

「な、なるほど、ヤマト様のご厚意で増員されていたのですね」

「ソー! ゴエイ!」

 

 十羽の〈影鴉(かげからす)〉のシャワーを終えたあと、他の九羽はスズメ本人に気付かれないように、タオルで水気を拭いたあと、再び服の裏へと潜んだ。

 それから最初の〈影鴉(かげからす)〉が代表としてスズメの肩に止まり、移動しながら十羽に増えていた事情を話す。

 

「アー……メイワクダッタカ?」

「い、いえ。すこし驚きましたが、自分の事を想っての判断なようで、とても嬉しく思います」

 

影鴉(かげからす)〉たちの実力はまだ未知数であるが、青鬼の時のように命の危険が今後無いとは言い切れない。

 それに護衛を増やしてくれたということは、ヤマトから信頼を貰った証であると、考えても良いだろうと、あっさり受け入れた。

 ちなみに残り九羽が、どこに居るかはスズメが聞いても、そこだけははぐらかしている。理由はなんか教えたら駄目そうだと思ったから。

 

「でも、この事は言ってよかったんですか?」

「……アー、タブンダメ」

「駄目だったんですね……」

「ヤマトニハナイショ」

「良いんですかそれ?」

「バレタラアヤマル!」

 

 ヤマトが把握しきれていないのもあるだろうが、〈影鴉(かげからす)〉の自由さに、スズメは苦笑するしかできなかった。

 

「ともかく、〈影鴉(かげからす)〉さんたちみんなの唐揚げも用意しますね」

「アー!」

「昨日みたいに小さい方がよろしいでしょうか?」

「マカセル」

「分かりました、それでは少々お待ち下さい」

 

 今日のヤマトとミサキの弁当を作るために、離れにある自分専用に建てられた台所へと向かう。

 今回は量こそ前回と一緒であるものの、重箱ではなく普通の弁当箱を使い、朝昼晩へと分けたものを用意する。

 三段重箱は喜んでくれたが、こちらの方が保存しやすく、食べやすいだろうと思っての判断だった。

 

「昔のお兄ちゃんとお姉ちゃんたちのお弁当箱、全部取っておいて良かった」

「アー、イイノカ?」

「はい、最近は皆忙しくて、お弁当を用意できるタイミングが無いので」

 

 スズメの兄と三人の姉たちは、全員が既に成人しており、社会人として働いている。家には数日空けずに帰って来るものの、最近は不定期とあってお弁当を用意する事は減っていた。

 それを寂しく感じていたので、あの眠っているお弁当箱たちを使えるとなると、今からの料理がより楽しみになった。

 

 一方で先送りにしていた問題が、頭を過ぎる切っ掛けとなってしまう。

 

「ヤマト様の事、秘密にできるかな……」

「アー! バレタラシカタナイ!」

「それは流石に……気付かれるにしても、ヤマト様に話を通しておかないと」

 

 関係者から化け物と呼ばれている兄は、もう仕方がない。才能の無い素人が隠し通せる相手ではなく、目があってしまったら観念するしかないと、スズメは諦めている。

 だからいっそ偶然出会うことがあれば、そのまま流れで相談しようとさえ思っていた。

 

 だが三人の姉は、前準備が完璧に終わるまで隠し通したかった。

 スズメは兄姉(きょうだい)たちが大好きだ。だからといって盲目(もうもく)的に肯定はしていない。

 もしも、このタイミングでヤマトたちの事を知ったなら、姉たち必ずとんでもない事をやらかすと確信を持っていた。

 

「今日中にヤマト様から許可をとって、お兄ちゃんに相談しよう」

「アー! ガンバレ!」

「はい、頑張ります! ……といいますか、いま話した内容、ヤマト様に知られてませんか?」

「アー、モンダイナシ、イマミテナイ」

「それは絶対に言っていいやつじゃないですよね?」

 

 本当に大丈夫かなぁと心配しつつ、スズメたちは台所へと入る。

 

「――久しぶり、スズメ。92時間振りのお姉ちゃんとの再会だ」

 

 台所の席に座っていた人物と目があったスズメは。思わず後ろへと一歩下がってしまう。偶然にも相手の死角だった〈影鴉(かげからす)〉は一瞬にしてスズメの服の中へと隠れる。

 

 上あたりから結んでもなお腰まで届く長い黒髪のポニーテール。

 鍛えられて引き締まっているものの、全体的にバランスが整ったモデル系の体つき。女性である事を強調する豊満な胸があってもなお、女性が見とれてしまいそうな格好良さを(かも)し出しているスーツ姿の美人。

 

「ヒバリお姉ちゃん!?」

 

 彼女こそ『桜間ヒバリ』。桜間四姉妹の長女である。

 

「勝手に入ってごめんね。多忙の仕事が落ち着いて、ようやく13時間の休日がとれたの。だから一秒でも無駄にしないために、スズメに会いに来たんだ」

「そ、そうだったんだ。電話してくれたら良かったのに」

「それもごめん。完全に忘れてた。私の携帯、今どこにあるんだろう」

「携帯を忘れちゃったの!? というか失くしたって事だよね!?」

「もしかしたら仕事で山に入った時に落としたのかも、これで山に落としてきたの何台目だったかな?」

「もはやちょっとした不法投棄だよ……」

 

 陰陽師たちは仕事の都合上や、『人外存在』への対策としてスマホを持つ人が少ない。その変わり、今でもこの日本ではガラケーが根強い人気を誇っている。

 そのため、携帯端末は個人情報の塊というわけではなく、単なる携帯端末でしかないものの、ヒバリはこれまで30台紛失していた。

 なお落とした数だけで言うならば、100回は超えている。

 

「しかしスズメ、私に驚きすぎじゃない? まるで私に知られてはいけない秘密があるので会いたくなかったみたい……もし、そうだったらお姉ちゃんは辛い」

「そ、そうじゃないよ! 本当に予想して無くて驚いちゃっただけだよ!」

 

 このヒバリが言う辛いというのは“秘密にされて辛い”という意味ではなく“妹を困らせてしまった私はカスだ、死にたい”という意味である。

 それを理解しているスズメは、ややこしくならないように全力で否定する。

 

 ――桜間家では、その子供の才能に見合った教育を、親の判断のもと施される。

 スズメは才能が無いからと“自由に学べ”と1度だけ言われた。

 桜間家の長男は、陰陽師としての才能は二流ほどであったが、感性と知力がピタリと当てはまったとして、桜間家の跡取りとしての教育を受ける事となった。

 そして、上から三人の姉妹たちは陰陽師としての才能が有りすぎた。だから“他を二の次”として、陰陽師としての修行に特化させた。

 

 現代社会を生きるためには、多様な知識と技術が必要だ。

 陰陽師として生きるには同じぐらいの技術と知識が必要だ。

 だから両立するのは非常に難しく、才能によって天秤(てんびん)の角度を(かたむ)けなければならない。

 これが理由で陰陽師界隈は、一般社会の常識に(とぼ)しくなりがちであり桜間家という調停役の仕事は現代でも減っていない。

 

 なら、才能が有りすぎた三姉妹の天秤はどうだったのか、片方が地面にめり込むほどであった。それ故に――。

 

「そうか、明らかになにか隠し事をしている反応ではあるが、妹の言葉は絶対。スズメが天動説を唱えるならば、世界は間違いなく天動説だ」

「日本の神様でも、さすがにそれは出来ないんじゃないかな?」

「そうか、やっぱり凄いねスズメは」

「できないからね!?」

「そういえば天動説ってなに? いつも知らないけど使ってる」

「……えっと、簡単に言うと地球を中心にして、太陽とか他の星が回ってるって説の事だよ」

「なんだ、そうじゃなかったんだ」

「ヒバリお姉ちゃん?」

 

 ――馬鹿になった。

 

「そ、それでお姉ちゃん! ご飯はどうする? 起きた時に食べる? それとも1度寝る?」

「どうしようかな。スズメのご飯は、次の出勤までできるだけ多く食べたい……そうだ、先にご飯を食べて、寝ながらご飯を食べて、もう1度起きた時にご飯を食べれば三度食べられるよね?」

「寝ながらご飯は食べられないよ?」

「そうだった。でもスズメの料理ならできると思うから、枕の側に置いてほしい」

「嫌だよ」

「そんな……スズメのご飯を1食たべられなくなるなんて……」

「普通に起きている時に三食用意するから、寝ながらご飯を食べるのだけはしないで……」

「分かった、スズメがそう言うなら止める」

 

 信じがたいことであるかもしれないが、これまでのヒバリの発言に冗談は一切入っていない。

 冗談を言えるほど賢くないから。

 

「ああそれでスズメ。『特外地』を管理する事になったって聞いたけど、大丈夫?」

「…………」

 

 なんで知ってるんだろうと顔に出してしまうスズメ。

 それを見逃すはずもない、妹LOVEのヒバリは自慢げに理由を話す。

 

「公務員の知り合いに、スズメが何かを申請するたびに連絡するようにお願いしてあるんだ」

「初めて聞いたし、普通に情報漏洩(じょうほうろうえい)だよね?」

「そこは問題ない。元は兄がやっていた事だから間違いなく合法。知った時に駄々を捏ねまくって、私たちも知れるようにしたんだ」

 

 つまり兄姉(きょうだい)たち全員に、ヤマトたちが暮らす家を『特外地』にしたのを知られている事になる。これは流石に不味いとスズメはどうするか焦る。

 他にも考えるべき事が沢山あるんじゃないかとなるが、このような事は子供の時から日常茶飯事だったので、スズメはもう慣れてしまっていた。

 なので、もしかしたら『特外地』の事を兄には知られているかもしれないと思ったものの、姉たちにも知られてたのは想定外だった。

 なお、ヤマトに監視されていると考えて落ち着いていたのは、この事が原因である。

 

「それで平気? スズメは陰陽師としての力が無いから、危険な目に遭わないか心配」

「ううっ……」

 

 いくら愛しい妹とはいえ、事実を誤認して危険な目に合わせたくない。

 そう言った気持ちから、スズメの才能の乏しさに関しては、ヒバリは一切嘘は吐かなかった。

 そもそも、嘘を吐くだけの知能があるのかという話も関わってくるのが、ヒバリという人間である。

 

「やっぱり今からでもお父様を切り捨てて、桜間家を乗っ取るしかない」

「本当に止めてね!?」

「そう? じゃあ『特外地』の『人外存在』。もしも大変だったり、時間が掛かるようだったら、お姉ちゃん手伝うよ?」

「……それも平気だよ。これは私1人でやりたい事なの、だから私に任せて」

 

 スズメはキリッと決意を込めた瞳で真っ直ぐと、ヒバリの目を見つめる。

 これは私の仕事だから、後ろから見守ってほしいように見せかけているが、その内心は“本当にお願いだから、今は関わらないで欲しい”という懇願(こんがん)であった。

いま、ヒバリにヤマトたちの事を話せば、絶対に話が(こじ)れる。なんなら悪い方向にむかう可能性が非常に高い。

 スズメにとってヒバリは自分を愛してくれて、頼れる姉であるのは間違いない。

 しかし、この姉は難しい事を考える時、戦った方が速いと物事を物騒にする。そのため青鬼の事も今は言えない。言ったら絶対学校を文字通りの意味で殴り込みに行くと分かってるから。

 

「お願い、お姉ちゃん……」

 

 そのためスズメは全力上目遣いで訴え続けた。

 経験上、コレが1番効く。

 

「……分かった。でも、もしも困ったら遠慮なくお姉ちゃんを頼って」

「はい! それじゃあ、今からご飯を作るので待ってね!」

「分かった。死ぬまで待つよ」

「普通に待ってね?」

 

 無事に終わったとスズメは心の底から安堵して、料理を始める。

 そんなスズメをヒバリは食卓から静かに見守る。

 その瞳は愛する妹に向けるものにしては、かなり強い光を放っていた。 

 

 ――ヒバリは内側で、思考を巡らせる。

 

 妹、大好き。世界で1番愛おしい存在だ。毎日飽きること無く、こうして会えるだけで全身が幸せに包まれる。

 

 だから、安全な世界で、一生平和に過ごして欲しいと思っている。

 それなのにあのオヤジ(クソ)は、スズメを陰陽師の世界に放り込みやがった。

 

 だから私たち四人は、あの時本気で実の親を失脚、あるいは亡き者にしようとしていた。

 しかし、スズメが陰陽師の道を受け入れた事で中止になったのだが、やっぱりこの世から消しておけば良かったと、ヒバリは後悔している。

 

 スズメは弱い。陰陽師としての才能が無い。そこからさらに戦う才能は皆無(かいむ)といっていい。

 そんな子が陰陽師の世界で生きるとはどういう事になるか。

 餓鬼(がき)1匹に足と腕を砕かれ、何も出来なくされたあと、長い時間(なぶ)られて、泣き叫んでも誰にも助けられる事なく、最後には食われて殺される。

 そうでなくても、似たような殺され方をする。

 これは大袈裟(おおげさ)でもなんでも無い、現場を数多く経験したからこその正しい結論であった。

 

 それに、ただでさえ最近は『人外存在』も多くなり、イレギュラーも増えている。

 人間社会の方だって悪魔の子を中心に社会混乱は収まる事を知らず加速していっており。非合法で従えた『人外存在』を使って暴れる犯罪者も増えたと聞く。

 おかげでスズメに会える日が少なくなった、しかし自分が危険な『人外存在』と戦わなければスズメの危険が跳ね上がる。だからちゃんと仕事をしなければならない。

 これをヒバリは、『スズメのジレンマ』と名付けた。

 妹2人には共感されたが、兄にはアホと()せられた。しかし、気持ちは同じである事を見抜いていたので、逆に(あお)ってやった。

 

 ともあれ、そんなスズメが『特外地』の管理をする事となった。

 ひどく心配である。できるならお姉ちゃんが全て解決したい。

 しかし、自分に任せてと言い、分かったと言ったのだ。妹の言うことは絶対であるが、もしも、その家に居る『人外存在』が危険であるならば、このままほうっておくことはできない。

 いったい私はどうすればいいのか、ヒバリは脳みそを回転させる。

 

「……そうだ、スズメに気づかれないように、『特外地』の『人外存在』を私が切ればいいんだ」

 

 そうすれば、スズメに危険は及ばないし、管理している間にいつの間にか消えたとして、スズメの功績にもなるだろう。

 我ながら、なんて天才的な発想をしてしまったのだろう。

 早速うごかなければ。

 朝ごはんができるまで、まだ時間はあるようだから、近くはないが今のうちに行こう。術を使えば、ここから片道10分も掛からない。

 

「スズメ、お姉ちゃんに任せて」

 

「――あれ? お姉ちゃん? ……どこ行ったんだろう?」

 

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