陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】   作:庫磨鳥

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悪魔、ゲーセンで遊ぶってよ。

 アパレルショップ『KOROMO』を出た、()たちはデパート内に設置されたベンチに座り、全員でクレープを食べていた。

 

「――いやぁ、買っちゃったねぇ」

 

 5万9千円。それが本日のお洋服代でした。

 前回よりも安いと勘違いしたのは一瞬だけ。前回はミサキちゃんと俺との2人分だったけど、今回は俺一人分でこの金額である。

 店長さん、スタッフさん、あと鈴明(スズメ)ちゃんと一緒に服選びするのが楽しくなっちゃってぇ、まあ、そのまま気に入った服は買っちゃいましたわ。

 

「すいません、止め時が分かなくなってしまい……」

「いやいや、俺も楽しかったから気にしないで。むしろありがとうね。こうして服を買えるのも、こんなにお洒落になれたのも、鈴明(スズメ)ちゃんのおかげだよ」

「そ、そう言ってもらえると幸いです」

 

 現在、俺の格好は黒シャツと黒ニーハイを下地に、濃いめのピンク色のジャケットにスカートな、可愛い寄りのパンクスタイルとなった。

 ちなみに下着も色をあわせている、最初こそ記憶()がちょっと抵抗していたが、履いてしまえばなんて事なく、下着は下着といった感じだ。

 自分からしたら、かなり派手に思えたが、コレぐらいなら東京じゃ普通らしく、確かにこのデパートでも同じぐらい派手な色の人が歩いているのを見る。都会って凄い。

 他にも沢山、なんなら下着まで、皆のセンスがピカピカ光りまくっており、試着してと渡されたものは、この姿にとっても似合っているものばかりだった。

……おかげで予定の倍近く買っちゃったんだけどね。

 

 以前と同じようにお世話になったら、それは最低な甘えなんじゃないかと思い、念のために、先にお金の事は本当に心配しないで良いと言った。

 すると、田島店長は少し心配そうにしながらも分かったと俺の気持ちを尊重してくれて、会計のさいの割引は……ありました。

 元々値下げをするつもりだった、(いく)つか売れ残り商品を、レジを通すさいに限界まで下げてくれた。

 彼女たちは売れ残りを押し付けたのではなく、この姿に似合うからと渡してくれたのは分かっていたため遠慮したのだが、今後ともご贔屓(ひいき)にと返されてしまえば、感謝する事しかできなかった。

 ……まあ、それでも5万9千円なんだけどね。やっぱ買いすぎだよ。

 いやでも、今なら冬服安いし、来年も少し着方を変えるだけで通用するって言われたらねぇ?

 

 仕入れがどうとか、単価がどうとか数字の事は分からないが、金銭の得だけを取らずに、『KOROMO』はいい買い物をさせてくれる。

 そんなのされたら特別に思っちゃうのは当然の話で、サービス戦略は大成功と言える。

 まあ、難しいこと抜きに、また来たいなと思える、本当にいい店だよ。

 次こそは買いすぎないように! できなくても自分の稼いだお金で!

 ……王道バナナチョコクリーム、甘くて美味しいね。今の俺を表しているみたい。

 ちなみにみんな同じのを頼んで、ミサキちゃんは目を輝かせながら夢中でパクパクしている。

 

「これからどうしようか? 鈴明(スズメ)ちゃんは何処か行きたいところある?」

「私は特に有りませんので、ヤマト様に付いていきます」

「じゃあそうだなぁ……」

 

 電気屋で家電製品を買いに行くのもいいけど、ちょっと気分じゃないな。

 大きな買い物が続くなって思うと、ちょっと気後れしたので、1度感覚をリセットしたい。

 クレープ食べたけど、どこかの喫茶店に入って、コーヒーとサンドウィッチを注文して、お喋りでもするか?

それとも本屋に寄って、生活環境的に電子書籍派だったけど、紙の本も結構好きだったから何冊か買うのも有りだな。

 そんな風に色々と考えていると、ふと思い至った。

 

「……そうだ。ゲーセンで遊びに行こうか」

「“げーせん”?」

「そう、ゲームセンター。お金を入れて色んなゲームで遊べるところ、鈴明(スズメ)ちゃんもそれでいい?」

「はい、勿論です!」

 

 というわけで、俺たちはゲームセンターへと向かう事になった。

 あそこでしか遊べないゲームをやりたいってのもあるけど、三人でお出かけしている今、どうしてもやりたい事があった。

 

 +++

 

「……音、すごい」

「大丈夫? しばらくすれば気にならなくなると思うけど、やめとく?」

「……行きたい」

「分かった、じゃあ行こうか」

「はい」

 

 ミサキちゃんは、ゲーセン特有のもう元が何なのか分からないゲーム台のミックス音に耳を塞ぐも、好奇心のほうが勝ったみたいで、そのまま中へと入る。

 

 ゲームセンターの中は人が(ほとん)どおらず、どのゲームも好きなように遊べる状態だ。

 店側には申し訳ないが、正直言って遊ぶとなると人が居ないほうが気を使わなくて良いんだよねぇ。

 

「そういえば、鈴明(スズメ)ちゃんは来たことあるの?」

「はい、友達に誘ってもらって1度遊びに来ました。その時、エアホッケーで遊んだんですが楽しかったです!」

「お、いいね。俺たちもしようか」

「“えあほっけー”?」

「えーと、空気でちょっとだけ浮かした薄くて丸い板を打ち合うゲームかな? 興味があるなら遊んでみよっか、鈴明(スズメ)ちゃんもそれでいい?」

「はい!」

 

 というわけで、最初はエアホッケーで遊ぶ事となった。

 最初は教えるためにもミサキちゃんと俺で対戦。

 

「いま台の小さな穴から空気が出ていて、滑りやすくなってるんだけど。置いた“丸い板”と、これ……この“持つやつ”……」

「マレットと言います、丸い板の方はパックですね」

「お、鈴明(スズメ)ちゃん、ありがとう。このマレットをこんな風に台の上を(すべ)らせて、パックを打っていくって感じだな」

 

 緩めにパックを打つと、コンと優しい音と共にミサキちゃんの方へと向かう。

 

「ん」

「お、上手い上手い……それでここの穴に入ったら得点……あー、とにかく相手の方の穴に入れた回数が多いほうが勝ちってルールだけど、まあ最初だし、あんま気にせずやろうか」

 

 それから、パックを弱めに打ち合うだけの時間が過ぎていき、時間切れとなる。

 結果は、ちょっと速く打ったのが穴へと入った事で俺の勝ちとはなったが、そんな事よりも、ミサキちゃんは楽しんでくれただろうか?

 

「こんな感じだけど、どう?」

「……楽しい」

「良かった。じゃあ今度は鈴明(スズメ)ちゃんとやる?」

「やる」

 

 どうやら気に入ってくれたようで、相変わらず表情は表にでないものの、とてもやる気に満ち溢れていている。

 

「よろしくね、ミサキちゃん!」

「よろしくお願いします」

 

 そうして始まった、ふたりのエアホッケー。

 俺の時と同じく、とっても和やかに進んで……いたのは最初の方だけだった。

 

 鈴明(スズメ)ちゃんは、1回しかやった事がないのもあって動きが不慣れであり、速度が変わったり、壁に反射して来たとき、打ち返すタイミングをミスって危ない場面が何度もあった。

 

 それでも、鈴明(スズメ)ちゃんの方が有利かなと思っていたのも(つか)の間。ミサキちゃんの才能が爆発する。

 

「ん!」

「え!? 三角打ち……!?」

 

 甘い打ち返しで緩い速度でやって来たパックを、ミサキちゃんは強く台の横壁に打ち付ける事で反射させて、ゴールを決めた。

 テキトーに打ったわけじゃない。間違いなく狙ってやった。

 俺の契約主(家族)――天才だったか?

 

それから、あっという間にミサキちゃんが2点奪取。

 

「こ、このままでは経験者としての威厳が……!」

「やったの1回だけだよね?」

「ミサキちゃん、流石です……ですが、ここからは本気で――」

「えい」

「あ」

油断大敵(ゆだんたいてき)ぃ」

 

 鈴明(スズメ)ちゃんは頑張って攻めるものの、ミサキちゃんは本分は守備だったらしく、軌道を予測して事前にパックが来るところにマレットを置いて打ち返していき、鈴明(スズメ)ちゃんは対応しきれずに徐々に点を取られていった。

 

 もう、時間もそうだし勝てはしないだろう、それでもせめて1点でもと思っているのか、鈴明(スズメ)ちゃんは諦めずに攻めていき、ついにミサキちゃんから1点を取った。

 

「やったー!! ……はっ!?」

 

 両手を上げて喜ぶ鈴明(スズメ)ちゃん。俺が見ている事に気付いて恥ずかしそうに顔を赤くする。

 分かっている、みなまで言うなと頷いたが、うん、逆効果だったね。さらに顔を赤くしちゃった。

 

「えっと、これはその……」

「えい」

「ああ!?」

 

 そのチャンスをミサキちゃんは逃さず、点を取り返す。

 全力でエアホッケーを楽しむ、そんな2人を見れただけで、ゲーセンへと来たかいがあった。

 

「──はしゃいでしまいました」

「まあまあ、楽しかったんならいいんじゃない?」

「楽しかった」

「……そう、ですね、楽しかったです!」

 

 勝負で言えば6対2とミサキちゃんの勝利。

 それとは別にどちらも楽しめたようで、良かった。

 

「それで、実はゲーセンに来たかったのは、アレをやりたかったからなんだ」

「アレ? ……あ、プリクラ機ですね」

 

 俺が指さした方向にあった四角い箱型のゲーム機。

 ……実際ゲーム機なのかは分からないが、プリクラといって、その場で撮った写真を現像してくれる機械だ。ちなみに略称しか知らない。

 なんだか女性の園みたいな印象があって、前世では近づく事すらためらっていたが、話を聞けば若者は男女問わずに撮っていたりもするらしい。

 そしていま、()は何処からどうみても若者女子! もしもガチで制限があったとしても、問題なく通れる事間違いなし。

 それに銭湯の赤色暖簾(のれん)に比べれば、プリクラの(カバー)なんて、もう気にするものでもなんでもないわ!

 

 ……なので、どうしても撮りたいなって思った。

 

「せっかく三人で、こうしてお出かけしたし、なんか思い出に残るものが欲しくってね」

「ヤマト様……」

 

 ちょっと恥ずかしいなと思いつつも、正直な気持ちを打ち明ける。

 それこそ、鈴明(スズメ)ちゃんのスマホが有れば写真なら収まるかもしれないし、後で現像してもらえればいい話かもしれないけど。

 日本で、ミサキちゃんと鈴明(スズメ)ちゃんと三人で、いま形に残る思い出が欲しかった。

 

 ――俺はきっと、年を取らない。

 これから何十年あと、どうなるか分からない。

 でもきっと、今日撮ったプリクラがあれば……まあ、重いから口に出しては言わないけど……救われる気がするんだよね。

 

「分かりました、でしたら沢山、撮りましょう!」

「分からないけど……撮る」

「よしっ! って言っても、どれで撮るか悩むなあ~」

「なんでしたら右から左、全部撮ってもいいかと!」

「ここに来て、お嬢様発言を聞くとは思わなかったな」

 

 なんて、撮る前からテンションが上っている【悪魔】の地獄耳に。

 

 ――キャアアアアアアアアアア!!

 

 冷水をぶっ掛けられたような悲鳴が聞こえてきた。

 

 

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