陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】 作:庫磨鳥
ヒバリさんが隊長を勤めている神罰隊。部隊ならそりゃヒバリさん以外に所属している人が居るのは当然の話で。
その部下の二人からしたら、討伐する対象にしか見えない俺が急に車内に乗り込んだ。
突然のメタリックブラックスーツな【悪魔】の襲来。ドッキリかを疑うレベル。
ファーストコンタクトは完全に失敗。これから一緒に仕事するもの同士であるが、移動中の車内はかなり気まずい雰囲気に……。
「え~! 陰陽師関係の国家予算が去年から半分にされたのってマジ!?」
「マジマジのマジ! 今の政権本当にやばくって、税金を下げるための財源確保だーって言って、なんの根拠もない数字を信じて半分にしたの!」
「やばぁ……えっ、てことはお給料の方っていまどうなってるの?」
「そう聞いて! 凄い下がったの。それで優秀な人たちがたくさん辞めちゃったのが本当に辛い!」
「うわぁ」
「おかげで専門外な仕事までこっちに回って来ちゃってるってわけ! 別にそれ自体はいんだけど、緊急事態にすぐに動けなくなるのが怖いんだよね」
「それな~」
――後部座席に居た部下の人と、めちゃくちゃ盛り上がって公務員陰陽師の世知辛い愚痴を聞いていた。
先に後部座席の二列目に座っていた
性格はなんていうか、【悪魔】に優しい巫女ギャル。
ノリの良さに釣られて思わず口調が引っ張られる。ちなみに姿は【悪魔】の姿のまま。
しかし、宮内庁に属する陰陽師たちはだいぶ世知辛い事になっちゃっているな。
話を聞くと去年の選挙で政党が変わったらしく、そのまま流れで予算半分にされたらしい。
おかげで陰陽師たちの給料は大幅激減。生活のために退職者が続出していて、深刻な人手不足に陥っているとか。
確かに、神を殺すなんてよくある事なのって思うぐらい、ヒバリさん忙しそうにしていたけど、そんな事情があったのか。
「マジ辛すぎな労働条件だけど、シャルナさんがこうして宮内庁で陰陽師しているのって聞いていい系?」
「いいよ~! といっても大した理由じゃないよ。桃端家は桜間家の分家で、だからヒバリの側にずっと居ないといけないの!」
「そうだったんだ。てことは、シャルナさんってヒバリさんの従者的な?」
「そう、従者的なあれ~」
「見えなーい!」
「よく言われる~!」
普通の人だったら失言になりかねない事も、彼女を前にすると、そのままポロッと言ってしまうな。それが楽しいとは思うものの、少し落ち着こう。
「桜間家は陰陽師と一般社会の間に立って調停する家だから、人間関係が第一ってね。だから宮内庁の陰陽師としてヒバリがバリバリ仕事してナンバーワンな活躍をすればするほど、色んな人に恩を売れたり、繋がりを持てたりするわけ」
「なるほどなぁ……あれ、ヒバリさん、このあいだ仕事辞めようとしたよね?」
「うん、スズメに危険が迫ってきているなら、家も仕事もどうでもいい」
助手席に座るヒバリさん。相変わらずのハッキリとした物言いで断言する。
「でも気付いたの、スズメを危険にするもの、仕事を理由に合法的に斬れるって」
「仕事を言い訳になんでもやっていいわけじゃないんだよ」
「ノープロブレム」
「問題しかねぇよ……意味分かって言ってる?」
「私は気にしない」
「合ってるけど、より悪い意味になっちゃったね?」
「ぶはっ! くくく……!」
運転席から笑いが吹き出る。
そちらをミラー越しに見れば、市松人形みたいに均等に整えられた短めの白髪で左目を眼帯で隠しており、十代ほどの女の子が肩を震わせていた。
服装は、シャルナさんに似た巫女服姿であるが
「ふふっ……ごめん」
「あ、いえいえ」
「……
「よろしく、ネマさん」
ミラー越しにペコリと会釈したら、すぐに前を向いて運転に集中する。
最初見た時は、眼帯なのに車を運転して大丈夫かと思ったが、いっさい危なげなく進んでいるので、いつの間にか気にならなくなった。
「ネマはあたしと同じで分家の子でね。ちょっとお話しするのは苦手な18歳だけど、運転免許の筆記試験一発合格するぐらいめっちゃ天才なんだよ! あたしなんて4回も落ちたのに!」
「……シャルナは修行と一般学校も合わせて忙しかったから仕方ない」
「私はあと15点まで迫っていたのに、期限がすぎてしまって、兄から試験禁止令を出されてしまった。あともう少しだったのに横暴」
「……ヒバリはただの馬鹿」
「君ら一応従者だよね?」
主である態度が完全に友達のそれである。
そういう世代ってやつなのかな?
「分家は全部で11あるんだけど、私たちの代はガチで親友レベルで仲いいよ!」
「そうなのか。なんだか勝手だけど、もっと分家同士はライバル意識が強いみたいな感じイメージだった」
「というかむしろ調停役しているだけあって、現代の雰囲気をすぐに受け入れるのが伝統的な?」
つまり、今の日本に合わせた結果が、ヒバリさんたちの関係になるのか。
……なんかいいな、こういうの。
「なにより、フクロウ様が私たちの世代だけで交流できるように時間を作ってくれたのが、やっぱり1番の理由になるかな」
「フクロウ様?」
「あの兄の名前」
「ああ、お兄ちゃん。フクロウって名前なのか」
みんな兄としか言わなかったから知る機会が無かったから、ようやく知れた。
薄々察してはいたが、やっぱり鳥の名前だった。
そんで調停役のフクロウお兄ちゃんは、子供の時からすごかったらしい。
そんな人に会って大丈夫かなぁ。1:9みたいな理不尽契約とか気がついたら結ばされそうで本当に怖い……1も残ってるかな。本当にヒバリさんの言う通り暴力も辞さない態度で行ったほうがいいのだろうか。
「……フクロウ様は、シャルナの初恋」
「ちょっ、ネマ!?」
「えー、そうだったのー? その話詳しく聞きたいな~!」
人の恋路は【悪魔】も大好物!
シャルナさんは困ったなぁと、顔を赤らめて髪を
おっと、既に冷めたというには……?
「まあその、子供の時のあたしにとっては頼れるお兄ちゃんだったけど、今は無しよりの無しかな! ほらあの人、スズメちゃん以外は人の事を駒ぐらいしか思ってなさそうな、困った兄ちゃんって感じだからねぇー……まあ、だからこそ振り向いてくれたら……みたいなのはあるけど……」
「ふ~ん」
「な、なにその反応……」
「なんでも~」
バリバリ今でも好きですやん。
まあ、これ以上は聞かないで置こう。楽しいけど人の恋路に深入りは厳禁だ。
だが助手席で不思議そうに首を傾げている長女はどうかな?
「……? シャルナは今でも兄のこと好きだよね?」
「ヒバリ」
「机の引き出しに、“大好きなんだぞ♡”って書いた兄の写真とか入れているし」
「ヒバリ!」
「遅くても2年後には兄の伴侶になるの、すごい楽しみに――」
「ヒバリ! このアホンダラ! マジで言い過ぎ!!」
「……運転中だから暴れないで」
シャルナさんが大慌てで助手席の方へと向かい、後ろからヒバリさんの口を抑える。
「いや、というかシャルナさんって、お兄さんの許嫁なの?」
「いやまあ、ここらへんはしっかり陰陽師系というか、私たち分家の3グループに分かれて、世代ごとに本家と子供を作るんだけど、私がちょうどその世代的な?」
「そ、そうなのかぁ……えっと、それってハーレムっていうか、多重婚で合ってる?」
「合ってるよ」
戸惑いながら聞くと、ヒバリさんが平然と答える。
「陰陽師界隈では普通のことなのか?」
「やっている所はやっているよ。陰陽師の才能は血筋による所が大きいから、宮内庁から正式な許可を貰えば重婚ができる。形体は家によるけど、
「そうなのか……いやぁ、そうなのかぁ……」
結構な衝撃。まさかハーレムが認められる日本だったとは。
まあ、完全に血筋を絶やさないための必要処置っぽい。
それぐらい陰陽師は才能や血筋で決まっちゃうって事なんだろうな。
「だから、私たち兄妹も全員腹違い。次女と三女が同じ年内生まれ」
「あー、そうなるのかー」
「変なのしか産まれないなって思っていたら、まさかスズメという最愛の妹が生まれるなんて、そこだけはあの父親のこと評価している」
「全てにおいて、返事に困るやつ言うの止めて?」
親父さん関係の話題、
……そういえば母親に関しても聞いた事ないな。もしかしたら、兄姉以外の話を避けているのか?
シャルナさんの言い回し的に、同世代は仲がいいけど、親世代以上は、あんましなのかもしれない。
聞いてもいいのか、流石に悩むな~。ヒバリさん聞いた以上に色々と
「まあ、シャルナさんがお兄さんの婚約者なのは分かったよ」
「正直いうと、ちょっと複雑なんだけどねー。でもまあ、なにも無いよりかはね」
我ながらちょろいわーって笑うシャルナさん。
家の事情から来る結婚。複数の奥さんの内のひとり。意中の相手が自分のことをちゃんと
色々と悩みはあるようだけど、幸せになってほしいなと素直に思えた。
「でもどうして、結婚が二年後なの?」
「許嫁の1番下の子が、まだ結婚できる年齢じゃなくてねぇ、嫁ぐ時はみんなでって約束したのよ」
「……仲が良い〜」
――このあと目的地に到着するまでの1時間。陰陽師に関係する話や、あと俺のことも話したりしてあっという間に過ぎ去ってしまった。