陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】   作:庫磨鳥

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悪魔、ラーメンを食べるってよ。

 

「わぁ、めっちゃ可愛い~!」

「えー、まじ~? ありがと~!」

「まじまじ、服もとてもお洒落でマジカワだね!」

「嬉しい、この服、買った所の店長さんと鈴明(スズメ)ちゃんが選んでくれたんだ~」

「そうなんだ、やっぱりスズメはセンスあるねー。ヒバリの時はスズメちゃんのコーデがあまりにも良すぎて、元が無頓着過ぎたからドッペルゲンガーかもって、みんなして御札ペタペタ貼ったぐらいだったし」

「陰陽師らしくてウケる」

 

 ネマちゃんの運転で移動中。流石に【悪魔】の姿のままだと店に入っちゃ駄目だよねと〈影変身〉。

 ミサキちゃん似のベースが似合いそうな美少女の姿へと変わる。

 その姿を見たシャルナさんは最初こそ驚いたものの、今では可愛い可愛いと褒めてくれて自己肯定度と、うちの契約主は可愛いという契約【悪魔】バカ度が上がる。

 

「それにしてもヤマト様、もしかしてラーメンめっちゃ楽しみだったりする?」

「楽しみすぎる。ワクワク【悪魔】さんになりそうで怖い」

「え~、なったらどうなるの~?」

「貧乏ゆすりで、車の床を抜いちゃうかもしれない」

「やばー! ……マジで止めてね?」

 

 お昼ご飯は何を食べようかとなったさい、手を上げたのはネマちゃんだった。

 食べたい店が有るとして来たのはラーメン屋。

 中国から渡ってきたのを魔改造されまくり、アメリカではジャパニーズソウルフードとして超絶人気らしい日本料理。

 全国各地で麺とスープ。スープ、麺、具材など組み合わせは無限大であり、数え切れないほどの星々が輝く宇宙と呼ぶに相応しい料理と言うらしい。

 まあ、前世のラーメンが好きだった仕事仲間がそう熱く語っていただけで、俺は美味しい料理のひとつぐらいしか思っていなかったりするのだが。

 

――“ラーメンは無限大の可能性がある宇宙料理”

 

 俺がラーメンの事を知らないと思ったのか、ネマちゃんが前世の仕事仲間と同じ事を言ったので、本当にラーメンは宇宙の料理かもしれない。

 ネマちゃんのは勘違いにしても、俺にとっては一千年以上ぶりのラーメン。楽しみすぎて肩が揺れてきた。

 

「……ヤマト様って、濃い味が好き?」

「ん? まあアッサリしたのも好きだけど、せっかくだから濃いのが食べたいかな?」

「……行くの別の店にする」

「あ、そういう話だったの?」

「……ヤマト様が初めて食べるラーメン……これに今後のラーメンとの付き合い方が変わってくる……手は抜けない」

「そこまで重いこと考えなくていいからね!? それこそまた連れてってくれたらいいから」

「……何事も最初が肝心」

「あー、ネマのラーメン魂に火が付いちゃったね~」

「本当に好きなんだね」

「ネマはネットでラーメンブログを作っているぐらいガチLOVEだからね。陰陽師界隈ではそっち方面で結構有名だよ!」

 

 今どきブログって言葉を聞くとは……いや、陰陽師はガラケーだからSNSよりもブログの方がいいのか?

 なんにしてもネマちゃんのラーメン大好き具合は想像以上のようで、そんな人が選んでくれたとなると、どうしても期待値が上がってしまう。

 

「……ネマ、一応聞くけどどこ行くつもり?」

「熊本県」

「流石に遠いね?」

 

 別に俺だけなら〈影の門〉を通って帰れると思うけども、明日も仕事があるみたいだし、行きだけで夕食になっちゃうので東京都内のラーメン店に絞ってもらう事にした。

 

 +++ 

 

 大体30分ほどで、目的地のラーメン店へと到着。

 まだ開店時間ではないのだが、既にお客さんが十人ほど並んでいた。

 ただ列整理をしているスタッフさんが言うには、これぐらいならテーブル席に問題なく座れるようなので開店直後に入れるとのこと。

 

 俺たちが並んだのは『ラーメン屋 ナナゴニ』。

 経営している家族三人の誕生月を合わせた名前らしい。

 かなり歴史がある店らしいが、十年前に息子が継いだ時に店舗を改装、ラーメンもより美味しく改造した事で、ネットで大バズり、世代交代で大成功を収めた店としても結構有名とのこと。

 

 そんな店が出すラーメンスープのベースは醤油豚骨。味はこってり濃厚であるがクドさは控えめであり、女性人気も高い。

 先代が開発したこだわりのこってりスープに、二代目が開発した味付き麺を絡めて(すす)った時の美味さは、この店でしか味わえないものらしい。

 そうネマちゃんが並んでいる間に語ってくれた。静かに情熱的に語る様子から、本当に大好きなんだなというのが伝わって来る。

 

「ネマ~、そろそろ開店するから落ち着きな〜」

「はっ……ごめん、語っちゃった」

「全然いいよ、気にしないで」

「……オタクじゃない人にオタクトークをするのは、どの業界でも愚の骨頂……それにラーメンは千差万別。好みはひとそれぞれ違う……どれだけ美味しくても合わないものがある……だから食べる前に解説するものじゃない」

 

 列に並ぶ何人かが、うんうんと同意する。

 君たち聞いていたのね?

 

「確かに押し付けは良くないと思うけど、ネマちゃんの話を聞いたおかげで最高のコンディションになってるよ。むしろありがとうって言いたいぐらい」

「……ほんと?」

「おう。多分俺だけで行ったら店の事とか知る機会とか無かったしね。話を聞いてて本当に楽しかったよ」

「……神」

「違うよ?」

 

 むしろ【悪魔】だよ?

 列に並ぶ人も、神って言うけどむしろ逆だからね?

 おい誰だいま、オタクに優しいギャルって言ったの?

 ギャルを神の一種だと思ってる?

 

「……ヤマトは神?」

「違うからね? 本当に違うからね?」

 

 キラキラとした片目を向けてくるネマちゃん。なんだか物静かな所もあって、何処となくミサキちゃんにそっくりに思えた。

 なんだか、この日本で神って言われると、ものすごく不味い気がするので、ここはハッキリと否定しておく。

 あと、ネマちゃんの眼帯がちょっと動いたのは見なかった事にした。

 

 それから数分後、お店がオープン。店員さんの指示に従って中へと入る。

 店内は想像以上に広く、聞いていた通りにテーブル席もあって、ネマちゃんの予想通り奥側へと案内される。

 

「……ここはQRコードを読み込んで注文できる……全員トッピングなしでいい? 白米はつける?」

「ネマに任せる」

「あたしも~」

「俺はご飯欲しい」

「……分かった」

 

 やっぱり“炭水化物(ラーメン)”に“炭水化物(ご飯)”は欠かせないよな。

 ネマちゃんは慣れた手つきで、注文を終わらせる。あとはラーメンがやってくるのを待つのみである。

 それまでどうしようかなと、何気なくシャルナさんを見ていると、かなり(デコ)っているスマホを取り出して高速打ちを始めた。

 

「……ん? ごめん、なにか用事?」

「あ、いや悪い。スマホ打つの速いなって思って見てただけなんだ」

「そゆことね、(りょ)。この待ち時間中に提出する報告書を書こうかなって思ってね~……あ、ヤマト様の事は、ちゃんと誤魔化しておくから安心して」

「そうしてくれるのはありがたいが、いいのか?」

「まあ、嘘は吐かなくてもなんとなかりそうだし、オッケーかな!」

「シャルナは報告書を書くの凄く得意だから、任せていいと思う」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、隊長としてヒバリが書かないと行けないのも、私がやっている事に関して何か言うべき言葉あるんじゃないの?」

「私がやると、時間の無駄だからシャルナに任せるのが1番良い」

「だったら、ちゃんと感謝しろ~」

「してるよ。シャルナが居ないと仕事できない」

「ヒバリ! そんな風に私を思って……だったら、急に辞めるとか言わないでくんない?」

「何よりもスズメが優先されるので、仕方ないぃ~~」

 

 シャルナさんのほっぺた引っ張り攻撃がヒバリさんに襲いかかるが、あまり効果はないようだ。

 

「おまたせしました、横から失礼します~」

 

 本当に仲がいいなと微笑ましくみていると、注文してきたラーメン4つと白米がやってきた。

 

「う、美味そう……」

「……ふふん……食べるのは、お箸でいい?」

「いいよ、ありがとう」

 

 話に聞いていた通りのチャーシューと煮卵だけが入った、見るからにこってりとした感じのラーメンに、無意識に感想が出てきた。

 その反応が見たかったと、ドヤ顔するネマちゃんから箸を貰う。

 

 「ネマちゃん、やっぱり先にスープを飲んだほうがいいの? めっちゃ(すす)りたいんだけど、いいかな?」

「……好きに楽しむ、それが1番」

「分かった」

 

 最初にどうしてもラーメンを(すす)りたかった。

 料理が出されたのなら、あとは食べるのみ。姿勢を正して両手を合わせる。

 

「頂きます!」

「……いただきます」

「お、じゃあ私も頂きます!」

「いただきます」

 

 俺が声に出すと、ネマちゃん、シャルナさん、ヒバリさんが続いてくれる。

 割り箸で麺を持ち上げる。【悪魔】の口は大きく、たぶん麺を(すす)れそうにない。

 だから、たとえ姿で店に入れたとしても、この時ばかりは人の姿で食べていたかもしれないな。

 

 腰を曲げて、なるべくテーブルに近づけると共に、麺を口元へと近づけて――。

 

 ――ズズッ……ズズッ……。

 

「う、美味ぇ!?」

 

 な、なんかすごい美味い。いや本当に美味い。

 こってりではあるけど、あまり脂っこくなくて、すっと食える。

 麺自体にも味があって、絡んだスープの味と混ざりあって、すごい美味い。

 でもこれ本当に豚骨醤油かって思うほど味が複雑、なんか俺の知らない食い物(ラーメン)

 ネマちゃんの話によると、本来であれば豚骨スープに混ぜないような企業秘密の食材で出汁を取っているらしいんだけど、それが何なのかは全然分からないけど美味い。

 なんにしても“美味い”という単語が、脳みその無い頭の中に詰まっていく。

 

「……どう?」

「マジで美味(うま)過ぎる。美味(うま)すぎて【悪魔】の語彙じゃ説明ができないぐらい美味い」

「……やった」

 

 静かにガッツポーズを取るネマちゃんも、ラーメンを(すす)ると、ペカーって音が聞こえるぐらい今日1番の笑顔を見せる。本当にラーメンが好きなんだな。

 

「……ヒバリはどう?」

「濃いけど美味しいね」

「それハンバーガーの時も言ってたけど、ヒバリさんってさっぱり系が好きなの?」

「ヒバリの場合は、スズメちゃんのご飯か私たちが誘わないと、いっつも蒸し鶏かブロッコリーぐらいしか食べないから舌が敏感なんだよ」

「そんなスポーツ選手みたいな食生活してるの?」

「呪力の中に変換できない栄養があって……なんだっけ?」

「質問を質問で返されましてもね」

「……思い出した。“パクパクシチュー”は変換できないから、優先して取ってる」

「…………蛋白質(たんぱくしつ)か」

「そうそれ」

 

 よく正解に辿り着いた俺、これは内心で自画自賛していいやつ。

 しかし、呪力っていうのは知れば知るほど俺の知らない未知エネルギーだな。どういう原理でカロリーとか栄養とかに変換しているんだろう。

 ヒバリさんに聞けば答えてくれるけど、ラーメンが伸びちゃうので、また今度気になったら聞こう。

 

 ……このラーメン、ミサキちゃんと鈴明(スズメ)ちゃんにも食べてもらいたいな。

 最初は美味しかったらまた今度みんなで食べに行こうと思ったけど、ここまで美味すぎると、いま食べてほしいと思ってしまう。

 

 でも今から呼ぶにしたって、まだまだ行列は続いており、ずっと居座るのは悪いし、ウーバーみたいなのはやってなさそうだな。

 流石に無理か……いや、そういえば俺って【悪魔】じゃん、“無理”を解決する手段があったわ。

 後は許可だな。マナー的にはあんまり良くない事だろうし、三人に止められたり、店が駄目って言ったら素直に諦めよう。

 

「あのさ、ちょっと相談があるんですけど……」

 

 +++

 

 ――我が家の居間では、鈴明(スズメ)ちゃんがミサキちゃんに勉強を教えていた。

 鈴明(スズメ)ちゃんは時間の許す限り見てくれており、ミサキちゃんも学びたいと頑張っている。

 とは言えまだ始めたてもあって、まだまだどうやって教えていくか学んでいくか手探りの段階。今はとにかく生活に必要となる、小学1年生レベルの国語や算数から教えていっているそう。

 

 今日も頑張っているなと思っていると、ミサキちゃんのお腹が小さく鳴った。

 これはグッドタイミングだったようだ。

 

「……お腹すいた」

「そうですね。ちょうどいい時間ですし、お昼にしましょうか!」

「はい」

「今日はお弁当をご用意できなかったので……そうですね、家の外に出るわけにも行きませんし、良かったら出前を取りましょうか」

「“でまえ”?」

「ネットで注文した料理を届けてくれるサービスの事です。ちなみにミサキちゃんは、なにか食べたいものがありますか?」

「――じゃあ、ラーメンとかどう?」

「いいですね! 私も久しぶりに食べたいです……あれ? 今の声ってミサキちゃん……?」

「ううん、ヤマト……“らーめん”って美味しい?」

「めっちゃ美味しいよ」

「らーめん、食べたい」

「じゃあ、少々お待ちを~」

「あれ? え? 帰ってきたんですか? ……え、今の何処から……!?」

 

 悪戯心が(うず)いてしまい、戸惑っている鈴明(スズメ)ちゃんを放っておいて、早速2人分のラーメンを注文する。

 

 ――数分後。

 

「お待たせしました~。“テーブルの上”から失礼しますね~」

「あ、ありがとうございます……なんだか“テケテケ”みたいですね」

「まあまあ、そこはあんまり気にしないでラーメン食べて」

 

 テーブル上に出した〈影の門〉から上半身だけを出して、ラーメンを届けに来た()に、鈴明(スズメ)ちゃんは、どう反応していいか分からないといった感じの苦笑をする。

 うん、せめて【悪魔】の姿だったら、まだマシだったかもしれないけど今は女性の姿だからね。(はた)から見たら、正に昔聞いたことある“テケテケ”の姿に見えて、シュールで怖いだろうな。

 

「それにしても、これって店の丼ですよね? 大丈夫なんですか?」

「うん、シャルナさんが店長さんと話して許可貰ってくれた。食べ終わったら俺が返しに行くから任せて」

 

 無理は承知のお願いだったけど、シャルナさんには本当に感謝だな。

 

「ということで、熱い内に食べてね~」

「はい、ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」

「ラーメン、美味しそう」

「本当ですね。まさか家で食べられるなんて思いませんでした」

「“でまえ”、すごい」

「合っているんですけど、間違っているといいますか……ま、まあ食べましょうか、いただきます」

「いただきます」

 

 そんな二人の会話を聞きつつ、〈影の門〉の中へと入る。

 お金だけ渡して、このまま帰ろうとも思ったが、シャルナさんが話したいことが有るようなので、ラーメン屋へと戻ってくる。

 

「ただいま~」

「おかえり、スズメはどうした?」

「ミサキちゃんの勉強を見てくれていたよ」

「そう、妹同士が仲が良いならお姉ちゃんとても嬉しい」

「ミサキちゃんのこと完全に妹にしちゃってる?」

「何を言っているの? ミサキは元から私の妹」

「存在しない過去を捏造するな」

 

 ミサキちゃんを好きになってくれるのは嬉しいんだけど、妹に関して暴走したのを体験しているので、素直に喜べない。

 というか、シャルナさんとネマちゃん静かだなと思ったら、俺を見て唖然としていた。

 

「どうしたの?」

「いや、話は聞いたけど、いざ実際に見てみると本当にワープできるんだなってマジビックリしてた」

「やっぱり珍しいものなのか? 俺からするとヒバリさんの触れたら何でも消滅される光の剣も相当だけど」

「……ヒバリのも大概……でもヤマト様のは正しく神の御業……ヤマト様はやっぱり神様?」

「【悪魔】です」

「転移系の術は今までも開発はされているけど成功しているのは、生きていない物ばかり。生き物は移動が耐えられなくて、上手く行った試しがないよ……だから、ヤマト様、私と真銘契約して〈影の門〉を使わせて」

「前半と後半を繋げてから話してくれない?」

 

 その話が本当だったら、絶対〈影の門〉に人間を通したら駄目じゃん。

 

「理由は分からないけど、ヤマト様の〈影の門〉ならいけそうな気がしている」

「根拠! 直感じゃなくて根拠が欲しい!」

「実際、人が使えるなら超便利だけど無理そう?」

「俺も良く分からないから、やってみない事にはって感じなんだよな」

 

 それこそリヒトという前例は居るけど、俺の子だから異例である可能性が高いしなぁ。

 

「どこか調べられる所があればいいんだけど、あいにく伝手が無くてね」

「おっ、じゃあ余計なお世話にならなそうで良かったですなー」

「ん?」

「さっき話があるって言ったよね。実は車内で自分の事を調べられる場所を探してるって言ってたでしょ?」

「そういえば言ってた」

 

 竹蟹がいる森へと行くまでの間、何時間も喋りまくっていた中で、自分のことを調べたいとシャルナさんに話していたことを思い出す。

 

「だから私の方で出来そうな場所に連絡してみたよ。鈴明(スズメ)ちゃんは陰陽師の方だと、知らない事も多いと思うしね。そんで良いよって連絡が来たから、ヤマト様が良ければだけど行ってみない? ちなみに知り合いに頼んだから費用もかからないよ」

「す、隙がねぇ」

「ふっふっふ、伊達にヒバリの面倒は見てないからね!」

「いつも助かってる」

「だったら、もうちょっとは大人しろ~」

「それは無理な相談」

「少しは悩めっ!」

 

 まったくこいつはと言いつつも、少し嬉しそうにするシャルナさん。

 本家と分家、主従で上司と部下であるものの、友達みたいに仲が良いという言葉が嘘偽りではない事が伝わってくる。

 

「まあ、折角だからありがたく行かせてもらうよ」

「じゃああっちにそう伝えておくね! あ、一応なんだけどこれが調べる場所ね」

 

 そういって、スマホの画面を俺に見せてくれる。

 

「……なんかバリバリに近代的で科学的(サイエンス)な施設だね」

「世界最大の陰陽師研究機関、桔梗(ききょう)家が管理する“本殿(ほんでん)”だよ」

「あ、これで陰陽師系なんだ」

 

 もう建物から見た感じ、何かを研究しますといった感じの現代施設に、ちょっとだけ本当に行っていいのか不安になる。

 それにしても桔梗家って何処かで聞いたことがあるような。

 ……そうだ、俺が日本に来た日に名前を聞いたんだ。

 なんでも“悪魔の子”の『因子』を発見した四大陰陽師家のひとつだったか。

 それ以外に何も知らないが、この情報からしても研究気質の陰陽師が多いって感じがするが、どうなんだろう。

 

「まあ、流石に創作に居るようなマッドな博士みたいなのは……」

「たくさん居るから、行くならあんまり目立たないようにしたほうが良いよ」

「え、怖い」

 

 やっぱり断ろうかなとちょっとだけ考えたが、シャルナさんのご厚意も無碍にしたくないのと、自分の事を早めに調べたいので、行く事に決めた。

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