陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】   作:庫磨鳥

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悪魔、スマホを手に入れるってよ。

 

 初仕事をしてラーメンを食べた日から二日後。

 俺とミサキちゃん、そして鈴明(スズメ)ちゃんの三人は桔梗家の“本殿”へと行く事となった。

 桔梗家は四大陰陽師家のひとつであり、陰陽師と『人外存在』に関わる事柄全てを研究している。そのため本家が管理する現代的で科学(サイエンス)的な本殿の設備なら、なにか分かるかもしれないとのこと。

 なので、俺の体や【権能】の事もそうだけど、普通の人とは違うミサキちゃんについても調べようという事となり、鈴明(スズメ)ちゃんに関しては俺の巫女さん。管理人という事で同行するとなった形だ。

 

 てなわけで、俺たちは出発前の朝食を食べていた。

 鈴明(スズメ)ちゃんが用意してくれた本日の献立(こんだて)はトースト、目玉焼きとソーセージ、サラダとオニオンスープという洋食系。

 昨日、何気なく食パンが食べたいなと口に出したら、今日の朝、鈴明(スズメ)ちゃんがガスコンロを持参。スープ以外の朝ごはんを、電気の通っていない我が家で作ってくれた。

 調理するところを見ていた俺とミサキちゃんは、しっかりとお腹を空かせて頂きます。

 出来たてというのもあって、最高に美味い。

 これもまた日本の朝食だ。

 

「――ご馳走様でした。鈴明(スズメ)ちゃん今日もありがとうね、すごい美味しかった」

「ありがとうございます! ……それでヤマト様、食事後すぐで申し訳ありませんが、こちらをお納めください」

 

 食べ終わってすぐ、鈴明(スズメ)ちゃんが細長い箱を差し出してきた。

 

「これって?」

「スマホです」

「え、ほんと!?」

 

 スズメちゃんが丁寧(ていねい)な所作で箱を開くと、中にはピッカピカの新品黒色のスマートフォンが入っていた。

 

「サイズは【悪魔】の姿の時に合わせて最大に、色はオニキスブラックにしました。すでにこちらの方で契約と設定は済ませておきましたので、電源を入れてもらえればすぐに使えます。また性能の方ですが通信規格は5G、容量は512ギガバイトとなっていますが、必要なセキュリティと対陰陽術用のファイヤーウォールを入れましたので自由に使えるのは三分の二ほどとなっています」

「すごい高性能だし、これ新品だよね? 高くなかった?」

「ま、まあ結構それなりに……で、ですが、二世代前の機種で予算内には収まりましたので、あまり気にしないでください!」

「……分かった、いつもの事ながら、本当にありがとうね」

 

 型落ち品にしたって、コレだけの性能となれば良いお値段になるはず。

 前世では物価高も相まって15万ぐらいだったのを覚えている。その時は流石に高すぎて中古屋に直行したな。

 俺の手の平と比べて、小さな平べったい物体ではあるが、このスマートフォンというものは非常に高価なものであり、タダで貰うには本当に申し訳ない気持ちになる。

 だけど既に用意してもらった以上、遠慮しちゃうほうが鈴明(スズメ)ちゃんが困ってしまうのだろうし、〈影鴉(かげからす)〉以外の連絡手段は必須。素直に納められて喜ぶ事にする、ひゃっほい。

 

「あ、そういえば陰陽師的にスマホって危険なんだよね? 今更で申し訳ないけど俺もガラケーの方が良かった?」

 

 陰陽術や『人外存在』の中には性能の良い携帯端末を介して影響を与えて来るものが居るらしい。

 そのため陰陽師たちは、身の安全を守るためにガラケーを使っているんだとか。

 鈴明(スズメ)ちゃんに、携帯端末はスマホで良いですかと聞かれた時は、この事情を知らなくて何も考えずに頷いちゃったのだが、大丈夫だったのだろうか?

 

「い、いえ、念入りに対策を行いましたし……その、危険なのは陰陽師といいますか、人間だったらの話なので……多分、ヤマト様だったら大丈夫かなと判断しました」

「あー……返り討ちする場合って、どこまでセーフだと思う?」

「……じ、『人外存在』が相手だった場合は法の対象外ですし、陰陽師だった場合は……陰陽師法に則った正当防衛が適用されます!」

「じゃあ大丈夫そうだね!」

 

 となれば課題は遠隔攻撃してきたやつを、どう見つけるかだけど、その辺は実際にされた時にでも考えよう。

 スマホの電源を入れて起動する。リンゴのロゴは出ないけど、この世界にあるのかな?

 まあ、俺はAndroidも使っていたから、どっちでも有りだけど、それとも全く違うやつなのだろうか?

 

「大きさはどうでしょうか? 最大のものをお選びしましたが」

「俺の手だと、どうしても小さい所はあるけど問題なく使えそう。でもこの(するど)い爪で触ったら画面傷つくよな……」

「画面の事なんですが、事前に強固な保護フィルムを貼りましたので、試しに触ってみてください!」

鈴明(スズメ)ちゃん流石過ぎる~。気配りの化身~」

「そ、そんな、偶然思いついただけなので、余計なお世話じゃなかったのなら幸いです」

「余計なんて無いよ。鈴明(スズメ)ちゃんには何時も助けられている」

「そ、それなら良かったです……」

 

 鈴明(スズメ)ちゃんは照れくさそうにしながらも、笑ってくれる。

 俺のお世話をしてくれたり、ミサキちゃんの勉強を見てくれたり、今日みたいに用事に同行してくれたりと、本当によくやってくれている。

 本人は俺の契約を守っているだけって言うけど、やっぱり初給料を使って鈴明(スズメ)ちゃんにお返しをしたいよな。

 あのデパートはいま休業しちゃっているし、それこそスマホでネット注文するのもありかもしれない。

 そのためには、この【悪魔】の手でスマホを操作できるかだな。もしこれが駄目なら触るために〈影変身〉で人間の姿にならないと行けなくなるけど果たしてどうか。

 

「お? ちゃんと反応してる」

「よ、良かった……実はちょっと心配でした」

 

 爪先で触ってスッと横に動かせばホーム画面が切り替わった。それから何度か触ってみるが偶然ではなく、ちゃんと動かせた。

 前世では体の一部と言っても過言ではなかったスマホ、いざ久しぶりに触るとなると動かすだけで結構楽しく、色々と確認していく。

 そう言えばWi-Fi無いのか、だったらまずはデータ通信量を確認だな。

 確か左端の画面にそれっぽいのが……え? 無制限!?

 有り難いけどいいのかな? 一応毎月の携帯料金見ておこう。

 見たことない検索アプリを押すと、問題なくネットも繋がった。

 お、なんだか目立つ所にメモ帳アプリがある。中を確認してみるとパスワードと書かれたメモがあった。

 中を見るとこの携帯操作に必要なパスワードが書かれてあった。その下には、この英数字の羅列(られつ)がどういうものか事細かく書いてあり、お好みで設定を変えてくださいと書いてある。

 これも鈴明(スズメ)ちゃんが用意してくれたようで、後で読んで設定を確認しないとな。

 お、見覚えのある動画アプリとSNSアプリ入ってるな、これで夜ふかしも余裕になっちゃったな。

 今はあんまり使わないかもだけど、陰陽師の事を調べるか。

 あ、そうだそうだ。カメラあるんだ。早速思い出作りにミサキちゃんと鈴明(スズメ)ちゃん撮っちゃおうかな!

 

「……ヤマト様、なんだかスマホに慣れていますね?」

「……【あーくま】のっちっからぁーで、身ーにーつーけーた~」

「え? ……あ、な、なるほど~~」

 

 歌って誤魔化すと、鈴明(スズメ)ちゃんは全然納得してないものの、察してくれたようで話を終わらせてくれた。

 

「とにかくありがとう、これ本当にいいよ」

「喜んでくれたのなら何よりです! あとですね、ミサキちゃんの分も携帯を用意したので、後で渡しますね」

「モグモグ……携帯って遠くの人とお話しする道具?」

「はい! 昨日教えたのを覚えていてくれたんですね」

 

 黒ジャージのミサキちゃんはまだ食事中。基本的に俺の方が食べ終えるの早いんだけど、日が経つにつれてミサキちゃんの食べる量が徐々に増えていっている事もあって、さらに時間が掛かるようになった。

 その事に関しては物凄く良い事であるが、ミサキちゃんの場合は体の事もあるから、だからといって多く食べさせていいのかと不安がある。

 そのため今日の検査でミサキちゃんの事についてもなにか分かればいいな。

 

 「ミサキちゃんにはガラケーの方をご用意しました。今だとトラブルが発生してしまう可能生があるので、ネットは制限を掛けさせてもらっていますが、これさえ有れば遠くに居ても私といつでもお話しできます!」

「いいの?」

「もちろんです。ご飯が食べ終わりましたら、使い方を教えます。これから沢山お話しましょうね!」

「……はい、ありがとうございます」

 

 ミサキちゃんがガラケーなのは、安全面を考えてくれたからだろう。

 何にしても、これで何かあった時は電話を使って連絡ができるので本当に助かる。

 色々と操作している途中で電話帳を見れば[ミサキちゃん][鈴明(スズメ)ちゃん]、そして[ヒバリさん][シャルナさん][ネマちゃん]と、出会った事がある人たちの連絡先が登録されていた。

 

「……そういえばヒバリさんたち、仕事終わったのかな?」

 

 桔梗家本殿への道中はネマちゃんが運転してくれる事となり、本殿の案内はヒバリさんがしてくれる事になっている。

 だけど宮内庁の人手不足によって神罰隊は忙しいらしく、今日の深夜から現場に行って倒さないと行けない『人外存在』が居るとのこと。

 その仕事が終わり次第来てくれると言うけど、それが何時になるかは分からない。

 そもそも夜勤明けで大丈夫なのかと聞いたら陰陽師の仕事は相手次第で時間を調整するのが当たり前らしいので、そこは気にしなくていいらしい。

 むしろ『人外存在』が想定よりも厄介で、時間が掛かってしまう事だけが気になっているとの事。ここで負けるとか言わないのを見て、彼女たちはプロなんだなと思った。

 

「もうすぐ予定の時間だけど……1回こちらから電話した方がいいかな?」

「先ほどメッセージを送ったんですけど、まだ反応は無いですね」

「……もしかして、何かあった?」

 

 あのヒバリさんが鈴明(スズメ)ちゃんのメッセージを見逃すとは思えない気がして、不安になる。

 

「まさかお姉ちゃんに限って……念のためにシャルナさんたちに掛けてみます!」

 ――お姉ちゃんがやって来たぞ!

「ごめん、超いらぬ心配だったわ」

「あ、いえいえ~」

 

 玄関の扉が開くと共に、聞き覚えがある大声に不安にさせてしまった俺は頭を下げる。

 ちなみにヒバリさんが出なかったのは、またガラケーを落としたからとのこと。

 そういえば、俺の時もそうだった事を思い出す。

 ……〈影鴉(かげからす)〉1羽付けるか提案してみるか?

 いや俺が不安になっただけで、ヒバリさんは子供じゃない。流石に余計なお世話か……でも一応シャルナさんは相談してみようかな。

 

「まあ、ヒバリさんたちも来たことだし、ミサキちゃんも食べ終わった?」

「はい、ご馳走様でした」

「よし、それじゃあ桔梗家本殿に行こうか」

「はい!」

 

 いったい調べるって何をやるのか、ちょっとだけ不安と、自分自身の分からなかった所が分かるかも知れない楽しみを抱えながら、俺たちはヒバリさんたちが待つ廊下へと向かう。

 

――――――――――

【あとがき】

 

近況ノートにて陰陽師【悪魔】:短編 リヒトside ⑥⑦⑧⑨を更新しました。もしよろしければ見てください。

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