陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】 作:庫磨鳥
――この世界には、生物とは違う存在が
人間ともつかず、動物とも言えない。かといって無機物でもない。
されど確かに存在しているもの。『人外存在』。
そんな『人外存在』たちに、術を持って対抗する生業こそが『陰陽師』というものらしい。
「……妖怪じゃなくて、『人外存在』?」
「『人外存在』は妖怪や幽霊など、人外なるものを総称した言葉になります。今まで全く違う存在だとされていましたが、全て『妖力』によって構成されている存在である事が分かった事で、データを管理しやすいようにまとめられる事となりました」
また、それに合わせて今まで対応する『人外存在』によって名前が違っていた職業も、呼び方がまとめられるようになった。
妖怪相手なら退魔師。
幽霊相手なら霊媒師。
怪異相手なら語り部。
神様相手ならは神職。
それがまとめて『陰陽師』となったらしい。
「ややこしくない?」
「あ、あくまでもデータ管理上の総称なので、専門に
むしろ、自称が多かったから、まとめた呼び方が必要になった感じかな。
「なんでまとめた呼び方が陰陽師になったんだ?」
「……1番影響力があったといいますか、大きな組織が持っていたのが、陰陽師界隈だったので」
「民主主義の結果か」
「えっと、平たく言えば、はい……それに名前だけではなく、
社会だなぁ。
「それにしても
「……その、桜間家は四大名家の1つで、私は桜間家五人兄弟の末妹なんです」
「そうだったの!?」
「はい、それで必要な事だからと、いくつか兄から聞き及びました」
というか、すごい偶然。
これも日本の神様のご加護かな?
ん? そんなお嬢様なら、
「そんな凄い名家生まれの
「……私、陰陽師学校の学生なんですが、あの廃墟には学校の補習課題で調査に来たんです。だれでも達成できる簡単なものだったんですが、どうしてか青鬼が居まして……」
「なるほどなぁ」
「もしかして聞いちゃいけないやつだった?」
「い、いえ、恥ずかしい話ですが大丈夫です」
話に聞けば、
だけど、桜間家に生まれた子として陰陽師の世界に関わらなければならず、親の意思によって強制的に入学させられた。
その結果が、現場で危険な鬼と出会って死にかけるか。ガチで世知辛れなぁ。
「
「……陰陽師の家に生まれた以上は覚悟の上です……それに、私は兄弟仲が良く、食べるものに困った事がない環境で勉学できる恵まれた日々を送れていますので、これぐらいは……」
「いやいや。悩みなんて人それぞれだから。俺だって悪魔パワー持っていて人間よりかは強いと思うけど、人間みたいにはなれないなって思ってたりするからね」
この大きくて爪先が鋭い手は、かなり不器用だ。【地獄】で日本みたいに文明を築きたいなんて思っていたけど、全部失敗した。
日本の記憶と【悪魔】の力。生まれながらに持っているものが、必ず自分を幸せにしてくれるかは分からない。
「だから、あんまり恵まれてるから、悩みなんか持っていけないって思いなさんな。これ【悪魔】として生きてきた経験則」
「わ、分かりました……あの、ありがとうございます」
「いやいや、むしろ固くてパサパサなこと言って悪かったよ」
「いえ、とても嬉しかったです」
「あー、そうかい……まあ、それなら良かった」
疑うこともできないほど素直な感謝の言葉。ほんと良い子だなぁ。
「それで、他に聞きたい事はありますか?」
「そうだな……悪魔って架空の存在って聞いたけど、どうなの?」
「そうですね。私たち日本陰陽師の考え方としては、悪魔と定義できる『人外存在』は、ヤマト様以前は存在せず。語られてきたものは全て違う『人外存在』であり、自分たちが信じてきた悪魔は、完全なる架空の存在だと認定されています。その理由には西洋の『人外存在』が深く関わっているのですが……長いです」
「大変興味深いけど、また今度にするよ」
「わかりました」
かなり複雑そうで触りを知るだけでもとても長そうな歴史の話の予感。果たして聞く機会があるのかは、未来の俺が決める事だろう。
まあ、そういう事なら俺の前に【地獄】から、【悪魔】がやってきたってのも無さそうだな。
「じゃあさ、“悪魔の子”ってなに?」
「これ、だいぶ聞いちゃいけないやつ?」
「いえ、そういう訳じゃなくて……現在、人間には特別な『因子』と呼ばれるものを持っている事が分かりました」
「あ、分かった。その『因子』を持つ人間が、悪魔の子って呼ばれているんだ」
「はい……それでですね……ちょっと待ってください」
これから口にする言葉を決して間違ってはいけないと言わんばかりに、
「……この『因子』を持っている人は、陰陽師として高い素質が有るとされています。ですが、まだ研究段階でハッキリとした事は分かっていません……なのに今からちょうど20年前。どうしてだか、この『因子』を持つものは『人外存在』に狙われやすく、周囲に被害を及ぼす可能性がある“悪魔の子”という印象が爆発的に広まり、定着してしまったんです」
なるほどなぁ。
つまり、悪魔の子は、完全な風評被害によって生まれた差別用語ってわけね。
「もしかして、かなりクソボケ案件?」
「……そうですね。それから、大人になれば『因子』の影響が弱くなってしまうが、子供の時は強く『人外存在』を呼び寄せやすいという、新たな説も同じような広がり方を見せて、心配になった親が特殊な装置で自分の子に『因子』が有るのかを調べるケースが多発……現在に至るまで、それが原因のトラブルが多発しています」
「マジでクソボケじゃん」
思った以上に、深刻な話だった。
なに? この日本って全国レベルで因習村化でもしてるの?
「……実際、その『人外存在』を呼び寄せるってあたりは事実なのか?」
「分からないそうです。完全に証明するには、長期的なデータ必要なので、完全に結果が分かるには、少なくともあと10年必要になるらしくて」
「それ知ってる、悪魔の証明って呼ばれるやつ」
「はい……」
本当に酷い話だ。
「──
「や、ヤマト様?」
「確かに社会って良いところばかりじゃないよ、仕方ない事情だってある。でもね、俺は“日本に平和”でいてほしいわけ。なのに根も葉も無い噂を信じて差別が流行ってる日本なんて――平和とは言えないよね?」
――言い終わって感情的になっていた事に気づく、しまったな、
謝ろうとしたが、その前に
「わ、私たち桜間家は、悪魔の子のイメージ回復および保護を率先して行っています! ……ですが、“不思議”な事に誰も取り合ってくれず、あまりうまく行っていません」
「……それって、誰かに邪魔されてない?」
「えっと、その、そこまではちょっと……も、申し訳ありません……」
うん、やっぱり正直すぎるよ
どうにも、悪魔の子の話を聞いていると不審というか、悪魔の子を広めたかった奴が居るような気がする。
そういえば、1つ心当たりというか、関係がありそうな名前を聞いたな。
「……
「え? ど、どうしてその名前を!?」
「知ってるの?」
「は、はい。桜間家と同じく、四大陰陽師家の1つでして……悪魔の子の『因子』を発見できる装置を開発した所です」
「絶対、そこら中から恨まれてるじゃん」
「はい……最近まで、あんまり目立っていなかったんですが、それはもう……」
きっとネットに検索したら、全ての元凶っていう書き込みが万バズしてるんだろうな。
「で、ですが、開発下だからこそ桔梗家は誤解であると発信し続けています! ……“不思議”な事に上手く行っていませんが」
「不思議な事にねぇ」
だったら、あの白装束たちは桔梗家に復讐するために集まった悪魔の子の団体か?
――いや、
だがリーダーっぽい白装束は声や体格的に間違いなく、低く見ても30歳以上だとは思う。
――滅茶苦茶怪しいな。絶対何かある。
「まあ分かったよ……他にも聞きたい事があるが一気に詰め込んで覚えられるほど頭は良くなくてね。今日はこのへんで解散しようか」
「分かりました。それでは明日、食事など必要な物を持ってきますが、何時ごろ来ればよろしいですか?」
「昼前ぐらいでいいよ……その時に、あ、俺のこと他の皆には内緒ね」
「わ、分かりました。決してヤマト様の事は言いません……というか、ヤバすぎて言えません」
聞こえてるよ~。
ともあれ、明日ミサキちゃんの事を話そう。
今後、どういった生活をしていくかは、まだなんとも言えない。だけど、ミサキちゃんとの日本での生活は山の中でヒッソリとしたものではなく、堂々とはしゃいで楽しめるようなものにしたい。
そのためにも
「それと明日大事な話があるから、そこん所もよろしくね」
「わ、分かりました。心から覚悟して来ます!」
「いや、来る時は気軽でいいよ……ああ、それと初回サービス特典で、今日、この家に案内した〈
「え?」
「このカラスは俺の【権能】で生み出したやつでさ。簡単な指示なら言うこと聞くし、色々と便利だよ。いま外に居るから帰る時に持って帰ってね」
まあ、〈
流石に、出会ったばかりの良い子をすぐに信用するわけにはいかないだろうから監視も兼ねた護衛だ。今日みたいに命の危険が少なくないのが陰陽師っぽいからな。
まあ、今のところは監視の方がメインだけど。
「あ、ありがとうございます!」
「なんのなんの。それじゃあ今後ともよろしくね」
こうして、
これから、どういう付き合いになっていくのかは分からないけど、日本にこれて良かったと思える出会いだったのは間違いない。