陰陽師が居る日本に召喚されたのは元日本人【悪魔】   作:庫磨鳥

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悪魔、裸を見られるってよ。

 

 朝になったら、どう動こうか考えていたら朝になっていた。

 この体は【地獄】と変わらず、眠らなくてもいいらしい。

 ミサキちゃんは、まだ気持ちよさそうに眠っている。

 

 昨日、鈴明(スズメ)ちゃんと話しているうちに思ったが、俺はミサキちゃんと共に日本を目一杯楽しみたい。

 旅行客のように楽しむのもいいし、住居者のように日常を楽しむのもいい。そのためには、まずやらなければならない事がある。

 

 その1、お金を手に入れる。

 これはもう、日本に限らず現代社会で生きるうえで何よりも大事なこと。金がなければ衣食住、なんにも出来ない。

 逆に金さえあれば衣食住わりとなんとかなる筈だ。

 ただ問題なのは、【悪魔】の俺が真っ当に金を稼げるかなんだよな。できれば平和的な仕事をして、平和的に給料を貰いたいのだが、難しいかもしれない。

 まあ、ここら辺は今日のお昼ごろ来る予定の鈴明(スズメ)ちゃんに1回相談してみよう。もしかしたら陰陽師界隈の方で【悪魔】に適した仕事があるかもしれない。まあ十中八九、荒事(あらごと)だと思うけどね。そうなったら仕方ない。

 

 その2、脅威に対抗する。

 この日本について、まだ分からない事が多いけど、ミサキちゃんは悪魔の子と呼ばれて、世間的に酷い差別を受けるらしい。

 さらに、悪魔の子は『人外存在』を呼び寄せて超危険だと、誰かが作為的に広めているようで、かなり闇が深い。

 これが原因で()える事が、めっちゃ起きるんだろうな。

 というわけで、このクソボケな状況をどうにかしたい。何か出来ることがあるなら、【悪魔】の力を惜しみなく使うつもりだ。

 でも、社会レベルな差別問題の解決方法なんて、一介の【悪魔】にはまるで分からない。誰が敵かも現状全くもって不明。なので、すぐどうこうできる奴でもないし、今はまず情報集める事だけを意識しよう。

 

 そんで、その3。

 最後のこれが1番最初にどうにかしないといけない奴でして、このブラックメタリックパワードスーツな見た目を、目立たないようにする事。

 服を着て、顔を隠したとしても、普通の人間からかけ離れすぎている。どう考えたって目立つ。もしかしたら、陰陽師と出会って五秒でバトルなんてなりかねないし、それ以前に、まともに外出も出来ないので生活する事もままならない。

 だから、1番最初に解決しなければならない問題であるが、実のところ解決できる手段を俺は持っていたりする。

 

「……改めて見ると、ほんと怖い顔してるな」

 

 洗面台の鏡を見て、己の【悪魔】的な顔を見る。目が無くて、ギザギザ歯が生えたでっかい口。

 【地獄】には鏡がなかったし、物体に反射する事もなかった。なので相手の見た目を模倣(もほう)する【悪魔】に出会うまで、俺は自分の姿を知る事ができなかった。

 自分の姿を初めて見た時は、人間じゃないってハッキリと突きつけられた気がして、かなりへこんだな。

 

 しかし、鏡で動いている自分を見ると、男の子が好きそうであるが間違いなく子供が泣く見た目をしている。ほんとミサキちゃん、これを薄暗い所で見て怖がらなかったな。

 

 まあ、そんな訳で、このままの見た目のまま生活ってわけにも行かないので、思いついた事を試してみる。

 

「――〈影変身(かげへんしん)〉」

 

 正直言って特に言う必要のない技名を言いつつ、『布影』を足元から出現させて、俺の全身にまとわりつかせる。

 『布影』は本当に便利で、俺自身にまとわせると、この肉体ごと姿を変形させる事ができる。

 そうやって俺は背丈や姿形を、なるべく普通の人間っぽくする。

 

 ただし、完全な人型になる事はできない。

 人間の造形ってね、めっちゃむずい。頑張って完璧な人間を再現しようとしたが……【悪魔】には難しかったよ。まあ俺が不器用すぎただけかもしれないが。

 

 さらに、『布影』は影と名付けただけあって真っ黒である。色を加える事は無理であるため、もしも完璧な人の形をしたとしても、出来上がるのは日本で大人気ミステリー漫画に出てくる犯人のシルエット姿にしかならない。

 

 といっても、シルエットさえ形を人間にすれば、厚着をして顔を隠せば外出して買い物ぐらいはできるだろう。

 全てを解決するものではないが、何事も小さな一歩からよ。

 【地獄】では、鏡が無かったから上手く形を作れなかった説があるので、ミサキちゃんが起きてくるまで、ここで練習する。

 

「────は?」

 

 出来上がった顔を見て、自分の声かと疑うほど、聞き馴染みのない間の抜けた声が出る。

 目が開き、白い目と黒い瞳孔が広がる。

 口が開き、赤い舌と白い歯が見える。

 引きつく口元。日本人らしい肌色をしている。

 

 これらは本来であれば鏡に映らないはずの存在。信じられないと頬を引っ張って確かめる。痛みは無いが完全に俺の動きとシンクロしている。

 

 考えるよりも前に、大きな声が口から出る。

 

「に、人間じゃねぇか!?」 

 

 捻れた癖毛が、かえっておしゃれに見える(つや)やかな黒髪に、光が灯っていない真っ黒なタレ目の二十歳ぐらいの男。

 鏡に映ったものが現実ならば、この男が今の俺の容姿である。

 

「完璧すぎじゃね? なにがあったよ? なんでこんな優しくて小動物系に見えるけど実際付き合ったらDV依存させそうなメロ系男子な見た目なの?」

 

 訳がわからず。顔を触り、そして体も触れる。ちなみにいま全裸。男として大事な所もしっかり生えてる。

 手に伝わる感触は、人間の肌だけど体温が感じられない。まさにゴムに触れているようだ。

 ということは、〈影変身〉した姿なのは、間違いないのか?

 試しに顔だけ解除してみる――うわっ!? 人の顔から【悪魔】の顔が出てきた。きしょ!

 

 流石に、グロ映像すぎるので、元に戻す。

 それにしても、どうして人間の姿になれたんだ?

 感覚的に人間になりたいって思いながら、〈影変身〉をしたらなったとしか言えん。

 

「……ん? よく見たらミサキちゃんに似てる?」

 

 男の顔付きは良く見ればミサキちゃんに似ていた。てことは、人間の姿になれたのって契約の影響なのか?

 

 ふと思った事を試してみる。

 形を変われと念じると、鏡に映る姿が一瞬真っ黒になったかと思えば、ミサキちゃんを大人にしたような女性の顔が映った。

 

 間違いない。〈影変身〉の姿はミサキちゃんをベースにした見た目になるようだ。しかも年齢も、性別も自在っぽい!

 これで外を気兼ねなく出歩けるぞ。マジで嬉しい。

 

「でも、服がねぇ!」

 

 人間の姿になっても、服がなければ全裸である。こんなので外にでれば別の意味で目立っちゃう。

 

「どっからか調達しないとな。この家にあるかな?」

「──お」

「お? ……あ」

 

 ずっと鏡を見て気が付かなかった。

 廊下の方を見ると、ミサキちゃんが俺を見て目を見開き固まっていた。

 やっばいやばい。ミサキちゃんにとって今の俺は見知らぬ全裸の痴女。すぐに弁明をしなければ!

 

 

「――――お母さん」

「……はい?」

 

 ミサキちゃんの目元に涙が浮かび上がる。

 ――どうやら、今の俺の姿はミサキちゃんのお母さんと瓜二つなようだ。

 

 ……これ、どうしよう。

 

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