呪われた真祖   作:俺はオモチャ、それでいい

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夏油 傑

「ありがとうございましたー」

 

 ピロピロピロピロ、とコンビニの入店音が響く。

 時間は深夜3時を超えていた。

 空を見上げれば一点の明かりもなく、分厚い雲が空を覆っている。太陽が出ていないのだから涼しいのか? と聞かれればそうでもなく、ジメッとした蒸し暑さが大気を支配している。

 

 アルクェイドはコンビニのビニール袋を片手に、前だけを見ながら帰路についていた。

 

「…………」

 

 アルクェイドが歩く度にビニール袋が揺れ、中の商品がガサガサと衝突する。

 中に入っているのは、お弁当とお菓子だった。

 

 いわゆる夜食、というモノになるのだろう。

 夜食は基本的に体内時計を狂わせ、肥満のリスクや消化不良の原因になるので、あまり推奨されていないと何処かで聞いたことがある。

 しかし、はっきり言って本当に関係がない。

 

 アルクェイドは、その生まれの性質上、睡眠が極端に必要のない体質だった。

 まず大前提に、彼女は夜行性である。

 

 夜間の内は身体性能が上昇し、術式精度が底上げされる。また肉体の自己再生が極端に加速され、エネルギーの循環機構も天井に至る。

 

 言うなれば無敵状態の、戦闘態勢だ。

 

 故に、元から『夜に寝る』というプロセスが組み込まれておらず、体内時計の造りが狂うことはない。

 食生活の方も、食べ物程度で崩れるような肉体ではなかった。

 

(ま、夜行性だから昼に寝るっていう話でもないんだけどね。わたしにとっては、どの時間帯の睡眠も昼寝みたいなものだし)

 

 アルクェイドが『本睡眠』に入る時。

 それは、エネルギーが枯渇するほどの絶大な戦闘を終えた時ぐらいだろう。

 

 もっとも、そんな時は来ないだろうが。

 

(それにしても─────)

 

 アルクェイドは足を止めて、瞳を動かした。

 人通りが少ない、大通り。

 舞台を照らすライトのように、ある部分部分に集中している街灯の下。この静寂の中で、潮渦のように巻かれている呪力の波がある。

 

「奇襲のつもりなら諦めなさい。瞬きの間もなく殺すから」

 

 アルクェイドの鈴の音が、静かに木霊した。

 その甘美な声と裏腹に、言葉の殺意は本物だ。

 背後にある呪力の渦。

 その張本人が奇襲のつもりで近づいてくるのなら、アルクェイドは苦もなく、その者を瞬殺するだろう。

 脅しでも何でもない、ただの警告。

 実現される未来の話。

 

 しかし。

 相手はそれを受けて尚、近づいた。

 

 ザッ、ザッ、と草履の足音を響かせながら、迷うことなくアルクェイドの元へと近づく。

 

「おお、怖い怖い」

 

 男の声だった。

 その者は、ゆっくりと歩いてくる。

 

 アルクェイドを照らす街灯。

 そこに隣接するもう一つの街頭。

 

 黄色い光の端、そのスポットライトの下に、彼は落ち着いた足取りで現れた。

 

「奇襲のつもりで近づいたわけではないさ。あくまでも話し合い。君との戦いは望まない」

 

「なら消えて。話すことはないわ」

 

 現れた男は、奇妙な格好をしていた。

 長い黒髪に特徴的な前髪、大きめの耳に大きな丸く黒いピアスを付けている。服装は、藍色の僧衣と五条袈裟、まるで何処かの宗教の人間のようだ。

 

 だが、何より目を引いたのはその額。

 ミシンの縫い目のようなものが、横に大きく伸びていた。

 

「そう言わず、少しは会話をしようじゃないか。コミュニケーションの重要性については、君も知っているだろう?」

 

「ええ。そして、そういう貴方は、礼儀作法の重要性について知らないようね。正しい手順を踏む気がないのなら、わたしもマナーを守るつもりはないんだけど」

 

 アルクェイドか右手に力を入れる。

 ビニール袋が静かに揺れる。

 ギチッ、と。彼女の爪が伸びたような気がした。

 

「ああ、そうだね。これは失礼な事をした」

 

 そう言うと、男は僧衣を靡かせた。

 

「私は夏油 傑。呪術界で暗躍する呪詛師と、そう思ってくれればいい」

 

「……」

 

「もしかして、知っていたりするのかな?」

 

「知らない」

 

「くく、そうかい。だろうねぇ」

 

 夏油は噛み締めるように笑った。

 アルクェイドは気怠そうにため息を吐く。

 

「話があるのなら、早めにしてくれる? 温めたお弁当が入ってるんだけど」

 

「ああ、それはすまない。元々は30分程度使ってじっくり話したかったんだが、そういう事なら単刀直入に言うとしよう」

 

 バチバチ……と、近くの蛍光灯が点滅した。

 空気は何もないように穏やかで、呼吸をしていないと思えるほど死んでいる。アルクェイドは冷めたような目つきで夏油の事を見ている。

 一寸の興味を抱いていない眼だった。

 

「私と契約して欲しい。正確には『縛り』を、結んでもらいたい」

 

「何故?」

 

「君が邪魔だから」

 

 夏油は本当に、単刀直入に言った。

 

「私の計画(プラン)が、大波に乗り始めた。ここから一気に事を動かそうと思っている。だが、その為には排除しなければならないモノと、排除しておくべき不穏分子の二つがある。君は私にとっての後者だ。放置していても良いが、いずれ障害となる。そう判断した」

 

「そう。わたしは、わたしに影響が出ない範囲の悪巧みなら見逃してあげるけど」

 

 夏油は首を横に振った。

 それでは駄目なのだと、夏油は1秒かからずに思ったのだ。本人の顔には出ていないが、ここが人生の博打場であることを嫌というほど理解している。

 

「では尚のこと駄目だ。私の計画の影響は、日本全土にまで及ぶ。君が現在の生活に退屈していて、世界を壊したいと思うなら、このまま黙って見過ごしてほしいものだが……そうも行かないだろう?」

 

「……まぁ、ね」

 

 アルクェイドは思う所があるのか、間を置いて夏油の問いに答えた。

 夏油はその反応に僅かな関心を示したが、すぐに次の話題へと移行した。

 

「話を戻そう。縛りの内容だ」

 

 この会話の中で、最も重要な部分。

 それを伝えようとする夏油だったが、彼の話を聞く前に、アルクェイドは彼に背を向けて歩き出してしまった。

 

「……やれやれ、無視は悲しいね」

 

「わたしの横を歩くことを許すわ。立ち話は面倒だから、帰るついでに聞いてあげる」

 

 アルクェイドの言葉。

 それを聞いて、夏油は小さく笑った。

 

「それは有り難いね。喜んで、隣を歩かせてもらうよ」

 

 夏油はそう言うと、彼女の隣へと並んだ。

 白い吸血鬼と、和服姿の男。

 奇妙な並びとしか言いようがない。

 

 しかし、彼らは気にすることがない。

 

「さて、続きだ。私が君に提示する『縛り』は一つだけ。これ以外を望むことは絶対に無いだろう」

 

 夏油は人差し指を立てて言った。

 アルクェイドは歩きながら、横目で彼を見る。

 静かな呼吸、揺るがない思考。

 この人物に欠片の興味を抱きながら、アルクェイドは次の言葉を待っていた。

 

 

「『来年の正月まで、力を現在の半分以下に抑える』これが私が提示する条件だ」

 

 

「……………………」

 

 アルクェイドは無言だった。

 驚くことは、少しもない。

 彼女の足は止まらなかったし、驚愕から歩幅が崩れるような事もない。夏油の要望について、頭で処理をしようと思考を巡らせている……というわけでもなかった。

 

 はっきり言って、思うことは一つ。

 

「……相応のメリットを提示できないのなら、この会話が終わり次第、即刻殺してあげる」

 

『アルクェイド』と云う領域に踏み込む侮辱。

 己の立場を弁えない不遜。強欲の類。

 

 文字通り、万死に値する。

 

「構わないさ。私のプレゼンテーション能力が試される時だ。俄然、燃えるね」

 

 夏油は横を歩きながら、話を続ける。

 アルクェイドが家に着くまでに、彼女を納得させる。さもなくば会話は強制的に終了して、自身は殺される。タイムリミットは長くない。

 

「まず一つ、昔話をしよう。約千年も前の話だ。呪術全盛の時代、平安の世。百戦錬磨の豪傑たちが蔓延り、互いに命を賭して呪い合う、竜戦虎争の地獄絵図。その時代の渦中にて、その他全てを凌駕する力の持ち主がいた」

 

 アルクェイドは、興味が無さそうに聞いている。

 夏油は前だけを見ながら、懐かしみ、思い出すかのように語る。

 

「両面宿儺。史上最強の、呪いの王」

 

「宿儺の話に興味は無い。昔話と縛りの内容、繋がりがあるようには見えないけど、どう発展していくつもり?」

 

「宿儺と君が似ている、という話さ」

 

 アルクェイドは不愉快そうに眉を顰める。

 空気がズン……と、重くなった。

 

「わたしの出生(ルーツ)と、宿儺を結び付けようとする間抜けは前にもいたわ。『千年』という類似点が、そう勘違いさせたのでしょうね」

 

 いつの頃だったか。

 まだアルクェイドが幼い時だった筈だ。

 関係ない、といくら説明しても納得しない学者気取りの呪術師。あまりにもしつこかったので、頸椎を捻り切った記憶がある。

 

「言っておくけど、わたしと宿儺に関係はない。そして二度目になるけど、わたしは宿儺にこれっぽっちも興味が無い。伝説上の『いた』とされる人間の話なんて、退屈極まる与太話とかしか思えないから」

 

 話が終わる。

 これから夏油は、アルクェイドに殺される。

 

 夏油がどれだけ会話を続けさせようとしても、それがつまらなければアルクェイドが強制的に幕を引こうとする。

 まだ蹂躙していた方が、楽しいと言わんばかりに。

 

「ではまずは、その退屈を引き剥がそう」

 

 それでいても、彼はブレなかった。

 まだ焦る時ではないと思っているのか。

 

 それとも、多くの修羅場を抜けているのか。

 

「はっきり言おう。この肉体は私のモノではない。夏油 傑という名前もこの肉体に付けられた名前(モノ)であり、『私』という存在を指す呼称ではない」

 

「……?」

 

「私の術式は、他者の肉体を行き交う。正確には寄生すると言った方が的確かな。宿主の脳と、私の脳を入れ替える事によって、その宿主の肉体を思うがままに乗っ取ることができる。当然、肉体自体を乗っ取るわけだから、戦闘能力は宿主に依存しているよ」

 

 トントン、と夏油は自身の額を親指で叩く。

 もっと言うなら自身の脳みそだろう。

 

 アルクェイドは横目でその光景を見ながら、彼の言動について思いを巡らせていた。

 

(術式の開示……先手を打ってきた)

 

 最もスタンダードな、縛りの使い方。

 戦闘でアルクェイドに勝つことは出来ないと理解していながら、それでも駒は並べてくる。

 

 どう言うつもりなのか。

 

「……つまり、貴方は自身の生得術式の他に、宿主の術式も所持している。そう言うわけね?」

 

「ああ、その通りだ」

 

「ふーん……でも、それって変じゃない? 術式は脳に刻まれているモノでしょう? 脳を交換して肉体を乗っ取る。それなら、交換された宿主の脳、そこに刻まれている術式の回収は不可能だと思うけど……?」

 

 シンプルな疑問だった。

 夏油は静かに笑いながら言った。

 

「確かに、君のいう通りだ。術式は右脳の、恐らく前頭前野辺りに刻まれている。脳を入れ替えると言うことは、肉体間で術式を入れ替えるのと同義。主要箇所だけを移植する、という事も出来ないからね。この問題に関しては当初、私も頭を悩ませたモノだよ」

 

「……」

 

「しかし、実際には問題ではなかった。私の術式効果なのか、それとも『魂』と呼ばれるモノに術式が付着しているのか。脳を入れ替えた後でも、寄生先の術式は宿主に残り、肉体が死亡して尚、その脈動を続けている。降霊術というものがあるだろう? あれに近いと、私は考えている」

 

 ダウト、と。

 アルクェイドは口に出さず思った。

 

(本当の事を混ぜながら、嘘をついている……いや、嘘を混ぜながら本当のことを言ってる、って感じかしら。引き継がれる術式と術式効果云々のところは、間違いないと見えるけど─────)

 

 額にある縫い目がハリボテでない限り、頭をパカっと外して脳を交換するのだろうか。

 かなり現実味のない行為であり、はっきり言って可能だとは思えない。

 

 何より、それは自身だけでなく寄生先の頭も取り外すということになる。外科医であっても、頭の取り外しは難しいと思うのだが……

 

(……まぁ、どうでもいいわ)

 

 話の要点はそこではない。

 確認せずとも、理解している。

 

「それで? 貴方の術式が宿儺と、どういう関係にあるの? 千年も前の人間に─────」

 

 っ……、と。

 アルクェイドが何かを察した。

 

「理解したようだね」

 

「──────ええ」

 

 これまでの説明は、夏油と名乗る男の『術式の所在』に関する考察だ。確かに彼の話には、一見の価値があったし、アルクェイドにとっても、関係がないと聞かれればそうでもない。

 

 しかし、本題はそこではなかった。

 

 彼が言いたいのは、そう─────

 

 

「戦闘能力だけでなく、寿命も肉体に依存する」

 

 

「ビンゴ。これで私は時を渡っている」

 

 寿命とは、肉体の使用期限。

 生物だけに限定されない、物質そのものにある物理的な限界地。例えそれは誰であろうと、アルクェイドであっても例外ではない。

 

 しかし、彼はそれを術式という方法を用いて、何度も乗り換えている。

 

 不老不死がゲームの正攻法とするなら。

 彼のやり方は裏ワザと言ったところだ。

 

(それでも、脳の寿命もある筈なんだけどね……心理的な限界、アイデンティティ(精神)の摩耗による適応障害、記憶容量(ストレージ)の上限にて発生する機械トラブル。およそ200年から300年が脳の限界って話だし)

 

 これもまた、彼の術式が絡んでいるのだろうか。

 そうでなければ、これからの話に矛盾が生じる。

 

「つまり─────」

 

 寿命のリセットの繰り返し。

 時を渡っているという発言。

 宿儺という千年も前の傑物。

 

 即ち、答えは一つ。

 

 

「宿儺と、会った事がある」

 

 

 

 _______________________________________________

 

 

 

「その通り。やはり賢いね」

 

 夏油は賞賛するように言った。

 しかし、アルクェイドは何も思わない。

 当然の答え、当たり前の事。

 何も特別でないと理解しているからだった。

 

 それでも尚、夏油は。

 

「くく、くくくくく……」

 

 噛み締めるように、口元を手の甲で隠しながら笑っている。アルクェイドは『何だこいつ……』という感情を、抑える事なく表情に出しながら引いているが、夏油は気にも止めずに笑い終えた。

 

「いやぁ……すまない。やはりというか何というか、君は『彼』と似ているね」

 

「……宿儺?」

 

「そう。宿儺だよ。君の推察通り、私は彼と会っている。圧倒的な自己、他者を顧みない暴力の頂点。その有り様は、まさしく呪いの王に相応しい」

 

 そして、と。

 夏油は言った。

 

「君もだよ、アルクェイド。君の在り方も、間違いなく最強の類だ。私は千年近く生きていたが、宿儺に並ぶ存在は、君を含めても2人しか知らない」

 

「わたしを含めても2人、ね」

 

 アルクェイドは足を止めて、空を見上げた。

 分厚い雲が2つに割れて、月が顔を覗かせている。まるでその惑星以外が存在していないかのように、月はただそこにあった。

 

「もしかして、もう一人は五条 悟?」

 

「…………ああ、正解」

 

 夏油は退屈そうに言った。

 

「五条 悟。彼もまた最強と謳われる存在。君や宿儺のような残虐性は持ち合わせていないが、呪術においての最高到達点の一つと見て、まず間違いないだろう」

 

「ふーん。噂通りなのね」

 

 アルクェイドもまた、退屈そうに話す。

 およそ現代最強と呼ばれる存在に対するには、あまりにも不釣り合いな表情だった。

 

「これは単純な疑問なんだけど、五条 悟と戦うつもりはないのかい? 君であるのなら、勝ち目は十分にあると思えるが……」

 

「愚問ね。わたしにメリットがあるの?」

 

「というと?」

 

「五条 悟を殺した時に、何を得られるのかって話よ。ドロップアイテムで伝説の剣が出てくるのなら、考えない事もないわ。けど、そうじゃないでしょう? 得られるのは一時の快楽と愉悦、残るのは灰色の荒野。天秤が片方に傾きすぎ。等価交換から程遠いなんて話じゃない」

 

「ん〜……成程ね。そういう考え方か」

 

 夏油は現状直面している問題の原因を知った時のように、かなり困った顔で言った。

 

(平穏に暮らしたい。それでいて、退屈を殺したい。常に癒される立場にいて、不快な現象から逃避していたい、か)

 

 方向性は似ている。

 だが、根底はズレている。

 

 難しい相手だ。

 

(強欲─────いや、『我儘』だね)

 

 アルクェイドの根源は少女(・・)

 この長くもない会話の中で、夏油はそう結論づけた。

 

「良いだろう。話を戻そうか。私が宿儺と知り合っているという話だったね。何が言いたいのかと言うと、君の『渇き』に対して、ある一定の理解ができるという事を伝えたかったのさ」

 

「理解…………? 本気……?」

 

 理解するというのは、相手を知るという事。

 

 それが心のあり方であるのなら────

 

 それは侮辱になるぞ、と。

 アルクェイドは宝石のような瞳で宣告した。

 

「完璧な理解ではない。弱者である私には、強者である君の苦労を計ることは難しい。しかし、君が私の術式を推察したように、私もまた君の心を考察する事ができる。何より、宿儺という前例がいる訳だしね」

 

 夏油は腕を組むように、服の袖口に手を入れながら歩く。アルクェイドは不機嫌でありながらも、夏油の話を聞き続けていた。

 

「宿儺は君と同じ悩みを抱えていたよ。即ち、退屈」

 

「…………」

 

「私には知らない味だ。退屈をしようにも、退屈を殺してしまう隠し味が、この世には五万とあり、私はそれらを全て平らげようとしてしまう。けれど、君達にはそれが出来ないのだろうね」

 

 哀しそうに、夏油は言う。

 2人とすれ違う人々は、その奇妙な光景に目を負わせているが、近づくことはない。

 死のオーラが、アルクェイドから出ていた。

 

「満たせるものは、暴力か趣味嗜好のみ。あらゆる味も、君達の前では普遍的に過ぎない」

 

 それらも、一時のものだ。

 人生そのものに影響を与える『何か』を、得られる時など訪れない。その段階は既に、とっくの昔に超えてしまっている。

 

 経験則、というものでもある。

 実体験、これは違うだろう。

 

 アルクェイドにとって、退屈はいつの間にか隣にあったモノだ。

 そして、これからの永遠の伴侶と見ても等しい概念だ。アルクェイドはそれから逃避する事も、隠れる事も出来やしない。

 

 アルクェイドは受け入れている。

 そういうモノだと、知っている。

 

 ならば、と。

 夏油は言った。

 

「ならば与えよう、君に『熱中』を。これから先、退屈を殺し切さずとも、人生そのものに変化をもたらす邂逅を」

 

「……」

 

 

「これが、私が齎らすメリットだ」

 

 

 

 




行頭に空白をあける方法初めて知りました…
色んな機能があるんだなぁ…
編集、編集…
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