鬼畜親父登場。
※この物語に登場するキャラクターに特定のモデルはおりません。ただし、県民のために身を粉にして働く知事さんとか現実に現れてくれ、とは願っています。
※なお、多少書き直すかも知れません。
三時頃まで姉貴とコギャルはいろいろ台所んテーブルで話をしていたが、姉貴の子供達が帰ってくるとかで帰って行った。
コギャルは宿題があるとかで二階の自室に戻って行き、俺は飯の後の洗い物を済ませてから部屋に戻ろうと思い皿を洗っていたのだが、そのタイミングで親父達が大量の買い物袋やら贈答品と思わしき箱などを持って帰って来た。
いや、親父とお袋だけではなくどうやら親父達は家に来客を連れて帰ってきたようだ。
親父が玄関から
「おい、儀一!荷物を下ろすのを手伝え!この無駄飯食らいが!!」
などと俺を呼びつけやがった。面倒臭いが行かないとさらに煩くなるだろうから行ってやる。
「だぁれが無駄飯食らいだ!」
だが、これくらいは返すべきだろう。
玄関には野菜などが入ったダンボールやら肉の入ったスーパーのビニール袋などが大量に積まれているが、つうかまだ荷物があんのか。
「ごめんねー、いっぱい貰っちゃった」
母が両手に紙袋を下げて困った、というよりは嬉しいという顔で……というかテヘリ。
……ペロ、はないがその年でそれは無いと思うぞお袋。いくら若作りでも最近シワが出てきてんだから。
しかし貰ったとは言うが購入したもんもあるのだろう。つかお袋が手に持ってる紙袋はブランド物を扱っているブティックのロゴなのでそれはお袋が買った……いや、親父がお袋に買ったのだろう。
なお親父はカードなどをまず使わない。懐のデカい長財布にはずどんといつも百万単位で何束か入っており、レジなどでドカッといつもニッコリ現金払いならぬ、鬼瓦な威圧的な面で札束ドカッと出して店員の面を叩くような買い物の仕方をやらかすのだ。
つうかどんな成金だよおい、とは思うが成金は三代続けば家系的に普通の金持ち認定されると京都人の料亭女将が言っていたので、つまりウチはただの金持ちである。
だからと言って俺が金持ちなわけでは無い。つうか宝くじ当たった即席成金だ。あと慰謝料とか損害賠償成金……いや、今まで貯めた金とかから考えたらそっちはマイナス言ってるので、宝くじ分だけの成金か。
まぁ、今はそんな事はどうでもいいけど。
「あー、お袋は自分のをまず運んどけよ」
「栄子ちゃんのもあるのよー?」
「それはエーコに取りに来させて渡しゃいいんじゃね?」
俺は親父に呼ばれてるからな。しかし重いもんをお袋に運ばせるわけにはいかない。なんせお袋は非力だから。つかブティックの紙袋だけで少しよろついてるくらいにバランス感覚弱い人だし。
お袋は右手の紙袋を見て少し考えてから、目を細める。
「ああそうねぇ。それがいいかも」
多分、コギャルに早く渡した方がいいと思ったのだろう。いや、渡してやりたいってのが正解か。なんか顔がワクワクしとる。
そういやホテルのベテランのフロントさんが言っていたが、贈答品などを持つ手が右か左かで相手にどんな気持ちを持っているかがわかるとか言っていた。
人間は大切なものを利き手で扱おうとする生き物であり、また大抵の場合、行動の順序や作業の順序、やりたいことの順を無意識であれ意識的であれ優先しようとする心理が働くのだ、と。
無意識で自分の荷物は左で、右でコギャルへのプレゼント……紙袋に入っている箱に綺麗なリボンがついてるからそうなのだろう……を持ってるってのは、つまりはそういう事だ。
お袋もコギャルをよほど可愛がっているようだ。
多分、お袋はエーコにコレきっと似合うわー、ああコレも良いわね、あー、これなんて可愛いー、とかそっちを優先して買ったんだろう。自分の物とかそこそこで。そんでうっきうきでエーコに渡そうと思いながら帰ってきたのだろう。エーコが喜ぶ顔を想像しながら。
だが、多分エーコは喜ぶよりも多分、また子犬のようにプルプル震えながら脅えると思うんだよなぁ。その服の値段とか知ったら。
なんせハイブランドやぞ。多分少なくとも一着10万くらいすんじゃないだろうか。だってその紙袋のロゴ『LOEWE』やぞ。イタリアのめちゃ高いやつ。Tシャツでもなんか信じられんくらい高いんやぞマジで。
また俺、コギャル慰めんといかんのかよ。
……まぁ、それはそれで可哀想可愛いのでよし。ブランドのお値段とか知らんかったらこっそり教えてやるのもよろしい。いやー金額にプルプル震える義妹とか非常に可愛いからなぁ。いやぁ今から楽しみだなぁ。はっはっはっは(鬼畜)。
「おい愚息!くっ喋っとらんでとっとと来んかぁ!」
チッ、親父め。
「るせぇ、今行く!」
俺はとりあえず表に出た。そしてうわぁ……となった。
家の前に高級車ってかクラシックな車が数台と商業車、運送用のワゴン、軽ワゴン、軽トラ、軽自動車がやたら止まっていた。
ウチの前の駐車場は四台ほど止められるように広くスペースが取られているがそこはもう埋まっており、入りきらない車は道に止められていた。まあ、家の前の道は私有道なので止めたところで路駐でキップを切られることはまずないだろう。
というか県の公用車が路駐してんのを見てキップ貼ってやろうとする奴がいたなら見てみたいもんだ。
権力に抗え交通巡視員!頑張れ負けるな!けして敵わない巨悪に立ち向かえ!そして職を失ってハロワ通いの運命に飲まれろ!あーあ、可哀想にオラ知らね。
いや、そんなのはどうでもいい。
これはなんつうか厄介な予感がする。いや、車が高級車だろうが商業車だろうがどうでもいい。
おっさん達が運んでいるのが食材、つまりは未加工の何ら調理もされていない肉とか魚とか野菜なのだ。
なのに酒屋ってのか地元の醸造メーカーの『沖乃露(おきのつゆ)醸造株式会社』の社長とその奥さんがデカい一升瓶とかが入ったケースを持って向こうから運んできている。これはヤバい。
つまり、あんだけの酒をウチに運び込むのはつまりはこのおっさんおばさんらはウチで宴会をやるつもりで来ているということなのだが、では何故料理ではなくそのまんまな食材を運び込んでんのか。
すなわち、俺に作らせようと思ってんのだこれは。
そいつは非常に面倒臭い。つか休みん期間(自主的)に働きたくない。くそっ、こんな所にいられるか!俺は部屋に戻るぞ!(死亡フラグ)。
だっ!と俺は再び玄関へ駆け込もうとしたが、しかし逃げられなかった。
親父に襟首を掴まれたからだ。
「何を逃げようとしとるのだお前は」
「くっ、アンタらの魂胆はわかってんだ。休職中の俺に飯を作らせようとか思ってんだろ?!」
「何が休職中だ。自分で職場を潰して無職になったんだろうが。とはいえあんな腐った連中を一網打尽に潰したのは良し。それでこそワシの息子、良しだ。離婚にしても何ら間違ってはいない。ワシの顔に泥を塗ってくれたあの売女には思い出せばまだ腸が煮えくり返る。が、とはいえ製造元にも報いは食らわせたのだ、良くやった!」
……まさか肯定されてるとは思わなかった。いや、親父なら有り得たか。なんせ敵と認定したらとことんやるからな、この親父は。
例えばソーラーパネルの発電所をやたら誘致しようとした議員。しつこく親父の持つ農地や山を潰そうとした事で思い切り潰された。
例えば警察官。とある議員が手を回して親父が自分の土地で不法収益を得ていると因縁つけて嫌がらせをしたが逆に警察官の方がとある議員に金を貰っていた事を暴露され豚箱行きになった。
例えば教師。姉貴の友人の女子生徒に性的なハラスメントをしたため豚箱行き。
例えば、と例を上げればそんな話は大小いくつもありすぎてもはやいつものこととこの地方都市では言われるようになってもう幾歳月、県のお偉方も警察もヤクザですら親父を恐れて手を出さない。
喧嘩を売られれば買い、相手が潰れるまで辞めてくれ許してくれと泣いて叫んでも許さずとことんまでやらかす。根を潰し根を絶やす。
地方の暴君ここにあり。それが親父なのだ。
歳いって最近は丸くなったんじゃね?とか思ってたが全然丸くなどなってなかった。つかもっと酷くなって、いや昔のまんまだ。つまり今も昔も酷ぇ。
「なんだ?やったことを間違えたとか思ってたか?やり過ぎたとか後悔しとるのか?」
「呆れてんだよ。つかそろそろ丸くなれよ。いい歳こいてんだから!」
「歳?何を言っとる。どんな世界でも舐められたら終わりだ。ワシは舐めた連中は必ず潰す。ワシをを舐めていいのは猫のモモくらいだ、物理的に。あれは可愛いからな」
「いや、まぁ猫飼い出してたのは驚いたけど可愛がってんのかよ」
ウチには白い猫が居たりするのだが、大抵コギャルの部屋で寝ている。
「うむ、栄子が拾ってきたのだ。懐かれると存外可愛い。栄子とセットならさらに可愛いぞ?」
昔は猫嫌いだったくせに何を言っとるのだこの親父は。つうかマジで養女をダダ可愛がりし過ぎとるのなんなんだ。つかスマホ出すな、コギャルが猫を抱っこしてる画像見せんな。いや、親父その画像を後で俺のスマホに送っといてくれ←人のことは言えない。
「それはともかくだ。離婚報道の後、お前のせいでマスコミ連中とかパパラッチとかいう連中が堂々とこの一帯をうろつきまわってな。そのせいでウチだけでなくこの近隣の人達が多大なる迷惑を被った。お前が帰ってくる数ヶ月前の事だ」
……マスゴミ連中に捕まらないようにマンションを引き払ってスマホとか解約してあちこち逃げ回ってた頃か。してたから奴らは俺の実家を張るようになったのか。だが……。
「いや、そんな話は初耳だぞ。つうかニュースでもそういうのも無かった」
実際、その辺は考えてもし実家周辺などがワイドショーとかニュースに出たら対策を取るつもりでいたが、まったくそんな事は無かった。
親父はふんと鼻を鳴らした。
「県知事に言ったら警官達が総出で片づけてくれたわ。あと映像も盗撮の証拠として押収して破棄してもらった。……次の選挙で推してやるからと言ったらものの半日で片付いたぞ」
け、権力ぅ。
つうかそれ大丈夫なのか県知事。んなことやっていいのか警察官。
「とはいえいろんな方面の人間に迷惑をかけたのは間違いない。故にな、なんだっけか。ちゅーるみたいな名前のあれだ、あれとコラボしろ」
「いや、チューブに入った猫のご褒美とコラボとかわけわかんねぇ」
「いや、それじゃなくてだな。あー、勝己!勝己ぃ、お前が言い出したんだろ、コイツに説明しろ!」
親父はダンボール箱を運ばせられているちょっと老けてるオッサンに声をかけた。……つうか普通に県知事だった。
いや、確かこの県の知事は農家の出と言うのを全面に出して米不足やら日本の食糧問題とか訴えつつ県の経済の発展と推進をかなり具体的な説明付きで精力的に活動している人物だったっけ?
「あん?なんだ儀太郎。今運んでる最中ってかお前も荷物運べよ……」
「いや、今息子に説明してんだがワシにゃよくわからん!発案はお前だろ、お前がやれ!」
県知事は、
「何でわかんないんだよお前。キチンと説明したろう。仕方ないなぁ」
県知事は一緒に荷物を運んでた隣のスーツの青年に声をかけ、その場に荷物を置くとその青年と一緒にこっちに来た。
そして柔和は笑みを浮かべて俺の前に来て名刺を出し、
「おお、君があのシェフ南部ですな!私、この県の知事をさせていただいております『黒岩勝己(くろいわ・かつみ)』と言います。お父様とは旧知の仲でして選挙には多大なる協力をいただきました。ああ、こっちは私の息子で黒井農園の『黒岩勝也(くろいわ・かつや)』です」
と、さっきまで親父とギャーギャー言い合ってた口調をコロリと変えて低姿勢で言ってきた。
思わず親父の方を見ると
「コイツは昔から腹がクロい奴でな。ガキの頃は学級委員、学級委員長、生徒会長、大人んなってからは町長、市長、んで今は県知事だ。つうか何かと上に行きたがる奴だが不思議とコイツに任せると悪くないのがなんかムカつく」
なんぞと耳の穴を小指で掻きつつ面倒くさそうに言った。
「いや、儀太郎。お前がやらんから俺んとこに回って来たんだよ。つうか小学校ん頃にお前が俺に学級委員を押し付けたんだろが。委員長もそう、高校の生徒会長だってお前が推薦されてたのにお前が俺を推薦してその推薦をうやむやにして全部俺に押し付けたんだよ!つうか町長も市長も知事もお前が前の奴が気に入らない全然仕事しないお前がやれ、とか言って俺を引っ張り出して周りを扇動して当選させたんだろうが!!」
「んー?そんな事もあったかな?ワシは覚えてないなー」
親父は耳から小指を抜いて、ふっ。
「知事なんて二年前だぞ!市長の任期終わってすぐ!やっとこ妻と息子達に任せてた農園に戻れるって思ってたのにお前はぁぁ!」
「まぁ、その農園の土地もワシんとこの土地なんだがな?」
「くぁぁぁぁっ!お前は鬼かっ!」
「次は国会議員かな?」
「鬼っ!悪魔っ!この南部っ!!」
……ああ、この人も親父の被害者だったか。つうかこの人の農園、親父ん土地なんか。つまり小作農家ってかそのオジサンにめちゃくちゃ無理難題放題でマジ親父鬼畜。つか南部ってのは悪口に入るのだろうか。
俺も南部なんだが。
「まぁまぁ、父さん。落ち着いて。母さんも俺も妹達も大丈夫だから。農園は僕らが守ってちゃんとやってる。というか父さんが市長にならなければ農○の横暴に僕達農家はずっと耐えなければならなかったし、県知事になってくれたから国の横暴やロクでもない業者をはねのけられてるんだ。父さんが頑張ってくれたおかげで農家も林業や漁業関係の人達も助かってるんだ!ありがとう父さん!それに南部さん!」
なんだろう、県知事って実はこの県では人身御供なんか?他のところじゃ企業から賂もらったり予算から横領したり外国からのソーラーパネル業者呼び込んだりロクなことしてないイメージがあるんだが。
「それに南部さん土地の賃料二分の一にしてくれたし。母さんがめちゃ喜んでた。新しいトラクターを導入できたんだ。高性能AI搭載の高起動な奴だよ。親父がいなくてもバリバリやれるってさ!」
「わ、私がいなくても?」
「ああ。高性能だからね。人間がいなくても自動的にやってくれるんだ。むしろ人間が作業するよりも早いよ」
がっくり、と知事は膝をついて顔を覆った。多分、この人は農業やるのが生きがいな人でものすごい家族想いな人なんだろうなぁ。あと知事とか責任ある地位とかがものすごく嫌なのかも知れない。
あー県知事泣いちゃったよ。つか息子さん、知事さんを気遣って言ったんだろうけど知事さんの心へし折ってないか?それ。
「……親父。酷すぎだ」
つか親父、てへぺろすんな。金と土地の力で権力者をシバくな。
「なにがだ?コイツには才能がある。コイツが農家やってても農園で働く奴がたった一人増えるだけだが、コイツが県知事になってからというもの、不正が無くなったわ治安は良くなったわ地域の産業は活性化するわ税金安くなるわ他の県から誘致するまでもなく企業が引っ越して来るわそれに伴って移住してくる住民が増えたわ駅前とか大型ショッピングモールなんてもんを作らんけりゃいかんようになったわ、と良いこと尽くめだ。酷い事などなにも無い。適材適所万々歳だ」
いや、さっきてへぺろしてただろ。つか知事さんを知事にし続けるために農園の土地の使用料下げてわざと農業機械とか買いやすくさせて知事さんを農家に戻らなくても良いように策を弄しただろ。
「まぁ……コイツが泣けば泣くほど県民の生活が良くなるのだ。とりあえずこの路線維持のために来期も後援会の会長にしっかりと働くように言っておこう。うん」
いや、後援会会長も親父じゃなくて他の人なんかい。
「しかし県知事泣いちゃったし、ちゅーるとかなんとか、その辺の説明が聞けないんだが?」
「ああ、発案者のコイツがこうではなぁ」
「いや、親父のせいだろ」
なんかぐだぐだである。
「ん~、それは私が説明しよう!」
と、そこへさっきまで水産会社の発泡スチロール箱を運んでいた男がなんかギター担いでこっちにやって来た。
テンガロンハットに革ベスト、そしてギター。
ぽろろん、ぽろりもろりひれはれぽろろん。でんでんでんでれでんでんでん……。
「あんたが、シェフ南部かい?」
「ああ、そうだが」
……シェフ南部とか言われんのなんか慣れねぇな。
「だが……レストランでは二番目だ」
「まぁ、副料理長だったから、そらそうよ」
「ひゅう!ハッハッハッハ!」
いや、ズバッと怪傑する某探偵かよ。令和のこの時代に誰がわかるっつーねん、そのネタ。
「俺は小早川健一(こばやかわ・けんいち)。水産会社『鴎縞水産』の社長にしてY○uTu○er。登録人数、この前やっと2万人超えた男さ」
鴎縞水産と言うとこの県で一番大きい水産会社である。
でれでん、てけてでれでででん。つうかギター弾きながら良くもまぁそんな普通に喋れるなぁ。動いててもギターの音とかブレないとか。
つうか割とイケメンだが、なんつーか芸風っつーかパロディっつーか、そういうのを止めたら普通に芸能人に見えるのに、なんなんだろうコイツは。
じゃん!と鳴らしてギターの弦に挟んだ名刺を渡して来た。
「あ、これ名刺になります」
急にぺこぺこし始めた?!
名刺にはきちんと
【鴎縞水産 代表取締役・社長 小早川健一】
と書いてあった。あと会社のURLとかY○uT○beのチャンネルのアドレスも。
「はぁ、鴎縞水産の社長さんですか」
「はい、去年から先代社長だった義父の後を継いで社長に就任しまして。ご縁ありまして、駅前のショッピングモールで直営店の『寿司万歳』や『海鮮イタリアン・ガッビアーナ』を出させていただいております。あとスーパーでも鮮魚コーナーにウチの魚を卸させていただいて……」
さっきのズバットな演技とは打って変わってめちゃ低姿勢である。
「で、私、鴎縞水産のPRのために動画配信もさせられ、いえやってまして。あ、そこでカメラ持ってるのが妻です。あと、そこで出待ちしてる人達も同じ地域の他業種の人達で同じくY○uTu○eで企業PRしてる方々です……」
気づけば、普通のおばちゃんから牛のマスクを被ったカウガール、近未来的っつーかバーチャなロンのフェ○=イェンみたいなコスに身を包んだ少女達が並んでいた。つうかレフ版もったのとかマイク持ってるスタッフまでいる?!
「えーと、それでですね今回、お願いしたいのはですね、南部儀一シェフに、地元の食材を使った宴会料理を作るという企画に協力していただけたらと……」
「Y○uTu○e、っつーことは配信されるのか?」
「はい。その、我々はそれぞれが地域振興会の会員で、協力関係にあるんですが、地元PRをするにも全国にアピールするには、それぞれチャンネル登録者数が足りないというのか心もとないんです。もちろんショッピングモールでコラボして生配信したりはしたんですが、反応はそれほどよろしく無かった。みんなでどうすればいいのか悩んでたところに……」
革ベストから小早川社長はスマホを取り出し、そして俺にとある動画を出してきた。
それは今は無き俺が勤めていたレストランがやってた簡単フレンチクッキングという動画で、俺がふわとろオムライスを作っている回だった。
「この回で南部さんが勤めていたレストランのチャンネル登録者は跳ね上がり、9000人から20万人になり、この動画が100万視聴、そして南部さんが出る回に限って平均視聴回数はやっぱり50万人を下回った事がないんですよ。そんな人が帰郷している、そしてホテルもレストランも所属事務所もなにもなくなってフリー!」
「……まだレストランの動画、削除されてないのな。つかフリー言うな。無職みたいに聞こえるから!」
まぁ、テレビに出演すんのに元妻の所属事務所に籍は置いていたが、確かにそっちもぶっ潰したしなぁ。
「で、県知事さんに話を持って行っても大丈夫なのかを聞いて、県知事さんから御父様に話が行ってゴーサインが出たんですよ!これはチャンス!」
親父の方を見れば親父はケケケケケと嗤ってやがった。けして笑っていたのではなく嘲り嗤ってやがったのだ。
「はん、お前も皆様にご迷惑をかけたんだ、お詫びとして出演くらいして差し上げやがれ。このフリーの無職ニート愚息」
「……Y○uTu○eも知らんかった癖に煽りスキルだけは最強だな、親父。つかんな面倒な事を勝手に決めんな。つか動画ってことはいろいろマスゴミとかにまた取り沙汰されるだろ!!」
「ふん、取り沙汰されても誰も損はしないだろ。むしろそれもいい宣伝になる。いや、マスゴミ潰しに県知事が泣くだけだ。何しろ県のPR作戦だからな。これは」
親父の近くでは県知事が胃袋の所を抑えており、その息子さんが背中をさすっていた。
【鬼畜親父】
南部儀太郎・年齢60代。地元の大地主で金とコネと権力の権化。性格はいい加減なのにやたら人の本質は見抜くという難儀な人物。一応は地域の発展とか考えているが暴君的でありあまり向いていない事を自分で良く知っているので、幼なじみの県知事などをこき使って裏でいろいろとやっている。地元の闇の実力者というか事実上の支配者である。
【お袋】
南部小百合・脳内年齢ぽやぽやひまわり。多分17歳教。親父に土下座で求婚されてその場でオッケーした人。ビースト&ビューティー&ダークライ(?)。
【県知事】
黒岩勝己・60代。名前からなんとなく悪人なイメージを持たれやすいが、性格は善人かつ几帳面で基本的に悪人になれないタイプ。鬼畜親父の幼なじみで小作人一家の長男。南部一家には逆らえない(土地を借りてるから)。子供の頃から鬼畜親父にいろいろ押し付けられてきた挙げ句、なりたくも無かった県知事までやらせられている。しかしその政治的才能は確かで、今までに無いほど県の財政を立て直し、また日本全体が不景気なのにも関わらず、県そのものを普通な状態まで押し戻した(あくまで普通である。好景気まではいけていない)。