Lost Justice 作:色彩に吞まれた一般生徒
絶望という名の地獄の中で生きる亡霊。
亡霊は何のために“現在”を生きているのだろうか?
白洲アズサは正しい正義を見失った。
何をすれば良かったのか。
どうすれば皆死なずに済んだのかさえも分からない。
■洲■ズサは大切な友人と師を亡くした。
建物が崩れ、焔が燃え上がる中。
友人達や師は崩れた建物の下敷きとなり、即死した。
■■ア■サは家族とも言える仲間を亡くした。
大切な仲間の一人である姫が攫われ。
汚い大人によって生け贄となり、亡くなった。
他の仲間達も姫を助けようと必死になって戦った。
無論、
だが、結局
■■■■■は絶望した。
大切な友人や先生は死に、仲間達は殺され、姫は生け贄にされた。
次第にそれらは
今この瞬間に白洲アズサは死んだ。
そして、新たな
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「………。」
最悪な目覚めだった。
私にとっては忘れられない、あの時の惨劇の記憶。
胃酸を吐き出しそうになったが、何とか堪えてボロボロのベットから立ち上がった。
「…空は変わらず赤いままだな。」
先生達や死んだその日、何故か空が赤く染まって以降各地で生徒が何かに呑まれて黒い影になる事件が相次いで起こっている。
最初はアリウス自治区のみだったが、そこから広がるようにゲヘナ、トリニティ、ミレニアム、レッドウィンター、アビドス、百鬼夜行と被害が拡大しているのだ。
それぞれの自治区の政治はもう機能していないも同然だった。
それは、私が以前通っていたトリニティ総合学園でもだ。
「…トラップの配線に以上はないみたいだな。」
何もかもが崩壊している中、私だけは自身の身を守るために誰もいなくなったビルを拠点とし、自衛を続けている。
影に吞まれた生徒達は無差別に人を襲い、殺した人達を影に変えて仲間にしてしまう厄介な特性を持っている。
私が殺した影の中には血だらけの制服を着た前のクラスメイトだっていた。
恐らく、逃げ遅れたところを影に襲われて殺されてしまい、吞まれたのであろう。
「食料は……、そろそろ底が尽きるか…?今日中に調達してこないとだな。」
段ボールの中に詰めてある缶詰やレーションの量が少なくなっていることに気付いた私は、今日中に拠点から離れて食料を調達することに決めた。
古びたクローゼットから少しボロボロになった予備の制服を着て、傍にかけてあった血濡れたローブを羽織った私は、ヒヨリの形見である大きなリュックを背負ってから自身の愛銃である【Et Omnia Vanitas】を持って今は地獄と化してしまったトリニティ自治区へと足を運ぶのであった。
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まだエデン条約が始まる前までは気品があふれ、美しかったトリニティ総合学園。
だが、今ではその面影は見あたらない。
「…Vanitas vanitatum, et omnia vanitas、やはり全ては虚しいな。」
虚しさを感じた私は今は口癖になってしまっている言葉を口から溢しながら、銃を構えて警戒しながら荒れ果てている町並みを歩いていた。
私が目指す先は、無人となっているが唯一設備などが機能しているコンビニである。
本来なら盗みはいけないのだろうが、今の地獄と化した世界ではもうそういった常識は通用しないのだろう。
「……っ。」
歩いていると、建物と建物の間で壁により沿うようにもたれていた人影を見つけた。
それに気付いた私は、駆け寄ろうとしたがその人影から腐敗臭が漂っているのに気付いた。
顔をしかめながらもその人影に近づくと、そこに居たのは左目と右腕が無く、全身が血まみれになったトリニティ生徒の亡骸であった。
亡骸から推測すると、恐らく死んだのは凡そ一週間前位だろう。
そして近くに落ちていた銃を見て、彼女は最後まで諦めずに生き残ろうとした意思が感じられた。
「……安らかに眠ってくれ、貴女の意思は勝手ながらだが私が継いでみせる。」
そう言った私は、その亡骸の前に片膝立ちをして合掌をした。
彼女は恐らく後数日すると襲ってきた影と同じような存在になってしまうのだろう。
だが、私には彼女を埋葬するための余裕がないのだ。
恨んでくれても構わない。
だけど、どうか…せめて安らかな眠りについて休んでくれ。
「…よし、急いで行かなければ。あと少しで影達が活発になる時間帯になってしまう。」
片膝立ちから立ち上がり、空を見上げると既に赤い空に浮かぶ漆黒の太陽が昇りかけていた。
私は急いでコンビニに向かうと、袋にありったけの保存食を詰め込んで母校であるトリニティ総合学園を後にしたのであった。
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「…これほどあれば大体二週間は持つか、だが…あそこのコンビニの備蓄品も少なくなってきているからそろそろ他の場所に買えた方が良いのか…?」
拠点に帰った私は持ち帰った保存食や弾などの備蓄品をそれぞれ指定の場所にしまった。
外から地上を見下ろすと、先ほどまでは人一人として居なかったはずのひび割れた大通りに黒や空色を基調とした肌色をした生徒や青黒い色に浸食されたオートマタなどの影が出現していた。
「…今日は比較的に少ないな、巡回警備ルートはいつも通りで良さそうだな。」
そう思いながら時計を見ると、まだ巡回には早い時間帯だったため、ある場所に行くことにした。
拠点から少し離れた場所に移動すると、そこには幾つもの墓が建てられていた。
だが、その墓は盛り上がった土の上に少し大きめの石が建てられているような少しみすぼらしい墓だった。
石には皆という文字が刻まれていた。
「…皆、あれからもう何年経ったからは分からないが私は今でも足掻いているぞ。」
私は墓の前で懐かしむように微笑んだ。
この墓はエデン条約で全てが終わった後、私が急いで皆の亡骸を集めて埋葬した墓なのである。
正直、亡骸を保存できる方法があれば埋めずにそのまま私の拠点で保管しておきたかったのだがそうはいかない。
そのままにしておくと先生達も影になりかねない。
影になった先生達と戦わなければならなくなるため、泣く泣く埋葬をすることにしているのである。
「皆は死んでからも元気にしてるか?……いや、死んでるから元気にしているかも関係ないのかも知れないな。」
私は少し苦笑いを浮かべながらそう墓に語りかけていた。
正直もう楽になりたい、早く皆の所に行きたいとずっと思っているのだが、あの時の先生の言葉が今でも呪いとなって頭に響き続けている。
『“アズサ、生きてね。”』
「………生きて…か。先生、私は今でもちゃんと生きているのだろうか?もしかしたら…私はもう死んでるのではないだろうか?」
先生に生きてと言われてから、私は本当に生きているのかどうかすら分からなくなってしまった。
実は私はもう死んでいて、今見ているこの景色は私の罪故の景色なのかも知れない。
「…っう。」
思考が段々変な方向に進んでいきそうになった私は自分の体に拳銃を一発ぶち込んで痛みで正気を取り戻した。
毎回この墓の前に立つとこんなネガティブに近い考え方になっていつかは狂ってしまいそうになるのは茶飯事だ。
だから、それの対処法として自傷をすることで正気を保つ選択肢を選んだのである。
「……そろそろ時間か。じゃあ…また来るからな、先生、皆。」
ひび割れたモモフレンズの時計を見ると、あと少しで巡回の時間になりそうなことに気付き、私は墓の前で合掌をしたあといつもの巡回警備に向かうのであった。
白洲アズサ(Lost Justice)
・エデン条約の日に全てを失ってしまった少女。
・地獄と化した世界で何のために生きているのかは自分でも分かっていない。
・だが、大切な師が残した最後の約束を守るために生きているのかも知れない。