『Good afternoon, everyone』
『本日は無人島移住パッケージ チャーター便へのご搭乗、まことにありがとうございます』
……どうしてこうなった。あのあと、必死の抵抗もむなしく、謎の怪力を持った二人のたぬきに強制連行された僕は、気付いたときには無人島行きのチャーター便の中にいた。
『到着までの間、無人島生活のイメージ映像をご覧になって、ごゆっくりおくつろぎください』
機内アナウンスが明るい声でそう言うと、機内のモニターに映像が流れ始める。正直それどころではない、普通に誘拐事件なのでは? というまずい状況なのだが、しかし目線は自然とモニターに向いてしまう。
そこには、白い砂浜と穏やかな波の音、ビーチでくつろぐ女性の姿が映し出されていた。そして場面は森の映像に切り替わり、少年時代を思い出すような虫の鳴き声を背景に、気楽に探索する男性の姿が映った。
「おぉ……」
思わず声が漏れた。誰もがイメージする、無人島での自由な生活そのものだった。
画面は次のシーンに切り替わる。森のベンチとでもいうべきか、自然の切り株でできた椅子に座ってゆっくりと読書を楽しむ男性と、ピンクのリス――
ピンクのリス!?
なんだあれ。なんか自然な感じで出てきたが、マスコット的なアレか?
僕の戸惑いをよそに、映像は進んでいく。
――雨の中でカエルと釣りをする少女
――紅葉に囲まれたすすき野の中でネコやヒツジと虫取りを楽しむ少年
――オオカミやシカと焚火を囲みながら雪遊びをする女の子
そのあとも、人と動物が共に生活するエモい感じの映像が次々と流れ、最後は無人島生活を満喫している笑顔の
なんというか……動物多くね? あれ全部マスコットキャラなのか? たぬき顔の人が運営しているサービスだしなぁ。もしかしたらあの社長がめっちゃ動物が好きなのかも。うん、きっとそうだろう。
***
なんだかんだイメージ映像に夢中になっていたうちに、チャーター便は目的地に着いてしまったようだ。恐る恐る外に出てみると、そこにはどこまでも続く水平線と、緑豊かな自然が広がっていた。いやーきれいな海だなー。波も穏やかだし。こんなところで釣りでもしたら気持ちいいだろうなー。
「みなさん、長旅お疲れ様でしたー!」
海を呆然と眺めて現実逃避をしていた僕の頭を再起動するように、先に上陸していたであろうたぬきの人の声が響き渡った。
「着いたばかりのところ申し訳ないのですが、
うわっ、くそ。言いやがった。『無人島生活』ってはっきりと。必死で考えないようにしていたのにッ……! え、マジか……これマジで無人島かー。
それになんだよ、『みなさん』って。ここには僕一人しかいないだろ。……視界の端にヤギっぽい人と、アヒルっぽい人が映っている気がするが、きっと気のせいだ。
「それじゃ、案内しますので、僕たちについて来てくださーい!」
たぬきの人はそう宣言すると、さっさと歩きだしてしまった。そして後を追うようにヤギの人とアヒルの人たちも歩き出した。あ、やっぱりあの人たちも一緒なのね。そっかー。そっかー。うん、一体何が起きているんだろうね。
あまりに現実離れした状況に、おもわず空を見上げる。ゆっくりと雲が流れている。あぁ、なんて心が落ち着く景色だろう。大丈夫、落ち着こう。とにかくまずは食料と水を確保して――って、みんなもうそんな所まで行って! ちょっと待ってよ。おいてかないで!
***
島の中央まで進むと、ちょっとした広場があり、そこには僕らを案内してくれたたぬきとは別の、一回り大きいたぬきがいた。僕らを案内してくれた二人はその大たぬきの後ろに控えるように立ち、ここまでついて来た僕らと向かい合うように立った。
これまでは、たぬきっぽい人、超たぬき顔の人なんだと自分に言い聞かせてきたが、もう無理だった。どう見てもたぬきだ。だって、立派なしっぽが揺れてますよ、あなたたち。
「みなさん、ちゃんと揃ってますかー? 念のため、点呼しますねー」
僕らを案内してくれたうちの一人、向かって右に立っている小さなたぬきが僕ら三人を見渡しながら呼びかけてきた。
「バーバラさーん」
その声に反応して、僕の左隣にいた茶色のヤギが左手を挙げて返事をした。うん、この人も、ヤギっぽい人ではなくて、完全にヤギだな。後頭部に立派なツノが生えていらっしゃる。
「ピータンさーん」
点呼が続く。次に手を挙げたのは、僕の右に立っていた全身真っ赤なアヒルだ。なんだよそのクチバシは! 誤魔化す気ゼロだろ。どう見てもアヒルだよ!!
「ボクさーん」
そして最後に僕の名前が呼ばれた。……嫌だなぁ、この流れで返事するの。何が悲しくて、たぬき相手にヤギとアヒルと一緒に点呼されないといけないのか。
「……ボクさーん!!」
小さな抵抗として、無視してみたが、一回り大きな声で呼ばれてしまった。返事しないと終わらないやつだな、コレ。
「……はい」
諦めて小さく返事をする。それを聞いて満足したのか、真ん中のたぬきが大きくうなずいた。
「はい、大丈夫ですね!」
何が大丈夫なんだ、言ってみろ。
「社長! 今回の申込者三名、お連れしましたー!」
点呼を取り終えた小さいたぬきは、ニコニコしながら誇らしげに真ん中のたぬきに報告した。どうやらあいつが、
「僕はこの無人島移住パッケージを企画したたぬき開発の社長、たぬきちと申します、だなも!」
「今日からみなさんはここで一緒に無人島生活を始めるだなも」
デスゲームの導入みたいなこと言うのはやめてください。怖いから。
「まず、みなさんには、寝る場所の確保をお願いするんだなも!」
「はい、こちらがボクさんの分のテントになりまーす。それから、この島の地図もお渡ししておきますね」
ひとしきりたぬきちの説明が終わったところで、向かって左側にいたもう一人の小さなたぬきがテントと地図を渡してきた。え、なに? 生き残るために、まずは自分の拠点を作れってこと? まさか本当にデスゲームなの?
「では、いってらっしゃいませー!」
***
いきなりテントと地図を持たされ、中央広場から追い出された。くそ、何が何だか。だけどとにかく、奴らの言う通り、まずは寝床の確保だ。それと水もだな。できれば脱出するときのことも考えて海の近くが良かったが、さすがにそれだと露骨すぎて警戒されるか。
地図を見ながら考える。どうやらこの島は大きな川が三つあり、それによってエリアが分断されている造りになっているようだ。地図によると、僕らがいるのは島の南西で、分断されたエリアの中で最も平地が多いエリアだ。その中で、水の確保が容易で、かつ、いざという時に脱出しやすい場所――
「よし、着いた」
僕が目星をつけたのは、南西エリアの中央右端に近い場所だ。ここなら、川が近いから水の確保は容易だし、いざという時もまっすぐ南下すればすぐに海だ。中央広場――おそらくそこがたぬき軍団の監視拠点になるはずだ――からも離れており、我ながらベストな拠点を選べたと思う。
そうと決まれば早速――よし、ここに自分のテントを張ったぞ! 無人島生活の第一歩だ!なんだかテンションも上がってきたぞ。思わずガッツポーズもしちゃう。
「って、ちがーう!!」
何を楽しくなっているんだ、僕は! くそっ、危なかった……危うくあのたぬき軍団の策略にまんまと乗せられるところだった。非現実的な状況に、少しテンションがおかしくなっているな。油断せずに行こう。
ともあれ、良い位置に拠点を設置することができたことは事実。さて、他の二人はどうしているだろうか。まだここから状況が大きく動くこともないだろう。敵情視察もかねて、少し島内を散策してみようかな。とりあえず、脱出時のシミュレーションとして、海まで歩いてみるか。
***
そう思い、南に向かって少し歩いたところに、茶色いヤギがいた。そういえば点呼の時にはしゃべってなかったな。あの人もたぬきちたちみたいに普通に話せるのだろうか。それはそれで怖いけど。
悩んだけど、恐る恐る近づいて声をかけることにした。ええっと、点呼の時に聞いたけど、名前は――
「あの~、こんにちは……バーバラ、さん?」
これで合っているだろうか……。相手はヤギだ。一般的にはおとなしいイメージがあるけど、縄張り意識が強くて、意外と攻撃的な面もあるって昔テレビで見たような気がする。確か頭突きが強力なんだよね。それに言葉が通じるかもまだ分からない。こういう時はとりあえず下手に出ておくタイプなんだ、僕は。……こんなんだから、会社でも面倒ごとを押し付けられるのかな。
「アンタはたしか……ボクって名前だったよね! ウチはバーバラだよ、よろしく! かな」
おおぅ、めっちゃ流暢にしゃべるやん。口調からして、女の子かな。気さくな雰囲気だし、いかにもアネキって感じだ。良かった、いい人そうだ。
「ボクはもう、いい場所を見つけたのかい? ウチはフィーリングで決めようと思ってたんだけど、どこもいい感じだから、意外と悩んじゃってねぇ~」
「とはいえ、このまま悩んでもいられないし、そろそろこの辺りで決めちまおうかとも思ってるんだけど……」
「ボクは どう思う?」
バーバラさんが小首をかしげて、そう聞いてきた。うっ……ちょっと可愛い。
どうやらテントの設置場所に悩んでいるようだ。そうだよね。この人だってきっとあのたぬきに騙されて、いきなり無人島に連れてこられたんだ。気丈にふるまっているんだろうけど、これからのことは不安に思って当然だ。
さっと辺りを見渡す。うん、この位置なら、辺りが木に囲まれているから守りやすくて、中央広場からの距離も許容範囲だ。バーバラさんは女の子だって分かったし、雌山羊は普段は温厚な性格のはず。自ら打って出るタイプじゃなければ、この場所はいいと思う。
「良さそうだね!」「ホントかい?!」
うぉっ、僕の返答に対して食い気味にバーバラさんが答える。金色に輝く釣り目をぐっと見開き、一歩距離を詰めてきた。さっきはちょっと可愛いと思ったけど、やっぱり怖い。というか僕も冷静になれ、相手はヤギだぞ。
……縄張りにはうるさいのかな、本能的に。
「じゃあ、ちょっとウチの脳内シミュレーションに付き合っておくれよ!」
そう言うと、バーバラさんは目をつむり、イメージを膨らましているようだった。つられて、僕も目をつむり想像する。
「この場所にウチのテントがあったとしたら……こういう風になると思うんだよね! かな」
「丸見えじゃないか、僕のテント!!」
あっぶねぇ~!! めちゃくちゃヤル気だよ、この人。この場所は木々にうまいこと隠れているから、周りからは見え辛く、逆に位置の分かっている相手――例えば少し北にある僕のテント――を隙間から監視をするには最適な位置取りだった。不安で、テントの場所を悩んでいる? 前言撤回だ。これは「お前のことはいつでも見ているからな」という明らかな牽制。アヒルと丸腰のニンゲン、どっちのほうがヤリ易いかなんて、明らかだ。けどまだこの段階で大っぴらに仕掛けるのも、周りから警戒されてしまう。故にこの、牽制。
バーバラのアネキ、意外と策士である。
「で、どう? かな」
最悪の想像を終えて目を開けると、バーバラさんが再度、首をかしげて聞いてきた。可愛い子ぶったって、もう騙されないぞッ。けどここで、はっきりと異を唱えるのも、逆上されるリスクがある。ここはやんわりと否定しよう。
「なんか違う、かも?」
明確な理由は示さず、けどなんか違う、というフィーリングに頼る作戦だ。さっきはバーバラさんもフィーリングで決めるって言ってたし、これならバーバラさんも断りづらいのではないだろうか。
「う~ん……ウチの直感はここって言ってるけど――」
ダメだった。フィーリングではここらしい。
「別の場所も見たほうがいいかねぇ。ボク、どう思う?」
バーバラさんの黄金の眼光が僕を貫く。すぐさま理解した。試されている、と。バーバラさんの言いたいことはこうだ。『ウチの牽制に対して仕掛けてきたのはそっちだ、どうオトシマエつけてくれるんだい?』
うぅ、言いたくない。言いたくないけど、ここは仕方ない。
「……探してあげるよ」
「えっ?! ウチにピッタリの場所を見つけてくれるって言うのかい?!」
だから食い気味になるのやめてください。怖いです。それとそこまでは言ってない。
「会ったばかりの相手にアンタ……エラく気が利くねぇ~!」
「よし! アンタを信じて、任せよう!」
その後、やけに上機嫌になったバーバラさんからテントを預かり、彼女の代わりに設置場所を決めることになった。どうしてだ。ちょっとした偵察のつもりだったのに、さっそく厄介ごとが増えてしまった。
そうして意気消沈しながら、バーバラさんのテント設置場所を探しに出発しようとしたとき、去り際にバーバラさんがもう一度声をかけてきた。
「アンタが選んでくれたトコなら、どこだって構わないからね」
やめて。期待が重いです。
***
バーバラさんのテントを抱えて、逃げるように探索に出かけた僕は、中央広場のすぐ西側の辺りに真っ赤なアヒルがたたずんでいるのを見つけた。
あいにく僕はバーバラさんの案件で手一杯なんだ。ということでスルーを決め込んだが、向こうも僕の存在に気付いたようで、向こうから声をかけてきた。
「よっ! オイラはピータンってんだ!」
「アッハイ、ボクといいます」
予想はしていたけど、アヒルも普通に話すのね。だんだん感覚がマヒしてきたな。それにしても、アヒルにピータンって名前は、物騒というか意味深というか……。
「オイラは自然を感じられるトコにテントをはって、心とカラダを鍛えようと思ってるんだー!」
話を聞くと、ピータンさんもテントの場所に迷っているらしく、この場所で良いと思うかを聞いてきた。
いや、でもこの場所って――
「ピータンさん、ここだと
「だな!
す、すごい……この人は堂々と運営に反旗を翻すタイプの参加者だ。常に奴らの監視に晒されるリスクのあるこの場所は、確かに心とカラダを鍛えるにはうってつけの場所だろう。ならばもう僕から言えることは何もない。
「いいと思う」
「へへっ、そうだろ? オマエにそう言ってもらえて、なんか安心したよ! よーし、オイラの住むトコ、ココにするぞー! だね」
そう宣言すると、ピータンさんは早速テントを張ってしまった。なんて頼もしいんだ。
「実は、どうしようか迷ってたから、助かったよー!」
「いえ、僕は何もしていないですよ」
「そう言うなって。オマエが背中を押してくれたおかげで、思ってた場所にテントを張れて良かったよ!」
そう言うと、拳を僕の方に向けて、ニカっと笑うピータンさん。やばい、なんていい人なんだ。バーバラさんとの牽制合戦で心を消耗していた僕には、ピータンさんの爽やかさは特効薬だった。
「もうひとりのバーバラの方はどんな感じだろうな?」
それに、もう他の人の心配までして……。この清涼感はバーバラのアネキにも見習ってほしいものである――
「――はっ!?」
そうだ! これは名案じゃないか。サバサバ系みたいな雰囲気を出しておきながら、がっつり初日から僕みたいな弱い相手を監視する位置取りをしてきたり、それに気づいた僕に牽制を飛ばしたりしてくるようなバーバラさんは、この爽やかピータンアニキの近くで精神修行をするべきだろう。うん、そうだ。
そう思い、ピータンさんのテントの左側に目を向ける。そこにはちょうどテントが張れるくらいのスペースが残っていた。よし、ココに決めちゃおうかな。
「オマエもここにテントを張ったのかー?」
作業が終わると、ピータンさんが声をかけてきたので、事情を説明することにした。
「あっ、実はこれはバーバラさんので、テントの場所を迷っていたみたいだったので」
「そっかー。さっそくご近所さんってわけだな。お隣同士、仲良くやっていくぜー!」
うっ、眩しい……。ごめんよ、ピータンさん。貴方の爽やかオーラでバーバラさんの心を救ってあげてください。僕には荷が重いです。
何はともあれ、これで全員のテントの場所も決まったし。広場に戻ってみよう。
***
その後、広場に戻った僕らは、たぬきちの提案でキャンプファイアの火を囲んで、親睦会を開いていた。準備の時にピータンさんが「キャンプファイア、楽しみだなー」と言っていたが、焼き鳥が頭に浮かんだことは黙っておこう。
今は6人全員で火を前に、何やらたぬきちが演説をしているが、一体何が目的なんだ……。このデスゲーム? の参加者を島に閉じ込めて半日あまりがたったが、未だにたぬきちからの具体的な目的は何も知らされていない。
探索中に、ポケットに入れっぱなしになっていたスマホを確認したが、当然のごとく圏外だったので、電源は切っておいた。外部との連絡手段が遮断されたこの状況で、僕は無事に帰れるのだろうか。
「……というわけでみなさん! 皆さんもこの無人島の一員として……あれ? よく考えたら、これだけ住民がいたら、もはや無人島とは呼べないだなも……」
たぬきちがまた何かおかしなことを言おうとしている気がする。
「そうだなも! 僕たち最初の住民で、この島に名前をつけるだなも! ひとりひとりアイデアを出し合って、多数決で決めるんだも」
正直どうでもいいと思った。便宜上、僕も彼らのことを
それでも島の名前を決めると言うなら、僕は――
「じゃあ、みんないっせいに名前を発表するだなも!」
「せ~~~の!」
「まめつぶ!」
「ぶんぶく!」
「きあい!!」
「モリモリーッ!!」
「……ニンゲンの」
……恥ずかしい、日和ってしまった。あんなイキったこと考えておいて、このざまだ。
「この中からどれにするか……。順番に名前を言うから、賛成なら拍手をするだなも!」
たぬきちがあらかじめ言っていた通り、多数決をするみたいだ。まぁ僕の案なんかどうせ誰も気にしていないだろう。
「じゃあ、まずは異色のネーミングセンスが光っていた――ボクさんの提案から」
おい、やめろ。恥ずかしいだろ。そりゃお前ら動物から見たら異色でしかないだろうよ!
「ニンゲンの!」
たぬきちが力強く僕の提案した島名を読み上げると、全員から大きな拍手が上がった。
「おっと! いきなり全員が拍手とはすごいだなも!」
「じゃあ、今日からここは『ニンゲンの島』ってことで!」
特に誰からも反対意見が出ることがなく、『ニンゲンの島』で決まってしまった。
え、本当にいいのキミたち? すっごい皮肉のつもりだったんだけど。もしかして全員、自認がニンゲンなのかな? それともやっぱり、僕が疲れ過ぎてて、人間が動物に見えている可能性も……?
「ボクさんはこの島の名づけ親ということになるので、今後も島の重要な決定はボクさんに相談させてもらおうと思うんだも。言うなればボクさんは島民代表だなも!」
は? しれっととんでもないこと言い出したぞ、このたぬき。
島民代表? 僕が? つまりこれは、運営側のたぬき軍団 vs 島民という対立構造を作り出して、その代表として僕が矢面に立たされるということか!? くそっ、労働組合の従業員代表を押し付けられたときのことを思い出すぞ。……あれ、地味に面倒なんだよなぁ。たぬきち、なんて狡猾なんだ。
「いや、ちょっと待ってよ!」
「ボクさん、島民代表に就任したあいさつとして、何か一言お願いできるだなも?」
あぁっ、どんどん話が既定路線みたいな扱いで進んでいく。だから僕はやるなんて一言も……ってそこ、「何言ってくれるのかな?」みたいなキラキラした視線向けてくるのやめろぉ! しっぽ振ってワクワクしているの見えてますからね、バーバラさん!!
「では、ボクさん、一言どうぞ!」
――(生き残れるように)がんばりまーす……