マブラヴオルタネイティブ―ホワイトシャドウ   作:嫉妬憤怒強欲

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コラボ記念でトータルイクリプスのアニメがユーチューブに期間限定配信されてたので、期限内ギリギリまでになんとか全部見終えました。


第1話「京都防衛戦・前編」

 西暦1973年4月19日。

 月より飛来した地球外生命体の着陸ユニットが地球に落下。

 以来、人類は地球外生命体との全面戦争に突入した。

 その圧倒的な物量に、人類の総人口は十数億人までに減少。

 国連は宇宙からの侵略者を人類に敵対的な地球外起源種、BETAと呼称した。

 

 その脅威に対抗するため、各国で対BETA戦用人型兵器「戦術歩行戦闘機(Tactical Surface Fighter)」、通称「戦術機」を実用化して戦線に投入、世界規模の抵抗を試みた。しかし、押し寄せるBETAに劣勢を強いられた人類は、ユーラシア大陸の大半を失うことになる。

 

 そして西暦1998年7月7日、大規模BETA群が日本帝国に上陸。瞬く間に九州、四国、中国地方を制圧した。

 九州から続く戦いは日本を徐々に追い詰めていき、その戦火は帝都・京都へと迫っていた。

 

 

 同年8月、京都防衛戦。日本帝国の命運を左右する一大防衛戦。

 空は砲火で赤く染まり、大地は無数のBETAによって埋め尽くされていた。

 

『第六中隊、後退しろ!』

『光線級を確認!』

『要撃級接近!右側面だ!』

『くそっ、弾が切れた!』

『来るな、来るなぁぁ!』

『うわああああああ!』

『た、助けてくれぇええええええ!!』

『死にたくない!死にたくない!』

『怯むな!何が何でもここを死守しろ!』

『駄目だ食い破られる!』

『最終防衛線が突破される!』

 

 悲鳴が通信を通して飛び交う。

 戦場は混乱していた。

 

 日本帝国の政治中枢として発展した帝都への侵攻を阻止すべく、日本帝国軍、極東国連軍、在日米軍は三軍共同の防衛線を構築することを決定。

 宮津、丹波、明石を結ぶ線を第一防衛線、

 舞鶴、篠山、神戸を結ぶ線を第二防衛線、

 小浜、亀岡、大阪を結ぶ線を最終防衛線に設定。

 そして京都外郭高地及び京都市街が絶対防衛線に設定されていた。

 さらに琵琶湖に帝国海軍と米海軍の艦隊、舞鶴沖の日本海と大阪湾には帝国艦隊と国連艦隊が砲撃支援として控えていた。

 

 だが、幾重にも敷いた防衛線でさえも、BETAの破竹の勢いを止めるには不十分で、京都の市街地より離れた場所に位置する嵐山防衛線にまで侵攻を許してしまった。

 

『第一小隊、隊形維持!後退しながら迎撃を続けろ!』

『『『了解!』』』

『左舷より新手が!』

『なんだと!?どうなっている!後続集団の報告は受けていないぞ!』

 

 嵐山防衛線を担当するのは、嵐山補給基地より出撃した帝国斯衛軍所属の嵐山第二中隊。

 その部隊の戦術機を駆る衛士達の殆どが、まだ成人に満たない10代の少女達であり、中隊長である赤い衛士強化装備を纏った衛士もまた、まだ年若い女性だった。

 戦況の悪化に伴い、徴兵対象年齢が引き下げられたうえ、男子だけでなく女子にも徴兵対象が拡大。正規の任官・訓練課程を終えていない訓練学校の生徒までも戦場へ駆り出されることになっていたのだ。

 

 山吹色の瑞鶴を駆る女性衛士――篁唯依少尉もその一人であった。

 

「くっ、数が多すぎる!」

 

 唯依は操縦桿を握り締めながら、網膜に投影された戦場を睨みつけた。

 白い瑞鶴の小隊が後退しながら砲撃を続ける。

 しかし、その隙間を埋めるように戦車級や要撃級、突撃級が押し寄せ、壁のように前進してくる。

 まるで津波だった。

 撃っても撃っても減らない。倒した数より現れる数の方が多い。

 一向に終わりの見えない戦闘に、肉体的にも精神的にも疲労が溜まって来ている。

 もとより新兵であり、若干15,6歳でしかない唯依達の精神への負担は大きかった。集中の隙間を縫って数体のBETAが弾幕を抜けて損傷を受ける機体が出始めてきている。

 

『36mmラストマグ!』

『120mm残弾無し!』

 

 その上周囲から弾薬が底を尽き始めた報告が上がっていく。

 数名の犠牲者は出ていたものの、それでもまだ中隊の「形」は保ち続けていた。

 

『全小隊に告ぐ!直ちにこの戦域を離脱、第八ラインまで後退せよ!』

『『『「了解!」』』』

 

 通信回線を開いて嵐山基地の指揮所(CP)へ繋ぐも、返ってくるのはノイズのみだったことから、基地が陥落したことを悟った如月中隊長から後退指示が出された。

 如月中隊長の指示の下、中隊全機一斉にBETAに背を向けて跳躍する。

 戦闘を行っていた地域を脱し、稲田の集中する農村部へ突入した。

 

『急げ!敵が集結しつつある』

 

 光線級を警戒して高度を下げて連続跳躍で後退する中、機体管制ユニット内に警報が鳴り響いた。

 

「レーザー警報!?」

『案ずるな。高度を上げなければ―――』

 

 次の瞬間、眩い閃光が夜を裂き、後方から隊長機の赤い瑞鶴を貫いた。

 

「中隊長!?」

 

 唯依の目が見開かれる。

 一瞬だった。如月の機体は胴体から分断され、そのまま爆散した。

 

『れ、光線(レーザー)級・・・!』

 

 誰かが、絶望に満ちた声で呟く。

 直後、再び管制ユニット内に、光線級の存在を告げる警告音が鳴り響いた。

 

『なんでこの高度で!?』

『レーザーの射角が開けたんだわ…!』

 

 一機。また一機と瑞鶴が光に貫かれ、炎を噴きながら地面へ墜落していく。

 恐怖が伝染し部隊の統制が崩れ始めていた。

 

『いやぁぁぁ!』

『どうするの!?』

『なんとかしてよ唯依!』

 

 唯依は奥歯を強く噛み締めた。

 逃げたい。怖い。死にたくない。

 そんな感情が胸の奥で暴れていた。

 状況は悪化する一方だった。

 京都市街が近づくにつれ、地形は開けていた。

 周囲に遮蔽となるものがなく、前方の尾根までまだ距離がある。

 光線級を放置すれば被害は増える。

 だが今更反転して迎撃はできない。距離がありすぎて近づく前に撃ち落とされるのが目に見える。

 誰が見ても絶望的。唯依自身、その事実を理解していた。

 

(ここまでなの……?)

 

 諦めかけたその時、IFF画面に新たな反応が現れた。

 

「戦術機?」

『友軍?』

『けど、識別コードが表示されないわ』

 

 嵐山の方角から高速で戦場へ向かってくる反応はたった一機。

 唯依は瞬時に識別情報を確認した。だが表示されるデータは異常だった。

 

――所属不明。該当機種無し。登録番号なし。

 

「何なの、あれ……?」

 

 唯依は思わず呟く。

 

『篁、なんだか分かるか?』

「いえ……」

 

 同期の山城から通信が入るが、珍しく即答できなかった。

 

「知らない機体だわ」

 

 それは篁唯依にとって異例のことだった。

 その機体は白のカラーリングで、頭部は自分たちも馴染みのある『吹雪』と同じ外装を付けている。

 だが、その体躯はあまりにも細かった。

 肩部装甲が存在せず、腕部や脚部には骨のようなフレームが剥き出していて、まるで肉を削ぎ落とされた枯れ木だった。

 未完成品という印象を受けたその機体は、斯衛軍機とも国連軍機系との共通点が見当たらない。

 

 斯衛軍はもちろん、国連軍や在日米軍の主力機に戦術機なら、多少なりとも特徴は分かる。

 しかし、網膜に投影されるその機体の特徴は、そのどれにも当てはまらない。

 まるで戦術機の系譜から外れたような存在だった。

 

 

 予想より侵攻速度が速いな。

 地上へ出ると、外の世界の状況は想像していたよりも悲惨だった。

 夜空に立ち上るいくつもの黒煙。地面を埋め尽くすBETA群。

 防衛線は既に機能していないようだ。

 後退中の戦術機部隊は危機的状況にあった。 

 原因は光線級だ。

 あの目玉から照射されるレーザーで、後退する一機ずつ撃ち落としている。

 損害は継続中。このままなら部隊は全滅する。

 オレ自身への影響を考える。

 補給手段も整備設備もなし。

 単独行動を続けるのは現実的ではない。

 軍との接触が必要になる。

 接触対象が壊滅するのは望ましくない。

 

「………仕方ない」

 

 光線級を排除するしかない。

 だが問題がある。この機体には武装が積まれていない。

 教材用の試験機だ。当然と言えば当然だった。

 使えるものはないかと視線を動かすと、網膜投影に周辺情報が表示される。

 田んぼに転がっている戦術機の残骸のうち赤い一機に注目すると、傍に武装が転がっていた。

 

「使えるな」

 

 進路を変え、残骸へ高速で接近する。 

 赤い戦術機のコックピットはさっきのレーザーで破壊されている。搭乗者の生存確率はゼロだ。

 すれ違いざま、機体の腕(マニピュレーター)を伸ばし、残骸の背中にマウントされていた長刀を強引に奪い取った。

 銃器が欲しいところだが、まあこれで足りるだろう。

 

 光線級までの距離を測る。光線級との距離は約1.8キロだが正面ルートは却下だ。このまま接近すれば狙い撃ちにされる。

 別ルートを検索するが、周辺に十分な遮蔽物はない。

 

――なら、作るまでだ。

 

 ペダルを踏み込んで跳躍ユニットを噴射させ、地を這うような低空高速機動でBETA群へ接近を開始する。

 

 BETAの群れは数だけを見れば絶望的だ。

 だが数が多いということは、それだけ互いを制約し合っているということでもある。

 BETAの群れを前にして、最初にやることは突撃じゃない。観察だ。

 

 突撃級は一直線に突っ込んでくる。

 要撃級は腕の届く範囲へ入った獲物を切り刻もうとする。

 光線級は視界に入った目標へ容赦なく光を放つ。

 どれも単純だ。だからこそ、予測できる。

 

 大型種は互いの巨体が邪魔にならないよう、一定の間隔を保って前進している。

 突撃級は突進するために互いに十分な間隔を空けて進む。

 要撃級は巨大な腕を振るうため、密集しすぎれば味方同士で動きを阻害する。

 

 つまり、わずかな隙間が生まれるということ。そこが通路だ。

 

 オレは跳躍ユニットを短く噴かし、その隙間へ機体を滑り込ませる。

 要撃級の腕が唸りを上げる。

 予想通りだ。半歩早く機体を沈めると、鎌のような腕が頭上を通過して空を切った。

 反撃はせずに移動を続ける。目的は敵を減らすことじゃなく、前へ進むことだ。それも見つからないように。

 大型種の陰を渡り歩くたびに、光線級の視線は遮られる。

 視界に映る時間は、一秒もいらない。

 

 戦車級が脚部へ群がる。

 長刀を大きく振るう必要はない。踏み潰せるものは踏み潰し、邪魔なものだけを長刀で刃で払い落としたり、道を作るためだけに使う。それで十分だ。

 目的の光線級まで、あと数十メートル。

 正面から飛び込めば、他の光線級に捕捉される。なら、正面から行かなければいい。

 足元を這っていた戦車級を左腕で掴み上げる。

 暴れるが、戦術機の握力から逃れられるほどではない。

 

 胴体を捻り、光線級に向けて放る。

 狙い通り、放物線を描きながら光線級の真上へと落下。光線級はペシャンコになった。

 

 続けて二体目にも同じ様に捕まえた戦車級を投げつける。

 今度は閃光が走り、戦車級は空中で破裂する。焼けた肉片と体液を撒き散らしながら降り注いだ。

 

 だが問題ない。

 狙いは命中じゃない。選択肢を与えることだ。

 撃てば照射後に隙ができる。撃たなければ、その質量が自分に落ちてくる。

 どちらでも構わない。

 撃つか。撃たないか。その二択しか残さない。

 

 それにレーザーは基本曲がらないため、射角から位置を逆算することが可能だ。

 どこにいるか分かった瞬間、オレはすぐに動いていた。

 大型種の陰から跳び出し、一気に間合いを詰める。

 照射を終えてすぐは、まだ次の照準へ移るにはタイムラグがある。

 光線級の巨大な目玉がこちらを捉えた時には、もう遅い。

 

 長刀を一閃。巨大な眼が縦に裂けた。

 機体を止めず、蹴りを叩き込む。

 三メートルほどの巨体は、戦術機の脚力の前では軽すぎた。

 吹き飛ばされた光線級は後方へ転がり、護衛の戦車級や要撃級を巻き込みながら地面へ叩きつけられる。

 撃破したかどうかは確認しない。それに価値はない。価値があるのは、次の光線級が照準を合わせる前に姿を消すことだ。

 

 一秒後には、別の光線級がこちらを探し始める。

 

 オレは倒れゆく光線級を横目に、要撃級の陰へ機体を滑り込ませた。

 戦場では、勝敗は一撃で決まるわけじゃない。

 相手に、自分の望む行動を取らせた時点で、勝負は終わっている。

 

「次だ」

 

 

『噓……』

『たった一機で光線級吶喊(レーザーヤークト)を』

 

 戦場がざわめく。

 唯依も言葉を失った。

 

 光線級吶喊とは、人類の天敵であるBETA、特に後方からレーザーを照射する光線級の群れに対し、戦術機が強行突破して接近し、近接格闘でこれを排除・撃滅する決死の戦術である。

 BETA群に突っ込むという危険度の高さから、基本的に中隊〜大隊規模の部隊による組織的な連携で行われるべきものだ。

 それでも成功確率はかなり低く、成功例は十年以上昔の東ドイツ第666戦術機中隊くらい。

 

 だが網膜に投影される白い機体は、単機でそれを実行していた。

 しかも正面突破ではない。高度を変えず、大型個体が通る僅かな隙間を縫うような接近。

 

 岩や戦車級を投げつけたり、発射までのインターバルの間に距離を詰めて『74式近接戦闘長刀』や蹴りで仕留める。

 光線級を一体仕留めては群れの中へと消える。戦車級を投げつける。それらの繰り返し。

 

 光線級達はこちらへの攻撃を止めて白い機体への迎撃に移るが、大型種が死角になって狙いが定まらない。

 要撃級や突撃級が数体包囲に入るも、機体を止めることができないでいた。

 

 

「………いったい、あれに誰が乗ってるの?」

 

 唯依の問いに誰も答えることができない中、山城から通信が入る。

 

『――篁、中隊長が戦死した今、貴女が指揮を引き継いで』

「!」

 

 斯衛には古くからある伝統に則り、最上位の紫の色を除いて青→赤→山吹色という順に、色による序列が定められている。

 赤の人間が戦死した今、次席に位置する唯依が指揮を引き継ぐのは自明の理であった。

 

「……如月中隊長の命令通り、第八ラインまで後退する!続け!」

 

 白い機体がなんなのか気になるが、今は逃げ続ける事が最優先だ。

 レーザー攻撃が止んだことで冷静さを取り戻した部隊は唯依の指示に従う。

 生き残った五機は唯依の駆る山吹色の瑞鶴を先頭に後退した。

 

 

 

 距離三百、問題ない。

 戦車級の死骸を掴み、投擲する。

 光線級から照射されたレーザーで死骸が爆散した。

 肉片と体液が飛散し、発光器官表面へ付着する。

 効果は不明だが十分だった。

 側面から一気に距離を詰める。

 光線級がこちらへ向くがもう遅い。

 長刀を振り、発光器官を切断。光線級の反応が消失する。

 

「これで七匹目」

 

 同じことを繰り返しているわけじゃない。その場、その瞬間で最も効率のいい手段を選んでいるだけだ。

 共通していることは一つ。オレは一度も、光線級の正面には立っていない。

 死角。遮蔽物。敵同士の動き。利用できるものは、すべて利用する。

 気づけば、戦場の一角から光線が消えていた。

 光線級が減ったことで、後方の部隊が前へ押し出される。

 戦線が、わずかに動く。

 

「……増援か」

 

 地面が震えた。

 これまでとは明らかに違う質量の足音が、大地を揺らして近づいてくる。

 

 だが――。

 頭上を砲弾が通過した。

 音より速く飛来した鋼鉄の塊は、BETAの密集地帯へ次々と降り注ぐ。

 爆炎と衝撃で要撃級の巨体が吹き飛び、突撃級が爆風に押し倒される。

 砲弾が次々と着弾する。

 爆炎が大地を覆い、BETAの隊列を引き裂いていく。

 これまで隙間なく押し寄せていたBETAの波に、初めて穴が開いた。

 

「頃合いだな」

 

 跳躍ユニットを噴かし、機体を反転させる。

 光線級は粗方片付けた。さっきの部隊も退避できているだろう。

 艦砲の破壊範囲に残る理由はない。

 

 背後では艦砲の轟音が途切れることなく響いている。

 追撃してくる戦車級は無視した。

 振り向いて斬る時間すら惜しい。

 爆炎が、オレとBETAの間に壁を作る。

 

 戦場が変わる。ならオレも動きを変えるだけだ。

 オレはさっきの部隊が向かっていた方向へ向けて機体を走らせた。




以前マブラヴディメンションとエイティシックスのコラボがあったみたいです。
後者の主人公の声がキヨポンと同じだったのには驚きました。
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