五「たしか去年の事件で、七海が黒閃の連続記録塗り替えたんだっけ?」
七「……黒閃を連続して出せることが凄いわけじゃないです。2回以上出すなら連続…またはその日の内でないと難しいでしょう」
五「連発する前に祓えないの?」
悟の言葉に七海は青筋を浮かべるが、無視した。
七「一回目の理由は、まぐれでも実力でもなんでもいい。黒閃をキメると、術師は一時的にアスリートで言う“ゾーン”に入った状態になる」
五「わかるぅ。天上天下唯我独尊!って感じ」
七「あなたのそれはいつもでしょう。まぁいいですが。普段意図的に行っている呪力操作が、呼吸のように自然に廻る。自分以外の全てが自分中心に立ち回っているような全能感…とでも言うのでしょうか」
五「へぇ。七海でもそう思うんだ。んで、連続で何回だっけ?」
七「私の記録ですか?4回。運が良かっただけですよ」
五「ちなみに通算記録は僕が上ね!」
再び七海のこめかみに青筋が浮かぶ。
五「まぁ、黒閃って打撃の衝撃と呪力の衝突が0.000001秒以内って言われてるけどさ。僕はこれ、説明不足だと思うんだよね。単純にそれだけなら、僕はいつでも黒閃を起こせる」
悟は鼻にかけた様子もなく言った。
五「例えば正拳に呪力を篭めて打撃したとする。そこに篭められた呪力って
拳を強化する身体強化の呪力
相手にぶつけるガワの呪力
その両方を担う呪力
の三つに分かれるわけ」
七「なんの話ですか」
五「黒閃が狙って出せないって話。で、肝心なのは三つ目の“両方を担う呪力”、このブレンドの比率だと思うんだよね。こんなもん、殴る相手の呪力とか、自分の体のコンディションとか、環境要因とか入ると毎回バラつくじゃん」
七「確かに、呪霊の呪力性質も全て同じではないですね。相手によって戦い方も変えるでしょう」
五「そういうこと。僕が本気でやる時打撃に術式絡めるし、そうなるともう黒閃は運次第って感じ。これ言うと笑われるんだけど、気温や湿度も関係あると思ってるよ。黒閃って空間に作用する“現象”の話だし」
七「そうですね。黒閃の威力は平均して、通常時の2.5乗、乗算的に攻撃の威力が跳ね上がるのは、空間の話だからでしょう」
五「そ、何倍とかじゃなくて、2.5乗なわけ。要するに、黒閃の条件ってこれっていう正解がないんだよね」
七「……で、その黒閃を早速三連発させた虎杖君を私に一度預けたい、と」
五「上の連中がどうも、悠仁が気に入らないみたいだからねぇ。僕がいつでも保護できるわけじゃないし」
七「正直私は規律の側ですが、使えるならぶっちゃけどちらでもいいです」
五「そういうとこ。だから、信用してるよ」