ハイスクールD×D アフター:New HERO BorN F×F 作:scp-114514
《ジュラス・グレモリー》
配属日の21時。警報が鳴った。
鳥越地区で焔ビトが出現したとの報告を受け、俺達はマッチボックスに搭乗する。
既に装備は着用した。車内でブリーフィングが行われる。
「現場は金具を作る町工場。焔ビト化したのは社長の夫人。逃げ遅れた従業員が一名いるとのことだ。まずは従業員の救助、それから焔ビトの鎮魂。現場が工場である以上機材の転倒・落下も予想されるぞ、気をつけろよ!」
「「「「「はい!」」」」」
10分後、俺達は現場に辿り着いた。既に消防隊の放水作業が始まっており、水蒸気で視界が悪化することが予想される。
「第8特殊消防隊、到着しました」
「来たか、青線。今回の焔ビトはかなり攻撃的だ。飛び火しないように作業はしているが、鎮魂が出来ねばどうにもならんぞ」
青線。俺達の防火服に刻まれた青色のラインで、俺達はそう呼ばれているのだ。
「第8の皆さん…つ、妻を…サエコを眠らせてやってください」
焔ビトの鎮魂…それは、人間だった存在を殺す…あのおじさんの奥さんだった人を、殺す…それが、俺らの仕事…
そんなのを考えている間に、現場の工場内に突入する。
——————ごとり。
熱風で、上から黒い大きな影が落ちてきた。人の姿をしている。焼死体だ。
「従業員は、助からなかったか…」
10年前を思い出す。あの時、クラスメートは焔ビトになり、両親を焼き殺した…
そして俺は…人外の力を発揮し、彼を殺した。
「ねぇ、二人とも!大丈夫⁉」
マキさんの言葉で我に返った。シンラも何か意識が飛んでたのか?いや、そんなのを考えてる場合じゃない!
「お前達、気をつけろよ。一人の遅れが連携にほころびを生じさせる。
俺達の防火服に巻かれた青い発光体は、視界の悪い炎と煙の世界で仲間同士を結ぶ絆だ。決して断ち切るな!
恐怖心の否定はしない、それがある方が冷静な判断ができるからな。だがただの臆病者になるなよ」
「…問題、ありません!」「俺もいけます!」
ゴウッ!
ひときわ大きな爆炎がきた。この先に夫人の焔ビトがいるのだろう。
「俺らの侵入を拒んでいるんですかね…」
「ご婦人にとって、とても大切な場所だったのでしょう」
「マキ、道を作ってくれ!」
「はいっ!」
ずいっ!!
平泳ぎで水を真ん中から横にかく様に、先頭に立ったマキさんが両腕を薙ぐと爆炎が左右に分散。これで先に進める。
そう思った次の瞬間。
「うわっ⁉」
シンラが後方に吹き飛ばされた。何事かと思って前を見ると、焔ビトの姿が。女性的な長い髪があり、夫人で間違いないだろう。
それを確信したらしい大隊長も、今ここにいる俺達に命令をかける。
「
シンラ!俺達で援護をする、お前がその足で決めろ!ただし無茶はするな!」
『了解!!!』
焔ビトが肉食獣のような敏捷性のある動きをしながら俺達に飛びかかってくる。
「弾込めよし!安全装置よし!」
火縄中隊長が射撃をするが、いずれも命中しなかった。
「だあっ!」
大隊長が消防戦斧で切りつけるが、間一髪で避けられてしまった。
焔ビトは一旦バックジャンプで後退して体勢を立て直し、再び大隊長に突撃する。
「うお、あっちいい!」
「援護します!」
大隊長にしがみついて炎を噴き出して攻撃するが、彼の背中に回り込んだマキさんがそのまま背に手を当て、炎を鎮火。反撃とばかりに戦斧の柄の末端に取り付けられた槍が焔ビトの左膝に突き刺さった。
「■■■■■■■■■!!!」
炎も、近接戦闘も相性が悪いと判断したのか。大隊長の反撃を受けて後退した焔ビトは、近くにあった何かの製造機械を持ち上げてきた。投げるつもりだ。
「まずい!あれは俺のシールドでも防ぎきれんぞ、散開しろ!」
「いや、いけます!」
「なんだと⁉」
並みの武器では捌けないような質量攻撃。こんな時こそ俺の番だ。
「それ、突き立てられませんか!俺も支えますんで!」
「…わかった!」
「ありがとうございます!」
鉄兜をキチンと締めたことを確認した俺は、大隊長と共に巨大なシールドを持って最前線に立つ。
「■■■■ッ!!!」
唸り声と共に、焔ビトは大きな機械を投げつけた。
「さ、せるかああああっ!」
俺達はシールドを床に突き立てて両手で支え、勢いを殺すことに専念する。
2号。いけるか?
『問題ない。勢いを削ぐことができたら、こちらもやりようはある』
わかった。なら、もう反撃の準備は整った。
俺はシールドを支える右腕を放し、力を込めると腕から水蒸気が立ち上り始める。お返しだ!
「スチーム、バーストォッ!」
ズドオオオンッ!
パンチと同時に当てた場所が爆発を起こし、機械が焔ビトの方へ吹き飛んだ。それでもコアを破壊することはできず、まだ倒せていない。
「サンキュー、ジュラス。お前のおかげでこっちの動きが崩れずに済んだぜ」
「いえいえ、どうもです」
俺の第3世代能力、それは『体内水分の加熱』。体内で炎を生み出し、それで体内の水を加熱・沸騰させるのだ。水蒸気を一気に噴き出せば、こうして水蒸気爆発を発生させることも可能なのさ。
『問題は、能力の行使にあたり水分を消費するという事なんだがな』
そうだ。連発できるものじゃないから長期戦には向いていないし、下手したら周りを巻き込みかねない。だから今みたいにきちんと扱えるようになるには苦労した。
訓練学校じゃ、反動が酷いのに火力も強すぎるという諸刃の剣な能力として結構ドン引きされてたっけ。
それはさておき。後退した焔ビトは質量攻撃も、普通の近接も、炎も上手く効かない事を感じたのか様子見をし始めた。
そんな焔ビトだが、俺も今になって気づいたことがある。
「あの、皆さん。焔ビトが後退したところって、ずっと同じじゃありません?」
「ん?確かにそうだな」
「それで、近くになんか転がってますよね?」
「あぁ…。あれ、何だろうな?」
「なのにさっき、大型の機械をぶん投げて…。工場だったらあんなのも大切なのには変わりないはずなのに、不思議じゃないですか?」
「…多分、足元にあるものは一番夫人にとって大切なものかもしれんな」
「なら、あれを後で工場長に渡しません?」
「…鎮魂を、無事終えてからな」
そうこう話している間に、焔ビトは自らの炎の勢いを強くし始める。
「コアを狙え、シンラ!あそこまで炎が激しくなると、動きも俊敏になるぞ!お前の炎が頼りだ!」
「はいっ!いってきます!」
シンラはクラウチングスタートの姿勢を取り、焔ビトに真っ向から向き合う。どちらが勝つか。いや、シンラが勝たないと困るんだが。
「シスター、祈りを!」
「は…はいっ!」
シンラの足から出る炎は勢いを増していき、やがてロケットや飛行機のエンジンのように轟音を出しながら噴き出た時、シンラは目にもとまらぬスピードで焔ビトへ突貫する。
『炎ハ魂ノ息吹…』
焔ビトは炎を発射して撃ち落とそうとするが、シンラのスピードはそれよりも速い。やがてシンラは天井近くまで飛び上がった。
『黒煙ハ魂ノ解放…灰ハ灰トシテ…』
シンラも祈りの詠唱に加わりながら、空中で横に回転し、勢いを強める。一撃を決める準備を整えた。
「其ノ…魂ヨ…」
炎を纏ったシンラの飛び蹴りが、焔ビトのコアに当たる。
「燃えろおおおっ!!!」
そのまま、足からの爆炎がコアを破壊。焔ビトは灰になるように消滅した。
『炎炎ノ炎ニ帰セ ラートム』
***
「シスター、つ、妻は…?」
「奥様は無事、炎炎ノ炎に還られました。シンラ隊員が苦しませずに鎮魂を…。そして、渡したいものが一つ。ジュラス隊員、お願いします」
シスター・アイリスが俺の方を向き、俺は工場長にあるものを渡した。
「な…なぜ、それを…」
工場長が驚愕に満ちた顔で、俺から受け取ったものはハンドプレス機。手動で金具を製造する機械だ。製造機械の中では安価なものの、鎮魂後に確認したそれには、長く使い込まれた痕跡があった。DIYに詳しい(上手いとは言ってない)桜備大隊長曰く、結構古いタイプのものらしい。
そして、より大きくかつ高性能っぽい機械をぶん投げた事。俺は現場に着く前に大隊長に言われた言葉を思い出した。
『シンラ、ジュラス。これから言う事を肝に銘じとけ。
焔ビトは、かつて人間だった存在だ。つまり焔ビトの鎮魂をするという事は、遺された遺族にとって、大切な肉親が殺されるという事だ。俺達の任務は殺しをしている事に変わりない。いいか、出来る限り遺族に寄り添う事を考えろ!』
夫人は新しい機械は投げつけたのに、古くてボロイ手動機械は指一本触れなかった。だから俺は一つの推測に行き着いた。
「奥さん、鎮魂される直前まで、これを守るように立ってたんです…大切なものだったのかもしれません」
それを聞いた工場長は、俺とシンラの手を取り、大粒の涙を流す。
「ありがとう、シンラ隊員、ジュラス隊員…。本当に、ありがとう…!」
「お疲れ様―!」「消防官様、ありがとう!」
立ち入り禁止のテープの外から、見物人たちが感謝の言葉を述べていく。
「これからお前達も、幾度となく喝采を浴びていくんだ。夢への第一歩は踏み出せたんじゃねェか?」
「さぁ、行くぞ。消火作業の邪魔になる」
桜備大隊長と、火縄中隊長の背を追って、俺達は静かにマッチボックスに乗って現場から去っていく。
後日、俺達第8の元にアーサー・ボイル…騎士王を自称する同期の知り合いが赴任してきて騒がしくなるが…それはまた別の話。
というかあいつ、ぜってー道に迷ってたよね。
《秋樽桜備》
無事に工場長夫人の鎮魂を終えた。遺族へ手渡すべきものも渡した俺達にはもうやる事はない、第8の屯所へ帰還する。
そんな中、シンラだけは少し反応が遅れていた。
「おーい、置いてっちまうぞ」
が、そんな言葉も聞いてない。上の空なのか?ちょっと顔を見てみるか。
…ほう。そう言う事か。
「あの笑顔は、どういう意味なんでしょうかね」
「ん?そりゃあ、『嬉しい』に決まってるだろ」
そして、同時にジュラスの現場での行動を振り返った。ハンドプレス機を手渡した事だ。
あのハンドプレス機は、後になってわかったことだが、夫人が工場長の元に嫁いで以来、初めて使った機械だった。また、嫁いできた当時は今ほどの規模がなく、殆どあれで製品を作っていたらしい。更に町工場の発展に伴い機械を買い揃えていっても、あれだけはずっと使っていたという。それほど思い入れの強かったものなら、執着して当然か。
そしてジュラス自身、悪魔やドラゴンの力を抜きにして考えれば、能力は体内水分の加熱という、デメリットの大きなもの。決して強いものではないと自認しているほどだ。
それを踏まえたうえで、あいつはシンラに鎮魂を託し、自分が出来る事に目を向けたんだろう。命が消えても、その人が生きた証までは失わせたくないという思いがあったのだろう。
俺が思うに。こういう考えが出来るのは、生き方がそれなりにきちんとしているのが基本にあると思う。
幼少期には真っ当な愛情を受けたのだろう。そして親と離れても、家庭を持たないヴァーリは自分なりに最善を尽くしたのだろう。そうして今のあいつが形成されたのかもしれない。
教会に帰還して一連の報告書を書き終えた俺は、プライベートルームで寝る前に静かに天井を見上げて独り言をつぶやく。
「兵藤一誠。リアス・グレモリー。ヴァーリ・ルシファー。あなた達の子は、立派に育ってますよ」
というわけで、ジュラスの発火能力は体内で水分を加熱するというものです。これにより水蒸気や熱湯を生成しますよ。
あと事前に水をがぶ飲みするなりして水を用意出来てたらデメリットもある程度対策できます。