ハイスクールD×D アフター:New HERO BorN F×F 作:scp-114514
《ジュラス・グレモリー》
ついにこの日がやってきた。ここで消防官になるための努力を重ねれば、晴れて消防官になれる。
『自ら戦士の道へ、か。父親とは逆の道を歩み始めたな』
いや、似てるもんだろ。
『確かに。兵藤一誠は平穏を求めていた。そしてそれを阻もうとした敵と戦っていたな。血は争えず…と言ったところか』
あとそれと、俺は第三世代能力に目覚めている。どうやら小学生の頃のあの事件がきっかけらしい。因みにその内容についてはまだ秘密だ。
『焔ビトを鎮魂できるほどの出力を出したという事が灰島重工に知られたな。それで身柄をあちらに移されたときはヒヤヒヤしたぞ。ヴァーリ・ルシファーが食い下がってこちらに身柄が返還されたからよかったものの…』
そうなんだよ。もしかしたら俺が悪魔だと知られかねないしさ。でも会社に着いてから、そこで勤務している『ある社員』を見てもっと肝が冷えたよ。
『…あぁ、彼か。俺としても思い出したくない』
まぁいいや。生徒の自己紹介が始まった。気を切り替えていかないと。
「俺の名はアーサー・ボイル。騎士王だ!」
…え?
…は?
堂々ととんでもない自己紹介をしちゃったよこの人。アーサー・ペンドラゴンの末裔なのか?
『絶対違う。兵藤一誠の記憶によれば当代のアーサー・ペンドラゴンは其の儘の姓を名乗っていた。妹のルフェイは兵藤一誠に嫁ぎ、冥界にいるはず。何よりあの小僧、オリジナルが感じ取ったオーラを全く持っていない』
それじゃまるでドン・キホーテじゃねぇか…。
『ヴァーリ・ルシファーにこの小僧の話をしたらとんでもない反応を出しそうだな、ククッ』
とりあえずそんな感じで新入生達の自己紹介が進んでいく。
「森羅日下部です。よろしくお願いします!」
この森羅日下部という生徒が自己紹介をした瞬間、時折彼の方を見てヒソヒソと話す生徒達の姿が散見された。
俺たちはこの時、知る由もなかった。この先の未来に、この2人が大きく関わってくるとは。
《ヴァーリ・ルシファー》
ジュラスが特殊消防官訓練学校へ進学、寮生活にシフトしてからのある日の事。レギーナに店番を任せ、俺は街をうろついている。ラーメンの原材料を仕入れるため、いつも買いに行っている商店を目指しているのだ。
そんな中、漆黒の装甲車——特殊消防隊の専用車両、マッチボックスが俺の前に姿を現した。車体に書かれた数字は3。第三特殊消防隊が出動した事を意味している。
そして降りてきた隊員に、既に到着して民間人の誘導を終えた一般消防隊が状況の報告を行った。そして、第三の隊員は『立入禁止』のテープが張られた現場から出ていこうとしている。
「あの、消防官様…夫は大人しく、炎に耐えているんです…。早く楽にしてあげてください」
涙を流す初老の女性。その姿には見覚えがある。彼女の夫は俺が原材料を買う仕入先の店主だ。
そうか。彼もまた…焔ビトになってしまったのか。
「現場には優先順位があります。鎮魂の段取りは我々にお任せを。行くぞ、点数の低い奴は放っておけ」
「ま…待ってください!」
店主の妻の言葉を聞き入れることなく足早にその場を後にしようとする第三の隊員の前に、見かねた表情で一般消防隊のリーダー格らしき男が立った。
「…すみません。同時鎮魂のために隊員の数を分散すればいいだけの話ではないですか」
「我々はプロとして、現場において最適な判断を取った。そもそも、こちらはそちら以上に命懸けの任務を担っている。そのために成果を数値化させ、隊員の士気を保っているのだ」
「…点数稼ぎ、ですか。ヒト一人を葬るのに点数もクソもないでしょう」
「素人が我々のやり方に口を挟むな。一般消防隊は水撒きでもしておけ」
あまり聞いていて気分がよくなるものではないな。現に一般消防官の男が顔をしかめている。
「…それでも命を守る公務員のつもりか。慈悲と優しさの塊というが、軍人とさして変わらん奴もいるとはな」
テープの柵の外から冷めた目で第三の連中を睨む眼鏡の男が、小さい声で毒づいた。羽織るコートの背には『TOKYO ARMY』の文字。東京皇国軍に所属している証だ。
「ノブオさん、ごめんね…苦しい時に何もしてやれなくて…」
現場をあとにしていく第三の部隊。ただただ涙を流して祈る夫人の前に、先ほど第三の連中と口論していた一般消防隊の男が立った。
「奥様。よろしければ、私が責任をもって旦那様の鎮魂を行います」
ほう?大きく出たな。
更に彼は第三のマッチボックスを探って特殊消防隊の対焔ビト用基本武器『七式消防戦斧』を拝借して現場に入ろうとするが、彼に続こうとする者が現れる。
「東京皇国軍、武久火縄軍曹であります。自分も先ほどの特殊消防隊の話には憤りを感じました。洗礼を受けた銃を持っています、現場に同行させてください」
「キミは軍人だろう。このテープの先をくぐれば厳罰に処されるぞ」
「あなたこそ一般消防士でしょう。命を救うためならば…焔ビトの苦しみならば。処罰など大した痛みではないでしょう」
本当は店長が焔ビトになってしまった以上俺も行きたいところだが…ここは彼らに任せるとしよう。正義感にあふれる者に鎮魂される事が、死にゆく店長にとっての最後の喜びとなるのかもしれないのだから。
***
店長の鎮魂を終えた2人が現場から出てきた。彼らに興味を持った俺は現場近くで長居していると怪しまれるので路地裏に身を忍ばせ、魔法で彼らのやり取りを遠くから聞き耳を立てている。
「掟を破った以上重い罰は免れん。本当によかったのか」
「自分はあなたの思う正義に賛同しただけですので」
「勇気があるな」
「それはあなたの方です。あなたが動いたからこそ私も動くことができた」
「自分で決めて行動に移すことはそんなに難しいことではないさ。自分を信じることは容易いからね。だが、他人を信じて行動し、自分を犠牲にするのはとてつもなく勇気がいることだ。
火縄軍曹。今日の勇者はキミだよ」
「なら、あなたは王ですね」
「王…王、か…よし、俺は決めたぞ!特殊消防隊を作る!」
ほう?大きく出たなこの男…。
「今の立場ではできないことが多い。特殊消防隊になって焔ビトの謎を追求したい。こんな焼け焦げた世界でじっとしていられるか…!」
眼鏡の軍人、火縄軍曹は静かに消防士の男を見つめる。
「この地獄で命を何よりも大事にできる、キミのような隊員が必要だ。火縄軍曹、来てくれるか」
「我々の処分次第でいつになるかわかりませんが…その時が来たら是非声をかけてください」
いいものを見せてもらった。賭ける価値はあるだろう。
***
「火縄軍曹」
「なんでしょう」
「勘違いなのかもしれないが…俺達のやり取りは見られているのかもしれないな」
「だから何だというのです。掟を破った処罰は覚悟の上、後悔はしていません。二度も言わせないでください」
「そうか。俺も同感だ」
※アーサー・ボイルはアーサー・ペンドラゴンとは全くの無縁です。