機械人形のヒーローアカデミア   作:のんびり者

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引き続き見ている方ありがてぇ!
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学園生活

 地下訓練場での「特別試験」の翌日。1年A組の教室では、ホームルーム開始前から生徒たちの声が飛び交っていた。

 

「ねえねえ、聞いた? 今日から新しい先生が来るんだって!」

 

「それって噂の先生ですか!」

 

「しかもロボットだってよ! 超ヤバい個性持ちらしいぜ!」

 

「個性でロボットになってるって噂だぞ……」

 

 相澤消太が教壇に上がり、いつもの無表情で生徒たちを一瞥した。

 

「静かにしろ。今日は新しく非常勤講師として迎えた者を紹介する」

 

 爆豪勝己は机に足を乗せたまま舌打ちし、緑谷出久はノートを握りしめて目を輝かせていた。

 

 その言葉が終わらないうちに、重厚な金属音が廊下に響き教室の扉がゆっくりと開く。

 

 そこに立っていたのは、青い重装甲に包まれた巨体。背中から白い蒸気を吐き出す緑色の機関、そして紅く輝く単眼(モノアイ)

 

 マキナだった。

 

 その後ろには、α、β、γの三体も控えていた。

 

「それじゃマキナ先生後は頼んます」

 

 相澤先生はそう言い残し教室を後にした。マキナはゆっくりと教室に入り、教壇に立ち言葉を紡ぐ。

 

「私はマキナ。本日から雄英高校の非常勤講師を務めることになった。よろしく頼む」

 

 マキナの声は低く、機械的でありながらどこか温かみのある響きがあった。

 

 教室が一瞬、静まり返った直後——

 

「うわぁぁぁ! すげえええ!! 本物のロボットだ!!」

 

 教室中が沸き立ち。緑谷出久始め様々な生徒が立ち上がり、目をランランにしていた。

 

「背中の機関は蒸気機関? 腕の関節構造はどうなってるんですか!? そしてあの槌……重さは何キロくらい——」

 

「緑谷くん、落ち着いて」

 

 飯田天哉が制止するが、彼自身も眼鏡の奥の目を輝かせていた。

 

 爆豪は腕を組んだまま睨みつける。

 

「はっ、ロボットが講師だと? ふざけんじゃねえ。どれだけ強いのか、さっさと見せてみろよ」

 

「へへっ、元気なガキどもじゃねえか!」

 

「β、静かに」

 

「私のことは後でいくらでも聞け。ただし、今はホームルームだ」

 

 マキナは紅い単眼(モノアイ)をクラス全体に向けた。

 

「私はこのクラスの事を知らぬ。ゆえに、まずはお前たちの力を直接見たい。——全員、地下訓練場へ移動する」

 

 地下訓練場B区画。

 

 1-Aの生徒全員が整列する中、マキナは中央に立っていた。

 

「簡単な実戦形式だ。私と私の従者たちが相手をする。制限時間は10分。できる限り傷をつけろ。……遠慮なくやれ」

 

 αが影のように消え、βが高速で前に出て、γが浮遊しながら優雅に構えた。

 

「それでは、開始!」

 

 マキナは右手に棘付きの大槌を構えた。

 

 最初に飛び出したのは切島鋭児郎と麗日お茶子だった。

 

「硬化!」

 

「無重力!」

 

 切島が突っ込み、お茶子がマキナの巨体を浮かせようとする。しかし——

 

「んぎぎぎ……重めぇ。麗日の個性で無重力の筈なのに」

 

 マキナの足は地面に張り付いたまま微動だにしなかった。

 

「なるほど。硬質化と重力に干渉する力か。面白い」

 

 マキナは軽く槌を振り下ろす。地面が爆発的に陥没し、衝撃波だけで切島とお茶子を吹き飛ばした。

 

「うぉぉ!」

 

「きゃぁ!」

 

「次」

 

 今度は轟焦凍が氷の波を放ち、爆豪勝己が爆炎を纏って突進する。

 

「凍れ!」

 

「爆殺!!」

 

 マキナの周囲が一瞬で凍てつき、爆風が直撃した。しかし、煙が晴れた先でマキナは平然と立っており、被害は装甲に霜が付いている程度だ。

 

「……個性とは、実に多様だな」

 

 マキナは左手を軽く掲げた。

 

「——メラ(下級火炎呪文)

 

 小さな火球が轟の氷を一瞬で蒸発させ、爆豪の爆風を押し返す。

 

 爆豪が目を剥いた。

 

「てめえ……本気で個性使ってんのか!?」

 

「出すわけ無かろう」

 

「あ“あ“!?」

 

 そこにβが割り込んできた。

 

「しゃあぁぁ! 俺も混ぜろよ主殿! この爆発野郎、俺が相手してやる!」

 

 βの巨大な棘付きメイスが爆豪に向かって振り下ろされる。爆豪は爆発で後退しながらも、βの攻撃を紙一重でかわし続ける。

 

「このクソロボットがぁぁ!!」

 

 一方、αはステルス状態で緑谷の背後に忍び寄っていた。

 

「マキナ先生の攻撃、単純な物理攻撃と火炎系個性?だとしたらあの身体は一体」ブツブツブツ

 

「興味深い……君の考察、非常に詳細だ」

 

「えっ!?」

 

 緑谷が振り向いた瞬間、αのサーベルが軽く彼の頬を掠めた。

 

「分析能力は優秀だ。しかし、戦場では油断は命取りになる」

 

 γは遠くから全体を眺め、時折回復魔法を生徒たちにかけていた。

 

「怪我は大丈夫ですか? ……ふふ、皆さん頑張っていますね」

 

「あの…俺等攻撃してるんですけど」

 

「えぇ、わかっていますよ。傷がつくように頑張ってください」

 

「えぇ……」

 

γを攻撃していた常闇、瀬呂、上鳴たちは一切攻撃が効かないγに困惑していた。

 

 ──10分後。

 

 生徒たちは全員、地面にへたり込んでいた。誰もマキナたちに致命的なダメージを与えられなかったが、逆にマキナは生徒一人ひとりの個性を丁寧に観察し、的確なアドバイスをしていた。

 

「緑谷出久。お前の個性には驚かされたが制御が課題だな。あともう少し身体を鍛えろ」

 

「爆豪勝己。怒りと爆発力の同期は見事だ。しかし、冷静さを失うと隙ができる」

 

「轟焦凍。両方の力を同時に使う練習をしろ。氷だけに頼るな」

 

 生徒たちは呆然としながらも、徐々にマキナの言葉に耳を傾け始めていた。特に緑谷は興奮のあまり震えていた。その時、訓練場の入り口からオールマイトの声が響いた。

 

「若者たち! どうだ、マキナ先生の授業は!」

 

「オールマイト先生!」

 

 マキナは軽く頭を下げた。

 

「彼らは素質に溢れている。……私も、久しぶりに教えることを楽しめた」

 

 α、β、γもそれぞれ生徒たちを気に入った様子だった。

 

 授業終了後、マキナは三体の従者に指示を出した。

 

「α。子機を増産し、雄英全体の警備を強化しろ」

 

「了解しました」

 

「β。お前は生徒たちの戦闘訓練に付き合え。ただし大怪我はさせるな」

 

「くぅぅ! わかったぜ!」

 

「γ。お前はリカバリーガールのところへ行き、補佐をしろ」

 

「わかりました」

 

「各々、持ち場に付け」

 

「「「了解!」」」

 

 三体が散開した後、オールマイトが近づいてきた。

 

「ん〜、君もここでの生活に慣れてきたようだね、マキナくん」

 

「ああ。思ったより悪くない」

 

「それは良かった。ところで、また少し話さないか?」

 

「……またか」

 

「君の話は本当に面白いからね」

 

「そうだな。今日はリンゴに顔が付いていてそれを驚かせると美味しくなる話にしよう」

 

「HAHAHAなんだいそのユニークな果物は」

 

 二人は談笑しながらその場を後にした。マキナの本当の出自を知っているのは、オールマイトと根津校長だけだった。他の者には「機械に個性が宿った稀有な存在」と説明してある。

 

 それから数日後——

 

 雄英高校は平穏な日常はマキナと三体の従者たちの存在で少しずつ変化していた。

 

 αの増殖した小型偵察ユニットは校舎の至る所で見かけるようになり。

 

 βは放課後の自主訓練で生徒たちを相手に暴れ回っていた。

 

 γはリカバリーガールと一緒に医療室で生徒たちの治療補助をし、穏やかいいロボットと慕われ始めていた。

 

 ────────

 

 快晴の朝、1年A組はバスに乗り込み、USJへと向かっていた。

 

「今日は災害救助の訓練だ。各自、油断するな」

 

 相澤先生の無表情な指示の後、マキナとγが引率として一緒に乗車していた。βは「俺は後から飛んでくぜ!」と言って別行動を取り、αはすでに先行してUSJ周辺の警戒に当たっていた。

 

 バスの中で緑谷はマキナに質問攻めを続け、マキナは根気強く答えていた。

 

「マキナ先生は機械が個性を宿したって言う話ですけどどんな個性なんですか?」

 

「それは秘密だ。時が来たら教えてあげよう」

 

 USJに到着し、13号先生の演説が終わり訓練が始まろうとしたその時——

 

 中央広場の噴水付近に、黒い紫色の歪んだ空間が突然出現した。

 

 そこから現れたのは、多数のヴィランたちと——

 

「ゲームの始まりだ」

 

 手を擦り合わせながら笑う複数の手を身に付けた男。そしてその背後に控える脳がむき出しになった異形と黒い霧の異形。

 

 相澤先生の表情が一瞬で凍りついた。

 

「全員、戦闘態勢! これは訓練ではない! 本物のヴィランだ!」

 

 悲鳴と混乱が広がる中、マキナの紅い単眼(モノアイ)が鋭く輝いた。

 

「α、状況報告」

 

 肩の子機からαの声が聴こえてくる。

 

『ヴィラン総勢約70名以上。巨体の異形が一体確認。複数の手を身に付けた男がリーダーと推定、他複数の強力な異形型個性保有者も存在します。相澤先生にとっては不利な相手かと』

 

 マキナはゆっくりと大槌を構え、背中の蒸気機関が勢いよく白煙を噴き上げた。

 

「γ、生徒たちの護衛に専念しろ。βはまだ——」

 

「しゃあぁぁぁ!! 楽しそうなことしてるじゃねぇか!!」

 

 空を裂くように飛来したβが、地面に着地するなり巨大なメイスを振り回して数名のヴィランをまとめて吹き飛ばした。

 

「相澤先生、貴方はγと生徒たちの護衛を私は前へ出ます」

 

「マキナ先生!」

 

「大丈夫」

 

 生徒の叫びに呼応しマキナは静かに一歩前へ出る。

 

「私はマキナ。他者を助けることを生業としている。——ここにいる限り、だれ一人も死なせはしない」

 

 複数の手を身に付けた男が不気味に笑った。

 

「へえ……ロボットがヒーロー気取りか。面白えじゃねえか。脳無、潰せ」

 

 巨大な脳無が咆哮を上げてマキナに向かって突進してきた。

 

 マキナは動じることなく、|紅い単眼(モノアイ)《モノアイ》を細め。

 

「ほう、そいつは脳無と言うのか。どれ——メラゾーマ(上級火炎呪文)

 

「ギィィィ!!!」

 

 次の瞬間、マキナの掌から放たれた超高熱の業火が脳無の巨体を焼き尽くした。

 

 轟音とともに爆炎が巻き起こり、脳無の再生能力すら一瞬で焼き焦がすほどの威力だった。

 

 周囲のヴィランたちが呆然とする中、マキナは大槌を軽く回した。

 

「β、αはヴィランの鎮圧をしろ。γはもし負傷者が出たら回復しろ。——私はコイツを片付ける」

 

「了解!」

 

「へへっ、存分に暴れさせてもらうぜ!」

 

「主殿、ご武運を」

 

 マキナは一歩、また一歩と複数の手を身に付けた男の方へ歩み寄った。

 

 その重厚な足音が、USJ全体に響き渡る。

 

「ヴィランよ。聞こえるか?」

 

 マキナの声は低く、しかし全ての者に届いた。

 

「この世界で、誰かが助けを求める限り——私はそこに現れる。貴様らが摘み取れる命はここには存在しないと知れ」

 

 紅い単眼(モノアイ)が、激しく輝いた。

 

 果てしない旅を続けてきた究極の戦闘機体が、今、この瞬間、雄英の生徒たちを守るために本気で動き出した。

 

「ギャオォォォォ」

 

 脳無が咆哮を上げ、再び突進してきた。先ほどの火球で焼かれた肉体は、まだ完全には再生していなかったが、動きに支障はないほど回復していた。

 

「ほう。再生能力と純粋な身体能力に特化した個体か。興味深い」

 

 脳無が獣のような雄叫びを上げ、マキナに向かって猛烈な突進を開始した。その一歩ごとに地面が震え、風圧が周囲を薙ぎ払う。

 

 マキナは動じることなく、右手をゆっくりと掲げた。

 

「では、これならどうだ——ギラ(下級閃光呪文)!」

 

 掌から放たれた眩い閃光が脳無を焼き切るが。黒い皮膚が焼け焦げるだけで、脳無は痛みを感じていないかのように速度を落とさず迫ってくる。

 

「再生が速いな。ならば——ドルクマ(中級暗黒呪文)!」

 

「ギィ!!」

 

 暗黒の波動が脳無の顔面を襲い、巨体をわずかに後退させるが、それでも脳無は止まらない。巨大な拳を振り上げ、マキナの頭部を狙って叩き下ろす。

 

 マキナは左腕で受け止め、足が地面にめり込むほどの衝撃を受けたが、表情は一切変わらない。

 

「物理攻撃もなかなかのものだ。だが——」

 

 マキナは一瞬で距離を詰め、脳無の腹部に掌を押し当てた。

 

ヒャド(下級冷気呪文)!」

 

 極低温の冷気呪文が脳無の体内に侵入し、筋肉を凍てつかせ脳無の動きが一瞬鈍る。

 

イオ(下級爆発呪文)!」

 

 続けて爆発呪文を叩き込み、凍結した部分を内側から爆砕させる。

 

 脳無の巨体が大きくのけぞり、黒い体液が飛び散る。

 

「ゲギャ!」

 

「もう一度だ——メラゾーマ(上級火炎呪文)!」

 

 マキナの掌から放たれた超高熱の業火の奔流が、脳無の全身を包み込み炎の柱が天を突き、USJ全体が一瞬明るくなるほどの輝度だった。

 

 脳無の再生能力が必死に肉体を修復しようとするが、マキナの火力はそれを遥かに上回っていた。焼け焦げた皮膚が再生されるより早く、次の魔法が襲いかかる。

 

デイン(下級電撃魔法)! ヒャダルコ(中級冷気呪文)!」

 

 稲妻と極寒の吹雪が交互に脳無を苛む。脳無の巨体が痙攣し、遂に跪いた。

 

 マキナは容赦なく追撃を続ける。

 

ベギラマ(中級閃光呪文)

 

 広範囲の炎が脳無を何度も焼き、再生の速度を完全に凌駕していく。

 

 男が苛立った声を上げる。

 

「なんだよあいつ……脳無が一方的にやられてんじゃねえか!」

 

 脳無は咆哮を上げ、再び立ち上がろうとするが、マキナは静かに掌を脳無に向け。

 

「ここまでだ」

 

「なんだ…あれ……」

 

 ——メ ラ ガ イ ア ー(究極火炎呪文)

 

「ギ……」

 

 究極の火炎呪文が脳無の頭上から降り注ぎ、巨体を完全に飲み込んだ。凄まじい熱量により周囲の空気が歪み、地面がガラス状に溶けていく。

 

 黒煙が立ち上る中、脳無の動きが完全に止まり所々は炭化し崩れていく。マキナは静かに息を吐いた。

 

「……脳無、撃破完了。再生能力は強力だったが、呪文の連続攻撃には耐えられなかったようだ」

 

 周囲のヴィランたちが恐怖で後退する中、マキナの紅い単眼(モノアイ)が男を捉える。

 

 ────────

 

 一方、αとβは別方向でヴィランの群れを圧倒していた。

 

 αはステルス状態で影から影へ移動しながら、精密な攻撃を浴びせていた。

 

 青みがかった銀色の装甲が一瞬光り、ボウガンから放たれた特殊合金の矢がヴィランの手足を正確に射貫く。

 

 サーベルで急所を軽く斬りつけ、即座に行動不能にさせ増殖した小型偵察ユニットが周囲を飛び回り、逃げようとするヴィランを捕獲し続ける。

 

「無駄な抵抗は辞めろ」

 

 αの声は常に冷静で、感情の揺らぎがない。

 

 その隣で、βは完全に暴れ狂っていた。

 

「しゃあぁぁぁ!! もっと来いよ!! 俺を満足させろクソども!!!」

 

 全長3メートルの巨体が跳ね回り、棘付きの巨大メイスを横薙ぎに振り回すたび、ヴィラン五、六名がまとめて吹き飛ばされる。

 

「グァァ!!」

 

 地面に叩きつけられたヴィランたちは、衝撃で気絶。βは倒れた者たちを巨大な手で掴み上げ、特殊合金の拘束ワイヤーで素早く縛り上げていく。

 

「へへへっ! 次はお前らだ!!」

 

 βの尻尾に装備されたボウガンが連射され、逃げ惑うヴィランたちの脚を射抜く。

 

「ぎゃあ」

 

「やめてくれ!」

 

「そんな連れねぇ事言うなよ!!」

 

 長大なサーベルで薙ぎ払い、メイスで叩き潰す。

 

 一瞬の隙もなく、βは大人数のヴィランを同時に相手取りながら一方的に蹂躙していった。

 

 十名、二十名、三十名……

 

 βが暴れるたびにヴィランの数は減少し、気絶した者は次々と拘束されていく。

 

 αが横から冷静にフォローする。

 

「β、無駄に破壊を広げるな。生徒たちに被害が及ばないよう、範囲を制御しろ」

 

「うるせえ! 今めっちゃ楽しいんだよ!! お前は黙って情報集めてろ!」

 

 βは笑いながらさらに加速し、メイスを地面に叩きつけて衝撃波を発生させ、周囲のヴィラン十数名をまとめて吹き飛ばし、倒れた者たちを次々と掴み、ワイヤーで固く拘束していく。

 

 二体の従者の連携は圧倒的だった。

 

 αが的確に弱点を突き、βが純粋な破壊力で数を減らす。

 

 ヴィランたちは為す術もなく、次々と無力化されていった。

 

 ────────

 

 戦場中央に戻ると、マキナはゆっくりと男と黒い霧に向かって歩を進めていた。

 

「さあ、次はお前たちだ。不気味な男と黒い霧」

 

 男が苛立ち顕にし首を掻きむしりボリボリと音を立てた。

 

「あぁ、何なんだよお前……マジで頭に来る……!」

 

「弔、危険です。速やかに撤退しましょう」

 

「そうか…お前弔と言うのか覚えたぞ」

 

「チッ!黒霧お前のせいだぞ」

 

「そっちは黒霧か。バカが相手だと楽で助かる」

 

「あ“あ“!?」

 

「いけません弔、撤退です」

 

 黒霧が空間を歪め、逃走経路を作ろうとしたその瞬間——

 

「逃がさん。——ベギラマ(中級閃光呪文)!」

 

 広範囲の閃光魔法が黒霧を包み込んだ。しかし惜しくも、黒霧はわずかに空間をずらして難を逃れた。

 

「逃がしたか……」

 

 その時、αの子機から報告が入った。

 

『主殿、他の先生方が到着しました。敵性反応もほぼ消滅しています』

 

 マキナは大槌を背中に固定し、静かに武器を収めた。

 

「怪我人は?」

 

『誰一人おりません。生徒たちは全員無事です』

 

「……なら今日はそれで良しとしよう」

 

 マキナは紅い単眼(モノアイ)を細め、こちらに向かって来る生徒たちと先生たちの姿を静かに見つめた。

 

 こうして、USJ襲撃事件は予想外の形で幕を下ろした。





読んでくれてサンガツ(6月)
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