今日の私は、廃墟の病院に来ている。現役の病院は、明るすぎてちょっと苦手。いつかは遊んでみたいけどね!
今週も今週で、私は獲物……間違えた、愚かな人間をいまかいまかと待ちわびている……!
今日の人間はまたしても二人組。今回は……よし、どっちも重そうなバッグは持ってない!一人は黒髪で、こんなところでサングラスをかけた配信者。たぶん、この人が棒付きカメラを持ってるから、メインの配信者かな?
それで、もう片方の人が、同じく黒髪で、髪をオールバックにガチガチに固めてる人。一見するといかつそうだけど、目が優しくて印象は良さげ。
まぁ、幽霊の私に人間の印象なんてものはどうでもいいんだけどね!!
「今日の配信地は〜!ここ!旧病院でぇぇすっ!!」
「うるせぇよ!」
「はい、相棒のケンタ君がいつものようにうるさいですね〜」
「お前だよ!」
……コントか何かと勘違いしてるな?こいつら……まったく、たいして面白くもない三流のくせに……!私のホラー演出で放送事故にしてやるんだからね……!
「この病院、蔦とか絡んでてだいぶ古臭いっすね〜!ケンタ君の安アパートみたい」
「……似てるからやめろ!」
……ケンタ君、幽霊だったりする……?この、病院と同じ植物の生い茂り方はけっこう……人が住む環境じゃないかも……。
まぁ、私には関係ないない!ケンタ君は可哀想だから、こっちの配信者を驚かせて……情けない姿を視聴者に見せつけてやるんだから!
まずは……おっきな音を立てちゃおう!
バァン!!!!
「うぉぉぉ!?なんだ!どこ鳴ったいま!?」
「……上っぽくね……?いや、どうだろ……普通に人がいるんじゃないの?ほら、俺らみたいなのを驚かすためにさ」
「ははっ!ここにか?お前くらいしかいないだろこんな植物だらけのとこ!」
「おい」
……まずい……かなりの強敵かも……!
こいつら、恐怖をぜんぶエンタメに変えてる……!?
こうなったら……サングラス男の持ってる四角いカメラに干渉すれば、怪奇現象で怖がるでしょ!
カメラのレンズに近づいて……口を近づける!
『はぁぁぁ……』
ふふっ、レンズが曇った!これでようやく驚くでしょ〜!?
「……なんか臭くね?ドブに落ちたパンの雑炊を煮込んだみたいな……」
————え?
く、臭っ……え?くさい……?私の息が……!?
い、いやそんなわけない……ちゃんと生前は歯磨きしてたし……フロスだって……!私じゃ、私じゃない……!
「……あれ〜?なんか、レンズ曇ってるってコメント来てますね」
「マジじゃん。あと、今の匂い俺のおなら」
「ケンタかよ!なんか危険物かと思ったわ!」
あ……よ、よかったぁ〜そ、そうだよね!私が臭いわけないもんね……!もう怒った……!絶対にボコボコにしてやるから……!
「えーっと……ここは……。ん?なんか映ってた?……マジすか!?どこ?どこに!?」
「……まぁ、あとで確認できるし」
「まぁ〜そうですね!今は他を探索しましょう!」
そうだ……!今度こそビックリさせるために、耳元で息を吐いてやる……!
『はぁぁぁ……っ!!』
「んぇ!?あ、え……?」
「……どうした?」
「なんか……右耳に生暖かい風が……きたような気がしました!」
「……気のせいだろ。ASMRの聞きすぎだ」
「気の所為っすかね〜?幽霊だったら嬉しいんすけど」
効いてないぃ!?い、今までの人間は、すぐにビックリして走り出してたのに!?……あと、エーエスエムアールってなに……最近の流行りなの?
もう……音でも温度でもだめなら視覚で……私が直接出ていってやる!
『うぅらぁめーしーやー!!!』
「ぶっはぁぁぁ!!古っ!?なになに仕掛け人なの?それとも知らん人!?驚かせるにしても古すぎっしょ!……てかめっちゃ可愛くね!?何歳すか!?」
『……は?』
「……困ってるだろ、いきなり」
「いやいやいや、マジ可愛いっすよ!?ほら視聴者のみんなも見てみてくださいよ!」
……ダメだ。もう……もうやだぁぁぁ!!コイツらも嫌い!!エンタメにしないでよぉっ!!
私は、涙目のまま、病院をあとにしたのであった!
ナンパするなら、私が生きてる時にしてよぉぉぉ!!