日本のどこか、山奥のトンネルで……
「アクション!」
一人の活気ある声が響いた。
「……なぁミチヤ。本当に入るのか?」
「当たり前だろ?オレたち心霊バスター、ここの幽霊くらい退治できないとさ」
中肉中背の男と、背丈は高いがヒョロヒョロの男が、共にトンネルの中に入っていった。
その先に待ち構えていたのは……
私だ!!
ほうほう、今日も今日とて、活きのいい人間の若造が来たようではないか!はーはっはっはー!
さて、今日はいったいどうやって驚かしちゃおっかな〜?
呻き声?それとも押してみたり、引っ張ってみたり?
たぶん、映画の撮影かなんかだから……盛大に俳優を転ばせて、失敗シーンを連発させてやるんだから!
「……ふぅ……分かった。行くぞ……」
「おう!その意気だ!」
しめしめ、なんにも警戒せずに歩いてきたなぁ、バカめ!そこには私の特製トラップが仕掛けられてるんだよぉ〜っ!
「……ありゃ、なんだこれ?」
「ん……?どうしたミチヤ……?」
ふふっフフ……フフフフッ……!
そこにあるのは、私の血を直接垂らした血糊(ガチ)ドッキリ!
私知ってるよ?
人間って血とか無理なんでしょ?
だから献血にも行かないんだもんねぇ……!
「……いや、ただのカビとかだな!」
「……カビかよ、驚かせるなよな……場所が場所なんだから。……でも引き続き、警戒だ」
カビじゃないんですけどぉぉ!?!?
しかも、なんか良い感じのアドリブに繋がってるし!なんで私が撮影のサポートしちゃうの!?もぉぉぉ!!!
「……っ!下がれシドウ!ゴーストだッ!」
……ゴースト?
私が振り向くと、目の前。ほんとうに目の前。互いの睫毛が触れるくらいの距離に、顔が漂白された気味の悪い顔があった。
『イャァァァァァァァァア!!!!!』
——ペシィィイン!!
はぁっ……はぁぁ……ふぅ……お、思わず、叩いてしまった……。
いやいや、それにしてもキモすぎでしょ!?何その顔!?私のほうがまだ人間らしいよ!?
「痛ッ……!?」
「あ、え!?大丈夫ですか?」
「叩かれた……?でも、他に誰もいないですよね……?」
「頬が赤くなってる……。他にケガとかは……?」
さっきまで演技してた人とか、撮影の人とかが一斉に駆け寄ってきてる。
……ま、まぁ……なんか悪いことしちゃったみたいだけど?
元はといえば、意味不明なメイクしてるそこの女が悪いんだし!!
驚かせるような顔しないでよね……もう!!
「カット!!撮影停止だ!」
ゴースト役の女が、泣いてはいないけど、ドキドキしてちょっとパニックになってる。ふんっ……まぁ、撮影を邪魔できたみたいだし、怖がってもくれたみたいだから……許してあげようかなっ……!
私は、ちょっとだけ心を痛めながら、トンネルからスタスタ走って逃げ出した。