各部隊に指示を出した後、一番隊と共に移動していたコール・ポーターの二台目の無線機に連絡が入る。その相手は、
「もしもし。どうしたんだ、ブレン・リュトモス」
『無事みたいだな、局長サン。俺たちは魔獣を倒しながら一度退却、もう一度戦力を増やして殲滅に出ようと思っていたんだが、そっちは?』
「同じくだ。今『王』を叩こうにも道が無い。それに、分断された部隊とも合流しないといけなくてな」
『それに関してなんだが……。悪い知らせがある。クレールの西部にとんでもない巨体の魔獣がいるのは見えるか? 調査に向かわせたうちの騎士によると、あの魔獣はアヴァリティアスに向かって移動している。時速にしておよそ百キロだが、今も加速し続けている』
「何ィ!? ここでモタモタしてるとデカブツに追い付かれんのか。ちっ、不味いな、これは」
『そしてもう一つ、あの魔獣について最悪の特徴がある。
奴の近くにいた動物が魔獣のような姿に変化しているのが確認された。あくまでも予想ではあるが、体から放出されている黒い霧が原因だろう。アヴァリティアスの国土に入られたら終わりだぞ』
「何だよ、それ。クレール王国にいるうちに消滅させるしかねぇってか。それも、霧を吸わないように遠距離攻撃で倒しきる必要がある状態で? 冗談だろ」
『やるしかないだろう、局長サン。ポテンティアからは俺を含めた精鋭数人であの魔獣の対処に行き、他の奴らは退却させるつもりだ。そっちはどうする』
「……こっちからも数人、強い奴らだけを出す。そちらと同じ方針だ」
『分かった。俺たちは先に行ってある程度情報を掴んでおく。出来る限り急いでくれよ?』
「ああ、もちろんだ。」
そう言ってコールは無線を切り、アルス・エルバートの方を向く。
「聞いたな? アルス、お前には西部に行ってもらいたい。頼めるか?」
「構わない。オレは近づけなくても問題ないからな。他にも何人か行くのだろう?」
「レレア、シエルあたりか。ここの対処がきつくなるが。仕方ない、向かわせる」
コールがレレアとシエルを呼び、ブレン・リュトモスとの会話の内容を伝える。
「なるほど。確かに、迎え撃つ以外には手がありませんし、火力と距離を考えると私たちが適任でしょう。しかし、今ここにおける一、三、六番隊の戦力が不足してしまいますが……」
「じゃあさー、増やさない?
レレアの視線の先には特殊な鎖で縛られたセルーバ・アマズとセリン。予備のセーフティ付きの首輪があることをレレアは知っていた。
コールは渋い顔をしながらも首輪を取り出し、二人に近づく。
「やむを得ないな。おい、そこの『ACE』二人。騎士団に協力する気はないか? 活躍次第では減刑してやる」
「……」
「……あたし、カノンに何もしてあげられなかった。せめて、弔ってあげないと。だからさ、従う。その代わり、後で少し自由にさせて。数時間でいいから」
セルーバは無言のまま頷き、セリンは目に決意を浮かべながら答えた。
「契約成立だな。この首輪を付けさせてもらう。拘束は解いてやるが、騎士団員を攻撃すればお前らを爆破する。いいな? お前たちが変なことをしなければ特に起動することはないんだ。頑張ってくれよ」
コールが二人を解放し、戦線に送り込んだ。すぐに植物と液体金属が魔獣を貫き、騎士団員を守りながら魔獣を消滅させていく。
「よし、お前たちも行ってくれ。頼んだぞ、アルス、シエル、レレア」
「「了解!」」
一方、相対するバーンモルトと『ACE』の『王』。
「何か聞きたいことはあるかい? 今我はすごく機嫌が良いのでね、何でも答えてあげようじゃないか」
「お前の声なんて聞きたくないんだけどな。一応聞いておくか。
お前、あの星導獣とやらを使って何をするつもりだ」
「言ったろう? 人類を進化させる。それが我の至上命題だ。
あの巨体から噴き出す煙。あれにはね、生命を
そうなればその生命は何も食べずとも、ある程度の傷を負おうとも、星の波導が与えられ続ける限り生きていける。その個々に寿命は存在せず、種として滅ぶのは星が死ぬ時だ。
星導獣によってヒトはこれ以上ないほど、この星で生きていくのに相応しい生命へと進化する。素晴らしいと思わないかい?」
「永遠の命に近しいナニカが出来上がるって訳か。それはもうヒトじゃないな。お前の身勝手な思想と行動で、俺は歪な命に成り下がりたくない。
それに、この星にどんな影響が出るか分かったもんじゃないだろ」
『ACE』の『王』に向けて言い放つ。
いつかきっと、ヒトは滅ぶんだろう。何が原因で、いつ滅亡するかなんて分からない。隕石のせいかもしれないし、未知の病のせいかもしれない。明日には滅ぶかもしれないし、一年先かもしれないし、もう何万年も後かもしれない。
死にたくはない。長生きしたい。やりたいことならいくらでもある。それでも、譲れないものがある。
「自分で掴んだモンならともかく、与えられた永遠なんざいらない。お前が思い描いてる、クソみたいな明日はゴメンなんだよ。
ああ、あともう一つ。『王』、俺はお前が嫌いなんだ。ブッ潰していい大義ができてよかったぜ」
誉められた理由じゃない。勝手な衝動でしかない。けれど、俺やカノン、『
「分かっていたよ、バーンモルト。我と君は根本から合わない。だったら――
捩じ伏せるまでだ」
そして、俺と『王』の戦いが始まった。