ゲインアゲイン   作:十割二八

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第六十八話 バーン

 その頃、クレール王国北部の南端。

 

「終わりだね。我が悲願、その礎にしてあげようか。バーンモルト」

 

 バーンモルトと『ACE』の『王』の戦闘は決着がつこうとしていた。『王』が再誕させた魔獣ピズディンジャ。その巨大な足が動けないバーンモルトを踏み潰すまで、その一秒にも満たない時間。

 

 

 

 

 俺の波導術の本質。

 この灰と炎の本来在るべき場所。

 火種を必要としない、どこかから取り出している炎。

 融けた灰、固まった灰、そして、黒色の火山灰。

 普通の人間であれば死ぬというのに、自分だけが取り込み、波導を強化することができた魔獣核。

 そして、俺が受け入れたこの星の波導。

 

 

 

 二十年前、俺が生き返ったとき。炎が消え、灰が出せるようになったあの日。俺は自分の波導術が弱体化したのだと思っていた。

 違った。弱くなったんじゃない。変化の途中にあっただけ。だから今は灰も炎も使えるんだ。

 燃えている間である炎。

 燃えた後に残った灰。

 であれば、燃える前のソレだって取り出せる!!

 

「ようやく完成した。俺の波導術は――」

 

 

 

 

 

「なっ!? 何だ……!?」

 

『王』は驚きを隠せない。彼の目に映っていたのは突如として押し返される魔獣の足。異常な特性を持つピズディンジャの足を押し返すにはこの星を持ち上げるのに等しいほどの力が必要となる。

 

 そんな力がどこから、どうして発露したのか。

 

 

「名は『最後の輝き(ラストバーン)』。悠久の時間の果て。あらゆる生命は死滅し、太陽に飲まれると仮定した地球におけるあらゆる事象の抽出。

 

 燃える炎。燃え尽きた灰。地中から噴き出した火山灰。

 そして、膨張した太陽のガス、この星の表面を構成する岩石。魔獣を持ち上げるには十分なモンだろ?」

 

 

 押し上げられた魔獣の足。次の瞬間には炎と灰に塗れて切断されていた。

 

「キェアッ! アガッ、アアッ!!」

 

 吼えるピズディンジャ。『王』も素早く反撃に移る。レディンを含めて大量のマギア、重火器を生成してバーンモルトへ向けて放つ。

 

 眼前に迫る攻撃が全て撃ち落とされる。炎と灰、さらには溶岩と岩石が武器を受け止める。『王』とバーンモルトの波導術が衝突した瞬間、バーンモルトの波導の一部、『王』が出現させたマギアと武器の全てが消えていた。

 

 

「何だ……? なんなんだ!! その力は!!」

 

「簡単な事だろ。お前が出現させてるのはヒトが想像する過去と未来。俺が出したのはヒトが消えた先の未来、星の終わり。

 

 過去の物なんか残ってないから、俺が出した未来に塗り潰される。

 未来同士では矛盾が生じるから、俺のもお前のも両方消滅する。俺とお前は互いに相性最悪ってわ――」

 

 突然バーンモルトを襲うのは巨大な足。

 消えた武器に構わずバーンモルトに襲い掛かるピズディンジャだったが、

 

 

「"灰外殻(はいがいかく)遠影(えんえい)"」

 

 

 黒色と灰色が混ざった不定形の灰が広がる。触手や刀剣のような形に変化した灰が巨体を貫く。

 

「ギッ、オグッ……」

 

 短い慟哭。

 蜂の巣となった肉体。

 星の波導が散らばり、光となって魔獣は消えた。

 

 

 

 

 その時、バーンモルトと『ACE』の『王』から遠く離れた場所で広がる衝撃波。二人が目をやった先では、星導獣ヴ・ドゥジュが消滅し始めていた。

 

 俺は『ACE』の『王』に向き直る。

 

「お前の大願、その象徴が消えたぞ。もう諦めろ」

 

「ふん、ふははっ! 消えたのは一時的に過ぎない。我が再び星の波導を操れば星導獣を再誕させられる。そのためにも――

 

 まずは君を消そう、バーンモルト。我が夢、ヒトから永遠の命を持つ生命への進化。それを阻む、最大の障壁よ!!」

 

 

 きっと『王』は、本気なのだろう。本気でヒトという種のことを考え、未来永劫残そうとしている。

 それが『王』の戦う理由だろう。

 

 

「俺にとっても、人生最大の障壁はお前だ。少しでも多くの何かを取り戻すために、少しでも多くの大切なものを守り抜くために。俺の、戦う理由だ」

 

 

『王』が大量の武器と太古の生命を出現させた。その後ろでは再誕させられた魔獣たちが唸っている。

 

 目まぐるしく変わる周囲の環境。この星の過去をなぞるように青白い氷、赤い大地、青々とした植物が出ては消える。その果てにたどり着く原初の地球。

 

 溶岩の海と黒い岩石の中で『王』と対峙する。俺が灰、炎、星の内部の欠片を放出すると同時、波導神経が熱を持ち始めた。身体が内側から焼け焦げていく感覚に襲われるが、すぐに冷え始めた。カノンから受け取った波導が、俺の波導が暴走するのを抑えている。

 

「これなら、全力でいける……!」

 

「来るがいい! バーンモルトォ!!」

 

 高速で射出される武器の嵐。襲い掛かる魔獣と生物の群れ。『王』自身も手に持った大型の銃のような武器を構えている。

 

 

「遥か遠い過去、人類の叡智を結集させ数え切れないほどの魔獣核を混ぜて創られた人造の武装、『カオスビーター』。この星で、これより強い武器など存在しない」

 

 

『王』の言葉と同時に銃口から放たれる光。

 俺が発生させていた灰が光に直撃した瞬間、霧散した。

 さらに途轍もない衝撃波が走り抜け、俺の体が吹き飛ばされる。

 体勢を立て直す暇もなく襲い掛かってくる魔獣と古代生物を紅蓮の炎と溶岩で焼き尽くしながら着地、再び灰を展開しつつ炎の嵐を『王』にぶつける。

 しかし、再度銃から放たれた光が炎を消し飛ばし、続けて撃たれた二つの光が灰と溶岩までも消滅させた。

 

 

「『カオスビーター』の弾速は光速と同等だ。当たったものは硬度や形状、その他あらゆる特徴に関わらず、消える。君にとって幸運なのは、一発につき消せるのは一種類のもののみという点かな。

 ああ、さっさとこれを使えばよかったのだ。君を勧誘しようと思っていたばかりに。我は甘かった……。

 

 もう油断はない。慢心はない。確実に君を殺す」

 

 

 銃身に波導が集まる。これまでよりかなり多い。恐らく連射してあらゆる防御を消し飛ばそうという考えなのだろう。そのうえ厄介なことに、周囲にはまだ大量の魔獣と古代生物が蔓延っている。

 

 一方、俺の手札はそう多くない。炎、四種類の灰、融けた岩石、超高温高圧の気体二種類といったところだ。カノンから受け取った波導ではあの一撃は止められないだろう。

 

「やるしか、ないか」

 

 ただ一つ、俺が勝利を掴む方法があるとすれば、それは――

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