俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

14 / 14
メス堕ち第一段階


第14話

地下施設は戦場と化していた。

黒い影が次々と襲いかかる。

俺が施した《ホーリー・エンチャント》を受けた明弘とルークの剣が闇を切り裂いた。

影は黒煙となって消える。

だが次から次へと現れる。

 

「数が多すぎる!」

 

ミリアが矢を放ち、放たれた矢が二体の影を貫く。

それでも敵は尽きない。

まるで施設そのものが影を生み出しているかのようだった。

 

「直人!」

 

「分かってる!」

 

俺は叫び返した。

そして《ディバイン・サイト》の魔法を使う。

エリシアを蝕む黒い糸。だがそれとは別にも、嫌な感じのする濃い瘴気のようなものを感じた。

 

「この先だ!」

 

俺たちは影を蹴散らしながら先へ進む。

やがて巨大な扉へ辿り着いた。

明弘とルークが力を込めると、重い音を立てて扉が開き……そして全員が息を呑んだ。

 

そこは広間だった。

壁際に並ぶ檻。

その中には何十人もの人々が閉じ込められていた。

男も女もいる。

老人も若者もいる。

服装はばらばらだった。

 

「これは……」

 

そういえば前に冒険者ギルドの受付嬢が話していた。

 

『それに最近、旅人の行方不明者も多発しています。気を付けてくださいね』

 

この人たちが多分、アレド周辺で行方不明になっていた人々だ。

 

「助けるぞ!」

 

四人で檻へ駆け寄る

俺は最も近い男性の手首に触れた。

 

冷たい。

脈がない。

 

俺は次々と確認する。

だが結果は同じだった。

 

「そんな……」

 

ミリアが顔を青くする。

ルークは唇を噛んでいる。

 

もう手遅れだ。

全員が死んでいた。

しかも不自然だった。

外傷がほとんどない。

まるで中身だけ抜き取られたように、生気が消えている。

 

俺の視線は自然と部屋の中央へ向いた。

そこには巨大な黒い結晶があった。

 

どくん……どくん……。

 

心臓のように脈動している。

エミリアから繋がる糸は、この結晶に繋がっている。

まるで、元の世界でのケーブルのようだと思った。

 

その時、結晶の向こうから足音が響く。

男は黒いローブをまとっていて、顔はよく見えない。

 

「おい!これは全部お前のしわざか!」

 

ルークが剣を向ける。

男は静かに頷いた。

 

「よくここまで辿り着いたものだ」

 

その言葉に怒りが込み上げた。

 

「お前がやったのか」

 

俺が問う。

男はしばらく沈黙した後、抑えたような口調で静かに言った。

 

「必要なことだったのだ」

 

「こんなにたくさんの人を殺してまでか!」

 

ルークが叫ぶ。

男は目を伏せる。

わずかに苦しそうな表情が見えた気がした。

だが次の瞬間には消えていた。

 

「世界を救うためだ」

 

意味が分からない。

少なくとも俺には。

 

「そんな理屈が納得できるか!」

 

明弘が前へ出る。

男は答えない。

代わりに黒い結晶へ手を伸ばした。

 

どくん!

 

脈動が強くなる。

同時に影の魔物が一斉に現れた。

 

「来るぞ!」

 

戦闘が再開した。

影は結晶から湧き出るように現れる。

ならば答えは一つだ。

 

「直人!結晶を壊すぞ!」

 

「了解!」

 

俺は魔法陣を描く。

 

《ディバイン・レイ》

 

光が炸裂した。

結晶へ亀裂が走る。

同時に影たちが苦しげな声を上げた。

 

「効いてる!」

 

ミリアが叫ぶ。

ルークが道を切り開く。

明弘が駆ける。

 

《チャージ》

 

凄まじい勢いで加速。

そのまま剣を振り抜いた。

 

《スラッシュ》

 

轟音。

結晶の亀裂がさらに広がる。

俺は残る魔力を絞り出し、高レベルの魔法を紡ぐ。

 

《セイント・アロー》!

 

広間に響く破砕音。

無数の破片が床へ降り注ぐ。

それと同時に、影の魔物たちが次々と崩れ始め、黒煙となって消えていく。

数秒前まで押し潰されそうだった圧力が嘘のように消えた。

 

 

「終わりだ」

 

俺は荒い息を整える。

魔力はほとんど残っていない。

だがなんとか勝てた。そう思った。

 

視線を上げると、結晶の向こうにはまだ黒ローブの男が立っていた。

その姿は先ほどまでと違い微動だにしない。

まるで砕けた結晶を理解できていないかのようだった。

 

「……馬鹿な」

 

掠れた声。

先ほどとは違い、感情らしいものがうかがえる。

男の視線が砕けた結晶の残骸を彷徨い……そしてゆっくりと俺たちを見る。

 

「あり得ない」

 

その声には動揺が滲んでいた。

 

「『勇者』と『聖女』が……この段階で……」

 

(──!?)

 

「勇者」に「聖女」だって!?

街の魔力測定器でも分からなかったゲーム設定を、何故こいつが知っている?

 

ルークが男に剣を向けた。

 

「観念しろ」

 

男は反応しない。明弘が回り込む。

 

「逃がさない」

 

ミリアも弓を構える。

 

俺は「勇者」「聖女」のことを聞き出すため、男に近づこうとした。

 

その瞬間。

 

背筋を冷たいものが走った。

男の全身から魔力が噴き出す。

空間が軋み、黒い槍が形成される。

 

狙いは……俺だ!

避けなければ。そう判断した時には遅かった。

 

()()()()!」

 

明弘が叫ぶ。

 

身体が動かない。

黒い槍が一直線に迫る──その刹那。

目の前に誰かが飛び込んだ。

 

()()()()()!?」

 

俺を突き飛ばしながら前へ出る。

そして――黒い槍は彼の胸を貫いていた。

 

 

「ぐっ……!」

 

彼がその場に膝をつく。

 

大量の血が流れる。

 

それを見て頭が真っ白になる。

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 

その言葉しか浮かばない。

 

呼吸が乱れる。

 

身体が震える。

 

今まで何度も何度も怪我人を治療した。

 

なのに。なのに。

 

目の前が見えなくなる。

 

自分でも驚くほどに。

 

思っていた以上に──怖かった。

 

彼を失うことが。

 

 

 

《リザレクション》

 

 

 

魔力の残量を省みずに最高位の回復魔法を叩き込む。

 

光が溢れる。

 

傷が塞がる。

 

そして……俺は意識を失った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。