俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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エリシアの夢

翌日、私たちは再び領主館へ呼ばれていた。

私が目を覚ますのを待っていてくれたらしい。

 

領主館を訪れる。

だが今回は重苦しい空気ではない。館全体がどこか明るかった。

使用人たちの表情も柔らかい。

廊下を歩きながらミリアが小声で言う。

 

「なんだか雰囲気が違うね」

 

「ああ」

 

私も頷いた。

 

応接室へ通されると、中には領主ローレンスがいた。

前回より明らかに顔色が良い。

 

疲労は残っているが、絶望は消えていた。

私はその表情を見て察する。

エリシアの解呪が成功したことを。

 

「来てくれたか」

 

領主が立ち上がる。

そして深く頭を下げた。

 

「娘が目を覚ました」

 

全員が安堵した。

ルークが拳を握り、ミリアは嬉しそうに微笑む。

アレックスは静かに息を吐いた。

私も胸の奥の重石が少し軽くなるのを感じた。

 

「本当にありがとう。調査だけではなく原因も絶ってもらえるとは」

 

領主の声は震えていた。

領主ではなく父親としての言葉だった。

 

「娘に会ってやってほしい。自分の言葉で礼を言いたいそうだ」

 

◇

 

案内された部屋。

以前訪れた時とはまるで違う。

窓は開かれ、陽光が差し込み、花瓶には花が飾られている。

そしてベッドの上、少女が身体を起こしていた。

 

金色の髪と透き通るような青い瞳。

エリシア・フォン・アレド。

彼女はフィアナたちを見ると、小さく頭を下げた。

 

「初めまして」

 

細いが透き通る声だった。

 

「エリシアです」

 

半年ぶりに発した言葉らしい。

だがしっかりしている。

領主の目が少し潤んでいるのが見えた。

 

「フィアナです」

 

そう名乗ると。

エリシアは目を輝かせた。

 

「あなたが助けてくださった方ですか」

 

「私だけじゃありません」

 

私は首を振る。

 

「ここにいる全員です」

 

ルーク、ミリア。

そしてアレックス。

四人を見る。

エリシアは一人一人へ礼を述べた。

それだけで育ちの良さが分かる。

 

少しだけ沈黙した後。

彼女は呟いた。

 

「夢を見ていました」

 

全員の視線が集まる。

 

「……夢ですか?」

 

「はい」

 

エリシアは頷く。

 

「ものすごく巨大な街でした。なのに人が全然いないんです」

 

少女は続ける。

 

「そして、どこか遠くで誰かの声が聞こえていました」

 

「その声は何て言っていたか、覚えておられますか?」

 

私は問いかける。

 

エリシアは眉を寄せ、思い出そうとしている。

しばらく後、こう言った。

 

「扉を開け」

 

◇

 

数日後。

領主から報酬を支払うので来てほしいと言われ、再び領主館行くことになった。

応接に通されしばらく待っていると、ローレンスと執事らしき人物が入ってくる。

 

ずしりと重い袋を渡された。

中身は金貨。

冒険者としては破格の報酬。

ルークなど中身を見て目を剥いていた。

 

「家が買えるぞ……」

 

「買うの?」

 

「いや買わないけどさ」

 

ミリアが即座に突っ込む。

少しだけ場が和んだ。

 

ローレンスはそんな私たちを見て微笑む。

しかし不意に真剣な表情になる。

 

「実は王都から連絡が来ている」

 

その言葉で全員が静かになった。

 

「王都?」

 

「領内に不審な遺跡があるのだ、娘の件もあるし国に報告した」

 

領主は言う。

 

「他領でも、似たような報告は挙がってきていたらしい。影の魔物や行方不明者はこのアレドだけではない」

 

そしてローレンスは机の上へ一通の手紙を置く。

天秤と鍵をモチーフとした紋章。

 

(これは……『王都調査局』の紋章か)

 

王都調査局。

ゲームでも中盤から登場する組織だった。

古代遺跡や魔物災害を調査する専門機関。

本来ならプレイヤーが王都到着後にメインシナリオで関わる勢力である。

 

「王都調査局が興味を示した。君たちに事情を聞きたいらしい」

 

領主は四人を見る。

 

「だが強制ではないそうだ……どうするかね?」

 

だがこれは実質的な招待状だ。

それに、あの黒ローブの男のことを知ることは、アレドで冒険者をしていても難しいだろう。

ならば招待に応じた方がいい。

 

「王都か!すげえ!」

 

「かわいい服とかあるかなあ……わくわくしてきちゃった」

 

私が何か言う前に、ルークとミリアは王都行きを決めていた。

 

「二人ともいいのか?」

 

アレックスが二人に問う。

 

「当然だろ!俺はもっと有名な冒険者になりたいんだ」

 

「ほら、ルークは私がついてないとダメだし」

 

二人の会話を聞きながら、私の心は温かいもので満たされていた。

この世界へ来て半年。いつの間にか大切な絆ができていることを実感した。

 

「はい。王都に向かおうと思います」

 

私はそうローレンスに答えた。

 

◇

 

夕暮れ。

館を出た後、四人は市場の近くを歩いていた。

 

「ルーク、ミリア。私とアレックスは、王都に行って例の黒ローブの男を追いかけたい。あいつは私たちが調べていることを何か知ってるかもしれないんだ」

 

私はルークたちに問いかける。

 

「危険な目にもあうかもしれない。それでも付いてきてくれるか?」

 

少しだけ沈黙したあと、ミリアが快活に答えた。

 

「うーん……四人一緒なら大丈夫ですよ、きっと!」

 

ミリアのその言葉に誰も反論しなかった。

次の目的地は、王都だ。

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