俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

21 / 32
地下への隠し通路

王都調査局を出たのは翌朝だった。

 

「旧鐘楼区画かぁ」

 

ルークが地図を見ながら言う。

 

「王都にもこんな場所があるんだな」

 

「昔の市街地なんだって」

 

ミリアが答える。

 

「再開発から取り残された区域ですね」

 

コーデリアが資料を見ながらそう告げた。

ゲームにも『旧市街』という地域を大雑把に設定していた。

シティアドベンチャー系のクエストで、戦闘を発生させるための地域だ。

それが現実では「旧商業区画」「旧鐘楼区画」と細かく分かれている。

 

王都の拡張に伴って中心地が移り、人々も新しい区画へ移住した。

残された建物は老朽化し、現在では低所得者や職人の一部が暮らす程度。

王都の中でも特に人口が少ない地域だという。

 

「行方不明者が出るには都合が良さそうだな」

 

アレックスの言葉に全員が頷いた。

 

王都中心部から離れるにつれて景色が変わる。

整備された石畳はひび割れが目立ち始め、建物の壁にも補修跡が増える。

洗濯物が風に揺れている。

人はいるが少ない。

通りを歩く者の表情もどこか疲れて見える気がする。

 

やがて、昨日アレックスが異常を指摘した鐘楼が見えてくる。

高くそびえる石造りの塔。

近くで見ると老朽化は明らかだった。

壁面には苔が張り付き、一部には補修の痕跡もある。

 

「まずは聞き込みですね」

 

コーデリアの提案で周辺住民への聞き込みを始めた。

 

 

「行方不明?」

 

年配の男性が眉をひそめた。

 

「そりゃ聞いたことはあるよ」

 

「この辺りでもですか?」

 

「最近だな」

 

男性は声を落とした。

 

「夜になると帰ってこない奴がいる」

 

「何人くらいです?」

 

「さあな」

 

男は首を振る。

 

「役人も来てたが結局分からなかった」

 

別の住民にも話を聞いた。

こちらは雑貨屋の女性だった。

 

「夜は出歩かない方がいいよ」

 

「何かあったんですか?」

 

「消えるんだよ」

 

女性は小さく言った。

 

「見つからないんだ」

 

「魔物とか?」

 

ルークの質問に女性は首を振る。

 

「違うね」

 

「悲鳴も聞こえない」

 

「争った跡も無い」

 

「朝になったらいなくなってる」

 

私はメモを取りながら話を聞く。

どれも決定打には欠ける。

 

ただ一つ、ここでも行方不明者は確実に存在する。

それも王都調査局の資料だけではなく、住民たちも異常を認識するくらいには。

 

 

聞き込みを終えると鐘楼の調査を始めた。

内部は想像以上に狭い。

螺旋階段が上へ続いている。

埃っぽい空気。誰も使っていないわけではないらしいが、人の出入りは少なそうだった。

アレックスは壁や柱を確認している。

 

私は《ディバイン・サイト》を使った。

光の粒子が視界に広がる。

呪い……魔力……異常……意識して探してみる。

だが反応は無い。

 

「どうだ?」

 

アレックスが聞く。

 

「何もない」

 

「鐘は?」

 

「普通に見える」

 

実際、鐘そのものからは何も感じない。

呪いも魔法陣も無かった。

鐘楼最上部まで調べたが成果は無い。

 

「外れか?」

 

ルークが呟いた。

 

その時、胸の奥で何かが引っ掛かった。

何とも言えない違和感……今まで感じていたものとは少し違う。

私は立ち止まる。

 

「フィアナ?」

 

ミリアが不思議そうにこちらを見る。

私は返事をしない。

感覚を探る。

鐘ではない。

塔でもない。

もっと別の場所。

もっと下。

 

「……下?」

 

思わず口に出た。

 

「何だ?」

 

アレックスが近付いてくる。

私は床を見た。

石造りの床。

見た目は普通だ。

だが。

感覚は確かにそこを指していた。

 

「鐘じゃない」

 

「何?」

 

「下だ」

 

私はしゃがみ込んだ。

王都に来てから初めてだった。

アレドの地下遺跡、エリシアの呪い。あの時と似ている。

理屈ではない。だが無視できない。

 

「地下に何かある」

 

レオンの目が細くなる。

 

「根拠は」

 

「説明できない」

 

正直に答えた。

 

「でもある」

 

アレックスはすぐに床へ視線を落とした。

 

「探そう」

 

 

そこから探索が始まった。

壁を叩く、床を調べる、隙間を確認する。

 

一時間近く成果は無かった。

ふと、ルークが疲れたように壁へ寄り掛かった時だった。

 

ゴトッ。

 

鈍い音が響く。

全員の視線が集まる。

 

「今の何だ?」

 

「俺じゃねぇぞ」

 

ルークが慌てて離れる。

壁の一部がわずかに沈んでいた。

アレックスが近付く。

手で押すが動かない。

 

別の場所を調べると、石材の一つだけ摩耗具合が違った。

 

「これか」

 

アレックスが押し込むと重い音が響いた。

 

ゴゴゴゴ……

 

壁の一部が横へ動く。

その奥から冷たい空気が流れ出す。

地下へ続く階段。

 

「隠し通路……」

 

ミリアが呟く。

レオンはすぐに剣へ手を掛けた。

 

「当たりだな」

 

コーデリアの表情も険しくなる。

地下、しかも隠蔽された入口。

偶然で済む話ではない。

私は階段の奥を見つめた。

鐘ではない、異常の中心は地下だ。

アレックスも同じ結論に至ったらしい。

 

「行くぞ」

 

短く言う。

ルークが剣を抜き、ミリアが弓を持つ。

私たちは視線を交わし、小さく頷く。

そして一歩ずつ地下へ足を踏み入れた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。