俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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防衛機構

研究施設のさらに奥へ進むにつれ、周囲の空気が少しずつ変わっていった。

壁に埋め込まれた結晶が、淡い青白い光を放っている。

ここまで歩いてきた区画はほとんどが崩れ、機械も沈黙していた。

 

だが、この先は違う。

足元を流れる細い溝には微かな光が走り、どこかで低い駆動音のような響きが続いていた。

私は無意識に歩みを緩める。

胸の奥で何かが引っ掛かった。

呪いを追った時とも違う。

見えない糸が、さらに奥へ伸びているように感じる。

 

「フィアナ?」

 

アレックスが振り返る。

 

「……何かがある……たぶん」

 

私は前方を見つめた。

 

「この先か」

 

レオンが剣を抜く。

 

「全員、警戒」

 

誰も軽口を叩かなかった。

 

 

通路の先には巨大な扉があった。

半ば開いたまま止まっている。

全員で押し広げると、重い音が地下へ響いた。

 

その先には広大な空間が広がっていた。

部屋の中央には、人の背丈を遥かに超える巨大な透明結晶。

床から伸びた幾本もの金属柱が結晶を支え、周囲では古代装置が今なお稼働している。

青い光が結晶から装置へ流れ、装置から天井へ。

まるで施設全体へ命を送り込んでいるようだった。

 

「動いてる……」

 

ミリアが小さく呟く。

何千年も前の施設。それが今も動き続けている。

その時。

 

『重要区画への侵入者を検知しました』

 

無機質な声が部屋全体へ響く。

ルークが周囲を見回す。

 

「誰だ!」

 

『速やかに当該区域より退去してください』

 

声は感情を全く含まない。

 

『侵入者の残留を確認』

 

『防衛機構を起動します』

 

中央の結晶が強く輝いた。

結晶の表面から光が剥がれ落ちるように集まり、一体の人影を形作る。

透明な結晶でできた騎士。

右腕は長い刃。

左腕には筒状の結晶器官が備わっている。

 

「来るぞ!」

 

アレックスが叫んだ。

結晶の騎士が床を蹴る。

想像以上の速さだった。

 

「速っ!」

 

ルークが迎え撃つ。

 

《トライ・エッジ》

 

三連撃。

火花を散らしながら刃が結晶を斬る。

だが騎士は止まらない。

 

右腕の刃が振り下ろされる。

アレックスが割って入り剣で受け止めた。

金属同士とは違う高い音が地下へ響く。

 

次の瞬間。

キィィィン――

耳を貫く甲高い音。

頭の奥まで震える。

 

「ぐっ……!」

 

身体が一瞬だけ硬直した。

これは魔法だ。

音そのものが術式になっている。

 

「動きが鈍る!」

 

レオンが叫ぶ。

騎士の左腕がこちらを向く。

光線が一直線に走った。

 

「散れ!」

 

床が爆ぜる。

石片が飛び散り、私は横へ転がった。

 

《ファイア・ストライク》

 

ミリアの炎が騎士を包む。

続けて矢が放たれる。

 

《ピアシング・ショット》

 

高速で放たれた矢が結晶の胸を貫く。

 

「ルーク!」

 

「ああ!」

 

二人が左右から同時に斬り込む。

騎士は後退した。

その瞬間。

部屋の隅々から黒い影が湧き上がる。

 

「影の魔物まで!」

 

十体。

いや、それ以上。

 

「数が多い!」

 

私は杖を掲げた。

 

《ディバイン・レイ》

 

光が炸裂する。

数体が一瞬で消滅する。

だが残りは止まらない。

 

「フィアナの援護を通す!」

 

アレックスが前へ出る。

ルークも背中を預けた。

 

「こっちは任せろ!」

 

「ミリア!」

 

「了解!」

 

《ダブル・ショット》

 

放たれた四本の矢が影を貫く。

レオンも神聖属性を宿した剣で敵を切り裂いていく。

連携は崩れない。

それでも敵は多かった。

 

 

「倒したか」

 

ルークが息を整える。

結晶の騎士は床へ崩れ落ちていた。

砕けた身体が光となって散っていく。

 

その直後。

中央の巨大結晶が脈打つ。

散った光が吸い寄せられる。

 

「まさか」

 

再び結晶が人型を形作る。

数秒もしないうちに騎士が立ち上がった。

 

「復活した!?」

 

「本体はあの結晶か!」

 

アレックスが中央を見る。

私は巨大結晶へ視線を向けた。

直感した。この部屋で最も歪んだ「流れ」はあの結晶だ。

 

「アレックス!」

 

「分かってる!」

 

「結晶を壊せば止まる!」

 

レオンが頷く。

 

「全員、守護機構を押さえ込む!」

 

騎士が突撃してくる。

アレックスが正面から受け止める。

ルークが右腕へ斬りかかる。

レオンが左腕の光線を剣で逸らす。

 

「今だ!」

 

私は結晶へ向かって駆けた。

影の魔物が立ちはだかる。

ミリアの矢がその肩を射抜く。

 

「行って!」

 

あと数歩。

巨大結晶の前へ飛び出す。

杖を両手で握り、高位魔法を紡ぐべく意識を集中する。

 

《セイント・アロー》!

 

最初は乾いた衝撃音。

そして、亀裂が蜘蛛の巣のように広がる。

結晶全体が激しく明滅した。

 

そして――。

轟音と共に、巨大結晶は無数の光片となって砕け散った。

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