俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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一応の決着

巨大結晶が砕け散ると同時に、部屋全体を満たしていた青白い光が大きく揺らいだ。

天井や壁を走っていた光の筋が一本、また一本と消えていく。

復活しかけていた守護機構は動きを止め、その身体を構成していた結晶が砂のように崩れ落ちた。

 

「……終わったのか」

 

ルークが剣を構えたまま呟く。

レオンは周囲へ視線を巡らせる。

 

「まだ油断は禁物だ。施設が停止しただけかもしれん」

 

私も頷いた。この地下施設そのものから漂う異様さはまだ消えていない。

 

「部屋を調べよう」

 

アレックスの提案に全員が動き始めた。

 

 

結晶のあった広間は思っていた以上に広かった。

装置が並ぶ区画のさらに奥へ進むと、厚い金属扉が半ば開いている。

レオンが慎重に押し開ける。

中を覗いた瞬間、私たちは息を止めた。

 

「……人だ」

 

部屋いっぱいに金属製の台座が並んでいる。

その一つ一つに、人が拘束されていた。

 

「生きてる!」

 

私は駆け寄る。

手首や足首を固定する金具。

身体へ伸びる細い管。

透明な結晶。

どこかで見た光景だった。

 

「これは……」

 

思わず言葉が漏れる。

 

「アレド西の森の地下施設だ」

 

アレックスも同じことを考えていたらしい。

 

「あの拘束設備と同じだ」

 

構造まで酷似している。

違うのは数だけだった。

ここには何十人もの人々が並べられている。

 

「フィアナ!」

 

ミリアが一人の女性を指さす。

 

「息がある!」

 

私は急いで神聖魔法を発動した。

 

《ハイ・ヒール》

 

柔らかな光が女性を包む。

青白かった頬に少しだけ血色が戻った。

 

「まだ助けられる」

 

「急ごう!」

 

全員が散って拘束具を外し始める。

レオンは力任せに金具を引きちぎり、ルークは意識のある者へ水を飲ませる。

ミリアは動ける人を順番に支えていた。

だが。

 

「……」

 

救えない人もいた。

身体はまだ温かい。

けれど鼓動は止まっている。

魔法でも届かない場所まで命が離れてしまっていた。

 

私は歯を食いしばる。

結局、生き残っていたのは全体の二割ほどだった。

あと少し早ければ。

そんな考えが頭をよぎる。

だけど今は立ち止まっていられない。

 

 

「こっちにも部屋がある」

 

ルークの声に振り向く。

拘束室の隣。

小さな制御室らしい場所だった。

中央には円形の台座。

その上には、他の装置より一回り大きな古代機械が据えられている。

驚くほど保存状態が良い。

 

「まだ動いてる」

 

アレックスが小さく呟いた。

表面には淡い光。

複数の結晶板が浮かび、文字や図形が絶えず変化している。

コーデリアが古代文字へ目を向ける。

 

「制御……管理……施設接続……」

 

「読めるのか?」

 

「全部ではありません。でも管理装置のようです」

 

私は装置を眺めた。

壊れた古代機械とは違う。

どこか、現代で見た電子機器を思わせる整然とした構造だった。

結晶板の一つへ世界地図らしき図が映る。

各地を線が結び、無数の光点が脈動している。

 

「ネットワーク……?」

 

思わずそんな言葉が浮かぶ。

隣でアレックスも同じ画面を見つめていた。

 

「施設同士が繋がってるように見える」

 

「そんなことまで出来るのか」

 

レオンが驚きを隠せない。

さらに別の結晶板が切り替わる。

そこへ一人の女性が映し出された。

長い銀髪。

落ち着いた表情。

こちらを見ているわけではない。

ただ静かに正面を向いた肖像画のようだった。

その下では一本の横長の表示がゆっくり光っている。

 

■■■■■■■■■■

 

表示は既に端まで満たされていた。

100%

その数字だけは誰にでも理解できた。

 

「これは……」

 

(まるでPCのプログレスバー表示みたいだ)

 

私が呟いた、その時だった。

隣でレオンの呼吸が止まる。

彼は女性の姿を見つめたまま動かない。

 

「レオン?」

 

小さく肩が震える。

やがて、信じられないものを見るような声が漏れた。

 

「この方は……」

 

それだけ言って口を閉ざした。

 

「知っている人ですか?」

 

ミリアが尋ねても、レオンはすぐには答えられない。

視線は画面から離れなかった。

 

「……いや」

 

ようやく首を振る。

 

「気のせいかもしれん」

 

明らかに気のせいではない表情だった。

だけど今は、それ以上聞ける雰囲気ではなかった。

 

「後で調査局へ報告しよう」

 

アレックスが言う。

 

「この装置も、その女性も重要な手掛かりだ」

 

誰も異論はなかった。

 

 

生存者を支えながら地上への階段を上る。

地下の冷たい空気が少しずつ外気へ変わっていく。

旧鐘楼区画へ出た時には、空は夕暮れに染まり始めていた。

街にはまだ静けさが残っている。

救助を待つ人々へ調査局員が駆け寄っていく。

その様子を見届けていたアレックスが、不意に立ち止まった。

 

「……消えてる」

 

「何が?」

 

私が尋ねる。

彼は鐘楼を見上げていた。

風に揺られ、大きな鐘がゆっくり鳴る。

澄んだ音が旧市街へ広がった。

アレックスは耳を澄ませる。

しばらくして、小さく息をついた。

 

「あの重なっていた音がない」

 

「今は鐘だけが鳴ってる」

 

私は音そのものの違いは分からない。

だけどアレックスは確信していた。

 

「地下施設が止まったことで消えたんだ」

 

その言葉に、レオンも鐘を見上げる。

旧鐘楼区画を覆っていた異変は、確かに終わりを迎えた。

 

だが、地下で見た女性の姿。

世界中へ伸びるネットワーク……そして、100%を示した表示。

私たちは一つの事件を解決しただけなのだと、その静かな鐘の音が教えているようだった。

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