俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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王都観光

「今回はお疲れ様でした。地下施設の調査は我々調査局が引き継ぎます」

 

王都調査局の執務室で、コーデリアが書類を閉じた。

 

「解析には一週間ほど必要になるでしょう。その間、皆さんには自由に過ごしていただいて構いません」

 

「自由行動か」

 

ルークが嬉しそうに笑う。

 

「はい。王都内であれば特に制限はありません。それから我々の方でみなさんの宿を手配しています」

 

「せっかくだし王都を見て回りたい!」

 

ミリアも目を輝かせた。

私もアレックスを見る。

地下施設のことは気になっていたが、今の自分たちにできることは少ない。

 

「俺たちも休ませてもらおう」

 

「賛成」

 

アレックスも頷いた。

 

 

教えてもらった場所にある宿を見た瞬間、全員が足を止めた。

 

「……豪華すぎないか?」

 

思わず口から漏れる。

石造り三階建て。

入口には磨き上げられた真鍮の看板。

王都でも指折りらしい宿だった。

 

「王都調査局から皆さまにご利用頂くよう命じられております」

 

宿の主人が恭しく頭を下げる。

部屋へ通される。

 

「え」

 

しかも。

 

「個室?」

 

「全員分あるらしい」

 

アレックスも少し驚いている。

最近はアレックスと二人部屋か、ルークたちとも一緒の四人部屋が当たり前だった。

一人になれる空間があるだけで妙に落ち着かない。

 

「調査局って金持ちなんだな……」

 

ルークがやけに豪華な天井を見上げて感心していた。

 

 

翌朝、四人で王都の中心街へ向かうことにした。

行方不明の人たちが、一部とはいえ見つかったことが広まっているのか、街には以前より活気が戻っているように感じる。

 

露店から漂う香辛料の匂い。

大道芸人を囲む子供たち。

噴水広場では楽師が演奏している。

 

「こっちこっち!」

 

ミリアが私の手を引いた。

 

「雑貨屋さん!」

 

店先には色とりどりの装飾品が並んでいる。

腕輪。

髪飾り。

耳飾り。

小さな宝石を埋め込んだ首飾りまであった。

 

「綺麗……」

 

口に出してから、自分で少し驚く。

昔の私なら、たぶん素通りしていた。

ミリアは楽しそうに棚を見て回る。

 

「フィアナ、この髪留め似合いそう!」

 

銀色の小さな花を模した髪飾りだった。

 

「いや、俺は別に……」

 

そう言いながら鏡へ映る自分を見る。

銀髪へ軽く添えてみる。

悪くない。

そんな感想が自然に浮かんでしまう。

 

「……」

 

慌てて戻した。

何を考えてるんだ、私。

ミリアはくすりと笑う。

 

「今、ちょっと欲しいって思った?」

 

「思ってない」

 

即答した。

 

「本当かなあ」

 

からかうような声に、耳が少し熱くなる。

 

 

結局、髪飾りは買ってしまった。

早速身に着けていると、少しだけ気分が上向くような気がする。

 

「長かったな。」

 

「女の子の買い物は時間がかかるんですよーだ」

 

ミリアが胸を張る。

 

「ルークなんて途中で飽きちゃって」

 

「しょうがないだろ!」

 

二人のやり取りに笑いが漏れる。

 

「似合ってるな」

 

不意に声がした。

アレックスだった。

私は反射的に振り返る。

だが、なぜか彼は少しだけ気まずそうな顔をしていた。

 

「何だよ」

 

「いや……」

 

言いかけて口を閉じる。

珍しい反応だ。

アレックスは普段ならもっと遠慮がない。

 

「思ったことを言っただけだ」

 

「……そうか」

 

何となく居心地が悪くなる。

数秒だけ妙な沈黙が流れ、アレックスは視線を逸らしながら頭を掻いた。

その仕草を見て、私は少しだけ気付いた。

 

今の一瞬。

こいつは私を男友達の「珠玖直人」として見ていなかった。

「フィアナ」という少女として見たのだ。

その事実に、なぜだか胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。

 

 

昼過ぎ。

香ばしい匂いが風に乗ってくる。

 

「あっ!」

 

ルークが振り返った。

 

「王都名物だ!」

 

屋台では大きな串焼きが豪快に焼かれていた。

炭火が弾け、肉汁が落ちるたび煙が立つ。

 

「四本ください!」

 

ミリアが先に注文する。

焼きたてを受け取る。

一口かじると肉汁が口いっぱいに広がった。

 

「うまい。」

 

思わず声が漏れる。

 

「だろ?」

 

アレックスも笑う。

 

「この屋台、設定したの覚えてるか?」

 

「ああ。」

 

思い出した。

王都へ来たら食べ歩きできるようにしたい。

そんな雑談から始まった小さなイベント。

 

「料理担当のNPCが『秘伝の香辛料』を自慢するんだよな」

 

「その設定書いたのお前だ」

 

「俺じゃない、お前だ」

 

「いや、お前」

 

二人で言い合う。

 

「あはは。」

 

ルークたちは事情も分からず笑っていた。

 

「二人とも本当に昔からの付き合いなんだね」

 

「長い付き合いだからな」

 

アレックスが自然に答える。

その言葉が妙に心地よかった。

 

 

食べ終わって広場を歩いていると、人混みの中小さな子供が転びそうになっていた。

私は反射的に支える。

 

「大丈夫?」

 

子供へ笑いかける。

 

「大丈夫だよ!ありがとうお姉ちゃん!」

 

そう言って子供は去っていった。

ふと隣を見ると、アレックスが私の方を見ていた。

 

「どうした?」

 

「……いや。」

 

答えながら隣を見る。

アレックスは何も変わらない。

昔と同じように隣を歩いている。

変わったのは私の方なのか。

それとも。

 

「アレックス。」

 

「ん?」

 

「いや、何でもない。ミリアたちから遅れてしまったな」

 

道の先を見ると、ルークとミリアが待っていてくれているようだ。少し小走りに合流する。

 

「今夜もあの豪華な宿だねー」

 

そんな話をしながら四人で歩く。

王都の賑やかな通りを、四人の笑い声がゆっくりと流れていった。

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