俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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ミリア視点です


ルークとミリアの休日

朝、宿の廊下を歩いていたら、ちょうどフィアナがアレックスの部屋へ入っていくところが見えた。

扉が閉まる。

私は隣を歩いていたルークの顔を見る。

 

「あれ」

 

「ん?」

 

「また二人で話してる」

 

「ああ」

 

ルークは特に気にした様子もなく頷いた。

 

「何か大事な話があるんだってさ」

 

「朝から?」

 

「フィアナがそう言ってた」

 

ふーん、とだけ返して歩き出す。

 

……ほんと、あの二人って仲良し。

四六時中一緒にいるのに、まだ話すことあるんだ。

 

「オレたちも行こうぜ」

 

「今日は剣の手入れ用品だっけ」

 

「刃こぼれしてるからな」

 

市場へ向かう道は朝から賑やかだった。

露店の呼び込み。

焼きたてのパンの匂い。

荷馬車が石畳を揺らして通り過ぎる。

王都って、歩いてるだけでも楽しい。

 

「ねえ」

 

私はルークの横顔を見る。

 

「フィアナたちにはお世話になりっぱなしだよね」

 

ルークが歩幅を少し緩めた。

 

「そうだな」

 

「あたしたちだけだったら、アレドで死んでたかも」

 

「そこまでじゃねえよ」

 

「いや、そこまでだって」

 

薬草採取で出会った影の魔物。

その後の地下遺跡。

王都まで来てからも、鐘の事件。

どれもフィアナとアレックスがいなかったら乗り越えられなかった。

 

「何かお礼したいな」

 

「気持ちってやつか」

 

「そうそう」

 

ルークは腕を組んだ。

 

「うーん……」

 

こういう時、ルークは意外と真面目に考える。

その顔を見るのは嫌いじゃない。

 

しばらく歩いていると、市場の奥に鍛冶屋が見えてきた。

 

「ここ寄るぞ」

 

店へ入ると鉄の匂いが鼻をくすぐる。

壁一面に剣や槍。

砥石や油。革製の鞘まで並んでいた。

 

「すげえ……」

 

ルークの目が輝く。

子供だ。完全に子供。

 

店主へ質問しながら、剣油や布を選んでいる。

 

「あんた、その剣よく使い込んでるな」

 

「半年くらい毎日振ってます」

 

「ならこの油だ」

 

真剣なやり取りを横で眺める。

戦う時とは違う顔。

こういうところを見ると、ルークってやっぱり剣が好きなんだなと思う。

買い物を終えて店を出る。

 

「これで長持ちするかな」

 

「大事に使えばな」

 

私は弓を背負い直した。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「あんたってさ」

 

「何だよ」

 

「もっと重い剣とか使おうと思わないの」

 

ルークは首を振る。

 

「今ので十分」

 

「そう?」

 

「速く振れる方が好きなんだ」

 

なるほど。

 

「ミリアは?」

 

「私は距離を取って戦う方が楽」

 

「近づかれたら?」

 

「逃げる」

 

即答するとルークが笑った。

 

「潔いな」

 

「ちゃんと逃がしてよ」

 

「任せろ」

 

そう言われると安心する。

何となく。本当に何となくだけど。

ああ、この人なら大丈夫って思える。

 

そのまま雑貨屋へ入る。

旅道具が所狭しと並んでいた。

水袋、火打石、丈夫な糸、薬草入れ。

 

「フィアナってこういうの好きそう」

 

「整理好きだもんな」

 

「あの荷物見たことある?」

 

「すげえ綺麗」

 

「だよね」

 

薬瓶なんて色ごとに並んでる。

最初に見た時は笑っちゃった。

 

「アレックスは逆だな」

 

「あー」

 

想像してしまう。

袋へ適当に放り込む姿。

 

「フィアナが毎回整理してそう」

 

「してるしてる」

 

二人で吹き出した。

店の奥に、小さなお守りが並んでいた。

革紐へ木札を付けただけの簡素なもの。

それぞれ違う紋様が刻まれている。

私は一つ手に取った。

 

「これ可愛い」

 

「魔除けらしいぞ」

 

「ほんとかなあ」

 

「気持ちの問題だろ」

 

そう言いながらルークも別の柄を見ている。

 

「これ、フィアナっぽい」

 

銀色の糸で星が刺繍されていた。

 

「アレックスならこっちかな」

 

剣の紋様。

 

「あ」

 

ルークと同じものを手に取っていた。

指先が触れる。

 

「悪い」

 

「ううん」

 

少しだけ顔が熱い。

別に変なことじゃない。

ただ同じ物を選んだだけ。

 

「二人にこれ贈る?」

 

「いいな」

 

迷わず決まった。

値段は高くない。でもきっと喜んでくれる。

会計を済ませて店を出る。

空はもう少し赤く染まり始めていた。

 

「そろそろ戻るか」

 

「うん」

 

帰り道、荷物を抱えながら歩く。

 

「あのさ」

 

私は前を向いたまま聞いた。

 

「今の依頼が終わったら」

 

「うん」

 

「また四人で旅に出たいね」

 

ルークが笑う。

 

「ああ」

 

短い返事。

でも、その一言だけで十分だった。

 

王都の次はどこだろう。

海の街。

山岳都市。

まだ見たことのない景色が、この世界にはたくさんある。

 

ルークと私。それにフィアナとアレックス。

四人なら、どこへだって行ける気がした。

夕暮れの街を並んで歩きながら、私は買ったばかりのお守りをそっと握りしめた。

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