俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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眠る姫君

朝食を終え、宿の食堂で四人そろって紅茶を飲んでいた。

地下施設の事件が解決して数日。

王都調査局による解析が続いている間は自由行動となり、ようやく慌ただしさも落ち着いてきた。

ルークとミリアは今日も市場へ出かける相談をしている。

 

「昨日見つけた串焼き屋、今日も行こうぜ」

 

「朝から肉の話?」

 

「昼に食うんだよ」

 

二人のやり取りを聞きながら、私は紅茶を口へ運ぶ。

こういう時間も悪くない。

王都へ来てから事件続きだっただけに、ようやく肩の力を抜けるようになってきた。

 

そんな話をしていたその時、食堂の入口が勢いよく開いた。

調査局の制服を着た若い職員が、辺りを見回してから真っ直ぐこちらへ駆け寄ってきた。

 

「フィアナ様!皆様!」

 

職員は息を整える間も惜しむように口を開いた。

 

「レオン様より至急お越しいただきたいとのことです」

 

「何かあったのですか」

 

「詳しくは調査局で……ですが、一刻を争います」

 

私たちは互いに視線を交わし、すぐに支度を整えて宿を出た。

 

 

「急な呼び出しで申し訳ない」

 

「事件ですか」

 

「ああ」

 

レオンさんは周囲を確認してから声を落とした。

 

「今朝未明、クラリス殿下がお倒れになられた」

 

その一言に、私の動きが止まる。

王族、しかもまたゲームに設定していない姫君だ。

最早ゲームとの差異は当たり前に感じてきたけど、こうも似たような状況が発生するなんて。

 

「現在も意識は戻っていない」

 

「病気……それとも、もしや呪いですか」

 

「宮廷医師団でも原因が分からないそうだ」

 

私は思わずアレックスを見る。

彼も状況を整理しようとしているようだった。

レオンさんは続ける。

 

「地下施設事件を解決した功績、そしてアレドで領主令嬢エリシア様を救われた実績を受け、陛下よりフィアナへ診察の要請があった」

 

エリシア。その名前が出た瞬間、胸の奥に少し前の記憶がよみがえる。

偶然とも思えなかった。

 

「すぐ向かいます」

 

私は迷わず答えた。

 

 

私とレオンさんだけで王城へ向かう。馬車の中は静かだった。

窓の外では、多くの人々が普段通りの生活を送っている。

 

城門を抜け、案内された先は王族専用の居住区だった。

豪奢な装飾が施された廊下にも、重苦しい空気が漂っている。

侍女たちは小声で言葉を交わし、近衛兵は普段以上に警戒していた。

 

やがて一つの部屋に案内された。

部屋の中央、天蓋付きの寝台で一人の女性が眠っている。

 

年齢は20代後半くらいだろうか。白い肌に長い金髪。

これが眠っているだけなら穏やかな寝顔。

 

寝台の脇では初老の男性と女性が不安そうな表情で立っている。

王と王妃なのだろう。

レオンさんが深く頭を下げた。私も一緒に頭を下げる。

 

「お連れしました」

 

王は小さく頷く。

 

「頼む」

 

その一言に込められた重さが胸へ響く。

私は寝台の傍らへ歩み寄った。

 

「失礼します」

 

手袋を外し、クラリス姫の額へそっと手を当てる。

 

熱はない。

呼吸も安定しているように見える。まるで自然な眠りだ。

私は《ディバイン・サイト》を発動した。

 

……見える。

 

身体へ絡みつく黒い流れ。

エリシア様の時と似ている。

生命力を奪い、意識を閉ざす構造。

確かに酷似していた。だけど。

 

「……違う」

 

私は眉を寄せる。

確かにエリシア様にかけられていた魔法と似ているが細部が違う。

絡み方……魔力の流れ……そして中心部の歪み。

 

何よりあの時と違い、黒い糸のような流れが見えなかった。

私は一度魔法を解除し、静かに立ち上がった。

 

「エリシア様の時と似ています。ですが同じではありません」

 

レオンさんが問いかける。

 

「何が違う」

 

私は慎重に言葉を選ぶ。

 

「例えるなら……同じ流派の魔法です。しかし術式の組み方に違和感があります」

 

頭の中で、アレドで見た呪いを何度も思い返す。

 

「あの時の呪いは、もっと単純でした」

 

「今回は?」

 

「複雑です。あとから手が加えられたような印象があります」

 

もちろん確証はないが、何故かそれが正しいと直感する。

 

「つまり、エリシア様へ呪いをかけた人物と、クラリス様へ呪いをかけた人物は、同一ではない可能性があります」

 

「今回も追えるか」

 

レオンさんが問う。

 

「いえ……残念ながらエリシア様の時のような『糸』が見えないのです。ですが術者を特定すれば、あるいは」

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