俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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スキルとかも自分で書くと面倒ということを知り(略)


第3話

「次、スキルだ」

 

俺はそう言って明弘を見る。

アレックスには剣技スキルが存在する。

 

《スラッシュ》

《チャージ》

《ワイドスラッシュ》

 

序盤から使える基本技だけでも十種類以上ある。

 

「武器がないぞ」

 

明弘が周囲を見回す。

確かにその通りだった。

ゲームなら初期装備の剣を持っている。

だが今のアレックスは丸腰だ。

 

「その辺の枝でいい」

 

「雑だな」

 

文句を言いながらも明弘は地面に落ちていた太い枝を拾う。

そして構えた次の瞬間。

空気が変わった。

 

俺は思わず目を見開く。

明弘は剣道経験などない。

運動神経も平均程度だ。

だが今の構えは違う。

長年剣を振ってきた戦士そのものだった。

 

「……おい、お前」

 

「分かってる」

 

明弘が困惑した顔で言う。

 

「身体が勝手に知ってる」

 

何となく嫌な感じがした。

俺たちはキャラクターの身体を得た。

だがそれだけじゃない、技術まで引き継いでいる。

明弘は深呼吸した。

 

《スラッシュ》

 

次の瞬間。

枝が消えたように見えた。

風が唸る。

五メートル先の低木がまとめて切断された。

数秒遅れて葉が舞う。

俺は固まった。

 

「おいおいおい」

 

「……俺も引いてる」

 

明弘の顔も青い。

今の動きは人間じゃない。

少なくとも元の俺たちには不可能だ。

 

「スキルは発動する」

 

俺は整理するように呟く。

 

「しかも身体が使い方を覚えている」

 

「覚えているっていうか……」

 

明弘は自分の手を見る。

 

「知識が頭の中にある感じだ」

 

その表現は正しかった。

俺も少し前から違和感を覚えている。

フィアナの魔法陣。

本来なら全部覚えているはずがない。

ゲームデータとして見たことはある。

 

だが俺は今、それを『理解している』。

なぜそう描くのか。

なぜそう繋がるのか。

理屈ごと頭に入っている。

まるで、本当にフィアナだったかのように。

 

「……気持ち悪いな」

 

思わず漏れた言葉に、明弘も苦笑する。

 

「否定できない」

 

二人してしばらく黙り込む。

風が木々を揺らし、遠くで鳥が鳴いた。

ゲームの中なら環境音で済む音だ。

だが今は違う。

全部が現実だった。

 

「他にも試すか?」

 

明弘が尋ねる。

俺は少し考えてから首を振った。

 

「いや、やめておこう」

 

「珍しいな」

 

「これ以上ここで暴れたくない」

 

実際、さっきから周囲の林は少しずつ被害を受けている。

木は折れるし、低木は切り飛ぶし、光魔法は眩しい。

ゲームならリセットできる。

だがここは違う。

もし誰かの所有地だったら洒落にならない。

 

「それに、だ」

 

俺は街道の先を見る。

遠くに見えていた街が、少しだけ近く感じた。

 

「これ以上は情報が足りない」

 

「ま、同感だ」

 

明弘も頷く。

ゲームと同じ世界なのか。

違う世界なのか。

レベルは存在するのか。

モンスターはいるのか。

何も分からない。

検証だけでは限界があった。

 

「まずは街だな」

 

「アレドか」

 

ゲームの最初の街。

人口五千人ほどの地方都市。

宿屋、武器屋、教会、冒険者ギルド。

設定資料なら頭に入っている。

だが実在するかは別問題だった。

 

「もし本当にアレドなら、入口の近くに噴水広場がある」

 

「西区画に市場、東区画に宿屋街」

 

「中央に領主館」

 

言いながら二人で顔を見合わせる。

確認する方法は簡単だ。

実際に行けばいい。

 

「よし」

 

明弘が立ち上がった。

 

「行くか」

 

俺も立ち上がる。

その時だった。

ぐうううううう。

妙に大きな音が響く。

俺たちは同時に固まった。

数秒の沈黙。

そして。

 

「……今の」

 

「いや俺じゃないぞ」

 

明弘が即答する。

なら誰か。

答えは一人しかいない。

俺だった。

正確にはフィアナの腹だった。

 

「そういや朝飯食ってなかったな」

 

明弘が呟く。

最後に見た時計は深夜だった。

転移してきたのもついさっきだ。

だが体感では既に何時間も動き回っている。

空腹を感じても不思議ではない。

 

「街だ。今すぐ街へ行くぞ」

 

「急に必死だな」

 

「うるさい黙れ」

 

俺は足早に街道へ向かう。

後ろから明弘の笑い声が聞こえた。

腹立たしい。

だが同時に少し安心した。

訳の分からない世界に放り込まれても、隣にはいつもの親友がいる。それだけで心強かった。

 

俺たちは並んで街道を歩き始める。

石畳の感触。

頬を撫でる風。

遠くに見える城壁。

 

近付くにつれ、人影らしきものも見えてきた。

商人だろうか。

荷車を引く集団が門へ向かっている。

俺は思わず息を呑む。

ゲーム画面の向こう側でしか存在しなかったはずの世界。

その入口が、もう目前まで迫っていた。

 

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