俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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奪われた復讐

観測所の中は静まり返っていた。

崩れた本棚、割れた実験器具。

長い年月、人が訪れなかった空間のはずなのに、中央の机だけは埃が払われている。

 

「……来たか」

 

奥から現れた男を見て、レオンさんが目を細めた。

 

「ドルガン博士だな」

 

身体は痩せていてどこか疲れたような老人に見える。

ドルガンさんはこちらを見渡し、最後に私へ視線を止める。

 

「王都管理局か」

 

「クラリス殿下へ術をかけたのは博士か」

 

「そうだ」

 

迷いなく認めた。

ルークが剣へ手を掛ける。

ドルガンさんは逃げる素振りも見せず続けた。

 

「私は王立研究所を追われた」

 

「十年以上積み重ねた研究を否定され、成果も全て封じられた」

 

「その時の所長がクラリス王女だ」

 

私たちは黙って聞いていた。

 

「だから復讐として王女に術をかけた。だが今王女にかかっている術は私の術ではない」

 

レオンさんが目を細める。

 

「そう思う根拠は」

 

「解除できなくなっているからだ。術の内容も異なる」

 

私は思わず顔を上げて目の前の老人に問う。

 

「解除できるんですか?」

 

ドルガンは頷く。

 

「本来ならな」

 

「本来はどんな術だったんですか」

 

ドルガンは私を見る。

 

「睡眠時に必ず悪夢を見せる術だ。効果は解除しない限り永続だがな」

 

ルークが顔をしかめる。

 

「十分ひでえだろ」

 

「否定はしない」

 

レオンさんが剣を向けながら言う

 

「いずれにせよ、殿下に術をかけたことは認めるのだな。ならば拘束させてもらおう」

 

私はここで《ディバイン・サイト》の魔法を使ってみることにした。

本来の術者がこの男だというのなら、この間王女を診察した時とは違うことが分かるはず。何故か直感できる。

魔法を使うと、細くしかし確かな呪いの繋がりが山の奥へ伸びているのが見えた。

 

「見えた……」

 

思わず声が漏れる。

私の呟きを聞いてアレックスがこちらを見る。

 

「フィアナ?」

 

「エリシア様の時と同じ。クラリス王女から続いてる線」

 

私は線を指差した。

 

「向こう」

 

「山のさらに奥」

 

ドルガンさんが目を見開いている。

 

「追跡できるのか」

 

「たぶん」

 

私が方向を示すと、ドルガンさんは頷いた。

 

「やはり」

 

指先が山中の一点を示した。

 

「そこには古代の工廠がある」

 

「工廠?」

 

「王立研究所時代、我々はそこを調査していた。だが研究員が正体不明の魔物に襲われる事態が多発してな。計画は中止され、ここも封鎖された」

 

「で?博士がここにいた理由は?」

 

「私の術は古代文明の術を元にしていてな。術が変質した理由を調べにここにきた。分かったことは誰かが私の術を改変したということだ」

 

「それが誰だか分かったのか」

 

レオンさんが低い声で尋ねる。

 

「私の術をここまで改変できる人間は一人しか心当たりはない。私の師であるマグナス・ヴェイン博士くらいだ」

 

ドルガンさんはゆっくり私たちを見た。

 

「頼みがある。工廠に向かうのならば、私も同行させてほしい」

 

ルークが眉をひそめる。

 

「信用できると思うか?」

 

ドルガンさんは疲れたように笑う。

 

「信用する必要はない。ここで私を王都に連行する人員を割くより、監視して同行させた方が君たちも効率的だとは思わないかね?」

 

私は理由を尋ねた。

 

「なぜ、そのマグナス博士に会いたいのですか」

 

ドルガンさんは少しだけ俯いた。

 

「これは私の復讐だった。王立研究所を、クラリス王女を憎み続けた」

 

拳をゆっくり握り締める。

 

「その復讐を誰かに渡すつもりはない。師であろうともそんなことは許さない」

 

声が震えていた。怒り……悔しさ……悲しみ……色々なものが入り混じった声だ。

 

「いいだろう」

 

レオンさんが答えた。

 

「我々はこのまま古代工廠へ向かう。博士の同行は認めるが拘束させてもらおう。マグナス博士と会った場合話すことも許可する」

 

古代工廠。

そこに、この事件の黒幕が待っている。

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