俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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解呪

四体の影の魔物が一斉に襲いかかってきた。

 

「迎え撃つ!」

 

レオンさんの号令で全員が散開する。

アレックスが真正面から斬り込み、ルークが側面へ回る。

私は杖を掲げた。

 

《ホーリー・エンチャント》

 

白い光が仲間たちの武器を包み込む。

神聖な輝きを帯びた刃が影の魔物を切り裂き、ミリアの矢が続けて胸を射抜く。

黒い身体は崩れるものの、すぐに靄をまとって再生を始めた。

 

「再生が速い!」

 

「核を削り切れ!」

 

レオンさんが叫ぶ。

その時、広間へ無機質な音声が響く。

 

『計画進行速度を修正』

 

『第一研究所稼働率を百八十パーセントへ変更』

 

壁面の結晶が赤く染まり、世界地図を映していた装置も警告色へ切り替わる。

 

『施設本体の一時的損耗を許容』

 

床の奥から低い振動が伝わってきた。

建物全体が軋み、天井から砂埃が降る。

 

「何だ、この音は」

 

ルークが周囲を見回す。

マグナスは装置へ視線を向けたまま、小さく目を見開いた。

 

「……早すぎる」

 

初めて彼の声に動揺が混じる。

独り言のような呟きだった。私たちへ向けた言葉ではない。

 

その隙にも影の魔物は攻撃を続ける。

アレックスが魔物をまとめて押し返し、ルークが横から斬り込む。

 

《ブレードラッシュ》

 

アレックスの剣が黒い残像を引きながら五度閃く。

一体の影の魔物が大きく身体を裂かれた。

そこへルークが三連撃を叩き込む。

 

《トライ・エッジ》

 

連続する斬撃が魔物を押し込み、その隙を逃さずミリアの矢が飛んだ。

 

《ダブル・ショット》

 

二本の矢が胸部を貫く。

黒い身体が揺らぎ、崩れ落ちる。

私はそこへすかさず神聖魔法を重ねた。

 

《ディバイン・レイ》

 

白銀の奔流が三体を包み込み、黒い身体を光の粒へ変えていく。

残る一体もレオンさんたちが押さえ込み、戦況は一気にこちらへ傾いた。

 

「博士!」

 

レオンさんが駆け出す。

マグナスは奥にあった魔法装置へ足を踏み入れた。

淡い光が足元から立ち上る。

 

「時間は稼いだ」

 

「後は――」

 

言い終わる前だった。

 

轟音とともに施設全体が激しく揺れる。

マグナスが体勢を崩す。

この異常は彼も予想していなかったらしい。

 

「施設が耐えられないのか……!」

 

その一瞬をレオンさんは逃さない。

床を蹴り、一気に間合いを詰める。

肩から体当たりを浴びせ、そのままマグナスを石床へ押し倒した。

 

「捕らえた!」

 

拘束具が乾いた音を立てて閉じる。

マグナスは抵抗しようとしたが、すぐに力を抜いた。

 

「クラリス様の呪いを解く方法を教えろ」

 

「教えると思うかね」

 

私は深呼吸して《ディバイン・サイト》の魔法を使う

王都、離れた場所にいるはずの第二王女。

その命へ向かって、黒い流れがさっきよりも加速しているように見える。

 

「クラリスさん……!」

 

思わず声が漏れる。

命の灯火そのものが揺らいでいる。

 

「フィアナ?」

 

アレックスが振り返る。

 

「呪いがさっきまでとも変わってる……!」

 

私は急いで部屋中を見渡し、やがて一つの装置を見つけた。

崩れた機械の陰、一見すると壊れた装置のようにも見えるそれ。

その奥にひと際濃い影を纏う結晶が見えた。

 

「そこ!」

 

影の魔物はすべて倒れている。

マグナスが何かを言おうとしたが無視して結晶へ杖を向け、魔法陣を描く。

 

《ホーリー・アロー》

 

光の矢が一直線に飛ぶ。

結晶へ命中した瞬間、黒い表面へ亀裂が走った。

足りない……もう一撃、もっと強く。

 

《セイント・アロー》!

 

乾いた破裂音とともに結晶が砕け散る。

黒い粒子が霧のように舞い、胸を締め付けていた感覚もゆっくりと薄れていく。

 

「……止まった」

 

さっきまで黒く濁っていた一本の糸が、ゆっくりと色を失っていくのが見えた。

その途端、全身から力が抜けた。

膝が崩れる。魔力はもう空っぽだ。

倒れそうになる私を、アレックスが支えてくれた。

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