俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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ルークとミリアの休日2

朝からそわそわしていた。

いや、正確には昨日から。

フィアナが目を覚まして、クラリス様も無事だと分かって、ようやく全部終わった。

だから今度こそ。

今度こそルークに言おうと思ったのだ。

 

「よし」

 

私は鏡の前で小さく拳を握った。

宿屋の部屋。

いつもより少しだけ髪を整える。

別に特別な意味なんてない。

ないんだけど。

ほんの少しだけ、可愛く見えたらいいなと思っただけ。

 

「ミリア?」

 

部屋の外からルークの声が聞こえた。

心臓が跳ねる。

 

「い、今行く!」

 

慌てて返事をして部屋を出た。

 

 

王都の通りは今日も賑やかだった。

事件が解決したことで、街全体の空気も少し明るい。

私とルークは市場を歩いていた。

フィアナとアレックスは別行動だ。

 

フィアナはまだ本調子じゃないし、二人で買い物に行くと言っていた。

最近の二人を見ていると、なんだか眩しい。

もちろん昔から仲は良かった。

でも今は少し違う。

お互いを見ている目が。

たぶん本人たちは気付いてないけど。

 

「なあミリア」

 

「なに?」

 

「これどう思う?」

 

ルークが差し出したのは小さな革袋だった。

 

「道具入れ?」

 

「そう。便利そうだろ」

 

「うん」

 

返事をしながら横顔を見る。

今だろうか。

言うなら。

今だろうか。

 

「あのね、ルーク」

 

「おう」

 

言葉が喉まで出かかった。

その瞬間だった。

 

「そうだ。アレックスたちが結婚したらさ」

 

「……え?」

 

「俺たちだけ置いていかれそうだよな」

 

私は固まった。

結婚。

今。

その話する?

 

「まあフィアナ綺麗だしな」

 

「……」

 

「アレックスも顔いいし」

 

「……」

 

「お似合いだよな」

 

何かがぷつりと切れた。

 

「へえ」

 

「ん?」

 

「そういうこと考えてたんだ」

 

「いや?」

 

「じゃあ何でそんな話するの?」

 

「何でって」

 

「知らない!」

 

私は勢いよく歩き出した。

後ろから慌てた声が聞こえる。

 

「え!?何で怒ってんだ!?」

 

「怒ってない!」

 

怒っている。

すごく怒っている。

何が悲しいって。

私がこんなに勇気を出そうとしていたのに。

この人は全然そんなこと考えていない。

それが分かってしまったことだった。

 

 

気付けば一人で王都を歩いていた。

別に行く当てもない。

ただ歩く。

歩いて。

歩いて。

そして。

 

「……あ」

 

思わず足が止まった。

通りの向こう。

そこにいたのはフィアナとアレックスだった。

二人とも変装もしていない。

普通に買い物をしている。

 

フィアナが何かを手に取る。

アレックスがそれを見て笑う。

フィアナも笑う。

自然だった。

まるで恋人同士みたいに。

 

胸が少し痛んだ。

羨ましかった。

あんな風になりたかった。

私はそっと踵を返した。

見ていたら泣きそうだった。

 

 

気付くと王都の高台まで来ていた。

街が一望できる場所。

風が気持ちいい。

夕日が街を赤く染めている。

私はベンチに座った。

 

「馬鹿だなあ」

 

自分でも分かっている。

ルークは悪くない。

勝手に期待したのは私だ。

勝手に傷付いたのも私だ。

けど、好きなのは仕方ないじゃない。

 

「はあ……」

 

大きくため息を吐いた。

その時だった。

 

「いた」

 

聞き慣れた声がした。

顔を上げる。

ルークだった。

息を切らしている。

どうやらかなり探し回ったらしい。

 

「何でいるの」

 

「探した」

 

即答だった。

 

「何時間探したと思ってる」

 

「知らない」

 

「鐘三つ分」

 

思わず目を丸くした。

鐘三つ?

本当に?

ルークは私の隣に腰を下ろした。

しばらく沈黙が続く。

やがて。

 

「悪かった」

 

小さくそう言った。

私は驚いた。

ルークが素直に謝るのは珍しい。

 

「何が?」

 

「ミリアを怒らせた」

 

「理由分かってる?」

 

「分からない」

 

即答だった。

本当にこの人は。

私は思わず笑ってしまった。

 

「笑うなよ」

 

「だって」

 

さっきまで怒っていたはずなのに。

顔を見ると駄目。許してしまう。

昔からそうだ。

転んで泣いていた時も。

魔物に襲われて怖かった時も。

いつも隣にいてくれた。

 

「ミリア」

 

「なに?」

 

「俺、変なこと言ったなら謝る」

 

真っ直ぐな目だった。

嘘もごまかしもない。

だから余計に困る。

私は少しだけ考えて。

そして笑った。

 

「今回は許してあげる」

 

「助かった」

 

ルークは心底安心した顔をした。

その顔を見ていると、また胸が温かくなる。

本当にずるい。

 

「でも次はちゃんと考えて喋ってよね」

 

「努力する」

 

「絶対しないでしょ」

 

「ばれたか」

 

二人で笑った。

夕日が沈んでいく。

王都での冒険は終わった。

 

次はアレドだ。

きっと、まだ大きな戦いが待っている。

だけど今だけは。

この時間を大事にしたいと思った。

ルークの隣は、不思議と居心地が良かったから。

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