俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

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さらにメス堕ち+1です

もう引き返せませんよね


親友?それとも……

王都へ来てから、初めてゆっくりした朝だった。

窓から差し込む陽光で目が覚める。

 

ようやく医師から外出の許可が出た私は、ベッドから身体を起こし大きく伸びをする。

身体はもう問題ない。魔力もかなり回復していた。

 

「久しぶりに暇ね……」

 

思わずそんな言葉が漏れる。

あと数日したら、再びアレドへ戻る。

だけど今はせっかくの休みだ。少しくらい王都を見て回ろう。

そう思って宿の部屋を出た。

 

 

宿の玄関まで降りたところで、聞き慣れた声がした。

 

「どこ行くんだ」

 

振り返る。

アレックスだ。壁にもたれながら腕を組んでいる。

 

「散歩」

 

「一人で?」

 

「一人で」

 

当然だろう。そう思って答えた。

だがアレックスは露骨に嫌そうな顔をした。

 

「却下」

 

「何で」

 

「まだ倒れて数日だろ」

 

「お医者さんから許可は貰ったよ」

 

「それでも却下」

 

意味が分からない。

私は思わず額を押さえた。

 

「子供じゃないんだけど」

 

「知ってる」

 

「じゃあ何で」

 

「この前、床ごと落ちた奴が何言ってる」

 

ぐうの音も出なかった。

あれは事故だ、事故だったのだが。

アレックスは納得していないらしい。

 

「……分かった」

 

私が溜息を吐く。

 

「じゃあ宿で大人しくしてる」

 

そう言って踵を返そうとすると。

 

「それも却下」

 

「は?」

 

「出掛けるなら付き合う」

 

今度は本当に意味が分からなかった。

 

「いや、そっちはどうなの」

 

「休み」

 

「珍しいね」

 

「俺だって休む」

 

どこかで聞いたような返答だった。

私はしばらくアレックスを見つめる。

本人は至って真面目な顔をしていた。

結局、押し問答に勝てる気がしなかった。

 

「……好きにして」

 

「そうする」

 

アレックスは即答した。

まるで最初から決まっていたみたいだった。

 

 

そのまま二人で王都の街へ出る。

行き先は決めていない。

ただぶらぶら歩くだけだ。

 

「そういえば珍しいね」

 

私が言う。

 

「何が?」

 

「アレックスが休みを取るなんて」

 

「俺だって休む」

 

「ゲーム作ってる時は休まなかったでしょ」

 

「あれは締切があったからだ」

 

そんな他愛もない話をしながら歩く。

不思議だった。

元の世界でも何度も二人で出掛けたことはある。

 

だけど今は少しだけ感覚が違う。

理由は分かっている。

私は女で。

アレックスは男だからだ。

 

 

商業区へ入る。

王都だけあって賑やかだった。

露店が並んでいて、人が行き交う。

香辛料の匂い、焼き菓子の甘い香り、色鮮やかな布地。

見ているだけでも楽しい。

 

「あ」

 

気付けば足が止まっていた。服屋みたいだ。

可愛らしいワンピースが並んでいる。

私は思わず見入ってしまった。

その瞬間。

固まる。

 

……何やってるんだ私は。

 

「気になるのか?」

 

隣から声がした。

 

「ち、違う!」

 

思わず否定する。

アレックスが怪訝そうな顔をした。

 

「いや、ずっと見てたぞ」

 

「見てない」

 

「見てた」

 

わかってる、見てた。間違いなく見てた。

私はつい顔を背けた。

 

最近こういうことが増えている。

可愛い服。

綺麗な装飾品。

甘いお菓子。

以前なら興味も持たなかったものが自然と目に入る。

 

身体に引っ張られているのか。

それとも私自身が変わっているのか。

正直よく分からない。

 

 

「入るか?」

 

「入らない」

 

「そうか」

 

即答したのに。

アレックスは少し残念そうだった。

私は思わず彼を見る。

 

「何その顔」

 

「いや」

 

「何か言いたそうだけど」

 

「似合うと思っただけだ」

 

一瞬、意味が分からなかった。

数秒遅れて理解する。

服の話だ。

私は顔が熱くなるのを感じた。

 

「そ、そういうことをさらっと言わないで!」

 

「?」

 

本人は本気で分かっていない顔だった。

余計に腹が立つ。

 

 

結局。

服屋には入らなかった。

代わりに露店で串焼きを買う。

王都名物らしい。

確かにそういう設定をしたなと考えつつ、二人で串焼きを食べる。

 

「美味しい」

 

「確かに」

 

二人で並んで食べながら歩く。

その時だった。

 

「いらっしゃいませ!」

 

元気な声が響く。

雑貨屋だった。

店先には安いが綺麗なアクセサリーが並んでいる。

おそらく平民向けの店なのだろう。

そして店主のおばさんは私たちを見るなり笑顔になった。

 

「おや、いいねえ。恋人同士かい?」

 

その言葉に思わず叫びかけた。

 

「ちが……っ」

 

けれど何故か言葉に詰まってしまった。

隣を見る。

アレックスも否定しようとして言葉に詰まっていた。

 

「……違う」

 

少し遅れてアレックスが返事をする。

その反応が逆に怪しい。

店主は完全に信じていなかった。

 

「若いねぇ」

 

「違います!」

 

「違う」

 

今度は二人同時だった。

店主は笑うだけだった。

 

 

店を離れた後もしばらく気まずかった。

何となく会話が減る。

沈黙が続く。

そして。

 

「……悪かった」

 

アレックスが突然言った。

 

「何が?」

 

「さっき」

 

私は首を傾げる。

 

「別にアレックスは悪くないでしょ」

 

むしろ反応したのは私の方だ。

するとアレックスは少し困った顔をした。

 

「そうか」

 

それだけ言う。

私は何となく落ち着かなくなった。

 

 

気付けば日が傾いていた。

王都の街並みが夕日に染まる。

楽しい時間はあっという間だった。

 

「そろそろ戻るか」

 

アレックスが言う。

不意に思う。こんな時間も悪くない。

ただ二人で街を歩くだけ。

そんな当たり前の日常が、少しだけ愛おしく感じた。

 

「アレックス」

 

「ん?」

 

「また来ようね」

 

私が言うと。

アレックスは少しだけ目を見開いた。

そして。

小さく笑った。

 

「ああ」

 

短い返事。

だけどそれだけで十分だった。

夕暮れの王都を歩きながら、私は少しだけ先のことを考える。

 

これから待っている戦いはきっと簡単ではない。

だけど今はまだ。

その前の穏やかな時間を楽しんでもいいはずだと思った。

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