俺たちが作ったゲームなのに知らない設定が多すぎる ~自作ゲーム世界に転移したら聖女になっていた~   作:Fiomia

41 / 42
古代王都編
再びアレドへ


アレドの城門が見えた頃には、夕陽が城壁を赤く染め始めていた。

 

「帰ってきたなぁ……」

 

ルークが大きく伸びをすると、ミリアもどこかほっとしたように笑う。

 

「やっぱり落ち着くね。アレドは」

 

私も自然と口元が緩んだ。

王都で起きた一連の事件は終わった。旧鐘楼区画地下の遺跡探索、古代工廠の探索、そしてマグナスとの戦い。

そんなことを考えながら、アレックスと小声で話す。

 

「今思うと、私たちがゲーム開始地点をアレドの街にしたのも、何か意味があったのかも」

 

「EEか。今さらゲームの設定がどうこうで騒ぎはしないが、そうかもな」

 

 

「おお!本当に戻ってきたじゃねえか!」

 

聞き覚えのある声が響いた。

振り向くと、そこにいたのは果物商のバルドさんだった。

 

「バルドさん!」

 

「元気そうだな嬢ちゃん!」

 

以前と変わらない豪快な笑顔に少しだけ胸が温かくなる。

 

「聞いたぞ。王都で大活躍だったらしいじゃねえか」

 

「どこからそんな話が……」

 

「噂は流れてくるもんだ」

 

豪快に笑うバルドさん。

こうして町の人たちに迎えられると、自分たちの居場所へ帰ってきたのだと実感する。

 

 

私たちはそのまま領主館へ向かった。

領主館を訪れると、案内役の使用人がそのまま応接室へ通してくれた。

扉が開くと、ローレンスさんが穏やかな表情で立ち上がる。

 

「よく戻ってきてくれた」

 

「ただいま戻りました」

 

その隣にはエリシアさんも座っていた。

 

「フィアナさん!」

 

弾むような声とともに立ち上がった彼女を見て、私は胸をなで下ろした。

以前より頬に血色が戻り、歩く姿にも危うさはない。半年ものあいだ眠り続けていた頃とは別人のようだった。

 

「お元気そうで安心しました」

 

「はい。毎日庭を歩くようにしているんです。まだ体力は戻りきっていませんけど」

 

少し照れたように笑う姿を見て、自然と頬が緩む。

あの時、この人を助けることができて本当に良かった。

互いに席へ着くと、レオンさんが革袋から数枚の書類を取り出した。

 

「今日は確認していただきたいことがあります」

 

机へ広げられたのは、クラリス王女から預かった古代王国末期の記録だった。

記録には、古代王家の主流がアレド領主家であることも記されている。

 

「クラリス殿下は昏睡中、繰り返し同じ夢を見ていたとのことです」

 

レオンさんの説明を受け、私は王都で起きた出来事を順を追って話していく。

呪いのこと、王都の地下施設のこと、そして古代工廠のこと。

クラリス様の夢、そして夢の中で聞いたという言葉。

 

「……その夢」

 

小さく口を開いた。

 

「私の夢と同じです……『扉を開け』……その言葉は何度も」

 

「偶然とは考えにくいですね」

 

アレックスが腕を組む。

 

「夢を見た二人とも、古代王家の血を引いている」

 

レオンさんも頷いた。

 

「何者かが意図して二人へ同じ内容を伝えようとした可能性が高い」

 

「でも」

 

ミリアが資料へ目を落とす。

 

「夢が同じだって分かっても、それだけじゃどこへ行けばいいか分からないよね」

 

その言葉に誰も返事ができなかった。

手掛かりは増えた。

けれど目的地へ繋がる決定的な情報はない。

考え込んでいたエリシアさんが、不意に顔を上げた。

 

「一つ、気になることがあります」

 

「何でしょう」

 

「皆さんが私に繋がる「糸」を絶ってくれたという遺跡です」

 

私の脳裏に地下遺跡の光景が浮かぶ。

黒い結晶……影の魔物……そして未実装アセットだと思っていた紋様。

――古代文明の設備。

 

「そこも古代文明の遺跡だったんですよね」

 

「ええ」

 

「確かにあの遺跡自体は詳しく調べていなかったような気がします」

 

王都地下の施設も古代文明。

エリシア様が囚われていた遺跡も古代文明。

どちらも今回の事件に深く関わっている。

 

「確かに」

 

私はゆっくり頷いた。

 

「王都では新しい記録が見つかりました。同じように、あの遺跡にも何か残されているかもしれません」

 

「俺も賛成だ」

 

アレックスがすぐに続ける。

 

「事件を止めるのが先だったから、施設そのものはほとんど見て回れてない」

 

ルークも身を乗り出した。

 

「今なら落ち着いて調べられるな」

 

「悪くない案だ。」

 

レオンが真っ先に賛同した。

 

「調査局でも人員を出そう。施設の測量や記録なら我々の方が得意だ。」

 

 

領主館を出ると、夕暮れの空が街を茜色に染めていた。

レオンさんは調査局の面々を振り返る。

 

「明日は我々も同行する。君たちも今日はゆっくりと休んでくれ」

 

「ありがとうございます」

 

私が頭を下げると、コーデリアさんも小さく会釈した。

王都調査局の人たちは領主館を後にし、通りの向こうへ歩いていく。

その背中を見送り、私たち四人も宿へ向かって歩き始めた。

 

街には夕食の支度をする香りが漂っている。

行き交う人々の話し声もどこか穏やかで、王都にいた時とは空気そのものが違って感じられた。

 

「やっぱり落ち着くな」

 

アレックスが周囲を見回す。

 

「王都は人が多かったからね」

 

「俺は賑やかなのも嫌いじゃないけどさ」

 

ルークが笑いながら続ける。

 

「帰ってきたって感じがするのは、やっぱアレドなんだよな」

 

「私もそう思う」

 

ミリアも嬉しそうに頷いた。

 

「半年も暮らしたもんね」

 

その言葉に私も自然と笑みがこぼれる。

最初は入城税すら払えなかった。

それが今では、帰ってきたと思える場所になっている。

 

「そういえば」

 

ルークがアレックスを見る。

 

「明日からまた遺跡か」

 

「たぶんな」

 

「休みが一日くらいあっても良かったんだけどな」

 

「誰かが昼まで寝てる未来しか見えないけど」

 

ミリアがすぐに返す。

 

「ひどいな。それくらい寝かせろよ」

 

「朝ご飯が冷める前には起こすから安心して」

 

「安心できる要素が一つもないぞ」

 

軽口を交わす二人を見ていると、自然と足取りまで軽くなった。

王都では緊張の続く日々だった。

こうして他愛のない話で笑える時間が、思っていた以上に心地いい。

 

歩幅を合わせて歩いていると、不意にアレックスの肩が私の肩へ軽く触れた。

避けようとした私より先に、アレックスが少しだけ身体をずらす。

 

「悪い」

 

「ううん。私も前を見てなかった」

 

それだけのやり取りなのに、胸の奥が少しだけ温かくなる。

以前なら何とも思わなかった距離なのに。

そんな自分の変化を意識してしまい、私は視線を前へ戻した。

やがて見慣れた宿の看板が見えてくる。

 

「着いたー!」

 

ルークが大きく伸びをした。

 

「今日はちゃんと柔らかいベッドで寝られるね」

 

ミリアも嬉しそうに笑う。

王都から戻り、またここへ帰ってきた。

 

明日からは遺跡の調査が始まる。

古代王都の手掛かりが、あの遺跡に残されているかもしれない。

 

新しい謎は増えるばかりだけど、今夜くらいは何も考えずに休もう。

私は宿の扉を開け、仲間たちと一緒に中へ入った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。