ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<今回で会議パートはおしまい。
(=◎ω◎=)<いよいよ多次元宇宙
(=◎ω◎=)<「ウルトラマンメビウス」の世界へ出撃です!
(=◎ω◎=)<ただその前にワンクッション
(=◎ω◎=)<注意事項なんかを伝える事になります。
(=◎ω◎=)<あと、龍海関係でトラブルも
(=◎ω◎=)<どうなるのかは本編にて!
(=◎ω◎=)<では、ゆっくりして行ってね!
しかし、哀しいかな。このまま綺麗なヒーローショーで終わってくれないのが、彼ら「連合軍」の中核メンバーが持つ奇妙にして非常な現実であった。
『………………ん? あれれ? 皆さん、ちょっとお待ちを。外部からボクの暗号通信機に、一般回線から緊急音声通話が入って来てますぅ』
円卓を囲む立体ホログラムの向こう側。数千キロ離れた本土の自宅地下にある「趣味部屋一号室」で、太郎が不意に手元のサブコンソールをカタカタと弄り始めた。せっかく奪還作戦の第一段階が決まり、盛り上がりも最高潮に達しかけていたところに冷や水を浴びせられて、血気盛んなメンバーが何人か不快そうに表情を歪ませる。
そんな室内の視線を気にする事も無く、軽やかにエンターキーを叩いた太郎は、ヘッドセットの隙間から覗く目を会議室へと戻して平然と告げた。
『龍海さぁん、何やら
「はぁ!? あの、椅子でふんぞり返って的外れな指示しかできねぇ能無しが、俺のケー番に直だぁ!?」
想像だにしていなかった相手からの着信通知を聞かされ、龍海は素っ頓狂な声を上げて弾かれたようにオフィスチェアから立ち上がった。
「管理官」――元々は強盗や殺人と言った重大事件が発生した際に立ち上げられる捜査本部にて、前線で捜査を行う実働部隊の指揮・管理・予算配分を一手に担う、極めて重要な上級役職を指す言葉である。国境を越えた大規模な広域捜査が頻繁に行われるようになった現在では、国家規模の重大事件における特設捜査本部にて、実質的な副長として現場の舵取りを行う最高責任者の一人を指す言葉として世界共通で使われていた。
そんな重要ポストに就く超多忙な人物からの突然の緊急コールに、しかし龍海は、緊張しているというよりも寧ろ「面倒くさ過ぎて辟易している」という心の声を全面に露わにしながら、エメラルドグリーンのポニーテールをガシガシと乱暴に掻き毟る。
「本部の上司連中に直談判して、数時間だけだが正式に休暇を捥ぎ取って、その上で『これから地球防衛に関する極めて重要な会議に出席するから、世界滅亡の危機でも起きない限り絶対に電話を寄越して来んな』って、三回は念押ししといたはずだってのに……ッ! 他人の話を聞いてるフリして右から左へ流してたんじゃねぇだろうな、あのポンコツ無能野郎! ……………チッ! あーもう、仕方ねぇ! 太郎、悪ィがその着信、俺のスマホに繋げてくれ!」
『はーい、りょーかいでーす。プロテクトを一部解除しますんで、三秒ほどお時間くださいな』
軽い調子で頷き、太郎が細い指先をバーチャルキーボードの上で優雅に躍らせた。
「アイランド・フォートレス」の円卓会議室は、最下層にあるアイテム保管庫と同様、外部からの盗聴やハッキングを防止する観点から、あらゆる外部電波を遮断する特殊な絶縁素材で造られている。太郎が自ら設定した幾重もの暗号キーで守られた秘匿回線でのみ、通話やリモート接続が可能となっているガチガチ仕様だ。そのため、もし会議室内にいる特定の個人へ外部から着信が入った場合は、例外なくすべて太郎の統括コンソールに一旦矯正転送される仕組みになっていた。
きっかり三秒後。龍海のレザージャケットのポケットから、けたたましい着信音が鳴り響いた。
その呼び出しメロディに、かつて「ウルトラマン80」の劇中において、防衛隊UGMや80が絶体絶命のピンチに陥った際に流れる事でおなじみの「緊迫感溢れる戦闘BGM」を敢えて設定しているあたり、電話の相手が彼女にとってどれほど「良い思い出の無い精神的破壊力を持った相手」であるかが理解できた。
周囲にいる他のメンバーに向けて、人差し指を口許に当てて「静かにしてろ」と伝えてから、円卓から離れて会議室の壁際に立った龍海がスマートフォンの通話ボタンをタップする。
「はい、もしもし。お疲れ様です、朝河です。……ええ、今まさに地球防衛に関する最重要機密会議の真っ最中ですんで、できれば掛けて来てほしく無かったんですが、何か緊急事態でも起きましたか? ……はい。……はい。現場の状況? そりゃもちろん分かってますが……………は? すみません、今、なんとおっしゃいました?」
突如として、室内の空気をピキリと凍らせるような低い声を上げた龍海。円卓に座る章大や瑠偉、隣でタンコブを押さえていた頼巳達が、一斉に訝しげな視線をその背中に注ぐ中、通話を続ける彼女の声音は段々と目に見えて低く、そして恐ろしいものへと変貌して行った。
「はい……。はい……。――状況は分かりました。今から二十分以内に
最後の一言に至っては、もはや「人間の感情」と呼べるような色彩が綺麗さっぱり、全部抜け落ちていた。そのあまりにも淡々とした丁寧で事務的な口調が、逆に彼女の現在の心境、すなわちブチギレ具合を如実に物語っているかのように感じられて、「二世軍団」の若者達は揃って「ヒッ…!?」と喉を鳴らして小さく身震いした。
そんな周囲の仲間達の怯えた空気には目もくれず、龍海は通話を終えたスマホをポケットの中に乱暴に突っ込むと、下座に立つ頌栄へ真っ直ぐに向き直った。
「すまねぇ、頌栄。これから担当してる事件現場の指揮にソッコーで戻らなきゃなんなくなっちまった。会議の途中で本当に申し訳ねぇが、俺は先に出るわ」
「いや、謝らなくて良い。星都の『一番槍』起用や、太郎の追跡システムによる逃走先の特定……今回予定していた情報共有は全部終わってる。だから、今から抜けても問題は無いさ。……早く現地へ飛んで、国際警察の敏腕捜査官としての腕を振るって来い。自分の掲げた正義を全うするんだ」
一切の淀みが無い後押しを受けて、龍海はフッと張り詰めていた顔を和らげると、小さく頭を下げて親友への感謝の意を示した。そして、百七十三センチの長身を翻し、両開きの重厚な防爆扉をドカンという音と共に一息で開け放つと、まるで風のような速さで廊下の向こうへと走り去って行く。
残された面々は、彼女の背負っている苦労を想像して「本当に大変な姉御だな」と、見えなくなったその背中に生暖かい視線を向ける。その時、頼れる司令官が掌を打ち鳴らして乾いた音を響かせ、再び自らの下へ全体の注目を集めた。
「さて、みんな。最後は少しばかりバタバタして締まらなかったが、リヤンゴンによるSD盗難事件に関する緊急円卓会議は、これにて一旦お仕舞いだ。各員、それぞれの守るべき日常、あるいはなさなければならない仕事に戻ってくれ。特に、リモート接続でここと繋がっている面々は、現在進行形で国内外問わず多忙を極めているだろう。時は金なり。無駄にして良い時間は一分一秒たりとも存在しない。そうだろ?」
『ああ、その通りだ。いつもいつも、大変なところで全部任せっぱなしにしてすまねぇな。お言葉に甘えるようで悪ィが、そろそろリモートを切らせて貰うぜ』
リモート参加組を代表して、椋埜が仕立ての良い高級スーツの肩を申し訳無さそうに竦める。しかし、次の瞬間には魂を芯から震わせるような真剣な表情に切り替えると、目の奥に宿る光を大きく輝かせて力強い言葉を付け加えた。
『けどな、星都。
有無を言わせない迫力があり、それでいてどこまでも温かいバリトンボイスで告げられた、最上級のエール。その安心感しか存在しない言葉に、同じくホログラムで映し出されている他のリモート参加者達も揃って深く、深く首肯した。
――ブツッ……!
直後、一斉に多重暗号回線の接続が途切れ、彼らの雄姿を形作っていた淡い光の立体映像が、美しい粒子となって大気の中へ溶けるように消えて行く。
どれほどの月日が流れ、各々が世界的な地位や責任ある立場に就こうとも、友情を何よりも優先し、何時それに殉じても構わないという彼らの意思と覚悟は、二十年前に頌栄が主導して「連合軍」を組織したあの時から一ミリも変わっていなかった。その不変さを改めて言葉で受け、頌栄を始めとする生身で会議室に来ていた面々の胸の奥に、嬉しくて熱い情熱の炎が灯る。
「………さてと。星都、実際に出撃する前に、オレからお前にいくつか伝えておくべき事がある」
リモートの光が消え去り、一瞬の静寂が漂った会議室で、頌栄は改めて次世代の若き勇者に声を掛ける。そして、司令官としての厳しさの中に、どこか温かみも感じられる表情を浮かべ、星都の目を正面から真っ直ぐ射抜いた。
「まず第一に、何が起きようとも最優先すべきはお前自身の『命』と『身の安全』だ。今回の任務は奪還作戦の第一歩だが、その本質は未知の力と技術を持つリヤンゴンの戦力や思考の癖、ヤツ自身の行動目的などを見極めるための『威力偵察』に近い。仮に現地の世界で激しい戦闘状態に陥ったとしても、決して独りで無理はするな。これ以上の作戦続行は危険だと判断したら、その時は迷わずすぐにその場から退避して助けを呼ぶか、あるいは即座にこっちへ帰って来い。SDの現物回収は叶わずとも、ヤツに関する何らかのデータを生きて持ち帰る事ができれば、その時点で戦略的にはオレ達の『勝ち』だ。良いな?」
「了解だ、頌栄さん。肝に銘じておく。けど、もしも向こうの世界で物理的に応援を呼べないような状況や、一歩も退けない修羅場に遭遇した場合はどうすれば良い?」
「その時は、お前自身の意思と直感に任せる。オレ達の事は気にせず、自分のやりたいように、思いっ切りやって来い。……安心しろ。一般的な組織にあるような、事後処理のための『始末書』なんて言うお堅くてクソ面倒くさいものは、ここにゃ最初から存在してない。作戦上でお前がやらかしたすべての失敗は、オレ達が責任を持って全力で尻拭いしてやる。せっかく本物のウルトラマンが活躍する世界に行けるんだ。肩の力を抜いて、気楽な気持ちでやって来ると良い」
頌栄がそう言って、一家の父親らしい穏やかで頼もしい笑みを浮かべてみせると、間髪を入れずに星都も、その端正な顔にまったく同じ信頼に満ちた穏やかな笑みを作って頷いた。
既に成人して二十五歳を迎えている以上、自分が犯した失敗は自分の力で取り返すのが社会人としての基本だ。星都もそのルールは十分に理解している。しかし、だからと言ってすべての事柄を「自己責任だから」という冷たい一言で片付けるつもりは、頌栄達「親世代」には毛頭無かった。
可愛い子ども達の秘めたる強さを誰よりも理解し、そして信じているからこそ、万が一の時には何時でも親を頼れる「逃げ道」を最後の手段として必ず残しておく。決して独りですべてを背負い込む必要は無く、その重荷を一緒に背負って、どんな理不尽にも一緒に立ち向かってくれる最強の仲間達が傍に居るのだという事実を、頌栄は言葉と態度の両方で次世代のリーダーに伝えているのだった。
と、その時。会議室内に設置された高性能スピーカーから場違いなまでのハイトーンが響く。
『はいはーい! 感動のセッション真っ最中なところ、すみませぇん! 星都くんが現在お使いのスマートフォンを始めとする各種通信端末ですが、先程ボクの「ワールド・エンド・ハウンド」と完全
「おいおい、太郎さん……。それってつまり、裏を返せばそのアップデートが完了するまでの間は、向こうに行っても『絶対に増援は来ないワンオペ状態になる』って言ってるのと同じだろ? そんな過酷な状況が待ってる事を突き付けておいて、よくもまぁ『安心しろ』なんて不謹慎な台詞が言えたもんだよ」
どうやらリモート接続は切ったが、室内にある様々な機材を通して会話を盗み聞きしていたらしい。太郎のしっちゃかめっちゃかで、人としての倫理観がネジ飛んだ不適切極まりない発言には思わず頭を抱えたものの、星都の心には確かな安心感が宿っていた。
今はまだ増援を望めない状況だとしても、次元の壁を越えた遥か彼方の並行世界で仲間達と確実に繋がっていられる。互いの声を、互いに届け合える手段がある。その事実だけで、これ以上無い千人力の心強さであった。
猫原太郎という、IT技術においてこの地球で最も頼りになる天才の知略をいつでもバックアップとして得られる上、親や幼馴染の魂の応援を直に背中に受けながら戦えるのだ。星都にとって、これ以上に手厚くて贅沢なサポートは、世界中のどこを探しても他に存在し得なかった。
星都は、目いっぱいの感謝の気持ちをその視線に込めて頌栄と、そして太郎の「目」となっているであろう会議室の機材へ送る。そして、民間防衛組織「連合軍」二世軍団の若きリーダーは、その立派な体躯を翻すと、これから始まる宇宙海賊との壮絶な戦いへ向かって、一片の躊躇も無い颯爽とした足取りで扉の向こうへ歩み出て行ったのだった。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか。
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<龍海さん、ドンマイ……。
(=◎ω◎=)<有給を捥ぎ取ってまで会議に来てたのに
(=◎ω◎=)<結局は現場に逆戻りする羽目になりました。
(=◎ω◎=)<しかも電話を掛けて来た相手は「現場の責任者」なのに
(=◎ω◎=)<当人は責任を取りたがらないというね。
(=◎ω◎=)<頼りにならない無能な味方ほど怖いものはありませんな……。
(=◎ω◎=)<次回は遂に出撃です!
(=◎ω◎=)<乞うご期待!
(=◎ω◎=)ノシ