ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<今回からpixiv版の第四話
(=◎ω◎=)<「ウルトラマンメビウス」の世界を舞台にした戦いが幕を開けます。
(=◎ω◎=)<まずはリヤンゴンのターンから。
(=◎ω◎=)<コミカルなアホのくせして結構な悪党なので
(=◎ω◎=)<読む人にとってはちょっと胸糞悪く感じるかも……。
(=◎ω◎=)<それでも宜しければどうぞ。
(=◎ω◎=)<ゆっくりして行ってね!
第十八話 実証実験
200X年、関東郊外。
本物のウルトラマンが現役で様々な怪獣災害の脅威と戦い続けている並行世界の一つ。
夜の帳が列島全体を真の暗闇で包み込む、深夜二時過ぎの事であった。
国際宇宙防衛機構「
草木も眠る丑三つ時。巨大な要塞の機能を維持するため、当直勤務に従事する最低限の職員達が各部署に詰め、最低限の明かりだけが灯った薄暗い通路を警備員が巡回する静寂の時間帯。
誰もいるはずのないサーバールームの片隅に、怪しく蠢く一つの影があった。
くすんだ青色のボディスーツに、無数の禍々しい渦巻き模様が表面に刻まれた暗い金色の外骨格を纏った、一見すると奇怪なコスプレをした人間のようにも思える奇妙なシルエット。だが、闇の中で青白く輝く不気味な双眸と、全身から醸し出される異様な気配が、その影が地球人では無い事を如実に物語っていた。
この影こそ、別次元の地球で頌栄達「連合軍」が管理する難攻不落の聖域「アイテム保管庫」に不法侵入し、三十組にも及ぶSDとギンガスパークを盗み出した張本人――「海賊宇宙人 バロッサ星人」のリヤンゴンである。
「ヒヒヒッ……! 天下のGUYS様が誇るバーチャルセキュリティもこの程度かァ? 大した事ねぇな!」
静まり返った室内でオフィスチェアに太々しく腰掛け、外骨格に覆われた細長い指先で軽快にコンソールのキーボードを叩きながら、リヤンゴンは小さく押し殺した耳障りな声で愉快そうに独り言を零した。
既に基地内全域の監視カメラシステムは彼の駆使するハッキング技術によって完全に掌握されており、モニターの向こうに見える警備室では、何事も無い平和な深夜の映像がダミーとしてループ再生されている。フェニックス・ネストの各サーバーを守る高度なセキュリティシステムも、リヤンゴンが不正アクセスしてからわずか数分で完全に無効化されて沈黙。更にその最深部で厳重に秘匿・管理された状態で接続されていた、アメリカ・ニューヨークにあるGUYS総本部が直轄する極秘のブラックボックスまでもが、静かなる侵入者の手によって隅々まで抉じ開けられ、丸裸にされていた。
六十インチの大型ディスプレイの光を浴びて、リヤンゴンの青白い目が更にギラギラとした強欲の色に歪んでいく。
画面のウィンドウに次々とスクロール表示されているのは、地球防衛チーム「GUYS」が保有・秘匿する超過額「メテオール」の詳細なデータや、ミクラスやウインダムを始めとする「マケット怪獣」の分子構成データ。更には、数週間前に突如として地球に飛来した「無双鉄神 インペライザー」との凄まじい死闘を経て、GUYSの仲間達に自らの正体を明かしたばかりの宇宙警備隊の若き勇士、ウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライに関する各種データに至るまで。
どれもこれも、現代の地球人類が持つ科学技術の水準はおろか、宇宙のパワーバランスにすら影響を及ぼしかねない超一級の機密情報ばかりであった。
国家の威信を懸けて強固に組み上げられていたはずの、ありとあらゆるファイアーウォールや防犯プログラムがリヤンゴンの手によってすべからく破られ、今はただ、内部に溜め込まれた「アーカイブ・ドキュメント」を始めとするお宝の山を、この欲深い宇宙海賊へ無条件に献上するのみとなっていた。
「まぁ~、あの猫原とかいうプログラマーが組み上げた、やけにクソ固くて厄介な多重セキュリティプログラムをぜぇ~んぶ騙くらかして、三十個ものお宝を無傷で捥ぎ取って来た俺様の神懸かり的なクラッキングにかかりゃ、他の防衛チームのセキュリティを破るなんて赤子の手を捻るよりも簡単だぜ! あっちの世界みたいに解除まで異様に時間が掛かるウザい生体セーフティだの、予定より遥かに早く復旧して邪魔しようとしてくる自動修復プログラムだのも無さそうだしさぁ! 全部丸ごとありがたァ~く頂いちまうとすっか!」
そう言ってリヤンゴンは、スーツの懐から掌にすっぽりと収まる程度の、鈍い銀色に光る箱型の特殊な宇宙デバイスを取り出す。かちり、という音と共にスイッチを入れると、上部側面にあるスリットレンズをコンソールのディスプレイにそっと向けた。
ジジ、ジジジジ……ッ!
スリットレンズから放たれた不可視のデータスキャンパルスがコンソール内部の精密機械に干渉し、ウインドウがほんの一瞬だけブレる。現象としてはそれだけだったが、宇宙の闇マーケットで手に入れたそのデバイス内部のストレージには、リヤンゴンがハッキングして引き摺り出した様々な重要情報が一〇〇%完全な形で複製され、記録されていく。
デバイスの表面にあるインジケーターが赤色から緑色に変わったのを確認して満足そうに一つ頷くと、リヤンゴンはデバイスのスイッチを切り、まるで最高級の宝石でも手に入れたかのように愛おしげな手付きで懐の奥へと仕舞い込んだ。
「さァ~て、欲しいデータは無事に手に入ったし、あ・と・はぁ~……お楽しみの『実証実験』と行きますかぁ! データの回収だけで満足して、いざ本番の実践となった時に上手く行かなかったら、せっかくの苦労が全部パァになっちまうからな。そんなのは全然スマートじゃねぇ。本番でキレーにぶちかましてこその、宇宙一スマートな怪盗ってなモンだ! 『本番で完璧にやるための努力は絶対に怠るな』ってカーチャンも言ってたし、一丁派手にやってやるぜ!」
誰にも気付かれていないのを良い事に、暗いサーバールームの中でリヤンゴンは意気揚々と独り言を言いまくる。そして、下品な鼻歌を上機嫌に唄いながら、宇宙の海賊はフェニックス・ネストの深い闇の向こうへと消えて行った。
それから一時間後。
東京都心にほど近い地域に位置する、首都圏でも有数の賑わいを見せる繁華街の一角に、コミカルでありながら底知れない不気味さも漂わせる宇宙海賊の姿があった。
「ん~、流石は地球の繁華街。こんなに遅い時間だってぇのに、頭の軽そ~な連中があっちにもこっちにも
外骨格を纏った細長い指先で人間の顎に当たる部分を摩りながら、愉し気にそう口にするリヤンゴン。その視線の先には、陽気に互いの肩を組んでフラフラと千鳥足で歩いている中年の酔っ払い達や、数人集まって路上で車座になりながら大声で笑っている二十歳前後の若者達、あるいは近くのホストクラブに勤めているのだろう、派手なスーツを着て道行く女性に声を掛けている若い呼び込みと言った人々の姿があった。
深夜二時をとうに過ぎていても、夜の繁華街はまだまだ賑々しい。不規則に明滅する色とりどりの派手なネオンサインがアスファルトの路面を怪しく染め上げるその様子は、文字通りの「不夜城」そのものである。
リヤンゴンはその光と影の隙間に身を潜め、自身の姿を周囲の光学的・電磁的センサーから完全に欺瞞・隠蔽する効果がある特殊な宇宙ガジェットを起動させた上で、冷徹な青白い目を輝かせて物陰からこっそり街の人々を観察していた。
彼の言う「実証実験」とは、生身の地球人の肉体と精神を用いた悍ましいものに他ならない。勿論、口では「協力者」などと殊勝な事を言っているが、その中身は自らの意思を完全に奪われた「
そんなどす黒い悪意の犠牲者となる哀れな器を求めて、しばらく道を行き交う人々を品定めするように眺めていたリヤンゴンは、やがて、視線の焦点を一人の人間に定めた。
二十代前半と思しき年齢の青年である。
髪を茶色に近い金色に染め上げ、上着の襟をだらしなく着崩して、周囲を威嚇するように肩で風を切りながら歩くその姿は、夜の街に群がる粋がったチンピラの典型的な例そのものだった。
(あいつにするか)
獲物を見つけた肉食獣のように目を細め、リヤンゴンは「キヒヒッ」と喉の奥で小さく笑うと、青年の背後へと音も無く回り込み、静かに尾行を開始した。
ネオンの光が届かない、ビルとビルの間の狭く薄暗い路地裏へ青年がふらりと足を踏み入れた、まさにその瞬間。宇宙海賊が行動を起こす。
「ちょいとちょいと、そこのあんちゃん! ちょお~っとこっち向いてくんねぇ?」
「あぁ? 誰だてめ―――ぐぇっ、がはっ……!?」
不機嫌そうにドスが利いた声を上げて振り向きかけた青年の喉元を、リヤンゴンの大きな手が素早く鷲掴みにし、そのまま信じられない力でビルの冷たいコンクリート壁に縫い付けた。
自身の二メートル近い体躯で完全に退路を塞ぎ、どうにかして拘束から逃れようと狂ったように手足をバタつかせて必死に藻掻く哀れな青年を嘲笑うように、宇宙海賊は青白く輝く双眸を悪意に歪める。
「そう暴れんなよ。俺様は別に、お前を獲って食おうとか変に怪我させようとか、そんな酷ぇ事は考えちゃいねぇんだって。ただほんのちょっとだけ、俺様の実験に付き合って欲しいだけさァ」
「がっ…………かかっ……………! ぐ、ぐるじ…………ッ! お、お前……………何、だ…………!?」
「あ~あ、力じゃ逆立ちしたってこの俺様には敵わないって、今の自分の姿を見りゃす~ぐ分かるはずなのにさぁ。地球人ってのはどうしてこうも、往生際悪く無駄に足掻きまくるのが好きなのかねぇ……。効率重視のスマートな俺様には一ミリも理解できねーわ。ま、どーでも良いけど。どうせ最初からこうするつもりだったし、な!」
冷酷にそう言い放ち、リヤンゴンは尚も藻掻き続ける青年の顔面に向かって、空いている方の掌を真っ直ぐに翳した。
外骨格に描かれた渦巻き模様を青年の瞳が視認した瞬間、模様から妖しい極彩色の光が発せられ、青年の顔面を瞬く間に覆い尽くした。
「――あ、う………」
直前まで一心不乱に暴れていた青年の体が、まるで停止ボタンを押されたかの如く一瞬でピタリと止まる。力の抜けた手足がだらんと垂れ下がり、その瞳からは一切のハイライトが消え失せて、ガラス玉か何かのようにただ虚空を見つめるだけとなった。
バロッサ星人が持つ種族固有の恐るべき特殊能力、掌に描かれた渦巻き模様を相手に視認させる事で強制的に催眠状態へと陥らせ、命令に忠実な操り人形へと変貌させる超能力が発動した瞬間だ。
効力が完全に発揮された事を確認して満足そうに頷き、リヤンゴンは青年の首を締め上げていた手を放す。青年は地面に崩れ落ちる事無く、ただ不気味に直立不動の姿勢を保ち続けていた。
更にリヤンゴンは、懐から縦横三センチほどのごく小さな金属箱を取り出し、青年の生気が無い右手に握らせる。くすんだ銀色に輝くそれは、同時に二種類までしか物体を収納できないという制限がある代わりに、どれほど巨大な重量や体積を持つ物体であっても関係なく仕舞い込める性能を持つ、宇宙の裏ルートから仕入れた特殊な「亜空間収納箱」だ。
その小さな箱の中には、リヤンゴンが例のハンディデバイスを使って自壊プログラムを完全無効化・定着させ、更にこの青年のバイオメトリクスを正規の登録情報として誤認させた
「さぁ~て、お前にやって貰いたい事は一つだけだ。なぁに、お前自身が頭を悩ませるような難しい事じゃねぇよ。明日の昼間、この街のド真ん中でこいつを使って派手に暴れろ。そんで、この世界の地球を守ってる目障りなウルトラマンを誘き出すんだ。アイテムの使い方はお前の頭ン中に直接情報を流し込んでおいた。指定の時刻になったら自動的に体が動くようにもしてあるからさ、あとはただその命令に従ってりゃあ良い。変身したあとは怪獣の好きにさせりゃ良いから安心しな」
「………分かりました」
精神を完全に掌握された青年が、一切の感情が抜け落ちた抑揚の無い平坦な声で首肯し、手渡された小さな銀色の箱を上着の内ポケットに仕舞い込んだ。
本来、SDもギンガスパークも、地球人の衣服に隠して持ち歩くには大き過ぎて、あまりにも目立ってしまう。リヤンゴンも最初はそのまま直接渡すつもりだったのだが、これだけの超常兵器を剝き出しのままの状態で曝しておいて、万が一にもGUYSのレーダー網に引っ掛かってしまってはスマートな計画が台無しだ。
そこで用意したのが、この縦横三センチの小型亜空間収納箱である。ここまで小さいサイズであれば、上着やズボンのポケットに入っていても外見からは特に不自然さは無く、アイテムが発する固有のエネルギー反応もほぼ一〇〇%に近いレベルで遮断できる。外装には彼女か誰かに向けたプレゼントケースに見えるように巧妙な偽装を施してあるため、もしもこの世界の警察やGUYSの隊員から職務質問を受けるようなイレギュラーが発生したとしても、容易に誤魔化せるようになっていた。
すべては、隠しやすさと持ち運びやすさを両立し、計画を確実に、かつスマートに達成させるため。この世界に辿り着いてすぐの時に、リヤンゴンが白い布袋に偽装した
「キヒヒッ、ひゃーはっはっはっは! 完璧! 完璧! 俺様の計画はどこまでも完璧だぜぇええ!!」
歯車がかっちりと噛み合い、物事がすべて自分の思い描いた通りに推移している事を実感したリヤンゴンの、耳障りで下品な高笑いが、夜の繁華街の冷たい闇の中でどこまでも醜く響き渡った。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか。
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<さて読者の皆様、ウチの「バロッサ星人リヤンゴン」をご覧になってどう思いましたでしょうか?
(=◎ω◎=)<前書きにも書きました通り、結構な悪党に仕上がっております。
(=◎ω◎=)<バロッサ星人も色々と特殊能力を持っていますので、
(=◎ω◎=)<たぶんやろうと思ったらこういう事も当たり前のようにできると思い、
(=◎ω◎=)<このようなキャラとなりました。
(=〇ω〇=)<絶対に相手したくねぇ……。
(=◎ω◎=)<果たしてこの悪党を無事にとっ捕まえる事はできるのか?
(=◎ω◎=)<乞うご期待です!
(=◎ω◎=)ノシ