ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<今回は説明会
(=◎ω◎=)<星都からGUYSへ、色々と情報提供を行います
(=◎ω◎=)<その途中で色々とエピソードについて話しますんで
(=◎ω◎=)<「ここ間違ってるよ!」という箇所がありましたら
(=◎ω◎=)<感想にて指摘して頂ければと思います
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
フェニックス・ネストへと帰還したミライ達は、手早く解析機材を元の格納庫へと戻してから、再び基地の頭脳である作戦司令室に集合した。
屋外訓練場で行われたウルトライブの実演と体験会も確かに刺激的な出来事だったが、これから始まる星都の自己紹介を含めた本格的な状況説明もまた、それと同じかあるいはそれ以上に重要な意味を持っている。
目の前にいるこの青年は、一体何者なのか。
あの奇々怪々な威容を誇る巨大合体怪獣は何なのか。
そして、彼が持つギンガスパークとSDはどうやって手に入れたのか。訊きたい事は文字通り山積みであった。
「改めまして、CREW GUYS JAPANの皆さん、初めまして。私の名は星野谷星都と申します。以後、お見知り置きを」
リュウ達を始めとする全員が、先ほどの一連のデモンストレーションを経て警戒心が消えた穏やかで好意的な視線を向けてくる中、星都はスッと背筋を伸ばし、大人の風格を感じさせる所作で深々とお辞儀をした。
まずは「星野谷星都という男は一体何者なのか」という疑問について、自らの素性から順を追って説明していく事にしたのだ。
「私の出身は、皆さんと同じ地球です。……ですが、皆さんが今こうして暮らしている、この宇宙にあるこの地球ではありません。物理的な位置が異なるという意味ではなく、こことは細部が異なる歴史や世界観、価値観を持つ、別の宇宙にある別の地球で生まれました」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ、星都くん。今キミは、『別の宇宙にある地球』と言ったのかね? それはつまり、我々が今生きているこの宇宙の他にも、『宇宙』というものがいくつも存在する、 『宇宙は無数に存在する』と、そう言っているように聞こえるのだが……?」
「ええ、その認識で間違いありませんよ、トリヤマ補佐官」
トリヤマが丸い目をさらに丸くして身を乗り出し、困惑を隠せない様子で問いかけてきた。
その動揺を、星都は穏やかな微笑みを崩さず、優しく受け止めるように頷く。
「天文学や宇宙物理学の世界において、『
トリヤマからの質問に答えた流れのまま、星都は敢えて、この場で唯一の「本物の宇宙人」であるミライへと話を振った。
彼は一瞬だけ驚いたように肩を揺らしたものの、すぐに神妙な面持ちを浮かべ、深く重々しく首肯する。「光の国」で研究されている宇宙科学の理論でも、多次元宇宙の存在は以前から示唆されていた。ただ、それが本当に実在し、自分の目の前にそこからやって来た人間が立っているという事実に、純粋な驚きを隠せない様子である。
そんなミライの反応を確認し、星都は更に言葉を続けた。
「先ほども申し上げた通り、マルチバースの概念においては、誕生の経緯や歴史の分岐、人々の価値観、果ては根本的な物理法則に至るまで、何かが異なる独立した宇宙が無数に存在すると考えられています。そして、私が住んでいる地球では、怪獣災害やウルトラマンの活躍といったものは実在する脅威や歴史ではなく、テレビやビデオ、DVD、雑誌といった記録媒体の中にだけ存在する、いわば『
そこで一度言葉を切り、司令室にいる面々の顔をゆっくりと見渡す。
「ここにいる皆さんがこれまで命を懸けて戦ってきた、防衛隊GUYSとしての活躍も、私の地球では『ウルトラマンメビウス』という名の映像記録物語、つまりはテレビ番組の一つとして広く人々から人気を博していて、その戦いの一部始終を誰もがいつでも鑑賞できるようになっています。私がミライさんとウルトラマンメビウスが同一人物だと最初から知っていたのも、それが理由です」
「なに……!? おい、本当なのか、ミライ……!?」
目の前にいる謎の青年が、出会う前からミライの正体を完全に見抜いていたという衝撃の事実に、司令室内が一気に騒めき立った。
その場を代表するようにリュウが驚愕の声を上げると、ミライは再度ゆっくりと首肯し、真剣な声色で重々しく口を開いた。
「……はい。実は、星都さんをフェニックス・ネストに案内する前、戦いが終わった街で初めて会ったその瞬間から、彼は既に僕の事を知っていました。何か特別な理由がありそうな口ぶりでしたけど、まさか、別の宇宙で僕達の戦いが『物語』として存在しているなんて……」
ミライの表情に浮かぶ明らかな戸惑いと、それゆえの深い納得の色。それを間近で見た他のメンバーも、話の規模があまりにも常識外れだからこそ、ミライのリアクションは然もありなんと思った。
何しろ、自分達がこれまで血と汗を流して乗り越えてきた死闘の数々が、別の世界ではいつでも見返せる「テレビの映像作品」として存在しているというのだ。常人の想像のキャパシティを遥かに超えている。
突然、そんな途方もない事を告げられては脳の処理が追いつかないという戸惑いの気持ちと、その物語をあらかじめ視聴していたからこそ、星都が初対面でミライの正体を正確に言い当てられたのだと納得する気持ち。まったく異なる二つの感情が同時に胸の中に沸き起こっても、何らおかしい事は無いだろう。
ちなみにこの時、隊長席で腕を組んで一緒に話を聞いていたサコミズも、心の中で(なるほど。だからあの帰り道の時、私の『本当の正体』までも正確に言い当てる事ができたのか……)と、先ほどの訓練場での出来事を思い出して、一人で深く静かに納得していたのだった。
「勿論、私が知っているのはミライさんの事だけではありませんよ。例えば……」
星都はフッと唇の端を上げると、自らの視線を滑らかに移動させてミライの隣に立っているリュウにピタリと合わせた。
「リュウさん。初めてメビウスが地球に現れて、ディノゾールを倒したあの最初の日。貴方が戦闘直後のメビウスに向かって吼えたあの言葉は、私達にとってもかなり衝撃的でした。街の惨状を前にして『何も守れてねぇじゃねぇか!』と、ウルトラマン相手に思いの丈を全力でぶちまけられる地球人なんて、世界広しと言えど滅多にいるものじゃありませんからね。貴方のあの熱さと、色んなものを守れなかった悔しさこそが、今のGUYSの原点だと私は思っています」
「っ…………!!!?」
「なんでお前がその事を知ってんだよ!?」と言いたげに、リュウが限界まで目を丸くして硬直した。そんな彼に柔らかく微笑んでから、更にその隣に立つマリナへと向き直る。
「マリナさん。貴女は生まれつき優れた聴覚と絶対音感を持つが故に、モトクロスレースでもマシンから聞こえる些細な異音から事故の恐怖を感じてしまい、大事な場面でなかなか攻め切れずにいた。……けれど、八幡ヶ岳で遭遇したムカデンダーを相手に自ら囮役を買って出たあの時。貴女の心の中にずっと居座り続けていた『無意識のトラウマ』を、ご自身の強い意志の力で完璧に乗り越えられたあの瞬間は、観ているこちらの胸まで熱くなりましたよ」
「……あ、ありがとう。そこまで、知っててくれてたのね……」
かつて所属していたレーシングチームの監督であるカドクラと、八幡ヶ岳で偶然出会った知り合いの登山家であるリンコ以外には、誰にも話していないはずの「精神的な克服の歴史」をピンポイントで言い当てられ、マリナは激しい困惑に包まれながらもどうにか礼を言った。
「ジョージさんのエピソードで特に印象深いのは、やはりディガルーグとの戦いですね。人間には不可能と言われるほどの圧倒的な空間把握能力が必要な『メテオールショット』の特殊機能『アメイジングトリプル』を、まるで何でもないかのように涼しい顔で使いこなして、三体に分裂していたディガルーグを同時に狙撃してみせたあの瞬間は、本当に痺れました。流石はサッカーのスペインリーグで世界を相手に活躍した、日本が誇る天才ストライカーですよ」
「
散々テッペイから「理論上、人間には不可能です」と言われていたあの超高難易度機能を、本番の一発勝負で完璧に使いこなしてみせた時の、仲間達の驚き顔を思い出して得意気に鼻を鳴らす。
普段はニヒルでクールな二枚目を気取っているジョージだが、こうしてストレートに絶賛されると決して悪い気はしない
「テッペイさんの怪獣にまつわる知識の底知れなさには、私も映像を観るたびに毎回驚かされていましたよ。GUYSの『アーカイブ・ドキュメント』も真っ青の、まさしく『歩く怪獣データベース』です。その圧倒的な博識さがあればこそ、バードンやボガールモンス、インセクタスとの戦いの時のように、戦いの最前線で的確に怪獣の弱点を見抜いたり、最適な戦術プランを弾き出したりすることが出来た。テッペイさんの頭脳は、GUYSにとって宝です。私だけでなく、私の仲間達も、貴方の
「あ、あ、ありがとうございます……っ! 星都さん……っ!!」
自分の人生において最も愛し、かつ最も情熱を注いできた「怪獣の知識」という分野において、これ以上ないほどの称賛を贈られ、テッペイは感激のあまり目に涙を滲ませながら顔を綻ばせた。
今最も自分の知的好奇心を刺激している相手から認められたという事実は、若き医大生にとって何物にも代えがたい最高の幸福に違いない。
「コノミさんは、ここにいるメンバーの中で誰よりも穏やかで、そして誰よりも優しい心を持っている。そんな温かい貴女だからこそ、ミクラスやリムエレキングも貴女には一番に懐いたんでしょう。それに、貴女には優しさだけでなく、いざという時の芯の強さもある。ケルビムとの戦いの時、恐怖に震える足を叱咤してミクラスと一緒に果敢に立ち向かった貴女の姿は、本当に格好良かったですよ」
「えへへ……なんだか、照れちゃうなぁ……」
星都の飾らない、しかし確かなリスペクトが乗った言葉でそう言われたコノミは、気恥ずかしさで真っ赤なリンゴのようになった頬を人差し指で小さく掻いた。
ストレートに褒められた経験自体が少ない上に、目の前で自分を全肯定してくれているのは、顔も心もイケメンな星都である。コノミでなくても、女性として猛烈な気恥ずかしさを覚えて当然のシチュエーションであった。
「トリヤマ補佐官は……大変申し訳ないのですが、ドジを踏んでやらかしてしまった印象の方が圧倒的に強いです」
「な、何ィー!? やらかしだとォ!? この私が、いつそんな、防衛隊の幹部として不名誉なやらかしをしたと言うんだね!?」
自分も素晴らしいエピソードを語られるのだろうと思っていたところへ予想外の言葉を掛けられ、トリヤマは盛大にズッコケる。
しかし、丸い目をこれでもかと見開いて星都に詰め寄るトリヤマの背後で、その話を聞いていたリュウ達の反応は「あー……」、「確かに……」という、深い納得から来る苦笑い一色だった。
「だって補佐官。以前、マスコミの記者会見の席で調子に乗ってうっかり『メテオール』の機密部分を暴露しちゃったせいで、秘書のマルさん共々ミサキ総監代行から詰められてましたよね? 他にも、危険過ぎるからという理由で廃棄予定だったメテオールの『グロテスセル』が詰まったカプセルを、護送中に誤って一つ紛失した結果、コダイゴンジアザーが出現する直接の原因を作ったり、テッペイさんがGUYSに入隊した件をご両親にずっと内緒にしていたのを知りながら、メスのインセクタスを倒した直後の興奮で『今回の作戦の最大の功労者です!』と、無理やりテッペイさんを報道カメラの前に引っ張り出した所為で、お母様に一発で入隊がバレて大騒ぎになったり……数え上げればキリがないほど沢山やらかしてますよね。補佐官自身、多少なりとも自覚がおありだと思いますが?」
「う、ぐ……! そ、それは……その……っ!」
今までの補佐官としてのキャリアにおける「黒歴史」の数々を、まるで直接現場で見ていたかのように具体的な内容で次々とあげつらわれ、さしものトリヤマも口元を引き攣らせて押し黙った。
どれも今すぐ記憶の彼方に封印してしまいたい恥ずかしい所業であり、できればこの場では黙っていて貰いたかったのだが、今となっては後の祭りである。
哀れなほどにがっくりと肩を落とすトリヤマの姿を見て、しかし星都は、意地悪な色など微塵も無い、どこまでも穏やかで優しい微笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「そう気を落とさないでください。確かに補佐官は色々とやらかしていますが、補佐官が『やる時はやる、腹の据わった凄い人だ』という事も、私はちゃんと知っています。以前、オオシマ彗星の巨大な破片が、この地球に直撃するという未曾有の危機に見舞われた事があったでしょう? あの時、補佐官が自らの責任で準備して下さった防衛兵器『シルバーシャークG』がなければ、すべての破片を破壊して無事に生還する事は不可能でした。あの時、メビウス――ミライさんはザムシャーの相手に掛かり切りで動けませんでしたし、あの一件は間違いなく『ウルトラマンの力に頼る事無く人類自らの手で地球を守り抜いた』という、防衛隊の歴史における数少ない偉大な事例の一つです。それに貴方は、メテオールの発動承認が可能な数少ない重要人物であり、今なお現役の剣道有段者でもある。だからこそ、いざという時には誰よりも毅然とした態度で指揮を執る事ができるのだと思います。貴方がこの新生CREW GUYS JAPANに無くてはならない偉大な人材だという事は、ここにいる全員が深く理解していますよ。総監もきっと、そう思っておられるはずです」
「そ、そうか……! いや~、はっはっは! そうかそうか! 私が無くてはならない偉大な人材か! 星都くん、そういう耳に心地良い評価はもっと早く言ってくれたまえよ! うむ、キミは私の本質というものを、実に良く分かっておるではないかね!」
これ以上ないほど真心に満ちた励ましの言葉を受け、たった今まで深海底よりも深く沈んでいたトリヤマの機嫌が、面白いように一瞬で大復活した。こういう調子の良い極端な面もまた、彼がドジで嫌味も言うけれど決して憎まれない「愛されキャラ」としての地位を確立している要因の一つなのだ。
それに、星都が口にしたオオシマ彗星の一件は、誇張でも何でもない列記とした事実である。たまにはこうして、気分良く高笑いさせてやってもバチは当たらないだろう。
「マルさんは、そんな個性豊かな補佐官を影から支え続ける、本当に優秀で健気な補佐官秘書です。マケット怪獣の実戦投入を最初に発案したりと、GUYSの活躍にも大いに貢献なさっている。それに、ハーメルンプロジェクトの実験視察で、ミサキ総監代行と一緒に対怪獣研究所へ赴いた時なんて、凶暴なアーストロンの襲撃を受けて研究棟が破壊される中、ご自分の身を挺して天井から降って来る巨大な瓦礫からミサキ総監代行を庇っていましたよね。あの時に見せたマルさんの火事場の馬鹿力と男気には、私達もビックリして見直しました。一言多くてトリヤマ補佐官に怒られる事もままありますが、補佐官の突飛な言動に誰よりも早く的確なフォローを入れているのもマルさんです。補佐官が『補佐官』の地位に居られる理由の大きな一端は、間違いなくマルさんの優秀さにもあると思いますよ」
「あはは、いやだなぁ星都さん、お上手なんですから〜! そんな風に言われると、何だか照れちゃうじゃないですかぁ」
こちらも人生の中で正面からストレートに褒められた経験が少ないのか、マルは目尻に薄らと涙を滲ませて照れ笑いを浮かべながら、後頭部を右手でポリポリと掻くような仕草をした。
見様によっては、上司の機嫌を取って甘い汁を吸うだけの「腰巾着」や「金魚のフン」と揶揄されかねない立ち位置ではあるが、星都の目には彼の持つ健気さやトリヤマへの忠実さが、何よりも好ましく、輝かしく映っていた。
どれだけトリヤマのドジに巻き込まれて痛い目に遭おうと、フォローするつもりがトリヤマに理不尽に怒られる羽目になろうと、彼を心から慕って補佐官秘書の職務を全うしようとするその姿勢が揺らぐ事は無い。
以前、一度だけ警察の職務質問を受けた際にはトリヤマを見捨てて逃げ出したというコミカルな前科はあるものの、本当にトリヤマの身に危険が及ぶような時には、間違いなく自らの命を投げ打ってでも彼を庇おうとするだろう。マル補佐官秘書とはそういう人物であるという、確かな信頼があった。
トリヤマも、何のかんのと言いつつマルをいつも傍に置いているあたり、彼が自分にとって無くてはならない存在だと思っているのかも知れない。
あとは、トリヤマの太鼓持ちに回る頻度をもう少しだけ減らして、言葉を選んでフォローできるようになれれば、さらに素晴らしい超一流の秘書になれるはずだ。
「ミサキ総監代行。リュウさん達実動部隊の面々がいつも全力で戦う事ができているのは、貴女の持つ冷静沈着さや的確な戦況判断力によるバックアップがあればこそだと思います。ヤプールが超獣を地球へ送り込む時に使う異次元空間へのゲートを塞ぐため、重傷を負って倒れてしまったサコミズ隊長に代わって基地の全指揮を執り、現場のみんなを心から信頼して、自らの役目を全力で最後まで全うした……あの時の超獣ベロクロンとの戦いは、まさに『新生GUYSの総力戦』を体現したものでしたよ。貴女のような最高に優秀な部下を持てて、GUYS日本支部の総監も、きっと幸せに思っている事でしょうね」
「ふふっ……ありがとうございます。そこまで評価していただけてるなんて思いませんでした。本当にお上手ですね」
ミサキは口元に手を当てて「そんな大層な人間ではないですよ」と謙遜しつつも、その端正で知的な美貌によく似合う、大人の柔らかな微笑みを浮かべて礼を言った。
今、星都が立っている「メビウス」の第三十一話終了時点の時間軸において、未だ本名すらも明かされていない謎の存在である「総監」との、唯一の連絡役であり代弁者として動いている事が多い彼女だが、有事の際には優れた司令塔としてその手腕を遺憾なく揮う、文字通りの「縁の下の力持ち」だ。
公式の設定資料によれば、学生時代に上層部からスカウトされる形でGUYSに籍を置き、異例の若さで日本支部のナンバーツーである 「総監代行」の地位にまで上り詰めたほどの才女である、とされている。
数少ないメテオールの発動権限を持つ人物でもあり、先ほど星都も口にしたベロクロンとの決戦の際には、異次元ゲートを破壊して半永久的に超獣が現れないようにする新型メテオール「ディメンショナル・ディゾルバー」の使用について、他ならないミサキが解禁の決断を下していた。
ちなみに、日本支部の誰も知らない謎に包まれた総監の素顔を知る、唯一と言っても過言では無い貴重な人物なのだが、日頃の職務においてトリヤマからは少なからず苦手意識を持たれている。理由は、彼がドジを踏むたびにミサキから懇々と説教されまくっているからなので、完全にトリヤマの自業自得ではあるのだが。
そんな彼女の様子から少しだけ視線を外し、星都は隊長席に深く座るサコミズの顔を、バレないようにちらりと盗み見た。
彼の表情は、いつもの飄々とした穏やかな微笑みに満ちているが、その瞳の奥には、どこか我が子を褒められた父親のような、誇らし気で温かい雰囲気が混ざっている気がした。
自分と共に歩んできた可愛い部下達の活躍をしっかりと認められ、心から称賛された事が、まるで自分の事のように嬉しくて堪らないといった様子だ。ミライ達は本当に、世界で一番素晴らしい隊長を持ったものである。
「なぁ、星都。お前が俺達の過去の戦いや個人の事情を、すげぇよく知ってるってのは十分に分かった。けどよ、じゃあ隊長については、何か語れるような印象深いエピソードはねぇのか? 隊長だって、いつも俺達を引っ張ってくれてんだ。格好良くて印象深い活躍の一つや二つくらいあるだろ?」
「それがですね……サコミズ隊長は、日頃の言動や佇まいがいつも印象深すぎて、逆に『これは』というエピソードを選ぶ事ができないんですよ。常に飄々としていて現場の判断も的確。何より、隊員達に無理やり命令を下すのではなく、皆さんを自発的に行動させるための組織的なマネジメント能力がずば抜けています。何も言葉を発していなくても、ただその席にいるだけで存在感は抜群。正直言って、歴代防衛隊の隊長達を見渡しても、これほど器が大きくてしなやかに動ける人物はなかなかいません。だからこそ、具体的なエピソードを絞って挙げる事ができないという訳です」
サコミズを尊敬しているからこそ出たリュウの質問に対し、星都は肩を竦めて申し訳なさそうにそう返事をした。
勿論、彼の口から紡がれた言葉には、何一つとして嘘偽りは無い。だが、星都がお茶を濁すような発言をした実情には、もう少しだけ複雑でメタ的な理由が絡んでいた。
サコミズがかつて、「科学特捜隊」の優秀なメンバーとして地球外勤務に従事し、あのムラマツキャップと同じく科特隊の班の一つを率いていたキャップであった事。
当時の任務の過程で、光速に近い速度で宇宙空間を移動する「亜光速航行」を何度も繰り返した結果、時間の進みが地球とズレる『ウラシマ効果』に見舞われて実年齢と外見の年齢が大きく乖離してしまっている事。
彼こそが現在のGUYS日本支部のトップであり、正体不明とも言われる「総監」その人である事。
物語の最終盤、巨大ヤプールとの決戦に端を発する日本全土へ向けた「ヒビノ・ミライこそがウルトラマンメビウスだ」という大暴露を経て、エンペラ星人に対する恐怖から日本政府がミライの身柄の引き渡しを要求して来た際、最愛の部下であり戦友である彼を守り抜くために自らの本当の正体を明かした上で、日本に住むすべての人々に向けて、人類史に残るような偉大な演説を行った事。
サコミズ・シンゴという男を語る上で印象的なエピソードは、それこそ山ほど存在している。だが、そのどれもが、今星都が立っている時間軸から見て「これから起こる未来の話」なのだ。
タイムパラドックスによる何らかの時空間異常や妙なバタフライエフェクトを起こさないためにも、今この段階でリュウ達にすべて喋ってしまう訳にはいかないのである。
できる事なら今すぐにでも、サコミズが如何に偉大で格好良い男なのかを全員に向けて全部ぶちまけてしまいたい。しかし、無用な混乱を避け、可能な限り彼らが自らの力で未来を掴み取っていく『物語の大筋』から逸れて行かないようにするためには、曖昧な表現を使ってお茶を濁す他にない。
一人の特撮ファンとして、何とも歯痒く、もどかしい気持ちを感じずにはいられない星都だった。
彼が自分の正体を始めとする様々な事柄を熟知していると、先ほどの帰り道と今の説明会で既に察していたサコミズは、そんな星都の複雑な心境と言外の気遣いを理解してくれているのだろう。「いやいや、絞れないって事はねぇだろ!」と尚も詰め寄ろうとするリュウの肩をポンと優しく叩いて、やんわりと首を横に振った。
「いいんだよ、リュウ。私は自分の活躍なんて全然気にしていないさ。星都くんのその過分な言葉だけで、隊長としては十分に光栄だ」
サコミズはそう言って、いつもと変わらない穏やかな大人の微笑みで部下を宥めた。その深くすべてを包み込むような視線に、星都は心の中で(……やっぱり、この人はどこまでも格好いいな)と、改めて強く敬意を抱くのだった。
こうして、各個人の具体的なエピソードの例を交えつつ、「星野谷星都とは何者なのか」という第一の説明は滞りなく終わりを迎えた。
融和した司令室の空気の中、星都は表情をプロの戦士のものへ瞬時に切り替える。
素性を明かした次は、いよいよ本題だ。
「自分が一体、何のために、このウルトラマンメビウスの世界へとやって来たのか」
多次元宇宙の脅威に関する、本当の話の幕が上がろうとしていた。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<今回の説明会で色々と暴露しまくった星都くん
(=◎ω◎=)<トリピーことトリヤマはちょっとばかりダメージを受けたみたいですが
(=◎ω◎=)<大体は好意的な内容なので
(=◎ω◎=)<GUYSのみんなも結構良い気になっている様子です
(=◎ω◎=)<サコミズ隊長については時期的に早過ぎるのでお茶濁し
(=◎ω◎=)<ホントはぶちまけたいんですけど、今は我慢です
(=◎ω◎=)<次回も引き続き説明会
(=◎ω◎=)<8月9日(日)更新予定ですので
(=◎ω◎=)<乞うご期待です!
(=◎ω◎=)<それではまた次回、お会いしましょう!
(=◎ω◎=)ノシ