ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<説明回の途中ですが、ここでワンクッション
(=◎ω◎=)<前回のお話の中で、ある意味で「大いなる秘密」が暴露されたので
(=◎ω◎=)<今までその事を知らなかった「この二人」が騒ぎます
(=◎ω◎=)<詳しい内容は本編にて!
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
しかし、素性を明かし終え、いよいよ本題である「この世界へやって来た真の目的」を話そうとした星都だったが、そうは問屋が卸さなかった。
何かに気が付いたらしいマルが、目を真ん丸にして「シュビッ!」と、音が出そうなほどの勢いで右手を高く挙げたのである。
「ま、待ってください! 星都さんの話の流れが綺麗過ぎたり、色んな褒め言葉に感動したりして思わず聞き逃しそうになってましたけど、どうしても一つだけ確認させてほしい重大な事実があるんです! め、メビウス……!? 今、ミライくんの事をウルトラマンメビウスご本人だって言いましたよね!? ミライくんが、あの光の巨人の正体だったんですか!?」
戸惑いと衝撃のあまりに身を乗り出してそう言い募るマルに、ワンテンポ遅れてトリヤマも「言われてみれば、そういえば……!?」と、ガタリと椅子を鳴らして加勢した。
二人の顔には明らかに、「ミライ=メビウス」という天地がひっくり返るほどの事実を、今この瞬間に初めて生で聞いたという、純粋な驚愕と混乱がありありと浮かんでいる。
そんな補佐官と秘書コンビの慌てっぷりを見て、近くにいたリュウ達は「何を今更、そんなに驚いてるんだ?」と不思議そうに首を傾げたが、たった一人、星都だけは何かに思い至ったらしく、ハッと息を呑んで声を上げた。
「しまった……! そう言えばトリヤマ補佐官とマルさんは、この時点の時系列だと、ミライの正体をまだ知らないんだった……!」
この世界の過去と未来を「物語」として客観的に網羅している星都の、思わず漏れ出た独り言を聞いて、リュウ達は益々「訳が分からない」とばかりに眉間に皺を寄せて首を捻る。
「え、いや、だって星都さん。ミライくんがメビウスだって事は、僕達クルーの間じゃあ、もうとっくに共有されてる周知の事実のはずですけど……? ほら、少し前に地球にあのインペライザーが出現して、ウルトラマンタロウと一緒にミライくんが命を懸けて戦ってくれた時に……」
「ええ、テッペイさん。その時にリュウさん達がミライの正体を知ったという認識に間違いはありません。……ただ、あの時あの緊迫した現場にいたのは『リュウさん達だけ』で、トリヤマ補佐官とマルさんの二人は別の場所にいて現場には同行していませんでしたでしょう?」
星都は苦笑いを浮かべながら、記憶の中にある当時の状況を慎重に手繰って解説を続けた。
「サコミズ隊長は、ミライが初めて地球にやって来たその最初の段階から既に会っていて、その時に正体を含めて色々と裏で話していましたし、隊長を通じてミサキ総監代行の耳にも内密に伝わっていたかと思います。……でも、じゃあ皆さん。口頭でも書面でもなんでも構いません。あの戦いの後から今日まで、誰か補佐官達に直接報告されましたか? 『実はヒビノ・ミライ隊員が、ウルトラマンメビウス本人でした』って!」
「え……? ………………あ、ああっ!?」
言われて初めてその重大な『連絡ミス』に気付いたらしく、問いを発したテッペイも、彼らのやり取りを横で聞いていたリュウ達も、一様にハッと息を呑んでその目を丸くした。
そう、インペライザーを撃破したあの時の興奮と、ミライが奇跡的に無事だったという心からの安堵、そして「仲間達の絆」の深まりの勢いに全員が完全に流されてしまい、誰もGUYS日本支部上層部の一人であるトリヤマとマルに対して、その事実を正式に書面や口頭で報告していなかったのである。
実際、星都の知る『ウルトラマンメビウス』本来の歴史においても、トリヤマとマルがミライの本当の正体を知るのは、物語の最終盤。ゴシップ記事が専門のフリージャーナリストであるヒルカワが「特大のスクープ」と称して、週刊誌やテレビ番組を利用して「ヒビノ・ミライの正体はウルトラマンメビウスだ」と、悪意をもって暴露した後の事だったのだ。
あの『最終三部作』における極限状態の中で、己の身可愛さにミライの身柄引き渡しを要求してくる日本政府の身勝手な高官達を前に、普段の保身をすべて投げ捨てて「彼はメビウスである前に、我がGUYSの大切なクルーだ!」と、自らの防衛隊としてのキャリアだけでなく己自身の命をも懸けて真っ正面からミライを庇ったトリヤマのあの叫びは、今までのドジで騒がしいコメディリリーフな印象を一瞬で吹き飛ばして余りある気高さと格好良さに満ち溢れていた。
あのトリヤマの熱い姿があったからこそ、それを見届けたサコミズも、自らの本当の正体を日本全土に明かす演説へと臨む覚悟が決まったのだろう。
とはいえ、今この場この瞬間において、二人がその事実を全く知らなかった事、そして誰も二人に伝えていなかったというマヌケな事実もまた、揺るぎない現実であった。
「うわ、マズい……完全に伝えるの忘れてたわ……」という何とも言えない、重苦しくて居心地の悪い沈黙が、作戦司令室の中を支配していく。当のミライも、正体を隠していた申し訳無さから、眉間に皺を寄せてきゅっと肩を縮こまらせ、視線を下へと落としてしまった。
そんな、気まずい事この上ない空気を唐突に打ち破ったのは、意外にも事実を隠されていた側であるはずのトリヤマ本人だった。
「ま、まぁ……その、なんだ。ミライくんがウルトラマンメビウス当人であったというのは、正直に言って私もマルも初耳だ。今もこうして腰が抜けそうになるほど驚いておるし、現場のキミ達が今まで、誰一人として我々にその重大な事実を話してくれなんだ事について、上司として疎外感や寂しさを、多少なりとも覚えておらんと言えば嘘になる」
トリヤマは、フゥと一つ大きなため息を吐くと、その背筋をスッと伸ばして、GUYS日本支部の「総監補佐官」らしい堂々たる威厳を宿した佇まいで言葉を続ける。
「だが、今この場において、最も重要なのはその事ではなかろう! ミライくんが例え何者であろうとも、彼が今日まで我々と共に歩き、笑い、共に戦場を駆け抜けてきた、我がGUYSの誇る立派なクルーの一員である事に、何の変わりもないのだ! 大事な正体を隠しておったからと言って、ミライくんがこれまで地球のためにと流してきた血と汗、そしてあの輝かしい活躍の数々が、今更無かった事になる訳でも無い。ミライくんもまた、我々と同じく、命を懸けてこの青い地球を守り続けてくれている掛け替えのない大切な友であり、最高の仲間である。その事実を前にすれば、ウルトラマンであるかどうかなど些細な事ではないか! なぁ、マル?」
「は、はい……ッ! 補佐官の仰る通りでございます! ミライくんが宇宙人であろうとウルトラマンであろうと、その前に、彼は私達の大切な仲間です! これまでも、そして、これからもずっとです!」
補佐官としての誇りと矜持に満ちたこれ以上ないほど真っ直ぐなトリヤマの言葉に、マルも残像が見えるくらいの超高速で何度も何度も首肯した。
腹心の部下からの力強い同意を得て、「うむ!」と満足そうに一つ深く頷くと、トリヤマは静かにミライの元へと歩み寄り、緊張と不安で強張った肩にポン、と優しく手を置いた。
「だからな、ミライくん。キミも『正体を隠していて申し訳無い』だ何だと、そんな湿っぽい事はこれっぽっちも考えんで良い。明日からも今まで通り、この司令室でGUYSクルーとして普通に過ごしてくれれば良いのだ。今まで通り我々を頼ってくれて良いし、我々も今まで通り、キミのウルトラマンとしての力を存分に頼らせて貰う。これ以上の異論や文句は、補佐官として一切受け付けんぞ! 良いな!」
「――――はい! ありがとうございます、トリヤマ補佐官……っ!」
熱血漢のリュウにも負けないくらい熱い言葉を聞いた瞬間、ミライの顔から影が一気に消え去り、大輪の向日葵の花が咲いたかのような明るい輝きが戻ってきた。
「話のスケールの大きさや内容そのものについては、特に頓着しない」「今まで積み上げてきた信頼や関係性が、この程度の事実一つで変わる事は絶対に無い」、言外にそう力強く宣言してみせたトリヤマの男気に対し、腕を組んで見守っていたサコミズは、自分が見込んだ人材の成長ぶりに感動したかのように深く、心底誇らしげに目を細めていた。
「補佐官、最高に格好良いぜ……!」とリュウが涙ぐみながら真っ先に拍手し、ジョージ達からも、揃って感心の声を上げながら嵐のような拍手がトリヤマへ送られている。普段は毅然とした口調で淡々と接するか、トリヤマのやらかしを怒るかである事が多いミサキも、その美しい顔に心からの温かい微笑みを浮かべ、みんなと同じように優しく拍手していた。
「やる時はやる男」トリヤマ・ジュウキチの、まさに面目躍如、本領発揮とも言える素晴らしい宣言を前にして、星都もリュウ達と一緒に全力で拍手を送りながら(ああ……!! やっぱりこの人は、格好良い時は誰よりも格好良い、最高の大人なんだよな……!)と、一人の原作ファンとして心の中で感涙に激しく咽び泣いていたのだった。
『ヒューヒュー♪ かぁ~っくい~い! これぞみんなの補佐官! これぞ人の上に立つ高官としての、あるべき真の姿というヤツですねぇ~! いつもはコメディ枠のポンコツドジっ子ちゃんだからこそ、たまぁ~に見せるその毅然とした態度や発言が、ギャップ萌えで何倍も格好良く見えるってものです。普段からこれくらい締まった態度を取ってれば、今頃は日本支部内での評価も爆上がりだったんですがねぇ……。本当にいざという時にしか頼りにならないなんて、どこの「勇敢なる海の戦士」になりたい長っ鼻狙撃手くんなんでしょうか。あ、今のトリピーの最高に男前な発言、ボクの方で一文字も漏らさず、最高音質でまるっと録音しておきました♪ これでいつでもどこにいても、今のトリピーの名言をフルタイムで再生できちゃいますよぅ!』
(よっし、でかした太郎さん! よくやった! 最高のアシストだぜ! そっちに帰還したら、作業用BGMとして私生活で一〇〇回はリピート再生するから、今の内にダビング保存を頼む!)
先ほどのトリヤマの熱い宣言を完璧な音質でデータアーカイブとして残したという太郎からの報告に、星都は彼の妙な例え方にツッコミを入れるよりも先に、心の中でサムズアップして「いいね」ボタンを無限に連打しておいた。ファン魂が大絶賛炸裂中である。
「流石はトリヤマ補佐官! 人の価値を種族や人種、見た目、評判ではなく、その魂の本質で見極める、防衛隊上層部の鏡のようなお方です! 普段からそれくらい男前でいらっしゃいましたら、ここにいるみんなからも、もっともっと好かれて尊敬されると思いますよ!」
「フフン、そうだろうそうだろう! 私とて、伊達にこの『総監補佐官』という重職の地位を任せられてはおらんのだよ! ……って、ええいマル! 今、サラリと『普段からそれくらい』と言わんかったか!? 一体どういう意味かね!? それではまるで、普段の私はここにいるみんなからこれっぽっちも好かれておらんし、一ミリも尊敬すらされておらんようでは無いかぁーっ!?」
「あっ、い、いえ……も、申し訳ありません補佐官ッ! 私にはそのような、普段の補佐官が人望ゼロだなんていう不敬なつもりは微塵も……っ!」
「今の『あっ』はなんだ、今の『あっ』は!? それだけで貴様の本当に言いたい事が手に取るように分かるぞ、マルぅ! 貴様ぁ! 普段から私の事をそういう目で見ておったなぁーーーっ!? 今日という今日は許さんぞ! 待てぇいっ!」
「ぎゃあーーっ! 補佐官、お許しくださいーっ!」
どったんばったん、一瞬にしていつもの補佐官と秘書による賑やかな掛け合いからのコミカルな鬼ごっこが、司令室の真ん中で始まってしまった。
そんな二人の様子に、作戦司令室の中は先ほどまでの重苦しさが嘘のように、どこまでも温かくて優しい笑い声に包まれたのだった。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<GUYSのメンバーの中で、トリヤマとマルだけがミライの正体を知らなかったんですよねぇ……
(=◎ω◎=)<しかも、「最終三部作」までお預けにされるという放置プレイ付きで
(=◎ω◎=)<それだと流石にトリヤマ達が可哀そうなので
(=◎ω◎=)<当作品では、原作「メビウス」の第三十一話から三十二話のあいだで知る、という流れにしておきました
(=◎ω◎=)<原作から見れば「フライング」ですが
(=◎ω◎=)<あんまり大筋に大差は無いので、妙なバタフライエフェクトは起きません
(=◎ω◎=)<ご安心くださいませ
(=◎ω◎=)<次回は8月12日(水)更新予定!
(=◎ω◎=)<お楽しみに!
(=◎ω◎=)ノシ