ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<今回から本編再開
(=◎ω◎=)<pixiv版で言うところの第九話に入っていきます
(=◎ω◎=)<まずは朝の一幕から
(=◎ω◎=)<「嵐の前の静けさ」みたいなものと思ってくだされ
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
「…………………んぅ………」
目覚めた星都が最初に見たのは、見慣れない天井だった。
「ここはどこだ」と昨日までの記憶を探り、間を置かずにここがGUYS JAPANの基地「フェニックス・ネスト」の一角にある仮眠室である事を思い出した。
昨夜、サコミズの厚意でここの使用許可を貰い、夜遅くまでテッペイに付き合ってデータの整理や入力作業を行ったあと、シャワーを浴びる間も無く泥のように眠ったのである。
緊急の会議に呼び出され、ファイブキングに変身してワームホールによる多次元宇宙間の移動を行い、目的の座標に出た矢先にメビウスとタッグを組んで戦い、終わったと思ったらGUYSのみんなを交えたウルトライブの体験会を開き、続いて司令室で説明会を行い、ジョージのために料理を作って、最後にテッペイの仕事(というかほぼ趣味)に付き合ってと、ハチャメチャに濃い一日だった。
いくら星都が心身ともに鍛えているとはいえ、気付かない内に限界近くまで疲労が溜まっていたらしい。寧ろ、星都だからこそこの程度で済んでいるとも言えた。
(まさか、フェニックス・ネストで一泊できるとはな……俺にとっちゃ、どんな高級ホテルよりも価値ある時間だよ)
くぁ、と大きく欠伸しながら体を伸ばし、寝ぼけ眼を擦る。壁掛け時計の針は午前六時半を過ぎたばかりだった。
備え付けの簡易的なシャワー室で一通り汚れを落とし、ギンガスパークやSDを仕舞ってあるのとは別のアイテムボックスから着替えの服を取り出して手早く身に纏う。今回はネイビーのオーバーサイズ開襟シャツをメインにしたカジュアルコーディネートだ。
本来であれば、軍事基地であるフェニックス・ネストに滞在するなら服装もきっちりしておくべきだが、その点についてもサコミズから事前に許可を貰っているし、何よりも今の星都の手持ちには軍事基地を歩き回っても問題無さそうな服が無い。
どうしてもという場合はGUYS JAPANの隊服を借りる事になるだろうけれど、それはそれで星都のファン魂が核爆発を起こしかねないので、できるだけ着なくて済むようにしたかった。
ただのコスプレではない本物のGUYSの隊服に袖を通せるなど、星都にとっては「一生分の運を使い切った」と錯覚しかねないほどの幸運でありご褒美である。
ギリギリのところで働いていた理性や表情筋が、職務をほっぽり出して海外旅行へ出掛けて行ってしまいかねない。そうなれば、ミライ達の中での「星都という男のイメージ」がブレて粉々に砕け散ってしまうだろう。
男としての細やかな意地と見栄のためにも、それだけは全力で阻止しなければならなかった。
着替え終わった星都は、「GUYSの隊服を着たい」欲と「そうなってほしくない」願望を同時に抱きながら、最後にインカムを着けて朝食を摂るために食堂へ向かった。
◇
午前七時前の食堂は、夜間の当直勤務に当たっていた者達や勤務時間の関係で出勤が早い者達で賑わっていた。
「さっすがはGUYS、職員や隊員の福利厚生もしっかり充実させてるよな」
朝の献立表を手に取り、今朝食べるメニューを選びながら星都は感心したようにそう零す。
メニューは朝という事もあって味噌汁に納豆ご飯、トースト、自家製ヨーグルトなどの「朝に食べると良い」とされるものや、鮭の塩焼きに卵焼きといった「朝の定番」などの他、朝からガッツリ行きたい人向けに丼物やうどんなどもある。総勢数百名もの職員を抱える軍事基地という事もあり、朝食のメニューもなかなかに種類が豊富だ。
中には、二〇〇〇年代の日本ではまだあまり普及していなかった「オートミール」を使ったメニューまであった。
あの食材が日本で広く食べられるようになったのは、二〇二〇年代に入ってからの事である。それまでは外国人や、一部の健康志向が強い日本人のあいだで食べられていたのだが、ある時を境にSNSや動画サイトでダイエット食や時短メニューとして大注目を浴びて以来、晴れて全国的に定番化したのだ。
未来の時間軸から来た星都にとっては見慣れた食材だが、この時点の時間軸においては「未来を先取りしている」と言っても過言では無い。昨日の調理中にオートミールを見つけた時から薄々思っていた事だけれど、フェニックス・ネストの食堂で働く料理人達の「先見の明」を見た気がした。
一先ず、具沢山味噌汁と納豆ご飯を付けた「鮭の塩焼き定食」と、キウイやイチゴ、バナナなどをたっぷり使った「フルーツ盛り合わせ」、それから「シリアル入り自家製ヨーグルト」を注文。
待っている時間で厨房の責任者に再び許可を貰い、自家製ヨーグルトにブルーベリージャムとオートミールを入れて混ぜ合わせた「ヨーグルトミール」と、こんがり焼いたトーストにピーナッツバターをたっぷり塗って、その上にスライスしたバナナを乗せた「バナナピーナッツトースト」、全粒粉の食パンに新鮮なレタスとハム、スライスチーズ、目玉焼きを挟んだ「即席サンドウィッチ」を作る。
次々とテーブルの上に並べられていく品々は、種類もそうだが何より量が多かった。
定食は大盛りで明らかに複数人前あり、フルーツ盛り合わせはまるでこんもり盛り上がった山のよう。ヨーグルト系を入れた皿はどっちも大きなプレートタイプのグラタン皿で、トーストとサンドウィッチはそれぞれ合計一斤分(約三五〇~四〇〇グラム)ずつ食パンを使っていた。見かけに依らず大食漢なのである。
「いただきます」
近くを通る人々が「本当にこれ全部食べるの!?」と驚愕で二度見していく中、星都は素知らぬ顔で手を合わせ、黙々と食事を始めた。
かちゃかちゃと食器が鳴る音は小さい一方で、スプーンが閃く速度は物凄く早い。
あっと言う間に大型プレートタイプのグラタン皿の中身が目減りし、こんもり盛られたフルーツの山は解体され、空になった定食の皿が積み上がる。常人なら一枚か二枚食べるのでやっとな大きさの食パンも、わずか数口で一枚を消失させては次の一枚へ手を伸ばしていた。
その速さたるや、下手なフードファイターではまず太刀打ちできないほど。最初は並んだ皿の量に驚いていた周囲の人々も、気が付けば星都の食べっぷりに驚きの焦点が移っていた。
『朝っぱらからな~に「一人大食い大会」開いてんですぅ? 稽古終わりの力士や腹ペコフードファイターも真っ青! このまま公式の大食い大会に殴り込んでもフツーに優勝を搔っ攫えちゃうと思いますよぉ。親子揃って世界中の大会を荒らし回るおつもりで?』
(悪いが、俺は母さんとは違ってそーゆーのには一ミリも興味無い……………ん?)
太郎のニマニマした声に小さく反論しながら六つ目のサンドウィッチを食べかけたところで、ふと妙な視線に気付いた星都が顔を上げる。
見ると、いつの間にか食堂に来ていたらしいテッペイが、星都が座るテーブルの上に並んだ朝食の品々をじっと見つめていた。まるでそこだけ時間が停止しているかのようにがっちりと視線が固定されており、半開きになった口元からは今にも涎が垂れて来そうな気配である。
「おはよう、テッペイ。どうした? 人の朝飯をそんなに見つめて」
「いえ、なんだかとっても美味しそうなものを食べてるな、と思いまして……いくつかこの食堂には無さそうなものもあるみたいですけど、どうしたんですかこれ?」
「『無さそうな』じゃなくて実際に『無い』ぞ。何しろ、半分は俺の手作りだからな。と言っても、昨日ジョージが食べてたものよりも更に手を抜いた即席時短メニューばっかだけど」
「即席……即席!? これでですか!? フツーに手が込んでるように見えますよ!?」
星都の発した何気ない言葉に、テッペイは目を剥いてテーブルの上を更に凝視した。
昨日の夜、ジョージに振る舞っていた食事も、星都曰く「時間が無かったから時短できるメニューにした」らしい。テッペイ達からしたらそれでも十分過ぎるくらい豪華で美味しそうだったのだが、今星都が食べている食事のうち、この食堂で提供していない品々はあれよりも更に簡単なものだと言う。
確かに凝った盛り付けはしていないけれど、それでも一目見て「美味しそう」と思うくらいにはよくできているし、食欲もそそられる品であった。これで「お手軽に作れます」と言われても、テッペイにはちょっと信じられそうに無い。
『星都くんとテッペイさん達とじゃ、同じ「手間をかける」でも言葉の中身が違いますからねぇ。星都くんにとっちゃ「ちゃちゃっとできる」「パパッと作れる」品でも、傍から見たら十分手間暇を掛けてるように見えちゃう時ってあるものですよぉ? この辺、普段から料理する人とあんまりしない人の差なんでしょう』
(あ~………そうかもな………)
星都の視界を通じてテッペイの様子を観察していた太郎の言葉に強く納得した。
父である月光に影響されてすっかり料理にハマってしまったために失念していたが、普段から料理をしない人からすればこれらの品、特に「即席サンドウィッチ」は手を抜いているようには見えないだろう。何しろ、「即席」と言う割には味も、彩りも、栄養面もしっかり考えて作られている。手抜き料理でここまでしっかりしたものが出て来るとは考えもしなかったに違いない。
彼らにとっての「手抜き」「即席」と言えば、間違いなくカップ麺などのインスタント食品やレトルト食品だ。そう考えると、星都とテッペイの間に認識の齟齬があっても不思議では無かった。
(そう言えば、俺も料理を始める前はそうだったな……)と星都がしみじみしていると、テッペイの顔が徐々にサンドウィッチの載っている皿に近づいて来た。その目は期待と羨望で満ち満ちており、全身から「食べたい!」という感情が溢れ出している。
そんな彼の様子に思わずクスッと笑いながら、星都はまだ口を付けていないサンドウィッチが載った皿をそっとテッペイの前に押しやった。
「食べるか?」
「い、良いんですか!?」
「ああ、良いよ。ただし、他の連中には内緒だぜ」
それを聞いたテッペイの動きは素早かった。
星都の茶目っ気を含ませた言葉に何度も頷くと、迷う事無く向かい側の椅子に座り、真っ直ぐサンドウィッチを手に取って脇目も振らずかぶり付く。
もぐもぐと咀嚼し、じっくり味わってから飲み込むや否や、カッと目を見開きながら顔を上げた。
「美味しいッ!」
「はい、お粗末さん」
変に長くコメントしなくても、その一言だけでテッペイの強い気持ちがダイレクトに伝わって来た気がして、星都は柔らかく微笑んだ。
夢中で食べ進め、あっと言う間に耳ありかつ大ぶりのサンドウィッチを一つ平らげたテッペイは、すぐさま同じ皿に載っている二つ目に手を伸ばす。
インカムからはまたもや太郎の恨めし気な声が聞こえて来ていた。
「星都さん、このサンドウィッチ、本当に手抜きなんですか? 全然そうは思えない美味しさですよ」
「あ~、手抜きっちゃあ手抜きだな。だって使ってる食材は全部、厨房の冷蔵庫にあったものだけだ。俺がやった事と言えば、目玉焼きを焼いた事と全体が纏まるように味付けをした事くらいだぜ」
「その両方が凄いんですって! 目玉焼きだけでも美味しいって思えるくらい焼き加減が絶妙ですし、味付けも素材の味を引き出す丁度良い塩梅ですもん! これならいくらでも食べられそうです!」
「そんな事無い……と、言いたいところだが、お前のその食べっぷりを見ているとマジでそんな気がして来るな……。やっぱり俺の料理って、何か変なものでも入ってるのか……?」
見るからにインドア派であるにも関わらず、物凄い勢いで二つ目のサンドウィッチも胃袋の中へ納めてしまったテッペイを見て、そんな疑問を抱いてしまう星都だった。
(=◎ω◎=)<いかがでしょうか?
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<何だかんだで初出ですが
(=◎ω◎=)<星都くん、めっちゃ食べます
(=◎ω◎=)<バカみたいに大食漢です
(=◎ω◎=)<月光さんの奥さん、つまり星都くんの母親が大食漢で
(=◎ω◎=)<月光さんご自身も負けず劣らずの大食漢なので
(=◎ω◎=)<その血を色濃く継いだ結果ですね
(=◎ω◎=)<ちな、姉の美月と妹の月香もこれほどではありませんが
(=◎ω◎=)<やっぱり食べます
(=◎ω◎=)<この家のエンゲル係数クソヤベーよ……
(=◎ω◎=)<次回は九月七日(月)更新予定
(=◎ω◎=)<お楽しみに!
(=◎ω◎=)ノシ