ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<今回は引き続き、GUYSと星都の交流回
(=◎ω◎=)<あまり接点の無い方だったとある人物と、星都が語り合います
(=◎ω◎=)<誰にスポットライトを当てているのかは本編にて!
(=◎ω◎=)<テッペイとの絡みもあるよ!
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
温かさの中に寂しさが滲んだ夕食を終え、手早く片付けを済ませたGUYS実働部隊の面々は夜間勤務に入った。
当然ながら、夜間であろうとやる事は昼間と大した違いが無い。レーダーの監視、データの整理と分析、パトロール。不意の怪獣出現に備えて、二十四時間常に厳戒態勢を敷いているのだ。
唯一違うのは、フェニックス・ネストでは夜間勤務に完全シフト制を導入している点。持ち回りで早番、遅番、夜勤などが割り振られ、実働部隊の隊員が最低でも基地内に二人は常駐するように定められていた。
夜勤に当たった者達で監視の目を光らせ、怪獣が出現すれば緊急連絡を通じて他の面々を呼び集めるという流れである。
今日の夜勤当番はテッペイとサコミズの二人。ここにテッペイとデータ整理の約束をしていた星都を加えた三人で、今晩の夜間勤務を行う事になっていた。
ちなみに、サコミズはともかくテッペイは朝の七時頃から既に出勤して来ており、このまま夜勤に突入しても良いのかと星都は心配していたのだが、当人曰く「星都さんがこっちに居られる間に、できる所までやっておきたいんです! 悠長に寝てなんていられません!」との事。オタクの熱量はどこの宇宙でも凄かった。
そんなこんなで、レーダーの監視をサコミズに任せ、やる気に満ち溢れまくっているテッペイと一緒にアーカイブ・ドキュメントのデータ整理に取り掛かる事しばし。
時刻は日付が変わって、午前二時三十分を指していた。
「……………ふぅ~、これでこの項目はおしまいですね。それにしても、過去にこんな強力無比なロボット怪獣がいたなんて全然知りませんでした。星都さんがいなければ、永遠に分からず仕舞いだったかも知れません」
「朝にも言ったが、戦ったのはウルトラマンエースだけだからな。アーカイブ・ドキュメントに載ってるのは過去の地球防衛隊と戦った事のある怪獣や宇宙人だけだから、当時の防衛隊が知らない情報は載ってなくて当然だ。人間が作るものに完璧なものは無い。だからこそ、常に情報のアップデートが必要なのさ」
作業が一段落つき、大きく伸びをしながら深く息を吐き出したテッペイに、星都が穏やかな笑みを浮かべて言った。
たった今、サンダーキラーの基になった怪獣の一体、「異次元超人 エースキラー」に関するすべてのデータを入力し終えたところである。
「当時の防衛隊が交戦した事の無い怪獣」という事で、アーカイブ・ドキュメントの中に参考となりそうな記録は一つも無く、星都が持つ情報だけを頼りに一から全部打ち込む事になった。
自分がまったく知らない怪獣の知識に触れられたためか、真夜中であるにも関わらずテッペイの熱量は衰え知らずの天井知らずで、作業中は常に目をギラギラと輝かせて星都に質問をぶつけまくっていた。
星都もオタクの真骨頂ぶりに苦笑いしつつ、適宜テッペイの質問に応じて共に作業を進めていき、こうして終了にまで漕ぎ付けられたという訳だ。
「さっ、入力したいデータはまだまだ沢山ありますからね! 星都さんにはもっとお付き合い頂かないと! 次は今朝の戦いで星都さんが武装の一部として使っていたキングジョーブラックについて……」
「おいおいおいおいおい、まさかとは思うがこのまま徹夜するつもりじゃないよな!? いや、夜勤なんだから徹夜するのは当然だが、だからって休憩ナシのノンストップは流石に不味いだろ。キリの良いところまで来たんだから、ここらでちょっと休めって」
「あっ……確かに、休める時に休んでおかないと体が保ちませんね。すみません、星都さん。卵の内から『医者の不養生』になるところでした……」
「まったく……好きな事に熱中するのは良いが、きちんと加減も覚えろよな。夜はまだまだ長いんだ。途中で倒れでもしたら洒落にならないぞ。近くの自販機でコーヒーを買って来るからちょっと待ってろ」
「ありがとうございます」
申し訳無さそうに頭を下げるテッペイの肩を優しくポンと叩き、星都は司令室を出て近くにある自販機コーナーへ向かう。
その背中を、サコミズが意味深な微笑みを浮かべながら見つめていた事に、彼が気付く事は無かった。
◇
自販機コーナーは、フェニックス・ネストの各階層に最低でも一か所はある。
日中の業務時間は勿論、各セクションで遅番や夜勤に従事する職員達のために、給湯室とは別口で水分補給や休息ができる場として設けられていた。
GUYS JAPANの頭脳である作戦司令室を要するヘッドブリッジ最上階にも当たり前のように設置されていて、リュウ達も夜勤の際にはよくここを利用しているらしい。
四台並んで稼働している自販機の中から欲しいメーカーのコーヒーを選び、財布から小銭を取り出して入れる。
星都が暮らす年代の日本では電子マネー決済の利用が進んでいるものの、二〇〇六年当時とまったく変わらない貨幣も流通しているため、この時代でも問題無く使用する事自体は可能だ。
ただ、この時代に生きている人々から見れば、小銭に書かれている年代はどれも見た事の無い数字ばかり。これではのちのち不都合が生じる可能性が否めず、こちらへ来る前に二〇〇六年の日本で使っても問題無さそうなお金をいくらか持って来ていたので、今回はそちらを使う事にした。
――ガコンッ……!
出て来たホットコーヒーを手に取り、続けてテッペイの分を選ぶ。
苦過ぎないコーヒーが良いと言っていた事を思い出し、その希望に沿った商品を物色していると、隣の自販機から音が鳴った。
――ガコンッ……!
振り向いてみれば、いつの間にか自販機コーナーに来ていたサコミズが同じくホットコーヒーを購入していた。
「あれ? サコミズ隊長、珍しいですね。いつもなら司令室で、ご自分で淹れたコーヒーを飲まれてるのに」
「うん、普段はいつもそうなんだけどね。私とてたまには自販機の缶コーヒーを飲みたくなるものさ」
そう言って朗らかに笑うサコミズに、星都は「それもそうか」と納得した。
折角だから二人で話そうという事になり、近くの談話スペースにあるロビーチェアに並んで腰を下ろす。缶コーヒーの口を開け、一口飲んでホッと一息吐く音が冷えた空気に溶けて行った。
「…………まさか、サコミズ隊長と二人でコーヒーを飲む時が来るなんて、夢にも思いませんでした」
最初に口火を切ったのは星都だった。自分が口を付けたコーヒーの缶をぼんやりと見つめながら、しみじみとした言葉で本音を吐露する。
それを受けて、サコミズはいつものような温かい微笑みを浮かべながら小首を傾げた。
「そうかい? リュウ達とも一緒にコーヒーを飲む事はあるけど、そういう風に言われた事は無かったかな」
「そりゃリュウ達と私とじゃ、立場も思う事も違いますよ。こう見えて私はGUYSの皆さんのファンなんです。大好きな相手の一人とこうして一緒に居られて、光栄に思わないファンはいませんって」
「ははは、ファンか……それこそ光栄な話だよ。リュウ達がやってきた事、乗り越えてきた事をきちんと見てくれているような気がして、鼻が高い気分だ」
「なぜそこでご自身を省かれるんです? リュウ達GUYSの実働部隊が誰一人欠ける事無く今日までやって来られたのは、サコミズ隊長が率いていたからこそでしょう。トリヤマ補佐官みたいにひけらかせとは言いませんが、もう少しだけ誇っても罰は当たらないと思いますよ」
「う~ん……生憎だけれど、私にはそういった欲があまり無くてね。事件を解決して、平和を守れて、みんなが無事に帰って来てくれれば、それで十分なんだ。言ってみれば、彼らこそが私にとって最も大切な『宝』さ。大切な『宝』を守れるのなら、世間からどう評価されようと構わないんだよ」
缶コーヒーをちびちび飲みながらそう語るサコミズの表情は笑顔のままだが、その瞳の奥には温かくも揺るぎない信念の光が宿っている事に星都は気付いた。
今の言葉がすべて本気であり、彼にとっての事実を告げているのだという事がひしひしと伝わって来る。「滅私奉公」ならぬ「活私奉公」、名より実を取るサコミズらしい言葉だった。
そして、彼がなぜそこまで仲間達に拘るのか、その理由について星都は心当たりがある。
「――気の置けない仲間達やウルトラマンと一緒に最前線で戦う事、それが貴方の隊長になった理由だから、ですか?」
一口コーヒーを呷ってから紡がれた言葉に、サコミズの目が一瞬だけ大きく見開かれる。
「………驚いたな。そこまで知っていたのか」
「昨日の時点で『もしかして』って薄々は感づいていたでしょうに、白々しいですよ」
半ば確信が込められた声で断言されて、サコミズは観念したようにフッと小さく鼻を鳴らした。
「確かに、私達の戦いを『映像』として観ていたキミなら、何でも知っていたとしても不思議じゃ無かったね。キミの知識の量と深さを見誤っていたよ」
「何でもは知りません。知っている事だけです。実際、昨日ミライに案内されてフェニックス・ネストの中を歩いた時は、感動で胸がいっぱいでした。私が観ていた映像作品では、作戦司令室や食堂、地下格納庫以外の区画は基本的に描かれていませんでしたから」
「おや、そうなのかい? まぁ、映像作品は時間が限られているから、物語の大筋と関係の無い場所は省かれて当然か」
談話スペースに二人の男の柔らかな笑い声が響く。晩秋を迎え、冬に向けてより冷たさを増しつつある空気も、そこだけはまるで春が来ているかの如く温かかった。
しばらくして、サコミズは冷めてぬるくなったコーヒーの缶を指で撫でながら、星都に視線を向けた。
「……星都、キミがこの地球に来て、ミライやリュウ達と一緒に戦ってくれた事、心から感謝している。昨日の戦いも、今日の戦いも、キミが力を貸してくれたから誰も怪我をせずに済んだ。CREW GUYS JAPANの隊長として、今一度礼を言わせてほしい。ありがとう」
思い起こされるのは、昨日の戦いでファイブキングにウルトライブした星都が乱入した場面。
あの時、メビウスは大きなダメージを受けた状態で、ガーゴルゴンとボガールモンスに挟み撃ちにされていた。もしも星都の乱入が間に合っていなかったら、二体の同時攻撃を受けてメビウスは敗北していただろう。最悪の場合、あの場で命を落としていたかも知れない。
今朝の戦いでも、星都が機転を利かせてガンブースターにペダニウムランチャーを装備させていなければ、サンダーキラーの執拗な攻撃を浴びてガンフェニックスが撃墜されていた可能性は大いにあった。
そのあとでは、リミッターを解除した星都とエレキングが前に出てサンダーキラーと戦ったおかげで、メビウスはアークエンドメギドブレイクによるダメージから復帰する事ができた。
二日間に渡る連戦を潜り抜けられたのは、ひとえに星都が味方でいてくれたからこそ。サコミズがそう判断するのも頷ける話であった。
「いえ、そんな……礼を言いたいのは私の方です。憧れのヒーローであるウルトラマンメビウスやGUYSのみんなと肩を並べて戦えて、交流ができて、仲間になれた……作品を愛するファンとしてだけでなく、同じ志を持って戦う者として、これほど光栄で幸せな事はありません。サコミズ隊長、貴方と貴方の仲間達に、心から感謝と敬意を」
星都もサコミズの目を真っ直ぐ見つめ返し、心を込めた返答を贈る。そして、どちらからともなく手を差し伸べ、温かくも強い力で固く握手を交わしたのだった。
「一つ訊きたいのだが、向こうの地球とこちらの地球を自由に行き来する事はできるのかな?」
「そうですね……今すぐに、は無理かと。私がこの宇宙へ来られたのは、事前にバロッサ星人が盗んで行ったSDから発せられるエネルギー反応を辿る事ができたからです。向こうへ帰還できるのは、向こうの座標を正確に計算・測定できているから。つまり、こちらの座標を正確に計算・測定する事ができれば、いつでも自由に来られるようになるという事です。こちらの座標に移動した際のデータは既に得られていますので、いずれは可能になるでしょう」
「そうか……どうやらキミに協力しているオペレーターは、途轍もなく優秀なようだね。今すぐは無理でも、いつか来られるようになる。今はそれが聞けただけで十分だ」
サコミズはそう言って、すっかり冷め切ってしまった自分のコーヒーを飲み干すと、立ち上がって再び自販機の方へ向かう。質問の意図が読めずに星都が首を傾げていると、ガコンッ、ガコンッと自販機の取り出し口に何かが落ちてくる音が聞こえた。
戻って来たサコミズの手の中には、真新しいホットコーヒーの缶が二本握られている。それをそっと差し出しながら、彼は朗らかに言った。
「入力したいデータはまだあるんだろう? 私に付き合ってくれたせめてものお礼に、キミとテッペイの分は私が奢るよ。遠慮せず、受け取ってほしい」
「あ、ありがとうございます……!」
まさかコーヒーを奢って貰えるとは思っていなかった星都は、震える手でサコミズから缶を受け取った。手から伝わる温かい缶のぬくもりに、サコミズという人物が持つ心の深さが重なる。
唐突なサプライズを仕掛けられた星都のファン魂は限界寸前。爆発まで既に三秒を切っており、今は理性で抑え込んでいるがそれもいつまで続くかは分からない状態だ。
そんな彼の心境を知ってか知らずか、サコミズは穏やかな大人の微笑みを浮かべながら最後に付け加えた。
「キミの立入許可証は、私の権限で効力を無期限延長してある。いつか、向こうとこちらを自由に行き来できるようになった時は、いつでも遊びに来てくれ。我々CREW GUYS JAPANは、いつでもキミを歓迎するよ」
「はい……! 必ず……ッ!」
畳み掛けるようなサコミズによる粋な計らいに、星都の声は感動で自然と震えていた。
後に星都は、この時の事を振り返って「あの瞬間ほど、本当にギリギリのところでファン魂の爆発を抑え切った自分の理性を褒めたくなった時は無いな」と言ったとか言わなかったとか。
ちなみに、この時点で既にたっぷりニ十分は経過してしまっており、司令室に戻った星都は待ち草臥れたテッペイからネチネチと恨み節を言われる事になったのだった。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか?
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<という訳で、今回はサコミズとの語り合いとなりました
(=◎ω◎=)<何だかんだと良い感じにやり取りはありましたが
(=◎ω◎=)<がっつり星都と絡んだ事が無いので、この機会にやってみました
(=◎ω◎=)<サコミズが相手だと変に騒ぐよりも
(=◎ω◎=)<こうして静かに話す方が似合っているなと思った次第です
(=◎ω◎=)<テッペイはいつも通りの平常運転
(=◎ω◎=)<どこの宇宙も、オタクってのは凄いね!
(=◎ω◎=)<次回の更新は十月九日(金)予定!
(=◎ω◎=)<お楽しみに!
(=◎ω◎=)ノシ