ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<長かった第二章もいよいよ最終回!
(=◎ω◎=)<今回、遂に星都が元の次元宇宙へ帰還します!
(=◎ω◎=)<最後までしっかりお楽しみくださいませ!
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
明けて翌日の早朝。
時計の長針がまだ午前六時よりも前の位置を示している時間。
人影がまばらで静かな朝の空気が流れるフェニックス・ネストの食堂の片隅に、星都の姿はあった。テーブルの上には昨日と同じくらい大量の食事が所狭しと並べられており、早めの朝食タイムを楽しんでいる事が見て取れる。
相変わらず見る者に不敵な印象を与えるような表情をしているが、よく見ると目の下に薄らと青クマができており、全体的に少々疲れている雰囲気が漂っていた。
それもそのはず、サコミズとの静かな語り合いのあと、テッペイに付き合ってデータの整理や入力を夜通しやっていたのだ。「一緒にやる」と約束していた事だし、思い出作りの一環としても付き合うのに吝かではなかったけれど、流石に休憩無しのぶっ通しで朝までオールナイトを敢行する事になるとは思わなかった。
エースキラーの項目が終わった時に休憩の大切さについて説いたはずなのに、あの様子では聞いているフリをして右から左へ受け流していたらしい。
おかげでテッペイが「やりたい」と言っていた分はすべて終わらせる事ができたものの、あの体たらくで本当に立派な医者になれるのだろうか。テッペイの将来に一抹の不安を覚えずにはいられない星都だった。
「おはようございます、星都さん。相席しても良いですか?」
不意に掛けられた声の方へ振り向くと、そこにはミライの姿があった。手には納豆と生卵、それから白ご飯を載せたお盆を持っており、彼もこれから朝食を摂るつもりのようだ。
「ああ、おはよう、ミライ。遠慮せず座ってくれ」
「ありがとうございます!」
既に食べ終わって空になっていた皿を重ねてテーブルの隅へ置き、できたスペースにミライを誘導する。
滞在三日目の朝食の席は、ウルトラマンと多次元宇宙に住む怪獣使いという、異色の組み合わせになった。
「それにしても、本当に沢山食べるんですね……朝でも食欲が衰えないなんて」
「燃費が悪いのか何なのかは知らないが、俺の食事は大体こんな感じだよ。特に夕飯は昨日みたいにめっちゃ食うから、食費だけで結構な額が飛んでくぜ」
「あれは流石に想像すらできませんでした。僕を含め、皆さん言葉が全然出ませんでしたから……」
昨日の夕飯に出した鶏ガラ鍋は、腹ペコだったリュウ達に大好評だった。
沢山食べる事を見越して最大で二十七リットルまで入る寸胴鍋を選び、具材も厨房の冷蔵庫を空にする勢いで大量に入れたにも関わらず、半分以上は彼らの胃袋の中へ消えたのである。
しかし、それでも半分近くは中身が残ってしまった。
調理中の吹き零しなどを防ぐため、安全面を考慮して二十キロの鶏ガラ鍋を作っていたので、差し引き九キロから十キロ近くは食べ残しが発生した計算だ。
流石にこれだけの量の残飯を廃棄する訳にもいかず、さてどうするかと悩むGUYSの面々だったが、その心配は杞憂に終わった。
彼らの目の前で、おもむろに星都が手にしたお椀に鍋をよそって食べ始めたかと思うと、そのまま猛烈な速度で残りの分を完食したからである。
総重量十キロ近く。
半分以上はスープの重さだが、具材も相当な量がまだ鍋の中に入っていた。にも関わらず、涼しい顔でその大量に残った具材を全部食べ切ってしまった星都の姿に、ミライやリュウ達は開いた口が塞がらなかった。
普段は飄々としているサコミズや冷静沈着なミサキも、あの時ばかりは目が点になっていた。GUYSの精神的な支えとも言える二人が目に見えて驚いていた点から見ても、相当なインパクトだった事が分かるというものだ。
ちなみにスープは四キロ弱が最後まで残り、これは流石に廃棄しようと厨房へ持って行った。そこで目敏く近寄って来たサユリが「こんな美味しそうなスープ、捨てるなんて勿体無い! 私達が有効活用してあげるから、邪魔にならない場所に置いといて頂戴ね!」と宣言。あれよあれよと言う間に、星都特製鶏ガラ鍋のスープは厨房のスタッフ達に引き取られる事となった。
何に使われるのかははっきり言って不明だが、最後まで無駄なく使い切られるのならそれに越した事は無いだろう。
閑話休題。
その後も和やかに談笑しつつ朝食を食べ進め、ミライの納豆入り卵かけご飯が八割以上無くなった頃、星都は気になっていた疑問を彼にぶつけた。
「ところでだ、ミライ。こんなに朝早くからフェニックス・ネストに来たのには、何か理由があったんじゃないのか? 単純に早く来過ぎた、って訳じゃないんだろ?」
「はい。実は、星都さんに是非とも渡したいものがあって……」
そう言ってミライが取り出したのは、小箱の中に大事そうに入れられた、燃え盛る「炎」をモチーフにしたデザインが特徴的な革製の小さなお守りだった。
一目で手作りだと分かるそのお守りを見た瞬間、星都の目が驚愕と感動に見開かれる。
「これ……! まさか、『ファイヤーシンボル』か!? 『光の国』から帰還命令が出た時に、お前が一つ一つ手作りしてリュウ達に手渡してた、あの……!?」
「その通りです。どうしても星都さんにもプレゼントしたくて、一晩掛けて作りました」
ミライがにこやかに笑いながら差し出したそれを、星都は震える手でそっと受け取った。
口を半開きにしたまま手の中にある品を凝視し、まるで壊れ物を丁寧に扱うような手付きで表面を撫でる星都の喉から、自然と言葉が零れ落ちる。
「良い、のか……? 作るの、大変だっただろ……?」
「僕が作って渡したいと思ったんですから、全然大変じゃありませんでしたよ。『炎』は僕達GUYSの誇りであり象徴。その証を、星都さんにも受け取ってほしいんです。例え別々の宇宙にいても、星都さんは僕達の大切な仲間であり、友達ですから」
胸を張って真っ直ぐな瞳で微笑むミライに、星都は息を呑み、その目にはみるみる涙が溜まっていった。
ミライ=ウルトラマンメビウスの手作りであり、GUYSの誇りの証。それは、「メビウス」ファン垂涎の品であり、星都にとって決して金には代えられない、「世界に一つだけの宝」と言っても過言では無いほどの価値がある代物だ。
彼らGUYSの仲間になれたという事実が、「思い出」だけでなく「お守り」という現実に形を持った品としていつまでも手の中に残る。これが嬉しくなくて、何が嬉しいというのか。胸の奥から押し寄せる歓喜と感動に、視界がじんわりと滲んでいった。
幸運な事に、タイミングもバッチリ。
これでもう、星都がこの地球に思い残す事は何も無い。
「これからもバロッサ星人との戦いが続く星都さん達を守るよう、息を吹き込みました。必ず勝って、盗られたものを全部取り戻せるように……いわゆる『必勝祈願』と言うものです。戦う場所は別でも、僕達の心はいつでも一つ。その事を忘れないでください」
「ああ………ああ…………ッ! ありがとう、ミライ。大切にする……! 何があっても手放さないから、安心してくれ……!」
流れかけた涙を指で拭い、いつもとは違う、子どものように素直で温かい笑顔を浮かべる星都。その輝きがどこかコノミと重なった気がして、ミライも自然と笑顔になった。
手のひらの中にある、小さな革製のお守り。そこに込められた温かい絆の熱が、星都の胸の奥をじんわりと満たしていく。
晩秋の朝の寒くなりがちな食堂の一角にあって、ある席とその周辺だけが陽だまりのような温かい空気に満ちていたのだった。
◇
同日の午前十時前。
フェニックス・ネストを含むGUYS日本支部基地の敷地内にある開けた場所に、リュウ達GUYSの主要メンバーと星都が集まっていた。
いよいよ、星都が元の次元宇宙へ帰還する時がやって来たのだ。
「それじゃあ、皆さん。短い間ではありましたが、大変お世話になりました。この御恩は、一生忘れません」
この地球でできた掛け替えのない仲間達、その一人一人の顔をしっかり見ながら、別れの挨拶を口にした星都は深々と頭を下げた。
対するリュウ達は、誰一人として言葉を発しようとはしない。遂に来てしまった瞬間に、みんな寂しさや悲しさがごちゃ混ぜになって何を言えば良いのか分からなくなってしまっていた。
そんな彼らの心境を察して、顔を上げた星都は苦笑いしながら肩を竦める。
「おいおい、そんな顔すんなって。サコミズ隊長からもう既に伝わってると思うが、元の次元宇宙じゃ今、多次元宇宙を自由自在に行き来できる方法を急ピッチで開発中なんだ。実用化にまで漕ぎ付けられれば、この宇宙の地球にも自由に来れるようになる。その時までの辛抱だよ」
「けどよぉ………それでも寂しいもんは寂しいんだよ。もっと一緒に色々とやりたい事があったんだぞ、こっちは……!」
リュウが震える声でそう言うと、他の面々も一様に何度も何度も頷く。中には目に涙を浮かべている者もいて、本気で星都との別れを惜しんでくれている事が伝わって来た。
「泣くなって。俺は湿っぽいのは好きじゃないんだ。それに、この三日間で俺は十分過ぎるくらい大切なものをみんなから貰った。これ以上欲しがったら、強欲が過ぎるってもんさ」
みんなを宥めるように努めて穏やかな口調で言って、今度は爽やかな笑顔を浮かべてみせる。
最高の思い出を沢山作った。感謝の言葉を贈り合った。友情を確かめ合った。惜しむ事も、恐れる事も、もうどこにも無い。そんな星都の気持ちが伝わったのか、リュウ達の表情にもどこか納得の色が浮かび始めていた。
「ミライ、最後にこれだけは言わせてくれ。いつか必ず、お前が使う光線技の数々や光の剣が一切通用しない敵が現れる。その時、今までに無い絶望感や無力感がお前を襲うだろう。何をしても効かない相手ってのは、それだけ怖くて恐ろしいものだからな」
星都の脳裏に浮かぶのは、ほんの少し先の未来の話である「ウルトラマンメビウス」の第三十四話、「故郷のない男」にて登場した「光波宇宙人 リフレクト星人」だ。
全身を誘電体多層膜ミラーに似た構造の特殊な装甲で覆い、ありとあらゆる光線系や光剣系の技を跳ね返す「光線殺し」。あの宇宙人との戦いを思い起こしながら、星都は言葉を続けた。
「けど、忘れるな。ミライ、お前はウルトラマンなんだ。光線技なんて無くても、その肉体だけで十分なほど強い。すべての光線技を封じられた時、最後に頼れるのは鍛え上げた己の肉体、つまりは拳と足だ。今からでも遅くは無いから、自分の体を鍛える事をお勧めするぜ。どうせなら、誰が見ても『お前になら地球を託せる』と認めるしか無くなるくらい強くなっちまえ。そうすれば、例えどんな強敵だろうと立ち向かえるようになる。この星と、大切な仲間を守るためにもな」
「星都さん…………………――はい! 分かりました! 必ず強くなります! いつか再び、貴方と会えた時に、貴方がびっくりするくらい強いウルトラマンになってみせます!!」
「ああ! 楽しみにしてるぜ!」
新たな約束を交わし、ウルトラマンメビウスと多次元宇宙に住む怪獣使いの青年は拳を突き合わせた。
未来の情報を渡し過ぎると、どんなバタフライエフェクトが起きるか分からなくなる。だから、これが星都からミライへ伝える事のできる限界だ。
ミライから貰ったファイヤーシンボルの返礼としては、正直言って全然物足りないけれど、今はこれで良い。あとはミライとリュウ達次第。彼らなら、例えどんな不測の事態に陥ろうとも、最後まで諦めずに足掻いて、切り抜けられるはずだ。
「リュウ達も、ミライの事をちゃんと支えてやってくれ。互いに甘え合うんじゃなく、互いに支え合ってこその仲間だからな」
「誰に向かって言ってんだ?」
「それぐらい、言われなくても分かってるぜ!」
「大体、ミライってちょっとほっとくとす~ぐ危ない事するのよ? 目を離してる暇なんて無いわ」
「僕達はみんな揃って『GUYS』です。心配しなくても、ミライくんを独りにはしません」
「今までミライくんにはたっくさん助けて貰ったんですから、今度は私達がミライくんを助ける番です!」
口々にそう言って、互いに同意し合うリュウ達の後ろで、サコミズやミサキ、トリヤマ、マルもうんうんと首を縦に振る。
寂しさも悲しさも、いつの間にかどこかへ吹き飛んでいた。
――《スパークドールズ、モンスロード!》
GUYS一同から数十メートル離れた場所で、星都が相棒のSDをギンガスパークに接続する。
正常に作動した事を示す電子音声が流れたのを聞き届け、SDとギンガスパークを天高く突き上げてトリガーを引き絞った。
――《ウルトライブ! 「超合体怪獣 ファイブキング」!!》
掲げられたSDとギンガスパークが星都の肉体ごと光の本流と化し、瞬く間に膨れ上がって一体の巨大怪獣へと変貌する。
再びこの宇宙の地球に実体化したファイブキング。違うのは、その強大な威容を見上げるリュウ達の目に混乱や恐怖、懐疑心が一切存在しない事だった。
『多次元索敵システム「ワールド・エンド・ハウンド」、対象世界の座標計算及び固定完了! システム、オール・グリーン! 計算ミス等による座標のズレはありませぇん! いつでも帰還OKでぇす! さささ、パパッとやってちゃちゃっと念願のご帰宅と参りましょー!!』
「了解!」
今まで空気を読んで黙っていた太郎が、ここぞとばかりにキーボードを叩きながら楽し気なハイトーンを響かせる。
インカムから流れてくるその声に応え、星都は左腕に輝くガンQの単眼に超高密度の次元エネルギーを収束させると、直上に向けて一発のエネルギー光弾を撃ち放った。
――バシュゥゥゥッ!!!
光弾は上空数百メートルの位置で弾けて消え、巨大なワームホールを現出・形成させる。
上手く通路が開いた事を確認したあと、星都は最後にファイブキングの蒼く輝く双眸でもう一度だけリュウ達の顔を見渡し、大きく声を張り上げた。
「じゃあな、みんな! 力を貸してくれてありがとよ! また会おうぜ!!」
「「「「「「G.I.G!!」」」」」」
地上で見上げるリュウ達六人が、それぞれの持つファイヤーシンボルが描かれたお守りを手に、誇らしげな声で力強く叫んだ。
それを聞いてゴルザの顔の下で笑顔を浮かべた星都は、メルバの翼を勢い良く羽ばたかせ、強靭な脚力による跳躍と併せて大空へ飛翔。そのまま一気に深淵の闇の中へ消えて行った。
「またな……星都!」
「
ワームホールの奥に消えていく旋風を見上げ、リュウやジョージ、そしてミライ達が晴れやかな笑顔で手を振る。
そして、時空の穴が閉じて元の平穏な空に戻ったあとも、彼らはしばらくの間じっとその場に立って、自分達の誇り高き仲間である怪獣使いの青年を見送り続けていた。
後日、トリヤマやマルが危惧していた通り、GUYS日本支部の上層部から指令を受けた調査員達がフェニックス・ネストへやって来た。
目的は勿論、トリヤマの出した報告書に書かれていた「怪獣に変身する事のできる青年」の事実確認と調査。しかし、既に件の青年は自身が住む場所へ帰還してしまっており、その事をサコミズから知らされた調査員達は、今回の任務が無駄骨に終わった事に酷くがっかりしていたのだった。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか?
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<これにて第二章は終幕!
(=◎ω◎=)<一度、幕間を挟んだあと
(=◎ω◎=)<第三章へ物語は続いて行きます!
(=◎ω◎=)<にしても星都くん、とんでもない「お宝」を手に入れたものですな……
(=◎ω◎=)<これ、まずもって良い意味で値段なんて付けられませんよ
(=◎ω◎=)<ウラヤマシス!
(=◎ω◎=)<pixiv版の第十一話は十月十一日(日)投稿予定
(=◎ω◎=)<ハーメルン版の次回は十月十三日(火)投稿予定
(=◎ω◎=)<お楽しみに!
(=◎ω◎=)ノシ